ゴブリンスレイヤー 実況プレイ   作:猩猩

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Q.スクライド好きなの?
A.大好きさ!漫画版が!


女闘士・3 裏

「ゴブリン退治の依頼を単独で受けるのは、ちょっと……危険ですので、一党を組む事をお勧めしますが」

「いや、1人で受けるよ。規定違反と言うわけではないのだろう?」

「それはそうですが……」

 

 渋る受付嬢の言葉に、女闘士は断定するように単独(ソロ)での受注を主張する。そう、彼女の言う通り規定違反ではない。

 これを規定違反とするなら、ギルドはあの小鬼殺しに対して五年間も規定違反を見逃した揚句、銀等級にまで昇級させたということになってしまう。

 だから彼女が単独で受けた所で何ら悪い事はない。しかし、問題は彼女が新人だと言う事だ。

 群れの規模や運次第では6人の新人一党(パーティー)が全滅する事も珍しくない。それを1人、しかも女性がこなそうと言うのだから……

 

(とはいえ、それも前例はいっぱいあるから止め難いんですよね……)

 

 それこそゴブリンスレイヤーなどは初依頼からしてゴブリン退治、それも単独で受けてやりきったのだ。しかもシャーマンやホブのいる、20を越える規模の群れを。

 その時に依頼の受注業務をこなしたのは他ならぬ自分だ。つまり、受付嬢は前例をこの目で見るどころか関わってすらいるのだ。それを考えれば忠告は出来ても拒否など出来ない。

 そもそも冒険者とは自己責任の生業だ。どんなに無謀な冒険であっても、本人がやろうというのなら職員に―――――否、何人にも止める権利などは存在しない。

 無論信用が重要となる依頼となれば話は別だが、これはゴブリン退治だ。ゴブリン退治なのだ。新人にこそやらせるべきと言ってしまえばそれまでの依頼なのだ。

 

「危険な事は承知しているよ。初めての依頼で経験しているしね」

 

 だからこれでも群れの規模を厳選したのだよ、と言う女闘士の言葉に受付嬢は内心で同意する。確かにこの依頼内容からしてどんなに多くても10もいない群れだろう。

 大柄なゴブリンというのも恐らく田舎者(ホブ)だろう。新人が単独で討伐するのに危険はあるが不可能という程の規模ではない。

 しかしそれでも、と思ってしまう。どんな依頼でも危険はつきものではあるのだけれど、ゴブリン退治、それも女性が……

 

「……分かりました。でも、くれぐれも気を付けてくださいね?」

「勿論。失敗した時は良くて死ぬだけと言うのは理解しているからね」

 

 思う所はあれど、結局冒険者の意志を尊重するしかない。受付嬢は忠告こそしたが、結局は女闘士に依頼を割り振る。

 実のところ、心配なのはゴブリン退治の危険性だけではない。女闘士自身にも―――――こう言うと語弊があるが―――――懸念があるのだ。

 先日のゴブリン退治において、彼女の働きはかなりのものだった。装備がいい、ということもあるだろうが優れた筋力を活かし見事な働きを見せた。そう彼からも一党の仲間からも報告を受けている。

 だが問題となる点がどうしても一点ある。彼女はゴブリンの子供達を率先して―――――あのゴブリンスレイヤー以上に速く、躊躇なく殺した。そう報告を受けている。

 その行動といい、その後の救出された女性達への対応といい、彼女の過去に何かあった事は想像に難くない。正確な内容は分からないが、恐らくはそういう過去があるのだろう。

 当たり前だがその過去そのものは問題ではない。問題はその過去が彼女の行動に及ぼす影響だ。

 冷静さを欠き、窮地に陥りはしないだろうか。感情に振り回され、過激すぎる行動に走らないだろか。それは彼女の身のみならず、冒険者という職業全体への評判や近くの集落に住む人々の安全にも繋がる。

 退治すればいいのだろう、と考えなしに火やら水やらを使い、周辺の環境そのものをダメにしてしまう冒険者も稀にいるのだ。

 消火の事など考えず己に秘策ありと火攻めを行い、危うく森を焼け野原にしかけた冒険者だっていなくはない。

 そんな事をされるぐらいなら、被害の規模で言うならまだゴブリンを放置した方がマシですらある。

 

「くれぐれも気を付けてくださいね?」

「ああ。ありがとう」

 

 ありとあらゆる心配事が積み重なってはいるが、結局出来るのは見送って無事戻って来るのを祈り出迎えるだけ。

 偉丈夫の如き彼女の背中を見ながら、受付嬢は深いため息を一つ漏らす。だがそれに構っている暇も無く、すぐ次の業務へと取りかかった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 そういえば投石杖(スタッフスリング)の練習は怠っていたな、とあらぬ方向へ飛んで行った石弾を見ながら女闘士は兜の下で舌打ちをする。

 棒立ちだったり倒れ伏して動かぬ相手には当たるが、動く相手―――――自分に向かって突撃してくるゴブリン相手には狙いが定まらない。

 これも鼠や蟲相手に練習しておくべきだった。自分の怠慢を呪いながら戦嘴(ウォーピック)を両手で握り締め、ゴブリンに背中が見えるほどに身体を大きく捻る。

 そして両足をその場に根を張るように強く踏みしめると、腰から動かし始め背中を伝って肩、そして腕と身体全体の動きを意識しながら一気に振り抜く。

 遠心力と筋力によって生き物の咆哮の如く唸りを上げながら戦嘴が振るわれる。その一撃は間近に迫っていたゴブリンの首を貫くとそのまま刎ね飛ばし、隣にいたもう一匹の小鬼の首も抉り取って見せた。

 それを見た小鬼達は、こちらを獲物ではなく恐ろしい怪物を見る目になる。そして躊躇う事なく武器を捨て悲鳴を上げながら逃走しようとするが、女闘士はそれを見逃してやるつもりはない。

 少なくとも彼女の中に、この生き物を生かしておこうと思う気持ちは欠片もない。

 

 否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 無言で走り出し、小鬼を追いかける。洞窟に逃げ込んだ方には目もくれず、健脚と体力によって装備の重さも感じさせぬほどの速さで小鬼に迫る。

 体格がいいと言う事は、脚の長さが違う。脚の長さが違うと言う事は一歩の大きさが違う。であるならば脚の回転によほどの差が無い限り、大きい方が速い。

 当然の理屈に従い女闘士はゴブリンに追いつくと、躊躇なく逃げるその後頭部に戦嘴を振り下ろす。鋭い切っ先を持つそれは確かな手応えをもって小鬼の頭蓋を砕き、その命を容易く奪い取った。

 後は洞窟の中の相手だけだ、と振り返った女闘士の眼に映ったのは、群れの長と思しき巨漢のゴブリン――――――田舎者(ホブ)が洞窟から出てくる姿だった。

 肩に大金棒(モール)を担いでいる姿は正しく野蛮そのもので、どういう生き物なのかを全身で主張しているように見える。

 その足元では先程洞窟に逃げ込んだ小鬼がまるで喧嘩に年長者を連れ出してきた子供のように騒いでおり、強者の―――――少なくともその小鬼にとっての強者の威を借る姿は女闘士の殺意を煽った。

 殺してやる。大金棒の一撃は強力だ。武器で受けることすら危険だろう。殺してやる。籠手で受ければ命は助かるだろうが腕は無事では済むまい。殺してやる。殺してやる。

 相手の一撃を何とか避けて、殺してやる。あるいは先手を打って相手が大金棒を振るより早く接近して、殺してやる。

 頭は戦い方を考える。心は殺意に満ちる。それでいい。

 いずれにせよある程度間合いを詰めよう。ギリギリの間合いで先手を取るか取らせるか決める。そう考えて歩を進め、距離を詰めていく。

 大金棒の間合いまであと一歩。そこで脚を止めようとした瞬間――――――

 

 突如、ゴブリンが勢いよく飛んできた。

 

 反射的に戦嘴を振り、迎撃する。小鬼の顔面に猛禽の嘴を思わせる鋭い切っ先が叩き込まれ、顔を貫き脳を破壊する。

 それと同時に田舎者がこちらへと踏み込んできている事に気付き、反射的に戦嘴を手放し腕を顔の前へと掲げる。ギリギリで防御が間に合ったが籠手の上から強かに腕を殴られ、女闘士は吹き飛ばされるようにして地面へと倒れ込む。

 起き上がろうとするより早く相手が自分の上に圧し掛かって来る。馬乗りになられ、マズイと思うのと同時に顔面へ再び痛烈な一撃が入る。

 目の前で火花が散って視界が歪む。それは彼女にとっては馴染み深いとすら言える状態。女闘士は知っている。この後どうなるかを。

 男と言う生き物がこの後女性をどうするかを、女闘士はよく知っていた。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 押し倒した雌に馬乗りになりながら、群れの長たるホブゴブリンは下卑た笑みを浮かべ舌舐めずりをした。

 役に立たない部下を使い捨てたおかげで、頑丈で肉付きのいい雌が手に入った。いい装備も持っている。長である自分に相応しい装備だ。

 部下は皆殺しにされたようだがあんな奴らはどうでもいい。大きくて強い自分がこの雌に優秀な子供を沢山産ませて、またもっと立派な群れにしてみせる。

 それに自分は仲間を殺されたのだ。この雌に子供を産ませて使えなくなったら食べる権利がある。つまり自分の行いは全て正当なものだと、田舎者(ホブ)は心の底から信じていた。

 もっともそれはゴブリンという生き物全てがそうなのだが。

 まずは鎧を剥ぎ取らねば。本来ならこんな面倒な事は部下にやらせるのだが、全員殺されてしまった。本当に使えない奴らだった。

 とりあえず抵抗されないよう、死なない程度に殴り付ける必要がある。2、3発も殴ってやれば雌は大人しくなるはずだ。

 そう考え腕を引いた瞬間、田舎者は突如自分の背中が何者かに押された―――――ように感じた。少なくとも彼の主観では間違いなくそうだった。

 腕を振り上げたせいで姿勢が不安定になり、その瞬間女闘士が腰を跳ね上げたせいで自分が前のめりに投げ出される。そんな技術などゴブリンは知らない。

 あくまで「誰か」のせいで雌の上から退かされたと思い込んでいる彼は怒りながらも、もう一度雌を組み敷こうと振り返る。

 

 だが振り返った瞬間、雌が飛び付き腕と脚とを自分の身体に絡めてきた。

 

 馬鹿な雌だ、とほくそ笑んだのも一瞬。首に回された腕によって気管が圧迫され、呼吸が出来なくなる。身体を離そうにも雌の脚が胴に巻き付き、逃げる事が出来ない。

 何が起きたのか。何故こんな事になっているのか。田舎者には理解が出来ない。どうすればいいのかも分からない。

 とにかく首を絞める腕を引き剥がそうとするが、尋常ではない力で締め上げられており容易に剥がす事が出来ない。

 なら地面に叩き付けてやろう、と考えた所で、グチッという音が彼の耳に響いた。

 それが気管の潰れた音だと知る事なく―――――

 彼の意識は急速に遠のいて行った。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 大きく肩で息をしながら、意識を失い倒れ伏した田舎者(ホブ)を女闘士は見下ろす。

 自分を犯そうとするものに圧し掛かられた時にどうするか、素手でどう殺すかをあの牢の中で考えていたのが役に立った。これほど体格の良い相手に使う事になるとは思ってはいなかったが、考えていた以上の効果を発揮してくれた。

 本来使おうと思っていた相手ではないが、どちらも抵抗出来ない女を犯し己の欲望を満たす下衆だ。そこに何の違いもない。

 であるならば、やる事はただ一つ。

 

 底に鉄板を仕込んだ靴は考えていた通りの効果を発揮してくれた。

 田舎者の首は枯れ木を踏んだ時のような音を立てて容易く折れ曲がり、あらぬ方向を濁った瞳で見つめるだけとなる。

 この手合いの命を奪う事が面白いとは思わない。その代わりに生命を奪う事への呵責もない。ただ、ほんの少しだけ自分の中の何かが満たされる。

 だから確実に死んだ以上、攻撃する気はなく。田舎者の死体にはすぐに興味を失い、女闘士は視線を外す。それはもうどうでもいいものだ。

 大事なのは次だ。次の同類を、自分の感情が敵とする相手を。まだ生きているそれを殺すのだ。

 

「先走り過ぎているな……」

 

 心だけでなく頭の中まで殺意で染まりかけている事に気付き、女闘士は首を横に振る。頭の中までそれに支配されたら視野が狭くなる。

 それで自分が死ぬのは構わないが、相手を殺し損ねるのは困る。頭の中は冷静でなくては。

 周囲を見渡し、敵がいない事を確認してから兜を外す。唇は切れたが歯は折れていない。これならば問題ないだろうが、念のために治癒の水薬(ヒールポーション)を飲んでおく。

 その時フッと田舎者が持っていた大金棒(モール)に目が行った。自分に対して使われる事はなかったが、間違いなく強力な武器だ。そして古いわけでも作りが雑で使用に耐えられない訳でもない。

 地面に打ち捨てられていたそれを両手で掴み、軽く振り回す。重くはあるが自分の筋力ならば充分使える。二度三度振って体力が尽きるような事はない。

 そして唸るような音を上げながら空気を裂く大金棒は何とも頼れる武器に思える。いや、実際頼れるはずだ。

 大物過ぎて洞窟や閉所で振り回すには不都合。重く持ち運びも楽ではない。だが、それを補って余りある武器だ。少なくとも自分にとっては。

 頭の中にゴブリンを、下劣な男を大金棒で打ち砕く自分の姿が浮かぶ。それが現実味のあるものだと判断した時、彼女の心は決まった。

 きっと神は自分にこれが合うと、これを使えと言いたくてこの依頼を選ぶよう託宣(ハンドアウト)を寄越したのだろう。

 であるならばこれで敵を殺す事こそが神への感謝の証となるだろう。なんとしても使いこなさねばならない。そう思いながら、女闘士は慎重に洞窟の中へと入って行く。

 一匹たりとて生き残らせはしない。生き残りがいる可能性を潰さねばならない。

 それだけは頭も心も意見が一致していた。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 つむじ風か何かのようだ、と監督官は女闘士の奇行を見て思った。

 昇級審査の為に談話室で話をしていたはずが、突如立ち上がり託宣があったと部屋を飛び出す。気になって後を追えば受付で何やら話を聞き、一目散に何処かへ駆け出した。

 受付をしていた同僚に話を聞けば、ゴブリン退治に向かったという新人一党(パーティー)の話を聞いて突如出て行ったそうだが……

 

「神様のお告げじゃ仕方ないなあ」

 

 本来なら論外に近い行動ではあるのだが、託宣(ハンドアウト)の重みは至高神に仕える神官でもある彼女には痛いほど理解できる。

 世の決まりや人と人との関係を疎かにしていい訳はないが、さりとて神の言葉を無視するというのもありえない。そう考えると彼女の行動は褒められはしないが、咎めるわけにもいかない。

 後日改めて話をして、軽く注意するのが適当なところだろう。

 

「大丈夫でしょうか、彼女」

 

 受付をしている同僚が憂鬱そうに呟く。その言葉には様々な心配が詰まっているのが感じられる。

 女闘士は明らかに体調が思わしくなさそうだった。風邪とはまた違う―――――恐らくはそういう日なのだろう。同じ女性である監督官には察せられた。

 それに加え、明らかに女闘士はゴブリン―――――と言うよりも、小鬼のように「女性を穢し楽しむ相手」への憎悪を持っている。

 それは同性として許せないだとかそういったものでなく、もっと深い何か―――――それこそ己がそういう目に遭ったから許せない、生かしてはおけないという類の憎悪だ。

 先日のゴブリン退治においても、報告する態度こそ淡々としたものだったが内容の端々から怒りや憎しみに近い物が発せられていた。

 そこから憎悪に囚われて判断を誤るのではないか、と心配されるのは当然の事で。まして体調が思わしくない状態で、恐らくは新人一党を助けるために飛び出して行く。

 目の前の事も、この先の事も。二重三重に心配になって来るのは大いに分かる。

 

「気にはなるけど、気にしたって仕方ないでしょ」

 

 冷たく思われる事もあるが、ギルド職員と冒険者の関係はこれが全てだ。相手の過去など知らないし、聞き出す義務も無ければ権利も無い。

 よほど等級に見合わぬ依頼でもない限り、依頼を受けさせない権利も無い。自分達はただ依頼を斡旋し、多少の忠告や助言を行う。それだけなのだ。

 ましてや今回女闘士は依頼を受けたわけでもなく、自分の意志で―――――恐らくは新人一党の元へ向かったのだ。誰が止める権利を持つと言うのだ。

 自己責任と引き換えに冒険者は自由意志を持っているのだから。

 これが気に入らない、もっと何とかしてくれと言うのならば冒険者はこちらの言う事に従うのが義務になる。

 自由という権利を保持したまま義務は増やすな、世話は焼けなどとふざけた事が通るわけがないのだから。

 そんな甘ったれはハナから冒険者になどなるな、と熟練の冒険者達なら拳骨の1つや2つも落としながら言うところだろう。

 冒険者は自己責任。こちらはこちらの仕事をきちんとやって、その範囲の中でしてやれることをしてやるだけ。

 それが冒険者とギルド職員の間での黄金の約定(ゴールデンルール)というものなのだ。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 上手く行ってよかった。心から剣士は安堵し、大きく息を吐きながら洞窟の出口へと歩いて行く。

 

「上手く行ってよかった……」

「罠にも気付けたし、今の私達の力量(レベル)からすると完璧だったんじゃないかしら」

 

 女武道家が自分と同じようにホッとした様子を見せ、女魔術師は少し疲れた表情をしながらもその豊かな胸を誇示するように胸を張る。

 罠に気付いたのもシャーマンを仕留めたのも彼女なのだから、そのぐらいはしたくなるのも分かる。

 その後ろ、自分達より3歩ほど後ろを歩いている新人の一党―――――自分達も新人なのだが―――――は気落ちした様子を見せ言葉も発しないが、無理もないと剣士は内心同情する。

 剣士一党はたまたまギルドで彼らがゴブリン退治の依頼を受けているところを目撃し、どうしても放っておけず今回無理に随行した。

 決して報酬が高くないことと、自分達だけでも出来るという自信から彼らには同行を渋られた。しかし先日暴食鼠(グラトニーラット)巨大黒蟲(ヒュージローチ)を退治したことで懐が温かった事が幸いし、自分達の取り分はいらないと言う事で何とか臨時の一党を組む事が出来た。

 彼らからすれば余計な世話を焼く連中、しかも自分達と同じ白磁の癖に何を先輩面しているのかと面白くなかったことだろう。

 こちらの力など借りず上手くやってやる。自分達の力を見せつけてやる。そんな風に考えていたのだろう。実際神官戦士が見張りのゴブリンを弩で仕留めた時は、明らかに表情にそれが出ていた。

 だがそこまでだった。彼らはゴブリンの仕掛けた簡単なトラップに気付かず引っかかりそうになり、頭目である新人戦士は武器を壁に引っ掛けゴブリンに袋叩きにされかけた。

 神官戦士は焦ってゴブリンと近接戦になっているのに弦を引き上げようとし、魔術師は考えなしにすぐ呪文を撃って使い切ってしまった。

 もし自分達がいなければ、彼らはそれで終わりだったろう。その現実を認識したなら、気落ちするのは無理もない。

 それを笑おうとは思わない。いや、笑う事など出来ない。自分達もそうだったから。

 ゴブリンは最弱の魔物。そんなものに負けるなどありえない。すぐに、楽に終わるはずだ。そう考えていた。

 

(知らなければ、そうなるよな)

 

 いや、最弱の魔物というのは間違っていないのだ。一匹二匹なら村にいた頃の自分ですら追い払えたのだから。

 だが、その認識が全てではないのだ。

 ゴブリンは罠を仕掛ける、毒を作って使う事もある、複数で囲もうとしてくる、洞窟なら横穴を掘って奇襲をかける事もある、体格の大きなホブや魔法を使うシャーマンもいる……

 そんな事は、新人冒険者は知らないのが当たり前なのだ。一々ゴブリンに対してそれほどの知識を得ようと思う冒険者などいない。

 自分達だって女神官を誘っていなかったら。彼女の頼みで、女闘士を誘っていなかったら。彼女が装備を調整している時間と、洞窟前で相談をしている時間がなかったら。ゴブリンスレイヤーが来るのがもっと遅かったら。

 恐らく―――――いや、間違いなくあの洞窟で全滅していた。それぐらいの事は剣士にだって解っている。

 だからこそ彼らの事が放っておけず無理矢理についてきたのだ。

 自分達のようにゴブリンを侮り、何とかなるとタカをくくり、回復も出来る神官戦士が一党にいるからとたった三人でゴブリン退治に挑もうとしていた彼ら。

 それはまるであの日の自分達を見ているようで、どうしても声をかけずにいられなかった。

 きっと女武道家も女魔術師もそうだったのだろう。彼女達も自分の行動に文句を言う事なく、何の利益も得られないというのにゴブリン退治についていく事に賛成してくれた。

 自分達は運良く生き残った。運良く助けてくれる「誰か」に出会えた。なら次は自分達がその「誰か」になるべきだ。

 勿論ゴブリンスレイヤーのように経験や知識があるわけではなく、女闘士のように優れた筋力や良い装備をしているわけではない。ほんの少し経験を積んで身の程を知った新人冒険者に過ぎないのだけれど……

 少なくとも剣士は、剣士一党はそう思ったのだ。自分が助けてもらったのだから、次は自分が助ける側に回るべきだと。

 今後ろで沈んでいる彼らもきっと、そうなってくれるはずだと剣士は信じている。気持ちの整理さえつけば自分達が未熟である事をハッキリ認識し、自分達のようにそこから成長して行こうとしてくれるはずだと。

 そしていつか、誰かを助ける側に回るはずだと。

 

(きっと彼女もそうなんだよな)

 

 洞窟の出口で鎧兜に身を固めた女性―――――女闘士の姿を見た時、剣士はそう確信した。何故いるのかと驚きはしたけれど、彼女が来ている事に不思議と納得した。

 きっと彼女も助けたくて来たんだろう。救いたくて来たんだろう。

 あの洞窟での行動もそうだった。彼女はきっと、人を救いたいのだ。

 その中にはそうあって欲しい、という自分の願望も入っているけれど―――――

 間違ってはいないはずだと、剣士は確信していた。

 




活動報告の方で皆様の意見をお伺いしています。

Q.退治のための無茶な行動はゴブスレさんもやってるのでは?
A.エルフの砦焼いた時は消火の算段はあるって言ってたので、考えなしにやってはいないはずです。
水の都でも《隧道》は水路に問題を発生させると聞いて断念してましたし。

Q.女闘士ちゃんはどういう体勢でホブの首絞めたの?
A.いわゆるだいしゅきホールド状態でフロントチョーク極めました。

活動報告であげた診断結果の中で、どれが一番読みたいですか?(書くとは限らない)

  • 魔法剣士【綴られた手紙】
  • 令嬢【どうか、叶えて】
  • 女魔術師【君のワガママ】
  • 魔法剣士と令嬢【忘れてください】
  • 魔法剣士と女魔術師【貴方の為だけの】
  • 三人【騙し騙され愛し愛され】
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