物心ついた時から、彼にとって姉とは憧れだった。
姉は自分より賢く、自分の何倍も優秀だった。姉のようになりたくて自分も勉強したが全く追いつけず、すればするほど姉の凄さが理解出来て憧れはより深まった。
だから姉が都の学院に入るのは当然の事だと思ったし、そこで優秀さを褒められ評判となるのも誇らしくはあるが当たり前だと思った。
姉のようになりたくて自分も学院に入った後で、彼は姉の凄さをまた思い知った。姉は二度も術を行使出来るという。自分は一度がやっとだというのに。
学院でも姉と彼の関係は変わらなかった。勉強すればするほど、努力すればするほど。姉の凄さが理解できた。そして、姉に憧れた。
姉の優秀さは学院の中にも広まって行き、姉を褒めそやす声はそこかしこで聞こえた。それを聞くたび、彼は心から誇らしい気持ちになった。
そして姉が首席で学院を卒業する時、その想いは頂点に達した。自分の姉はこんなにも凄いのだと。優秀なのだと。自分が評価されるよりずっと誇らしかった。
卒業した姉は語った。自分は冒険者になると。冒険者になり、いずれは竜をも倒してみせると。彼はその姉の言葉を疑わなかった。きっといつか姉は竜を倒し、四方世界に名を馳せる魔術師となるのだと信じ切っていた。
姉がゴブリンに殺されかけたという報が彼の耳に入って来たのは、それから暫く経ってからだった。
最弱の魔物に殺されかけた。その一点を以って、姉への評価は逆転した。学院の誇りだと、稀に見る優秀な生徒だと言われていたのが嘘のように皆が口々に馬鹿にしだした。
小鬼ごときに遅れを取るなんて恥さらしだ。無能だ。大したことないと。彼はそれを聞く度怒りに突き動かされ、口にした者に対し噛みついた。時には手すら出した。
優秀な姉を持ち、懸命に努力する弟。そんな評価が小鬼程度に殺されかけた姉と、問題児の弟というものに変化して定着し出した頃。西の辺境からまた新しい知らせが届いた。
新人ながら、下級とはいえ魔神を倒した一党がいる。その一党の中に彼女の姿があった、と。
その知らせがあってもすぐに姉への評価が変わったわけではなかった。たまたま成功しただけだとか、一党の他の面子が優秀だったのだろうとか。それだけ小鬼に殺されかけたという事は重く響いていた。
それでも少しずつ風向きは変わって行った。
その後新しい知らせが届く度、姉の評判は取り戻されて行った。それに比例して、彼の心は落ち着いて行った。
1年が経ち、彼が卒業する頃には姉の評判は元に―――――いや、元以上に高くなっていた。
学院を卒業すると、彼はすぐに冒険者となった。姉と一緒に冒険をしよう、と思っての事ではない。自分では姉の脚を引っ張りかねないから、そうするつもりはなかった。
ただ、姉のように自分も己の才覚で以って名を上げたかった。姉の名に恥じぬ魔術師になりたかった。そのためには冒険者になるのが一番だと思ったのだ。
そして冒険者となった彼が真っ先にやった事は、依頼を受けるでも仲間を探すでもなく姉のいる辺境へ向かう事だった。
一目姉に会いたい。立派になった姉の姿を見ておきたい。自分も冒険者になったと、直接伝えたい。その想いから彼は旅立った。
辺境に向かう馬車の中で知り合った冒険者から、姉の話を聞いたことで彼の中の思いはより膨らんだ。
姉は一党と共に幾つもの依頼をこなし、冒険をし、怪物を倒していると言う。その活躍から姉は辺境の街において、一党の仲間共々期待の新人と目されているとも聞かされた。
やはり姉は優秀だった。立派だった。小鬼に殺されかけたというのは、よほど運が悪かったか一党の仲間が足を引っ張るかしたのだろう。
辺境の街に着いた時、既に日が沈みかけていたが彼は気にせずギルドへ向かった。ギルドに併設した宿に姉が寝泊まりしている、というのは姉からの手紙で知っていたから、必ず会えると思った。
姉はどんな風になっているのだろう?周りから一目置かれているのだろうか?あるいは自分のような新人冒険者から憧れられているのだろうか?
期待と興奮を胸の内で膨らませながらギルドの扉を開いた彼の眼に入って来たのは―――――
「だから笑いなさいよぉ……1年前に見せたっきりなんだから、1度ぐらいいいでしょぉ……」
「酔っぱらいに絡まれて笑えると思うのか」
グデングデンに酔っ払いながら、男に抱きつくようにして絡んでいる姉の姿だった。
これ以降は全く浮かんでないし、ただの気晴らしなので続きません。
活動報告であげた診断結果の中で、どれが一番読みたいですか?(書くとは限らない)
-
魔法剣士【綴られた手紙】
-
令嬢【どうか、叶えて】
-
女魔術師【君のワガママ】
-
魔法剣士と令嬢【忘れてください】
-
魔法剣士と女魔術師【貴方の為だけの】
-
三人【騙し騙され愛し愛され】