ゴブリンスレイヤー 実況プレイ   作:猩猩

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本棚から鍔鳴の太刀が行方不明になったので初投稿です。
この人の話と女魔術師ちゃんの話は凄く書きやすい。


引き続き活動報告の方で意見をお伺いしています。


幕間 彼女の話

 騎兵隊が耳元を全力で通過しているのかと思うぐらいに煩く激しい心臓の音を聞きながら、令嬢は幾度も深呼吸をしながら魔法剣士からの手紙を少しずつ読み進めていく。

 何時ものように羊皮紙とパピルス紙の二種類を使って送られてきた手紙は、羊皮紙の方には形式的な挨拶と体調を気遣う文面のみ。

これはこれで彼が自分の為に時間を割き、心配してくれているという事であり大変に幸福なのだが今回はパピルス紙の方こそが重要だった。

 前回より倍近い数になったそれに書かれていたのは、前回同様の業務連絡。下級魔神退治や小鬼王の軍勢との戦いというもっと面白おかしく書けそうな内容であるのに、彼は簡潔かつ具体的に敵の数やら退治した方法やらを報告してくるだけ。

 しかし令嬢は知っている。これは彼なりに工夫をしているのだ。簡潔に書くのはこちらに読みやすくするため。具体的に書くのは少しでもこちらに伝わりやすくするため。彼なりにこちらの事を考えてくれているのだ。

 それだけで思わず手紙を抱きしめてしまうほどには嬉しく幸福なのだが、その後に書かれていた内容はもっと素晴らしいものだった。

 まず書かれていたのは一党(パーティー)の仲間達の事。そして次に親しい友人の事。続いて尊敬する先達や知り合った人々の事。それが詳細に書かれていた。

 

 自分よりも賢く、一党全体の視野が狭くならぬよう自分とは違う見方をしてくれる女魔術師。

 自分よりも強く、一党の為に先陣を切って身体を張ってくれる女武道家。

 どちらも仲間の事を大事に思い、いつだって仲間の為に己に出来る事を全力でやってくれるという。

 

 初めて組んだ一党で知り合った女神官。彼女は良き友人であり、自身の幸福や気持ちよりも他者のそれを優先する心優しき善良な少女だという。

 その彼女と一党を組んでいる小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)―――――変わった異名だ―――――や妖精弓手、鉱人道士や蜥蜴僧侶についても触れられている。特に小鬼殺しには二度も命を救われた事、二度とも自分だけでなく仲間の命を救われた事が書いてある。

 

 自分の所持品で売れるものがあったろうか?いや、金貨で礼を示すのは彼と仲間の命に値を付けるような行為になってしまうだろうか?だが何かお礼をせねばなるまい。

 自分に出来る最大限の、そして迷惑にならないお礼を考えねばならないと令嬢は心に誓う。

 

 そして尊敬する先達だという槍使いと魔女の事。特に文面を割いているのは槍使いの方だ。彼こそはまさに「冒険者」だと書いている。

 槍使いの勇名は令嬢の耳にも及んでいる。辺境最強の槍の勇士。そしてその相棒たる妖艶な魔女。都でもしばしば武勲詩を耳にするほどの冒険者だ。

 そして彼の命を救ってくれた大恩人でもある。のみならずそれ以降も何かと魔法剣士を気にかけてくれているようだ。どれだけ感謝してもし足りない。

 一度招待して直接お礼を言わねば。いや、わざわざ呼び出すなど失礼に過ぎる。自分が辺境の街に赴くべきだろう。

 

 他にも世話になっているギルドの受付嬢や監督官の事、ゴブリンスレイヤーが拠点としている牧場の娘の事など様々な人の事が書かれている。

 それらの内容を一行ずつ、一文字ずつ読み進める度に令嬢の心臓は破裂しないのが不思議なほど高鳴る。顔は自然とほころび、笑顔になっていく。

 彼が何故こんなにも多くの人の事を、多くの言葉で書いているのか?彼自身はひょっとしたら分かっていないかもしれない。だが令嬢には分かる。

 彼は彼にとって「大切なもの」を列挙しているのだ。自分に出来た大切なものを、大事なものを伝えたくて仕方ないのだ。子供が宝物を自慢するように。

 彼にそんな大切な人々が出来た事が嬉しくて仕方ない。彼が大事な人々と関わっているという事が幸せで仕方ない。彼の人生が豊かになっているという事が素晴らしすぎて仕方ない。

 幸福すぎて狂うか死ぬかしてしまいそうだ。ああ、なんて喜ばしい日だろう!これだから人生は美しい(ライフ・イズ・ビューティフル)

 

 加えて言うならば、恐らく一党の仲間である女魔術師は彼に想いを寄せているのだろう。手紙の中に書かれている彼女の行動と、女の勘というやつでそう令嬢は推測した。根拠の半分は女の勘によるのだが。

 どれほど彼を想っているのだろう?淡い恋心や憧れ程度なのか?それとも心の底から本気になっているのか?

 ああ、どちらにせよ素晴らしい!彼を想う人がいるのだ!彼はそこから愛や恋を学べるかもしれない!さらに言えばその学んだ気持ちから、彼女や他の女性と結ばれるかもしれない!それは彼の人生の豊かさに繋がり、彼の幸福になる!なんて素敵な事だろう!

 やはり辺境の街へ赴かねば!槍使いや魔女に礼を言うだけではない。女魔術師に直接会って気持ちを確かめ、彼女が本気だと言うなら応援してやらねば!

 心の奥底から湧き立つ気持ちに突き動かされるように、令嬢は手紙を読み進めていく。そして最後の一枚となり、その文面を読んだ時――――――

 

 遂に彼女はあまりの幸福感に堪えかね、その場で卒倒した。

 

 その姿を発見したメイドが大声を上げたことで屋敷はちょっとした騒ぎとなるのだが、令嬢には関係のない事だった。

 

 

 

 

 ―――――最後に、最近気付いた事を。俺は人の為に何かをして、人の望みを叶えて、人の期待に応えるのが好きらしい。

 だから、今、こうして冒険者をしているのは楽しい。仲間と一緒に冒険をするのが、楽しい。依頼をこなして人の為に働いて、人に喜んでもらえるのが楽しい。

 仲間の命が自分の判断にかかっているという重圧は苦しいが、それでも楽しい。

 冒険者になった本来の目的を忘れたりはしないが、この楽しさは否定できない。いや、絶対にしたくない。だからこうして正直に伝えておく。

 

 敬具。

 

 追伸

 

 お前の事だから、一度はこちらに来るつもりなのだろう。

 どうせ来るなら秋の収穫祭に来るといい。祭りを案内して婚約者らしい事がしてやれると思う。




もし続いたら次回は令嬢襲来編になります。たぶん。

Q.令嬢は最後の部分は何処まで読んだの?
A.「楽しい」ってワードが出てきた瞬間卒倒しました。なので追伸の部分を読むまでに数日のタイムラグが発生します。

Q.これ限界オタクなのでは……?
A.左様。推しがSNSで人生を謳歌している様子を投稿して、それを見たオタク状態にござる。

活動報告であげた診断結果の中で、どれが一番読みたいですか?(書くとは限らない)

  • 魔法剣士【綴られた手紙】
  • 令嬢【どうか、叶えて】
  • 女魔術師【君のワガママ】
  • 魔法剣士と令嬢【忘れてください】
  • 魔法剣士と女魔術師【貴方の為だけの】
  • 三人【騙し騙され愛し愛され】

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