とある男性、朝起きたら目の前にデジタマがあることに気がつく   作:ハトメヒト(ヒットマン)

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第四話 とある男性、不可解な事象に遭遇する。

 家を出てからは、満員電車に乗りこみ一息つく。内ポケットから、スマホを取り出して電子版の新聞をチェックする。ニュース一覧には、試作型量子コンピューターZENESISの話題や、うちの製薬会社のサイバー攻撃の件や他はチープなゴシップが並ぶ。

 その中で目を引いたのは、世界で体の一部が徐々にモザイク状の斑点が出る、原因不明の謎の奇病が発見されたことだ。この案件はうちでも扱う可能性があるが、今の俺には荷が重い。

 デジタルモンスターだけでも手一杯なのに、この奇病は要らぬストレスを助長させるだけだ。

 

「会社に行きたくないなぁ……」

 

 そうぼやいてしまうのは無理はないが、一応は独身童貞男性である。甲斐性がなく親不孝を働くほど俺は落ちぶれちゃいない。しかしこんなことを考えると『働かなくては生き残れない‼』などという、パロディじみた次回予告のキャッチーが頭に浮かんでしまう。

 

「はぁ……」

 

 憂鬱という言葉が浮かぶのがサラリーマンという名の社畜、もとい企業戦士の辛さには、壁壁するものだ。今日も一日、社会の歯車を回すために、昼頃にはエナジードリンクや栄養ドリンクという潤滑油を口の中に流し込むのだろう。これでは俺はロボットではないか……。

 そう思慮にふけていると『次は新宿~』というアナウンスが流れる。うなだれた格好のまま、スマホをしまう。新宿駅のホームから改札を出て会社に向かうと、会社では馴染みの顔もチラホラ見える。

 

 受付の方に目を向けると、いかにも怪しい赤いレザースーツに身を包んだ女性が、黒ずくめの男二人を引き連れて受付嬢に話しかけている。受付嬢は、普通に応対しているそぶりを見せているが、強張って苦虫を嚙み潰したような顔をしている。

 

 ここで俺が、薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊の陸戦兵の様に、颯爽とトラブル解決に行けば良いが、面倒ごとは今のところ『No, thank you.』である。可哀想だが彼女の冥福を祈る事にする。

手荷物チェックを受け、ケースの中にスマホなどと一緒にデジモンX-I入れてゲートを通る。警備員からデジモンX-Iに聞かれたが、これは育成ゲームの機械で甥っ子に頼まれて育てていると言ったら、若干怪しまれたが通ることが出来た。

 

 こんなところで要らぬストレスを受けるのは、精神衛生上に宜しくはない。俺が望むものは平穏無事である。これ以上の厄介ごとは、ろくなことにならない。

 モブのような呼吸と歩法で、足早にエレベーターへ向かう。ちょうどドアが閉まりかけていたところをボタンを押して乗り込んだ。

 

 エレベーターにはチラホラと御同乗がいる。ドアが閉まるのと同時に自分の部署がある8階のボタンを押すが、点灯せず動かない。同乗者も何とも言えない顔になっている。エレベーターの自動音声が流れる。

 

『行先ボタンを押してくだ、行先、行先、ボタンを押せ押せボタ……オマエラハシス!!』

 

 壊れたのか何かおかしいと思った矢先に、いきなり電気が真っ暗になり急上昇を始めた。床を這って少しだけ覗くと悲鳴と急激なGに耐えつつ這って車いす用の非常ボタンを押した。

「だ……だれか——」と助けを求めるが、うんともすんとも言わない。

 

 この時、静寂が包み込む。周りを見渡すと世界が灰色に変わり時が止まった―スタンドの様に―エレベーターの電光板には、何かのシルエットが切られた後に、奇妙なものがノイズとともに写り込むと声が聞こえる。

 

『助けて下さい。この世界を、全てのデジタルワールドを』

「だ、誰なんだ君は!?」

エレベーターのスピーカーから女性の声が発せられる。

『もう時間が無いのです。すべての望みは貴方が持つデジモンX-Iに——』

「おい、どうなってるんだ‼ おい‼」

 ザーというノイズと共に世界は明るさを取り戻した。

 

 同乗の方々は何が起こったのか分からない様子だったが、うんともすんとも言わなかった管理室の方から救助隊が派遣されるという旨が伝えられた。

 救助後の現場検証が行われ、電子制御の異常による暴走と断定された。警察の取り調べ等では、ボカして本当のことを言ったが信じてもらえず、一種の集団ヒステリーによる妄想であるとされてしまった。

 直属の上司からは、今日は大事をとって休む様に指示されたのだった。同乗者も同様だった模様だ。相変わらずX-Iの方はお世話をするが変化が見られない。あのエレベーターの声では、すべての望みはとか言っていたが結構厄介な案件な気がする。




4年ぶりの投稿です。次は一年後になるかもしれない。
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