束縛系花騎士と転生団長の異世界転移   作:Red_stone

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第11話 飲み会

 

 あなたは町へ帰った後、1日かけて絞り尽くされた。正直に言うと体力的に大討伐よりも辛かった。次の日にウォーキングがてらぶらぶらしていると、槍使いに誘われて夜に飲むことになった。

 

 ……ウォーキングについてきたエノテラには女がいないことを再三説得して許可をもらった。

 

「――乾杯」

 

「おうよ、乾杯」

 

「こうして、男同士で飲むのも変な気分だな。……別に1か月ぶりと言うわけでもないのにな」

 

「へえ、あいつとは短いのかい?」

 

 槍使い――彼の名前はカイと言うらしい。ちょっと嫌な顔をしなから指さしたところにはもちろんエノテラがいた。女の子がいないことは何度も言ってあるが、確認しないと気が済まないらしい。

 

「たぶん、10分かそこらでいなくなると思うから気にしないでくれ」

 

「ん? なんで分かる……いや、酒を頼んでねえのか」

 

 彼女の前に置いてあるのは普通の食事だ。それが終わったら退出するのだろう。あなたとエノテラは四六時中ともに居るわけではなかった。それでも、普通と比べ随分と多い時間を一緒に過ごしてはいるのだが。

 

「冒険者、長いのか?」

 

「おうよ、長いぜ。俺ァ、ガキの頃から風来坊でな、喧嘩仕込みの槍さばきって奴よ。始めはただの木の棒だった。あんたの方はその制服……どっかの国の騎士でもやってたのかい?」

 

「いいや、騎士団自体とは関わりがあったし傭兵みたいに協力したこともあったが、正式な所属はしていなかった。観念して就職しようと思ったんだがな、ちょっとした手違いだ」

 

「手違いってなんだよ。つか、それマジモンの制服か?」

 

「もらったらすぐに改造したからな、返しても意味がない。まあ……俺たちのいたところは、服装についてはとやかく言われなかったが。いや、うるさく言うところとは色々あったから配属先にならなかった、の間違いかな」

 

「それ、本当に騎士団かあ? 冒険者はちゃらんぽらんで、騎士団は規律に厳しいってのがイメージってもんじゃないかねえ」

 

「そいつはリリィウッドだな」

 

「リリ……なんだって?」

 

「そういう場所があったんだよ。遠く離れた場所だ……もう懐かしいな。ただ、伝統に縛られた元老院どもがうるさいあそこよりもバナナオーシャンの方が好みだったな。あそこは大物が出たら何となく戦闘に参加しても何も言われなかったし」

 

 簡単に言っているが、実は花騎士世界は人類絶滅まったなしの危険な状況だったりする。なぜなら、戦闘に参加しても何も言われないとは……街中で戦闘が起こるから、戦力なら何でもいいという理由でしかないのだから。安全地帯などどこにもない、花騎士たちの個人的な努力によって街の滅亡をひっくり返している現状だった。システム面では破綻していて、個人の力で何とかしている。

 

 更に言えば、その状況でも規律にうるさいリリィウッドはほぼ詰んでいると言っていい。強力すぎる花騎士が何とか挽回しているが、遊んでいられる状況ではない。小説ストーリーで王女が害虫襲撃に会っていたが、さもありなんという絶望的な状況だ。王女でさえそうなら、一体だれが害虫の被害から逃れ得ると言うのか。

 

「お、ちょっと興味あるな。どんな大物が出たんだ?」

 

 とはいえ、槍使いは政治的な話に興味はない。ふたりとも同じ冒険者なのだから、魔物=害虫の話に移っていく。

 

「ああ、そこでは魔物はもっぱら害虫と呼ばれている。大物と言っても千差万別だな……バナナを背負った蟻とかチョコレートフォンジュとか面白い外見の奴が居たぞ。酒の席ではそいつらの方がウケがいい」

 

「……? まったく想像つかねえ」

 

 普通に聞けば、ただのギャグだとしか受け取れないだろう。だが、本当に人を殺せるような害虫が現れれば、それはもうただの脅威でしかない。

 

「姿はギャグでも、人は死ぬぞ? 大人三人分はある鋼鉄よりも固いバナナで突進されたらぺしゃんこだし、溶けたチョコレートはかかれば重度の火傷は確実だ。ねばついているから熱湯より厄介だった。……ちなみに討伐後の掃除は逃げたがな」

 

「そいつは……どうやって倒したんだ?」

 

「バナナの奴は首を刈れたんだがな……チョコレートフォンジュは無理だった。長距離攻撃持ちを雑魚から守る役割だったな。ああいう”攻撃されたら自動カウンター”みたいな敵は厄介すぎたんだよ。魔法で遠距離から潰すしかなかった」

 

「お、大金星か。他のチームと混じっても勝ちは勝ちだぜ。おまえさんも、故郷の騎士さんたちもやるねえ。……ま、大活躍できなかったのが残念だったな」

 

「バナナなら一体は倒せたぜ。何体もいたうちの一体だがな。そんな感じで俺は路銀を稼いで武者修行の旅をしてた。冒険者とか武者より、傭兵の方が案外近いかもな」

 

「へえ。つっても、俺も大したもんなんだぜ。聞いてくれよ、お前みたいな面白い奴を相手にしてたわけじゃねえけどな。ああ、あの時のことは何度でも思い出す。……俺は魔虎を狩ったことがある」

 

 実はこの槍使い、気遣いもできる。”傭兵”というエノテラに触れそうな話題はさっさと流した。

 

「虎、ね。俺の知ってる奴はただの肉食動物だが」

 

「ああ、大したことねえな……魔物じゃあなかったら、の話だけどな」

 

「へえ、魔物……か。どれだけのものだ?」

 

「そりゃあ、体躯は家一軒を軽く超える。その爪は鋼鉄でさえも引き裂き――いくつもの山を一夜で駆け抜け、その咆哮は人の魂すらも砕いちまう、それはもう恐ろしい魔物なのさ」

 

「強いか」

 

 あなたは大分誇張が入っているな、と思った。口に出すほど野暮ではないが。

 

「その魔虎はいくつもの村を壊滅させた末に賞金首になった――」

 

「……? 賞金首……」

 

「ん、知らねえか。そういえば冒険者歴は少なかったか。人の脅威になるような魔物は賞金がかけられるんだよ。ま、そうなるためには何百人も殺す必要があるけどな」

 

「へえ、興味深いな。ああ、悪い。話の腰を折ってしまった。続きを」

 

「おうよ……その前に、姉ちゃんエール二つだ! 酒がなきゃ面白くねえ」

 

「そうだな。つい、空にしてしまった」

 

「よっし、今日は飲むぜ。そして語り明かすぜ、俺たちの冒険譚を!」

 

「そうこなくちゃ、な」

 

 前に置かれたエールを再度の乾杯をしてから口にもっていく。とても、楽しい時間になりそうだ。

 

 




 小ネタ。槍使いはパーティを組んでいます。げっそりした団長を心配して声をかけてくれたので、仲間を呼ぶのもどうかと思って呼びませんでした。しかも女性が居たので、
彼女が来ていたらエノテラの誘拐イベントが再発していました。
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