束縛系花騎士と転生団長の異世界転移   作:Red_stone

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第14話 強襲

 

 あなたはエノテラから赫征剣レーヴァテインについて詳しく説明を受けた。薬莢は100発分買って来たらしいが、魔力を装填する必要があるのだと言う。翌日に影響しない範囲でエノテラなら6、あなたなら精魂尽き果てるまで込めて1発だ。1発使って、今の手持ちは5発。

 

 ――なら、2発は試し撃ちして問題ないな。

 

 あなたは年甲斐もなくわくわくしていた。エノテラは楽しそうにあなたの後をついてくる。これまで続いてきた日常が未来も続いていくと無邪気に信じているのは、どこを見渡しても”同じ”。周辺を見渡すと住人が、生き生きとした表情で店閉まいを始めていた。

 

 けれど、その日常は簡単に打ち砕かれた。

 

 鐘の音がする。遠くから怒声が聞こえてきた。周囲にいる人間たちは「なんなんだ迷惑だ」と、うさるげに音がした方向を睨んでいる。

 

 ――エノテラ

 

「ええ。お仕事ですね」

 

 だが、そんなある意味のんきな周囲とは裏腹に、あなたたち二人は完全に臨戦態勢へ入っていた。このねばついた空気は害虫が街に攻めてきたときと同じだった。あなたたち二人は花騎士たちの中でもトップクラスにそういうのに鼻が利く人材だ。

 

 ――ショートカットで向かう。準備は?

 

「いつでも戦えます。団長こそ」

 

 ――最低限は持ってきた。だが、群れを対処するには衛兵の力を借りるしかないな。

 

「いつもとは勝手が違うようですけど?」

 

 ――そこは現場を確認するしかないな。それに、敵次第でも、この街にはまともな門がある。それで時間を稼げる……といいな。

 

「出たとこ勝負。とはいえ、気楽にやりましょう。街を守らなくてはいけない義務なんてありませんから」

 

 ――そうだな。流れ者に責任がどうのを言われても聞き流すくらいしかできない。

 

「流れ者は流れ者らしく、好き勝手に動いて後で首の分だけ代金をいただきます」

 

 ――なら、さっさと行くぞ!

 

 あなたとエノテラは跳んだ。馬鹿正直に門まで向かうと時間がかかる。裏道も知らないあなたたちは大通りを行くしかないが、この異常事態では足止めを喰らう。ゆえにこそ、屋根伝いに走って跳んで、ショートカットする。

 

 1分もかからずに現場に到着した。

 

「おう、団長! お前も来たか」

 

 そこには槍使いとその仲間たちも居た。5人のチーム、一単位としては最適な数だ。二人でやっているのは、転生者と言う厄介な事情を抱えているせいでいまいち他人を信用しきれないためであり、本音では人数は増やしたかった。

 

 さらに余談だが、あなたの個人名は団長だと思われているらしい。特にチームでもなんでもない男に団長と呼ばれるのは変な気がする。

 

 ――カイ、君も。

 

「魔物どもが襲って来たらしい。だが、門を開けちゃくれねえんだよなコイツら」

 

 やれやれと肩をすくめた彼に怒鳴り声が飛んでくる。

 

「当然だ! 冒険者など信用できるか。どうせ逃げ出すに決まっとる!」

 

 偉そうな男が居た。そいつは浴衣のような服を着て、ナイトキャップを被って目をこすっていた。まだ夜も早いのに寝ていたようだ。周囲を威圧するように睥睨している。

 

 ――砲兵はどこだ? 弓は? 作戦はあるのか。

 

 団長だったあなたはそういう奴を見たことがある。害虫の襲撃を喰らったところ街に居合わせるなどざらにあった。そうして様々な指揮官を見てきた。花騎士が指揮官を兼任していて、防衛戦のイロハを知らないからこっちに指揮権を渡された場合さえあった。

 

 そして、一つ分かったことがある。防衛線など、花騎士が害虫を殲滅するまで砲と弓で牽制し続けるだけのお仕事だ。まあ、もっとマシなやり方ならいくらでもあるのだろうが、戦術を実行できるだけでその兵隊は高レベルだ。それを望むのは高望みに過ぎる。

 

「……よそ者に教えられることなどあるか!」

 

「あら、これはダメですね。団長」

 

 エノテラがざっくり言ってしまった。一瞬、視線が泳いだ――この反応は知らないと言うことだ。そして、指揮官がこの有様なら……まともに使えるような砲は残っていない。どれだけ凡愚だろうと、残っているなら知っているものだ。弓ならあるいは、と思って見回したが弓を装備している兵はいない。

 

「さて、どうしましょうか」

 

 エノテラはさっさとこの指揮官を切った。まともに相手するだけ無駄である。後で報酬をもらえないかもしれないと心配はあるが、それはあとでどう分取るかを考える。とにかく、今は魔物討伐が先決だ。

 

 ――カイ、知り合いとかは居たりするか?

 

「悪いな、そいつらは今留守だ」

 

 ――なら、首狩り戦術しかないな。こっちで強い奴を潰す。他は……まあ、門が破られないうちに片付けられるのを祈るか。兵も、雑魚なら倒せなくもないだろう。

 

「了解だ。――気合い入れて行くとするぜ」

 

 開かない門の上に全員で跳び乗った。全員が敵を己の目で視認した。しかし敵の数が予想以上に多いので、その場で作戦会議を始める。

 

「目に見える範囲で――200は居ますか」

 

 それも、どう見ても敵兵たちは雑魚では収まる範疇にない。隊列を組んだリザードマン、そして奥には貴族風の服を着た男。どう考えてもアレが指揮官だ。そして、見た感想で言えばここの兵では1対1も厳しい有様である。

 

「マズイな。奴らが運んでいるのは攻城兵器だ」

 

 カイが呟いた。車輪付きの台座に丸太をくくりつけただけの簡素な代物だが、門は何度も持たないだろう。アレをなんとかしなくてはならないだろうが……敵も馬鹿ではない。それを守るために攻城兵器を中心とした布陣を引いている。

 

「おし、団長。あっちは俺らで何とかする。向こうの指揮官は任せるぜ」

 

 ――いいのか?

 

「ま、そっちの方が適当だろ? ドラゴンスレイヤーのお二人さんよ」

 

 ――感謝する。

 

「いいってことよ。つか、強敵をお前らに押し付けたって見方もできるぜ」

 

「エノテラは数より質が好物です」

 

「ははっ! 嫁さんの言うことにゃ逆らえねえな。団長サンよ」

 

 ――まったくだ。

 

 笑みを浮かべ。

 

「「「行くぞォ!」」」

 

 全員、門から飛び降りて疾走を開始した。

 

 

 

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