束縛系花騎士と転生団長の異世界転移   作:Red_stone

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第3話 ギルド

 

 行商人の夫婦に幾ばくかの謝礼を貰って別れた。まず始めに冒険者の酒場へ行く。どうやら冒険者のギルドはあっても、よくあるゲームのRPGのようにシステマチックにやっているわけではないらしい。もう少し適当で、相場も言い値しだいのところがある。

 

 あなたは今後の生計を立てるために冒険者になりたかったが、逆にエノテラの方は敵を倒したくて冒険者になりたいらしい。

 結論は同じでも、中身は違う。あなたはゴブリンライダー相手がつまらなかったので、これから一狩り行くなどとエノテラが言い出すのではないかと戦々恐々としている。

 

「邪魔します」

 

 一直線としか言いようのないほどすっぱり街並を無視して酒場にたどり着いたエノテラ。一方、あなたは遅れないようにしながらも文明レベルを見定めていた。

 この街はなんちゃって中世ファンタジーと呼ぶに相応しいものだった。工芸品も食料もレベルが高い。氷菓子だって売っていた。これなら、生活の不安はなさそうだ。

 

 エノテラは当然のように扉をくぐる。

 

「さて、冒険者は魔物をぶち転がしてお金が貰える素晴らしい職業だと聞きました。受付はあなたが?」

 

 店の奥にはクマのような大男がどっしりと腰を据えて構えていた。客は他にニ、三人……あなたの正直な感想は「え。弱そう……」というものだった。ただ、店主の彼は別だ。おそらく引退した冒険者だろう。戦うとしたら、無傷で制圧するのは難しいかもしれない。

 

「ああ、魔物退治は冒険者の立派な仕事の一つだ。だがな、それ以外にも重要な仕事が――」

 

「いえ、そういうのいいんで。とっととお仕事ください」

 

 エノテラはずい、と掌を出した。傍若無人極まる態度。さすがに思うところがあったのか、客の一人がエノテラの方を掴もうと手を伸ばして。

 

 ――やめろ。

 

 とっさに止めてしまった。

 

「おや、団長が止めるとは思っていませんでした」

 

 ――まさか、背負ってるヤツを使う気だった?

 

「命までは取りませんよ」

 

 一安心した。エノテラは軽々と背負っているが、あれの中身は空洞じゃない。相応の重みがある、まあ……手加減はしただろうから、余計なお世話だったかもしれないが。とはいえ、騒ぎを起こすのは避けたい。

 

「……もめ事は他所でやれ」

 

 店主はため息をつきながら言った。

 

「ま、いい。冒険者なんてやりたがる奴は底辺だ。……住民に迷惑かけねえなら、そんなに固えことは言わねえよ」

 

「だから、そう言うのいいので。とっとと依頼をください」

 

 エノテラはひたすらにマイペースだった。

 

「お前なあ。本来なら、色々と手続きが……まあ、いいか。ほれ、行ってこい。冒険者証とかの手続きはこっちで進めておく」

 

 ――よいのですか?

 

 思わずあなたは割り込んだ。この世界でのやり取りはルーズに過ぎた。騎士団には縛りがあるし、現代でも縛りがあった。契約と言うものをまるで軽視している。

 

「構わねえよ。どうせ、そいつを相手にしたくらいじゃ死なねえだろ。危ないと思ったら帰って来いよ」

 

「おや、優しいですね。そこらへんは自己責任でしょうに」

 

「それでも、俺が送り出した奴が帰ってこなかったら後味が悪いんだよ。いいからさっさと行っちまえよ。どうせ、あんたらなら今日中に戻ってこれるだろ」

 

「一つ、質問しても?」

 

「ああ、いいぜ」

 

「ここに良いワインと美味しいつまみは置いてありますか?」

 

「……いいのを用意してやるから夜には帰ってこい」

 

「ありがとうございます。これで心置きなく戦いに行けます」

 

 さっさと踵を返してしまった。あなたは、これで手続きとか大丈夫なんだろうか、と心配しつつエノテラについていく。依頼書を見る。

 

 ・依頼:ゴブリンの討伐

  報酬:銀貨2枚

  内容:街の外、東にある山に居付いたゴブリンたちを討伐してほしい。

 

 お相手は、なんとまたもやゴブリンだった。とはいえ、人体実験ならぬ魔物実験をしたあれとは違う。きちんと徒党を組み、洞窟の中に居を構えている。難易度は桁違いと見ていい。

 

「場所は……近いですね。徒歩10分と言ったところですか」

 

 ――ゆっくり歩いて行こう。地形を把握したい。

 

 そう言ったあなたの感覚はすでに狂っていた。指定された箇所は、直線距離で馬車を走らせれば20分といったところだ。しかも山の中であるため、更に歩きにくいのに。

 

 20分で着いた。

 

「あの洞窟ですかね」

 

 ――そうだろう。

 

 指定された洞窟の反対側。木に登って入り口を監視する。多少の打ち合わせはしたが、ほとんど議論らしい議論もせずにこのカタチに収まった。とりあえず突っ込んで何とかしようなどと無謀な考えは二人にはない。

 

 慎重に過ぎるし、実際に酒場の主はそれをやっても問題ないと判断したからこの依頼を出した。

 

 だから、このエピソードは獅子はうさぎを狩るにも全力を出すと言うよりも、二人の相性の良さを示すエピソード。この二人の戦略思想は似通っている。

 

「こっちは5匹見つけました」

 

 ――俺は3匹。

 

 どうやらあなたは負けてしまったようだ。これで夜は一杯奢ることになってしまった。

 

「では、手筈通りに」

 

 頷いて、音もなく行動を開始した。

 

 一匹の喉元を剣で貫く。地面に寝かせ、改めて心臓を貫く。完全に絶命したのを確認し、捨て置く。魔物の死骸は消えないらしい……が、ゴブリンなんぞを喰うほど人間は切羽詰まってもいない。

 

 この死体は、このままで問題ない。獣か虫が喰らうだろう。

 

 二匹、三匹、四匹。同じ手口で殺した。わざわざ手段を変える必要性など感じない。効率の良いやり方で、音も立てずに始末すればいい。巣を殲滅する、遠くに出てたところで壊滅した後で途方に暮れるのみなら捨て置けばいい。

 

「おや、こっちでゃエノテラの負けですね。少し悔しいです……しくしく」

 

 ――その擬音は悲しいではなかろうか?

 

「まあ、どっちでもいいです。さっさと行きますよ」

 

 ――了解。

 

 洞窟に足を踏み入れる。

 もちろん、事前に洞窟の出入り口に鳴子を仕掛けてある。自然のものを適当に使っただけだから効果には期待できないが、ゴブリン程度なら十分だろう。増援も逃亡も、敵に知られたなら全滅するだけ。

 

「……ギ!? ギギ!」

 

 洞窟の中にいるゴブリンに見つかった。さすがに洞窟の中では特殊な装備でもないと足音は殺せない。

 そして、洞窟の中は薄暗い。注意していればぼんやりと見える程度。こんな環境、素人冒険者には危なっかしくて任せられやしない。けれど。

 

「ゴブリン、発見です」

 

 エノテラが走る。背負うのは十字架、背の丈ほどもあるそれはただでさえ振り回すには過ぎた代物。そして、ここは洞窟……凸凹に引っ掛けずに振るうには物理的に不可能のはずだった。

 

「っふ!」

 

 だが、彼女はそんな条理など覆す。”壁ごと削って”ゴブリンを薙いだ。真っ二つ、どころか爆撃にでも晒されたかのようにはじけ飛ぶ。心が弱い者ならトラウマになっても仕方ない。

 

 ――エノテラ。少し下がって。

 

 拾った石を投げた。それは洞窟の奥に向かって飛んでいく。異世界転移などしてしまった状況下では消耗品を使う気にはなれない。それに、どこにでもある小石は中々便利なのだ。

 

「ギギ!」

 

 丁度ゴブリンの頭に当たったみたいで声を立てた。どうやらそいつは怒ったらしく、足音荒く迫ってくる。

 

「……どうぞ」

 

 目配せしたところ、獲物を譲ってもらえたから小石で撃ち抜いて倒した。思うのは。

 

「しかし、弱いですね。……楽勝は良くありません。仕事がなくなります」

 

 ――いや、これは初心者の登竜門のようなものだろう。新人を害虫と戦わせて、実戦に出していいか確認するような。

 

「なるほど。そういう見方もありますね。では、これほど街に近い場所に魔物が居るのも残しておいたからとか?」

 

 ――それは恐らくないと思う。そこまで計画的にやるなら、俺たちのように騎士団として組織しているだろう。単に、丁度良かっただけだと思う。

 

「ふむ。そういうものですか。騎士団のことは傭兵出身なのでそこまで知らないのですよ。いえ、個人的に知り合った人ならいますが、システムはよく知らないもので」

 

 ――エノテラみたいに最初から戦える子は騎士団の福祉厚生を目当てに入ってくると聞いたことあるけど。

 

「エノテラは箔がついたら、とっととバックレる予定でしたので」

 

 ――まさか、こんなことになるなんて?

 

「はい。敵が弱くて悲しいです……しくしく。……しくしく」

 

 ――まあ、序盤の敵は弱いものと決まっている。特に、人里の近くの敵は。あとで、ドラゴンでもいるか聞いてみよう。

 

「ドラゴン……! 素敵な響きです」

 

 ちなみに、ここまでで20匹のゴブリンを始末している。魔力で作った武器の複製と、小石。油断している、と言うわけではない。ゴブリンを評価するには順当、自然体で”それ以外”を警戒している。

 

 ――ドラゴンが襲ってくるかもしれない。

 

 ――地面が割れるかもしれない。

 

 まあ、ドラゴンは第三勢力と言い換えてもいいだろう。獲物以外の何かの介入は十分に警戒している。二人とも新人と言う枠組みではあっても、すでに熟練の域に入っている。だから、やはり警戒する必要性すらなかった。

 

 そして、そんな二人が警戒していたイレギュラーがこんな初心者の登竜門で起るはずもなく、無事に依頼を果たして街に凱旋するのだった。

 

 そして、酒場の主はこう言うのだ。

 

「依頼、ご苦労さん。良い酒を、って言ってたからな。家で一番いいものを用意しておいたぜ」

 

 予約席にはワインが何本かとグラスが二つ置いてあった。

 

 

 




お金に関して、詳しいことは設定しません。すでに装備は揃っている状態なので、この二人は散財に使います(必要なら貯蓄もできる)。
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