この日、ビアンコは所謂「くだらない」依頼を受けていた。
幹部の一人が自分の資金、と言っても恐らくだが組織には隠して集めた「隠し財産」を盗まれたので取り戻し、盗んだ奴を「確保」する…そんな任務であった。
アビディータ関連の依頼は警察経由で来るのだが、組織関連の仕事はパソコンから電子メールで来る。ビアンコはその電子メールを読むと準備を始めた。
電子メールを見てから数分後、別の電子メールが来ていた。送信者はグイード・ミスタであった。
そこには短い文で「新しいメンバーを紹介する。ケイティ・ライドっていうレストランに来い。」と書かれていた。
「珍しいな。ミスタさんが直に連絡を寄越すなんて。」
そうビアンコが呟くと隠し財産を隠した周辺の地図などを片すと、レストランへ向かって行った。
ケイティ・ライド
ネアポリス近くの観光客よりは地元の人間の方が多く利用するやや大きめのレストランで、内部はやや薄暗いが店内を穏やかな音楽が流れている。
ミスタはそんなレストランの一つのテーブルに座っていた。テーブルの傍には彼以外に三人の男が座っており、そばには二人の見張りが立っている。
一人の男はミスタと座っている二人の顔色をチラチラと見ており、その様はサーカスの調教師の様に、特に座っている二人を注意深く見ていた。
さてその二人だが……
一人はやや細めの体格の男、名前はポローと言い、目に付く金髪で顔付きは常に口角が上がっており、幹部の前だと言うのに使用済みの紙ナプキンを少し千切り何かを弄っている。
もう1人は冷蔵庫のような大柄の体格にイカ墨の様に真っ黒な髪、そして鷹の様に鋭い目をしているヴィーノという男だったそしてもう数十分も立つのに一言も言葉を発していない。
ミスタはそんな二人から片時も目を離さなかった。何故ならこの二人、つい最近まで封印されていたのだからだ。
(畜生……こいつらから『目』が離せねえ……)
今持ってきている銃は卸し立てでどうにも二人の前では持ち前の射撃力が100%発揮できるか自身がどうしても持てなかった。
(報告書を読んで思わずブルッちまってる。さっさと忘れちまわねえとな。)
ミスタが貰った二人の行動に関する報告書は一度ジョルノ・ジョバァーナの目にも留まり、かつての激戦を繰り広げた二人ですらも身震いするものであった。
かつてパッショーネと争った対立組織があった。抗争が始まってすぐに組織は瓦解寸前だったが、組織のボスを含め側近連中はまだまだ生存していた。
当時二人は情報操作チームに所属しており、二人の任務はその組織のボスや側近連中の居場所を掴み、組織に報告する事であった。
だが当時から情報操作チームきっての優秀な人材と言われた二人は組織のボスを捕らえる事に成功した。
すぐにパッショーネに報告するとすぐに返答が来た。内容は「側近連中の居場所を吐かせる事。」
その後しばらく連絡を絶った二人がチームに側近連中の居場所を届けに来たのはわずか三日後であった。二人と共に連れられて来た組織のボスの姿に情報チームは思わず絶句する。
恰幅の良かった体格は枯れ枝の様にガリガリになっており、髪の毛は赤黒くガビガビになっており、歯はボロボロ、舌はズタズタになっており、すっかり廃人と化していた。
何が起こったのか。チームの連中はすぐさま拷問に使った郊外の廃墟のに向かい、残ったメンバーは組織のボスの脳内の記憶を吸い出した。
その記憶を見たメンバーは思わず卒倒し、拷問に使われた廃墟に向かったメンバーも憔悴しきった顔で帰ってきた。
吸い出された記憶によると二人は捕らえたボスと共にその家族、妻と娘と息子を捕らえていた。
やがて組織の命令を受け取ると、二人はまず娘と息子をボスと妻の目の前に引きずり出した。
ここまで報告書を手に読んでいたミスタであったが、手から嫌な汗が滲んでいた。どうしても次のページに進みたくない。指が動かない。
前にこの報告書を読んだ者もミスタと同じ様に感じたようで報告書がシワシワになっていた。だが意を決して指を動かし、次のページをめくった。