「おいおい、何か始まっちまったみたいだぜ。どうするゥ~?」
遊園地に連れて行ってもらった子供の様に笑みを浮かべたポローにビアンコは見向きもせずに問いかけた。
「金庫の『金属片』があったアジトに残っていた『靴底』はアイツので間違いないか?」
「ああ、俺のスタンドも反応している。カカシ見てェな奴が今回が獲物(ターゲット)だ。だがあのスタンド使いのガキはどうする?」
イッツマイライフは口からボタボタと涎を垂らしながらサイケデリックな襟巻きを広げて、原始的な目でカカシの様な男を見ている。
一方のビアンコは無様に地面に転がりながら虚勢を張るオーロを見る。ターゲットから物取りでもしたのであろうか。チラリと見えたがあのガキもスタンド使いだ。組織の現状を考えると、とっ捕まえて色々聞き出すのが上策だろう。
「俺があのノッポ野郎とガキを引き離す。俺はガキを追う。お前らコンビであのノッポを仕留めろ。いいか?」
「了解。」とポローは返事をし、ヴィーノは頷きながらランアウェイを出そうとする。だがビアンコを手で制す。
「待て。まず俺が先に仕掛ける。お前はアイツを背後から攻撃しろ。あいつのスタンドの正体が分からん内は近距離パワー型のお前のスタンドを無闇にぶつける訳のは愚作だ。」
ヴィーノは頷き、鷹のような目でノッポ野郎を見る。ポローはこの光景を見て少し驚いた。酷く受動的な相棒は普段は自分以外の人間の指示は動きはしない。その彼がここまで能動的に動くのだ。相棒もこの男に何かを感じたのだろう。中々すごいじゃあないかと思った。
「行くぞ。」そう言いながらビアンコのスタンド、メタルマスターは近くの建物のコンクリートや骨組みから金属を抽出する。
メシッ!メシッメシッ!メシッメシッ
音を立てながらビアンコの足元は削れ始め、彼の周囲を長さ30センチほどのミサイルの様な鉄のスパイクが出現した。
「あのガキとノッポの間にコレを撃ち込む。恐らくガキはノッポとは正反対に逃げる。俺はガキを追う。お前ら二人でアイツを仕留めろ。」
「了解…え?」
ビアンコの発言にポローは思わずを二度見する。命令内容にではない。今まで自分達を「危険だ」と言い続けた周りとは違い、『完全に自分達に任せた』事に驚いたのだ。
「どうした?久し振りの戦闘で勘を取り戻してもらわないと困るからな。」
「それはいいけどホントに『俺ら』に任せてもいいのか?もし俺達が敵をブッ殺した後で逃げちまったらどうするつもりだ?」
その問い掛けにビアンコは氷の様に冷たく、不気味な目でポローを見た。
「その時は世界中どこにいようがどんな手段でも使ってでも追い詰めて息の根を止めてやる。」
今まで人に対して恐怖など抱かなかったポローも思わず身震いする。その言葉に嘘偽りは見つけ出せない。
(どうやら『マジ』でやるつもりだ。やるといったらやる『覚悟』がある。)
一種の『スゴ味』とも言えるものを感じたポローはいつもの笑みを浮かべる。
「嘘だよウソ。ノビノビと殺しが出来るなんて良いチームだ。」
「そうか。」とビアンコが言ったのを皮切りに二人との間を鉄のスパイクは狙う。そして、
ドバッ!ドバッ!ドバッ!
発射された複数のスパイクはノッポとオーロとの間にセンターラインの様に突き刺さる。オーロはその隙を見逃さずノッポとは正反対の方向へ逃走した。
「やれッ!!」そう言うとビアンコは猟犬の様に屋上を駆け出し、逃げたオーロを追うッ!!一方、残された二人はヴィーノが屋上から飛び降り、降下しながらランナウェイの鋭い右ストレートをノッポに向けて振り下ろす。
「ちっ、新手…いや『俺達』の『敵』か……棚からボタモチ、運がいいッ!!」
そう言うとノッポの男が両目が×印、異様なほど大きく裂けた口、全身筋骨隆々の人型スタンドが出現する。
その拳がランナウェイの拳をガードする。激しいスタンドがぶつかり合う音が響くがスタンド使い以外は聞えない。
ノッポのスタンドはガードした腕からランナウェイの手首を掴もうとする。普通ならば素早く手首を引くかもしくは左腕で殴るなどの掴まれるのを阻止するであろう。
だがヴィーノは違ったッ!降下中の彼は左腕で壁を掴むと逆にノッポのスタンドの手首をガッシリと掴んだッ!!そして右腕の反撃を受けない内に自分が掴んだ壁にノッポを投げつけたッ!!
ノッポはスタンドごと壁に叩きつけられた。この路地裏の両建物はどうやら廃墟で壁はボロボロと崩れる。ヴィーノはすぐさま間合いを取る。
そしてすぐ上からイッツマイライフが壁を伝って降りてくる。その喉からは陰惨ではあるがポローの声が響く。
「弱点を探ろうぜ。しばらく気絶しているだろう。その隙にコイツの血液から『能力』を探り当てる。少し下がってろ。」
その時、ガレキから青白い光が放たれた。正確には元は壁だった破片一つ一つから球状の光がガレキ内部に入って行く。
「な、何をしてくる…?」二人はガレキの中に埋まった敵の次の一手を警戒していた。