未だに書くコツを掴めないので、親切な読者様、どうか何かコツがあるなら感想欄に書いて欲しいです。ログインなしでも投稿できますので(土下座)
さくさく。さくさくさく。
スノーブーツが雪を踏みしめる音と、青年の息遣いだけが聞こえるここは極寒の地、ヘブラ山脈。今日は大雪だ。
青年がこの極寒地帯または死地たるこの山に来た理由は、馬宿にたまに置かれているおなじみの本『ウワサのミツバちゃん』にて記されていたとある情報だった。
「皆! 花よりウワサが大好きな、ミツバちゃんやで!
今回のウワサはコレ!
『勇者が使った特別なオカリナ』
ウチの知り合いのハイラル王家の元女中のおばあちゃんから聞いた話やねんけどな、時の勇者って呼ばれていた昔の勇者様が王家から授けられたっちゅうオカリナがヘブラ山脈のどこかに隠されてるらしいっちゅーねん。
王家のオカリナならハイラル城にありそうなもんやけど、なんでもラムダっていう大盗賊に盗まれて、そいつが隠したトコロがヘブラ山脈だって最近分かったんやって。
そんでな、王家のそのオカリナってのはただのオカリナやなくて、吹いた曲によって雨を降らせたり時を越えられるらしいんや!
もしもホントなんなら、昔の黒歴史を変えられる……でも命懸けなきゃならないから、ウチは諦めるけどな。
でも命懸ける覚悟があるなら、探してみる価値はアリ!
ミツバオススメ度 ★★★☆☆」
先代勇者の使っていたオカリナ……それに興味を持った青年、リンクはリトの頭・胴装備+スノーブーツという、雪山本気装備で挑んでいた。
色んな場所を、リンクはシーカーストーンの機能・マグネキャッチを常時発動で探索していた。洞穴は全て調べた、後は雪に埋もれているかもしれない宝箱にあるかもしれないからだった。ちなみに宝箱オクタ探知も兼ねている。ハートがまだ七個の頃に、迂闊にも気づかず吹っ飛ばされ、落下死寸前及び登山の甲斐を見事に無駄にさせたあの宝箱もどきだけは絶対に許さない。
そして捜索を続けること、丸一日。そして夜、リンクは吹雪の止んだ雪山の空を見上げていた。
「おー綺麗」
いっそ綺麗と思えるほどの鮮烈な赤を放つ満月に見惚れる。
一応、いいものではないけれど、それはいつもの満月とは違う意味で美麗だった。
崖っぷちに腰掛けて、紅い月を眺める。
ひた、と冷たい何かがリンクの両頬を挟むように触れてきた。
「そうだな。俺の主に力を与えてくれる、この血のように赤い月は、ただの月よりもずうっと綺麗だ」
「そうか? ただの月も、趣が違っていいと思うけど。なんとなく、心が落ち着くし。ま、大雪だったら最悪だけど」
「それは俺も同意する」
……あまりにも自然な会話で、リンクは異変に気づくのに遅れた。
はっと上を向くと、リンクを見下ろす、異様な姿をした者の顔が至近距離にあった。
だが、その者の容姿には見覚えがある。
「……ダークリンク」
「クク、正解。息吹の勇者、お前に俺からの餞別をやろう。手を出せ」
魔物屋キルトンから買えるダークリンク装備と、まるでそっくりな姿だった。
名前を呼ばれたダークリンクはにやりと笑い、リンクから手を離し懐に手を入れる。
リンクは、言われるがままに手を出す。
「息吹の勇者は、もう少し危機感を覚えるべきだな」
「君は金色ライネルよりも強いのか?」
「体力は負けてるが、実力自体は今のお前と互角とだけ、言っておこう」
「ふーん」
「力量だけで相手を判断しない方がいいぞ。ほら、これが餞別だ」
ダークリンクがリンクに手渡しする。それは、青色のオカリナだった。
「これって……」
「お前の探し物、時のオカリナだ。まずは俺が手本を見せてやる」
ダークリンクは一緒に取り出していた木のオカリナを咥えた。
滑らかな指の動きで穴を塞いで音程を変えながら、何かの歌を奏でる。
十秒もない、短い歌を吹き終わり、ダークリンクはオカリナから口を離し、懐に入れなおした。
「簡単だろ? ほら、吹いてみろ」
「指使い凄すぎて出来ない……」
「……仕方ない奴だな。なら、お前は吹くだけでいい」
「え?」
「音程は俺がやる。吹くことくらいなら素人のお前でも出来るだろ?」
ダークリンクがリンクの後ろに回り、時のオカリナをリンクの手から奪い取ると、強引にリンクの口につっこんだ。
「うが!?」
「いくぞ、息吹の勇者」
ダークリンクの指が動き始めるのを見てはっとしたリンクは、言うとおりに息を吹き込み始める。
悪しき魔力のカケラが舞う。空が紅く染まっていく。怖いくらいに静かな雪山の頂上から、二人の奏でるオカリナの音色が響く。
吹き終わった途端、リンクの視界が赤に染まる。意識が一気に遠のいていく。
意識が途切れる寸前、耳元でダークリンクの嘲りを含んだ声が聞こえた。
「今お前が吹いたのは『時の歌』だ。■■■年前に戻り何も分からないまま、ガノンドロフ様に滅されるんだな、息吹の勇者リンク」
ダークリンクは、リンクの腰からシーカーストーンを抜き取る。おもむろにシーカーストーンで口元を隠し、瞳を細めて倒れた彼を見下ろす。
「これさえなければ、お前は脅威にはなりえない。これでガノンドロフ様が下さった任務は完遂できた。さあ、今のうちにあの御方の元に行き、邪魔な姫巫女を消さないと……」
「ソノ必要ハナイ」
「……え?」
ダークリンクの背後から、大きな影が差す。そのあまりにも膨大なプレッシャーに、ダークリンクは凍りつく。
背後に立つそれが何かなんて、言うまでもないだろう。だが、奴が居るのは雪原方面の筈だ。なぜ足場の狭い頂上に居る。
「おまえ、どうやってここに」
「オ前ハモウ用済ミダ。散レ」
勇者の影なる者が振り返った時には、既に獣神の大剣が叩きつけられる一秒前だった。