わんぱく全盲お姫様   作:アサルトゲーマー

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思い付きですがエモで殺す気で書きました


ディープブルー

 とある世界のとある大陸。

 そこには貧しい、しかし平和な小国がありました。

 

 建国99年の記念すべき日、国王と王妃の間に娘が産まれました。これはめでたいとお城中大盛り上がり。

 100年目の子として「ユズ(yüz)」と名付けられ、それはそれは大事に育てられました。

 

 しかしひとつ問題が。なんとその娘は目に光を映すことができなかったのです。

 これには城の全員が驚き、そしてなんとかできないかと色々と手を尽くしました。

 

「ユズ様。これは杖です。こう、床をコンコンと叩いて、足元に何もないのを確認しながら歩くのです」

 

 それはもう色々と。

 

「魔力は音と同じように、壁にぶつかったとき、共鳴や反射が起こります。今日は魔力の共鳴について勉強しましょう」

 

 ありえないほど。

 

「海の底、または洞窟のような闇の中に暮らす獣は山ほど存在します。今日は姫様に、彼奴らが使うソナーという技術をお教えしますぞ」

 

 手を尽くしたのです…。

 

 ひとつ、誤算があったとするならば。

 それはユズ姫が魔法大臣を凌ぐほど才気が豊かで、誰よりも耳が良かった事でしょう。

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「姫様ー!ユズ姫様ー!今日こそはお勉強をしてもらいますぞ!」

 

 しわくちゃの顔にやせぎすの腕。しかし姿勢はピンとしている老人が城の廊下をドカドカと歩きます。

 彼は魔法大臣マジィ・パネエ。マ爺やパネエ爺の愛称で呼ばれる彼はユズ姫の教育係。しかし肝心の姫が忽然と姿を消しました。

 この手の物語にありがちな誘拐でしょうか?いいえ、違います。

 

「あんのワンパク娘!今日という今日は許しませんぞ!」

 

 そう、彼女は脱走のプロになってしまっていたのです。

 目が見えないからと言ってアレコレと教え、甘やかした結果。ユズ姫は手の付けられないほどワンパクに育ってしまいました。

 勉強から抜け出すのは当たり前。パネエ爺の食事からハムを盗む、使用人に混ざって中庭でガーデニングする、下町に遊びに行く、などなど……。余罪数十件のこまったちゃんです。

 

 なぜこんなにもアクティブに動けるのか?それは彼女の才能に他なりません。

 一度杖を打ち鳴らせば周囲の人間の場所を察知し、二度打ち鳴らせば何をしているのかも理解できます。

 もちろん音だけではありません。彼女からは常に魔力の波が発せられていて、その反響と共鳴から障害物の位置や形、強度までを明確にします。

 

 つまりユズ姫は天才でした。このような真似などパネエ爺でも到底できません。

 そして手が付けられなくなるのは当たり前だったのです。

 

「パネエ爺にも困ったものね…」

 

 コソコソと生垣を進む影。滑らかな銀髪に、瞳を閉じた、絵にかいたような美少女。彼女こそがこの小国の姫、ユズなのです。

 その彼女は身分を隠すようにボロのローブで身を(まと)い、時折杖で石畳を叩きながら歩いていきます。

 

 カツーン。カツーン。

 

 音が鳴るたびにメイドや使用人が振り向き『お姫様は相変わらずだなあ』と苦笑いをします。彼ら彼女らはユズ姫に対して甘々なのでした。

 

「ふふ、バレてないバレてない」

 

 杖を打ち鳴らしながら歩く人物などお城どころか、国全体からみてもたった一人。世間知らずなユズ姫はそのあたりに関して全くの無知なのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペート!遊びに来たわ!」

 

 ユズ姫がやってきたのは『サボり屋』ペートの仕事場。彼の仕事場は城壁の上にあり、ありもしない他国からの攻撃にそなえる監視員でした。

 監視するべきものが無い監視員。だからこそ景色ばかり見ている『サボり屋』なのです。

 ペートはユズ姫を一瞥すると、視線は再び外へ。「何の用で?」彼は静かに問いかけました。

 

「言ったじゃない。遊びに来たわ!」

 

 悪びれもせず彼女はペートに並び立つと、弱い風が髪を薙ぎました。

 銀糸の髪がキラキラと光ります。

 

「ここはいい場所ね。風も気持ちいいし、空気もおいしい」

「景色も良いですよ」

「もう!デリカシーがないんだから!私はこれでも全盲なのよ!」

「自分で『これでも』なんて言いますか」

 

 ペートはくすくすと笑います。それを見たユズ姫はぷうと頬を膨らませ、そっぽを向いてしまいました。

 

「ああ、すみません。姫様を見ているとどうしても信じられなくて」

「目が見えない事?」

「はい。足取りなんてパネエ様よりしっかりしていますからね」

「オジサンなんかには負けてられないからね!」

 

 フンス!と胸を張り鼻高々といった様子の彼女。得意げな表情に神秘的な美貌、風に靡く輝かしい銀髪も相まって、その姿はまるで一枚の絵画から抜け出して来たのかと思うほど。

 

「……ああ、本当に残念です。この景色が見られないなんて」

「はいはい、あなた毎回それ言うわよね……ちょっとくらい見られないかしら」

 

 彼女はそう言うと、うっすらと瞼を開きました。その美しい瞳が太陽の光に照らされます。

 

 ディープ・ブルー。

 

 どこまでも吸い込まれそうな深い青にペートは釘付けになります。そして、ポロリと言葉がこぼれました。

 

「本当に…綺麗です…」

「ペートの景色自慢はもう聞き飽きたわ」

 

 それを何と捉えたか。ユズ姫は適当に手をヒラヒラと振るのみでした。

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると飽きたのか、ユズ姫はどこかに行ってしまいました。ペートは相変わらず、外を見ています。

 そのまま雲を眺めることしばらく。今度はやせぎすの老人、魔法大臣パネエが現れました。

 

「ペート!ユズ姫様はこちらに来ませんでしたかな!?」

 

 息も絶え絶えにパネエ。それを一瞥すらせず、ペートは淡々と返します。

 

「来られましたよ。今日はいいものを見られました」

「感想は言わなくてもよろしい!それで、どちらへ!?」

「わかりません。気を抜いていたもので」

「ムギーーッ!どいつもこいつも姫様の味方ばかり!」

 

 そう吐き捨てるとパネエはドカドカと足音を鳴らしながら城壁から降りていきました。

 

「……本当に気が抜けていただけですよ」

 

 その独白は誰にも届かず、とはいきません。

 

「ありがとうペート。あなた、トボけるのが上手ね?」

 

 なんてったって、ユズ姫は耳が良いですからね。

 

 

 




続きは未定です
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