この何だか違うけれど素晴らしい世界に祝福を!   作:変態・of・変態

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 いやぁ、買っちゃいました。前々から気になってはいたので、ぜひ書きたいなーと思ったので、ヒッテンミツルギスターイル、オトリヨセーッ!しましたよ。


このプロローグに祝福を!

佐藤和真(さとうかずま)さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」

 

 見覚えのない空間で、俺は唐突にそんなことを告げられた。と言われても、未だに実感はない。というよりも分からない。空間には小さな事務机と椅子があり、俺に人生終了のお知らせを告げた相手はその椅子に座っていた。

 

 恐らく、女神とは目の前の人物のことを言うのだろう。綺麗な水色の髪に整ったなどという言葉でも完璧には表せられない顔立ち。出すぎずかといって足りなすぎずの完璧な躰は淡い、これもまた綺麗な紫の羽衣と呼ばれる服に包まれている。羽衣なんて初めて見た。こちらを見つめる目は髪と同じく美しい水色だ。

 

 ……さて、俺は何ゆえこんなところにいるのだろう?とりあえずここに来るまでの記憶を洗い出してみることにした。

 

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 そう、確か俺は今日発売の有名なネットゲームの初回限定版を手に入れるべく、いつもよりも早起きして行列に並んだのだ。途中で、「何あの人……引きこもり臭がぷんぷんするわ」とか、「あいつもまたネトゲ廃人なのだな……おぉ友よ」という声が聞こえたが、気にしなかった。そして、無事ゲームを手にいれ今ならゲッダンも踊れるというぐらいに気分が高揚していた時だった。最近問題の歩き携帯というやつをしながら歩いていた女の子。制服は、俺の高校のものと同じだった。

 

 信号が青になったことだけを確認し、ろくに安全確認もせず歩き出した彼女。そこにライトを輝かせた黒く大きな影が。俺はとっさに彼女を突き飛ばし……そして最初の記憶が思い出される。なるほど俺が死んだというのは本当らしい。……そういえば。

 

「……あの、一つ質問があるんですけど」

「どうぞ」

「……あの、俺が突き飛ばした子は無事ですか?」

 

 もし助けれていなかったら……不安は俺の心を包み込んでいく。

 

「あぁ、足を骨折する大怪我はしましたが生きてますよ」

 

 ……よかった……!どうやら、俺の犠牲は無駄なものではなかったようだ。

 

「まぁ、あなたが突き飛ばさなかったら、彼女そんな大怪我しなかったんだけどね」

 

 ……え?

 

「……え?」

 

 思考と言動が思わず一致してしまった。この子、何て言いました……?

 

「あのトラクターは彼女の目の前で止まったんです。トラクターだからそんな速度もでないし、そもそも青信号だし。つまり、あなたがやったことは下界で言う、『余計なお世話』というやつです……プークスクス!」

 

 ……なぜだろう、顔立ちが整っている故か、なんか笑われるとめちゃくちゃ腹が立つ。笑う顔が可愛いのが余計に怒りを煽る。無礼を承知だが殴りたい、この笑顔。……ところで、なんだか気になることを聞いた気が。

 

「トラクター……?今トラクターって言いました!?」

「そうですよ?というかさすがの彼女も大型トラックが近づいてきたらさすがに気づきますし逃げますよ」

 

 ……確か、トラクターって農耕用の機械だったか。

 

「じゃ、じゃあ、俺は、トラクターで耕されながら死んだと……?」

「いえ、あなたの死因はショック死ね。トラックに轢かれたと勘違いしてね……」

「……うっそだろ?」

「事実です。私、割りと長くこの仕事してるけれど、あなたみたいな死に方した人は初めてよ」

 

 ……そ、そんな……んな死に方したのかよ俺……?

 

「……ちなみにこれは蛇足だけれど……あなたはトラックと間違えたトラクターの恐怖にしめやかに失禁、失神。搬送先の病院に搬送され医師にも死因を笑われ、そのまま心臓麻痺でここに……」

「やめろぉーっ!聞きたくないっ!これ以上はやめてくれぇーっ!」

 

 俺は必死に耳を塞ぐが、椅子から立ち近づいてきた少女に手首を握られ緊急の耳栓を外される。そして少女はニヤニヤ笑みを浮かべ、俺の耳元に顔を近づけ……

 

「ついさっきご家族の方が来たけど……悲しみよりも先に死因を聞いたことでの笑いが来たみたいね」

「うわぁぁぁぁぁーっ!?」

 

 わざわざそう言ってくれました。……もうやだ。なんで俺がこんな目に遭うの……

 

「……さて、と。私のストレス発散はここまでにしておいてと。改めまして、はじめまして。佐藤和真さん。私の名はアクア。日本で死んだ若者を導く女神よ。あなたには、向かうべき二つの道があるわ。一つは、天国でのんびり暮らす道。もう一つは、今世の記憶を消し、再び嬰児……赤ちゃんからやり直す道」

 

 ……難しい選択肢が来た。

 

「……天国って、実在するんだな……」

「言っておくけれど、あなたたちの想像しているものからはかけ離れてるわよ。まず、睡眠欲、食欲、性欲がないでしょ?日本みたいな娯楽もないし……精々、そこにいる先人たちとお喋りするくらいかしら」

「……想像つくけど、赤ちゃんルートは?」

「今世の記憶の抹消……つまり、今のあなたの消滅ね」

「ですよねー……」

 

 さてどうしよう。天国ははっきり言ってなし。多分数日もしない内に気が狂う。かと言って今の俺の消滅……せめて、記憶があるならまだ魅力的ではあったのだが。そんな風にウンウン悩む俺に、アクアは笑みを浮かべた。何だろう。

 

「いやー、分かるわ。天国なんてところ、行きたくないでしょ?だからといって赤ん坊から……っていうのもちょっと……って感じでしょ?そ・こ・で!ちょっと……いや、あなたにとってはかなり、いい話があるのだけれど……」

 

 ……何だろう、このタイミングで持ち出してくるだなんて、胡散臭い話の予感しかしない。

 

「あなた、ゲームは好きでしょ?」

 

 その言葉から始まった説明は、こんな内容だった。

 

 この世界ではない世界、すなわち異世界に魔王が存在しており、そいつが指揮する魔王軍のせいで異世界は危機に陥っているらしい。その世界では、魔法がありモンスターがあり……という感じで、よくあるファンタジー物の世界らしい。

 

「で、魔王軍のせいで多くの人が死んでね……あんなところに戻ってたまるか!って、転生を拒否しちゃうのよ。このままじゃ、赤ちゃんも生まれず、人口は減る一方……ということで、若くして死んだ他世界の人物をその世界に送ろう!ということになってね」

 

 俗に言う移民政策というやつか。

 

「でも、それだと送った奴はまたすぐ死ぬんじゃないか?」

「ふふ……よくぞ聞いてくれたわ!ここからが本題よ。もちろん、すぐに死なれて出戻りされたら困るわ。だから、その異世界に何か一つ、とってもいいものを持っていける権利をあげるの。例えば凄まじい才能だったり。例えば神話に出てくる伝説の武器の数々だったり。送られた人はチートでウハウハ、送られた世界は即戦力が来てくれてウハウハのwin-winってやつよ」

 

 ふぅむ。悪くない話。どころか、ゲーム好きの俺からすればめちゃくちゃテンションが上がる話だ。

 

「……あ、質問なんですけど、言語ってどうなるんですか?まさか、異世界語は自力習得……!?」

「ないない。異世界に行くときに脳に負荷をかけて、きちんと言語をインストールするわ。文字が読めないなんてこともないわよ。書くのに関しては知らないけど。副作用で頭がパーになるかもだけど……まぁ、後は能力か装備を選ぶだけよ」

「……今、運が悪いと頭がパーになるって言ったか?」

「……言ってないわよ?」

「声が上ずってるぞ……」

 

 相手は女神だが、俺はタメ口だった。しょうがない、こいつを敬う気持ちが夜逃げしたのだから。あくまで気持ちが夜逃げしたのだ、俺は悪くねぇ。まぁ頭がパーになるかもの件だが、運のよさには自信がある。……まぁ、俺の死因とその後は不幸と言わざるを得んが。

 

 てなことを考えていると、アクアが俺にカタログを手渡してきた。

 

「さぁ、選びなさい。望めるはただ一つ。あなたに比類するものなき力を授けましょう。凄まじい魔法の才能、何者にも傷つけること叶わぬ盾、前者やその他の神器以外なら全てを切り刻んでしまえる剣。さぁ、どんなものでも一つだけ、異世界へ持っていける権利をあげましょう」

「その権利を無限にしたりは……」

「できるわけないでしょうバカズマさん?」

「あっはい……って誰がバカズマだ」

 

 まぁ、できるわけないだろうとは思っていたが。とりあえず渡されたカタログを適当に開いてみる。そこには、《神槍グングニル》、《聖盾イージス》、《魔剣ストームブリンガー》などの武具・防具、《超カリスマ》、《保有魔力超増加》、《ステータス神化》などの能力・才能系が載っていた。いや、能力系はよく分からないものもあるが、武具とか俺が知ってるのもあるし。うわ、《聖剣エクスカリバー》もあったぞ。

 

 うぅむ、俺のゲーマーの勘が真っ赤に燃える……違う違う、勝利を掴めと轟き叫ぶ!……違う!変な方に考えが流れていく……気を取り直して、俺のゲーマーの勘がこれらはいずれもチート級の力であると叫んでいる。どうしよう、魔法があるなら魔法使いたい。めっちゃ使いたい。なら、魔法を使う前提の能力にするか……?なら、《全属性魔法超強化》か、《魔法無効・吸収貫通》か……?

 

「ねぇ、まだ~?あなた、特別に運動とかうまい訳じゃないし、なに選んでも一緒よ。引きこもりのゲームオタクに期待なんてしてないから、早く適当に決めて旅立っちゃってよ~。ねぇ~は~や~く~は~や~く~」

「……オ、オタクじゃねーしっ……!それにゲーム買いに行くために度々外出してたから引きこもりでもないしっ……!」

 

 震え声で言い返すが、向こうは全く興味なさげに髪を弄りながら言った。

 

「はいはい認めますから早くして~。この後にも予定たっぷりなのよ私は」

 

 そう言いながらどっから持ってきたかスナック菓子をポリポリと……

 

 瞬間、俺はキレた。人の死因を笑ったり、自分が可愛いからと調子こいてるらしいな……?

 

「……えぇ、えぇ。決めてやりますとも」

「んー?決まったー?なら早く言ってー。手続きもしなきゃなんだから」

 

 あぁ、異世界に持っていける『もの』だ。カタログに書いてあるものだけって指定してないよな……?呪うなら、そこらへん細かく決めていなかった職場を呪うんだな……!

 

「……アクア、あんただ」

 

 そう言ってアクアを指差す。アクアはさっきと変わらず、のんびりした態度で告げる。

 

「ん、ならそこの魔方陣に乗って、中央から出ないようにして、ね……」

 

 言い切り、アクアは錆びたブリキのおもちゃみたいな挙動でこっちを見る。

 

「……はい?何ですって?」

 

 アクアが俺にそう聞くのと同時だった。

 

「佐藤和真様の要望は了承されました。では、アクア様のお仕事は我々で引き継いでおきますので」

 

 誰もいなかったはずのところに、羽の生えた女性がいた。アクアは女神らしいし、ならこの人は天使か?

 

「……えっ、ちょっ、まっ、えっ?」

 

 頭が情報渋滞を起こしているらしいアクアの足元と、俺の足元に青い魔方陣が浮かぶ。これが異世界へのテレポーターってやつか?

 

「Stop!Stop!ノーカウント!ノーカンよこんなの!女神を連れてくとか反則でしょ!?嘘だと言ってよ!ねぇ!?」

 

 涙目で慌てふためくアクア。なぜだろうか、さっきまで可愛さ半減だったのが初見の時くらい可愛くなった。あとストップがやたら流暢だな。泣きわめくアクアに天使さんは。

 

「行ってらっしゃいませアクア様。今回の件は仕事ですので、休暇は消費されません。後のことは我々にお任せを。無事魔王を倒された暁には迎えのものを送りますゆえ」

「いらない!無駄な保証はいいからこの事態を何とかしてよぉーっ!?私女神だから癒す力はあれど戦う力はないのよ!?そんな女神に魔王を討伐してこい!?嘘でしょ!?Please rearlly stop!(本当にやめてくださいお願いします!)

 

 だから何でそんなに英語流暢なんだよ。聞き取れなかったぞ。わんわん泣きながらすがるアクアを尻目に天使さんは俺に告げる。

 

「さて、佐藤和真さん。あなたをこれから異世界に送ります。魔王を討伐する勇者の一人として。もし、その世界で魔王を倒された暁には、神々から贈り物をしましょう」

「……贈り物?」

 

 はて、一体何だろうか。天使さんは微笑みを浮かべ。

 

「はい、贈り物です。魔王を討伐することは、すなわち世界を救うことと同義……そう、例えどんな願いでも。どんな願いでも一つだけ叶えて差しあげましょう」

「まじすかっ!?」

「本当です」

 

 つまり、異世界と日本を自由に行き来できるようにしたりとか!?ハーレムを築いて金持ちになってゲーム三昧の退廃的な生活とか!?

 

「その願いの権利を無限にしたりとか!?」

「……すみません、さすがにそれは可決されないかと」

「……さいですか」

 

 この時点でどんな願いも、は嘘になってるけど。まぁ、駄目か。

 

「待って!そういうこと言うのは私の仕事ぉ!」

 

 いきなり来た天使さんに仕事を奪われもっと涙目になるアクア。あぁ、いい。胸がすくような気持ちだ。どっかの大王様が「他人の不幸こそが最高の娯楽ZOY」と言っていたが、あながち間違いじゃないかも。今のアクアの姿を見ていると、こう、背筋がぞくぞくし、優越感が沸き上がる。

 

「なぁ今どんな気持ち?なぁ今どんな気持ち!?散々こけにした男に強制連行されちゃうだなんて!せっかく指定、いや指名したんだ!楽させてくださいよアクア様!」

「いやぁーっ!こんな男と一緒に異世界行きだなんていやぁーっ!」

 

 ははは、今は罵倒すら心地いいわ!

 

「さぁ、佐藤和真様、いえ、勇者よ!願わくば、あなたが多くの勇者の中から、魔王を打ち倒す者になることを祈っています。……さぁ、旅立ちなさい!」

「いやぁーっ!助けてぇーっ!仕事云々はもういいから助けてぇーっ!これからは心を入れ換えて頑張るからぁーっ!」

 

 厳かに天使さんが告げる。

 

「アクアァ……てめぇも異世界に道連れだ……!あと心を入れ換えるなら向こうに行ってからにしてくれ」

「いやぁーっ!鬼!悪魔!バカズマ!ゲスマ!カスマ!クズマ!誰でもいいから助けてぇぇぇぇぇーっ!」

 

 そして、俺は泣き叫ぶアクアと共に光に包まれた……!




 カズマにキョウジの台詞を言わせたいだけの人生だった……スヤァ……
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