空と地の境目   作:Maisie

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原作の本編に入れませんでした。
本当にすみません。こんな作者ですがこれからも読んでやってください。


第1話 嵐の前の静けさ

平和と自由を別にすることはできない。なぜなら、自由でなければ誰も平和でありえないからだ。

 

 

 

 

845年秋、シガンシナ区。

 

「・・・い、おい、メリナ!」

 

「!!」

 

耳元で叫ばれ、メリナと呼ばれた少女は弾かれたように顔を上げた。丁寧に結われた亜麻色のおさげが肩のところで揺れる。

 

「お前、俺の話聞いてたか?」

 

「…聞いてなかった」

 

「ったく、ぼーっとしてると置いてくぞ」

 

「ごめん、エレン」

 

エレンは別にいい、と素っ気なく答え、黙って歩く。少しして、エレンとミカサが話し始めた声を聞きながら、メリナは今しがた行ってきた自分の母親の墓を思い浮かべた。

 

 

「おばさん、ただいま」

 

「あら、おかえり。ミカサとエレンはどこだい?」

 

「もうすぐ来るよ」

 

私が言い終わらないうちに二人が入ってきた。後ろにはおじさんがいるから、私が入ったすぐ後に帰ってきたんだろう。

 

「おかえり、二人とも。あなたも今日は早かったのね」

 

「思ったよりも診察が早く済んだんだ」

 

「そう。エレン、ちゃんと手を洗いなさい。今から夕飯なんだから」

 

「はいはい」

 

「…エレン、『はい』は一回」

 

「わかってる。ミカサは細かいんだよ」

 

もはや日常と化したエレンとミカサのやり取りは何回聞いても面白い。今私が笑ってるのをエレンが見たら絶対怒るけど。

 

「メリナ、お前、笑ってんなよな!」

 

やっぱり。

 

「ごめんごめん、つい」

 

「つい、じゃねーよ」

 

文句を言いつつも手伝いをきちんとするのが彼の偉いところ、だと勝手に思っている。言ったら調子に乗るだろうから言わないけど。

五人で夕食を食べるのは毎日ではない。大体はおじさんが上の町に診療に行ったりしていて遅くなるからだ。

 

「そういえば、エレンたちはアリアの墓参りに行ってきたんだろう?今朝メリナから聞いたんだが」

 

「そうだよ」

 

おじさんがいきなり話題を変えたからびっくりした。

まあ、今までの話題が大切なものだったかと言われると別にそういうわけじゃない。果物を種ごと食べるとお腹からその木が生えるのかっていうものすごくくだらない内容だし(なんでその話題になったのかは覚えてないけれど)。

エレンの返事におじさんは頷く。

 

「メリナ」

 

「何?」

 

「アリアが亡くなる直前の記憶がないと言っていたね。もし思い出したら、私かカルラに言うんだよ」

 

「…うん」

 

記憶がないなんて嘘だ。ただ単に言われた言葉が衝撃的で考えたくなかっただけ。

でも真実は言っておくべきだし、今日寝る前に話してみよう。たぶんエレンとミカサは聞かない方がいい。

 

♦︎

 

エレンとミカサが寝た後、私は食卓の椅子に座った。おじさんとおばさんは私の向かいに座っている。

 

「メリナ、どういうことだ?」

 

「実は、母さんが亡くなる前の記憶があるの。最期の一言がどうしても思い出せないんだけど、それ以外はちゃんと覚えてる」

 

「そうだったの。…あなた、話す時が来たんじゃない?」

 

おばさんはそう言っておじさんの顔を見た後、私に微笑んだ。おじさんは一度頷くと、こちらを向く。そのどこか真剣な表情に、私は思わず居住まいを正した。

 

「君はアリアからどのくらい聞いているんだ?」

 

「父さん…ラファエル・シュナイダーは私の実の父親ではないって。知ってたの?」

 

「アリアがラファエルと出会ったとき、アリアは既にあなたを授かっていたの。アリアはお腹の子の父については話そうとしなかったし、私たちも聞かなかったわ。ラファエルはアリアのことを本当に愛していたから、『俺とその子の血が繋がっていても関係ない、結婚してくれ』って言ってね、結婚したのよ」

 

初めて聞く両親のなれそめの話。そんなの聞いたこともなかったから驚きすぎて声が出ない。

でも、父さんと血が繋がっていないのを知っても、不思議と気にならなかった。それはきっと、父さんが私のことを本当に愛してくれていたからだろう。

 

「メリナがアリアから聞いた内容を思い出してから伝えようと、カルラと決めていたんだ。隠すようなことをしてすまなかったね」

 

「いいの。父さんと実の親子じゃなくても、私、そんなこと気にならないくらい大切にしてもらったから」

 

「…そうか。残念だが、メリナの本当の父親については私たちも知らないんだ」

 

「大丈夫、気にしてないもの」

 

これは私の本音だ。全然気にならないと言えば嘘になるけど、私にとっての父さんはラファエル・シュナイダーだけだと思っている。これからもそう。血の繋がりなんか気にならないくらいの絆があるから。

そんな私の言葉におじさんは微笑み、おばさんは頭を撫でてくれた。

 

「なら良いんだ。明日もエレンやミカサと薪を集めに行くんだろう?もう寝なさい」

 

「そうね、森まで行くってエレンが張り切ってたもの」

 

「わかった。おじさん、おばさん、おやすみなさい」

 

そう言って部屋から出る前に振り返って二人に手を振る。おじさんもおばさんも手を振り返してくれ、私は“家族”という存在の温かさと、両親を亡くした私の面倒を見てくれる彼らの有難さを噛みしめた。

“有難さを噛みしめる”って言葉、この間読んだ本に初めて出てきた表現だけど、きっとこの使い方であってるだろう。

私はミカサが寝ているベッドの横にある自分の寝床に潜り込み、やがていつの間にか眠りについた。

 

♦︎

 

そうして人々は眠りに落ちていく。

明日、どんな惨劇が待ち受けているのかも知らずに。

嵐の前の静けさとはよく言ったものである。幸せの後には、必ず不幸が訪れるものなのだ。

 




おわかり頂いていると思いますが、シガンシナ区に超大型巨人が来る前日です。

また、感想などいただけると作者の励みになりますので、書いてもらえたら嬉しいです。
それではまた次回!
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