ハルコイ   作:鱸のポワレ

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シアワセ

私にとっての1番の幸せとは何か。

最近のちょっとした幸せ。和菓子を作るのが少しだけ上手くなったこと、小テストでいい点がとれたこと、バス停に着いたら丁度バスが止まっていたこと。

そして、一条先輩にまた会えたこと。

いや、これはちょっとした幸せなんかじゃない。大きな大きな幸せだ。

久しぶりに楽しく話せたことも、連絡先を教えてもらったことも、泣かないで挨拶できたことも、また今度って言えたことも全部大きな幸せ。

一条先輩が私の3年間の心の穴を埋めていった。

もっと私の心を埋めてほしい。今すぐに一条先輩に会いたい。

その気持ちが大きくなればなるほど、また会っていいのかと考えてしまう自分もいる。

何度も先輩と会うと、先輩への気持ちが収まらなくなってしまうだろう。

そんな気持ちは先輩にとってはただの迷惑でしかない。そんなことは自分で分かっている。

先輩の高校の記憶の中心に私はいない。

いるのはお姉ちゃんや桐崎先輩。その2人の告白すら断っている先輩が私のことを想っているはずがない。

私は一条先輩が今でも好きだ。でも先輩は私のことはなんとも思っていない。けど先輩と友達でいられる自信なんてない。恋人じゃなきゃ嫌だ。

負け戦。恋人にも友達にもなれない。それなら再会なんて無かったことにしてしまう方が楽かもしれない。もう連絡は取らないほうが楽かもしれない。でも、それでも……

 

無かったことになんかできるか。

 

私は強く思う。それだけはダメだ。こんなことで逃げてしまったら、あの日正面からぶつかっていったお姉ちゃんと桐崎先輩の想いはなんだったのか。

そして何より、私の一条先輩への愛はこんなことじゃ収まらない。止まらない。

一条先輩は連絡先を教えてくれた。また会いたいと思ってくれた。

それだけでいい。どんなに小さくても希望がある。

それだけで前を向ける。行動できる。

私は一条先輩の連絡先を見つめる。これが先輩との唯一の繋がり。これが無くなったら、切れてしまったらそれで終わり。それでも私は進みたい。

だから一条先輩に連絡をした。ワンコールごとに心臓が飛び跳ねる。

何を話すかも決めていない衝動的な電話。心の中では出ないでほしいと思う自分もいる。そんな臆病な自分との戦いでもあった。そんなんじゃ幸せは掴めない。

5コール目で電話が繋がり、一条先輩の声が聞こえてきた。

 

『もしもし春ちゃん?どうしたこんな時間に』

 

こんな時間と言われ時計を見ると、もう夜中の2時を過ぎていた。一条先輩からしたら完全に迷惑な後輩からのうざい電話だった。

 

『すいません!もう2時だって知らなくて』

『嫌別にいいよ。そんなことよりなんかあったか?』

 

やっぱり一条先輩は笑って許してくれる。この笑顔だけで私は幸せになれる。でも、もっともっと幸せが欲しい。もっと一条先輩と話したい。

だから誘う。間違った道だとしても後悔だけはしたくない。

 

『よかったら明日一緒にどこか行きませんか?』

『おお!だったら和菓子のイベントに行かないか?ちょうど明日なんだよ』

『ぜひ』

『じゃあ詳細はメールで。また明日な』

『はい、また明日』

 

私にとっての幸せ。それは、一条先輩に左右されるもの。一条先輩が笑いかけてくれたら、それだけで幸せ。次の日も楽しく生きられる。これまでの嫌なことだって忘れられる。それほどまでに単純で難しい。でも、例えその幸せが一条先輩にとって迷惑なもので、私自身が傷いてしまうかもしれなくても、止まらないし止められない。例えどんな結果になっても私は私の幸せを追う。幸せな未来を掴むために。

 




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