ハルコイ   作:鱸のポワレ

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ケッシン

デート当日。

まだ先輩の姿はない。当然だ。まだ待ち合わせの1時間前だから。

私はすごく緊張している。洋服も昨日2時間かけて選んだし、今日の朝は8回も鏡を見た。

馬鹿みたいだと思われるかもしれないけど、私にとっては当然の行動。

だって、高校生の時から思い続けていた人との初デートだから。

一条先輩の方は、デートなんて思ってないかもしれない。ただの後輩との遊び。その程度かもしれない。

それでもいい。それだったら私が頑張ればいい。

私がデートにする。

私は私の幸せを追うって決めたから。

だから、先輩に今日告白する。

中途半端な関係が長引いたって意味なんてないから。それは、私も一条先輩もよく知ってること。

そんな関係を続けたって結局は……

 

「お待たせ春ちゃん。待ったか?」

「い、いえ。今きたところです!」

「それにしても早いな春ちゃん」

 

まだ待ち合わせ時間は1時間も先なのに、先輩が早く来てくれた。

嬉しい。すごく嬉しい。

先輩に早く会いたかったからですよ。

そう言って抱きしめたい。想いを今すぐ伝えたい。受け取って欲しい。

でもまだ我慢だ。

デートは始まったばかりだから。

だからまだ今じゃない。

 

「じゃあ行こうぜ春ちゃん」

「はい」

「おっとその前にほら」

 

先輩が私の手を握った。

先輩の手は温かくてゴツゴツしてて、それで意外と大きくて。

その手を繋ぐという先輩の行動が、そのまま私にとっては期待に変わる。先輩は私のことが好きなんじゃないかと考えてしまう。

 

「ちょっ!?先輩何するんですか!」

 

そう思うとダメな私は照れて、大きな声を出してしまった。

それでもやっぱり先輩は優しく笑ってくれる。

でもこの笑顔は私を虚しくもさせる。

私は知っているから。この笑顔は恋愛対象として見てる相手に向ける笑顔じゃなくて、ただ先輩という立場で私という後輩を想っての笑顔だということを。

 

「何って春ちゃんは昔から迷子になりやすいだろ?だから今日は手繋いで回るぞ」

 

やっぱり私は最初から同じステージに立てていなかったし今も立っていない。お姉ちゃんや桐崎先輩と同じステージに。

不安になる。私が今日告白しても誰も幸せにならないんじゃないかと。昨日の決心が簡単に揺らぐ。

でもそれと同時に喜んでしまっている自分も当然いる。

先輩と手を繋げている。先輩に触れている。

それだけで嬉しくて幸せで。

だからこそやっぱり、この幸せがもっと欲しいと思うから、だからもう一度私は強く決心する。

 

今日一条先輩に告白するんだ。

 


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