妖精空間漂流記【完結】   作:ひえん

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不可知戦域にて

 零は意識を取り戻す。気を失ったのは一瞬か、それとも長い時間か。それもとっさに判断できない。機内は急減圧を受けたらしく、靄がかかっている。桂城少尉も目を覚ましたようだ。後席がシステムを操作し、機内の環境を再調整。空調が起動して靄が徐々に晴れる。そして、眼前には見たこともない風景が広がっていた。

 上下には分厚い雲…雲の間を飛んでいる。前方は青い光が見えるが、後方は赤い光で覆われている。まるでプリズムで分光した光を円周に映したようであり、奇妙としか言いようのない風景である。

 

「現在地不明。友軍との通信は全て途絶」

「計器も表示が妙だ」

 

 一度、機体の動作と体勢を確認しようとロールをするが、どうにも安定しない。水平儀がロールの途中で不可思議な動作を始める等、どの角度が水平なのかも当てにならない状況だ。高度計は気圧式と電波式で異なる数値を叩き出す有り様である。

 

「深井大尉、上下から電波が返ってくる」

「上下に壁があるという事か…これはジャムの移動用通路かな」

「機体に損傷見当たらず…電波高度計の数値は高度約30000m、人工的な空間だと思われる」

「だろうな、とてもフェアリイ星の空とは思えない」

「このまま飛べば出られるのか?」

「ジャム次第だろう、どこから来るか分からんぞ。少尉、しっかり見張れ」

 

 雪風はディスプレイに何も表示して来ない。電子機器を総動員して状況を記録、索敵し続けているのだろう。そこに桂城少尉が疑問を飛ばしてきた。

 

「あなたは…ジャムと接触する気だったのか?」

「ああ。だが、これは特殊戦全体の方針でもある。前から案を練っていた。結果として向こうから誘ってきたんだ、手間が省けた」

「つまり…ジャムからそういう打診はあったのか?」

「有ったと思う」

「思う?」

「人間に向けては言ってきてはいない。雪風なんかの機械に向けて何らかのメッセージを送ってきたと思われる。だが、それは確実だ。事実、雪風はあのジャムを撃つな、と言った」

「あれはそういう事だったのか。あなたはこの後どうするんだ」

 

 零はフムン、と呟いた後に言った。

 

「話をするよ」

「話?何を聞くつもりだ?」

「そうだな、まずは俺をどう思っているか聞くよ」

「他には?」

「何故雪風に興味を抱いたか。そして、何故雪風に接触を図ったか」

「大尉、自分と雪風以外に聞くことがあるだろう」

「なんだ?」

「ジャムの目的とか、何故侵略したのかという戦略的情報だ。FAFが必要とするものはそれだろう」

「悪いか?個人的興味だ」

「呆れた、あなたは個人的興味を優先するのか」

「それは君個人の感想か?FAFの一軍人としての見方だろう。少尉、自分の頭で考えて結論を出せ」

「特殊戦はみんなそういう個人的動機を優先して飛んでいるのか?」

「ほかの連中の考えなんて知らん。俺は俺、他人は他人だ」

「そうか…特殊戦ではそういうスタンスでいいのか」

「ああ、そうさ。さて…少尉、計器は当てにならん。目視で全周を警戒しろ」

「了解、目視にて警戒」

 

 少尉が復唱した途端、雪風のレーダーが何かを捉えて警報が鳴った。

 

「ボギー、数は1。左下方、高速で上昇中。このままだと衝突コースだ」

「少尉、状況報告続けろ。音声記録に全て残したい」

「了解。目標からのIFF応答無し。雲海に機影の一部を視認、尾翼が見えた。あれは…!?」

 

 雲海から一機の航空機が飛び出す。機種はスーパーシルフ、あれは間違いない。

 

「旧雪風のコピーだ!」

「座学で聞いた、こいつがそうなのか?コクピット内に人影、バイザーで顔は見えない。マスクを指さしている…通話がしたい?」

 

 雪風が即座に無線周波数をサーチ、偽物のスーパーシルフに接続した。無線機に声が飛び込んでくる。

 

「聞こえるか?深井中尉、貴官は不要な戦いを行っている。直ちに戦意を放棄し、我に従う生き方をされたし」

 

 相手は自分やバーガディシュ少尉のコピーでは無いらしい。まるで機械で合成したかのような無機質な声、文章もぎこちなく違和感がある。そして、前の階級で零に呼び掛けてきた。

 

「こちらB-1、感度良好。そちらの所属、階級、氏名を答えよ」

「返答する、我に個体を分類識別するコードはない。よって、その問いに対する回答は不能。深井中尉、我の要請を受け入れるか否か、返答を求む」

「身分を明かさずにお願いとは無礼だな…お前は誰だ?」

「貴殿に理解できる概念で説明する。我はジャムと呼ばれるものの総体である」

「総体?つまり代表と解釈していいのか」

 

 零は隣に並ぶスーパーシルフのコピーをじっと見つめた。

 

 

 

「つまり、不可知戦域とはなんなのかしら?」

「B-13…レイフが捉えたデータでは空間に穴が開いた、そこに雪風とジャムが飛び込んだのよ。その穴の向こうが不可知戦域というものらしいわ」

「空間に穴…別世界にでも飛ばされたということかしら」

「まあ、そういう感じでしょうね」

 

 フォス大尉の部屋ではほむらがディスプレイに映された記録を見ていた。フォス大尉は雪風とジャムの心理的解析を行うように命令が下っており、参考の為に先ほどの雪風の状況をまとめたデータをなんとか持ってきていたのだ。

 そして、ほむらは不可知戦域というものを聞いて、まるで魔女の結界のようだ、と考える。まあ、あんな悪趣味かつ摩訶不思議な空間ではないだろうが。しかし、彼らはどこに飛ばされたのか。手元の情報は少ない、雪風がロストする前に送ってきた情報ぐらいだ…だが、その少ない情報からMAcProⅡがジャムの行動予測を叩き出す。そして、二人はその結果を見つめていた。

 

 

 

 ジャムと接触してどれぐらい時間がたっただろう。ジャムからは長々と無線が飛び込んでくる。そして、この要領を得にくい数々の内容を読み解くと…特殊戦という知性体の集団を我は理解できない、ヒト的意識を持たぬ貴殿らは我と近似であって共闘が可能、FAFに対して共闘せよ、等々…つまり、特殊戦はジャムに似ているから寝返ってジャムの側につけ、と要求しているようだ。そして、桂城少尉はそれがどういう意味合いであるか細かく聞き返したが、やはり分かりにくい返事が返ってくる。無論、そんな要求は呑めるはずもない。

 すると、ジャムは話を変えてきた。

 

「深井中尉、我に疑問がある。回答を求む。我の観測領域をある概念が通過、それに接触を図ろうとしたが失敗した」

「何が言いたい?」

「その概念を追った先、その終着点がある個体である事を確認している。その個体とは特殊戦に所属する人間、暁美ほむらである。深井中尉、あれは何であるか。回答を求む」

 

 桂城少尉は意外な名前が飛び込んできたことに耳を疑った。格納庫で一度だけ見かけたあの子供である。

 

「暁美ほむら…どういうことだ。何故、あの子供の話が突然出てくる?」

「少尉、これには色々と訳があるんだ。後でじっくり説明する。どうせ、こうなっては隠し事もできん…ジャム、俺には彼女の正体が何だかは分からない。よって、説明は困難だ」

「回答不能という事か」

「そうだ」

 

 すると、前方に空間に変化があった。雲がぽっかりと消えたのだ。上は青空、地球の空に間違いない。そして、下…地上は街並が広がる。だが、様子がおかしい。

 

「前方…これは都市?本物か?」

「分からん、ジャムの幻影かもしれない。だが、街中無茶苦茶に壊れた様子だ」

「災害にでもあったのか…?大尉、センサが何かを見つけた!」

「なんだ?」

 

 雪風の光学センサは瓦礫の山を探る。そして、その瓦礫の上に人が倒れているのが見えた。カメラがそれを捉えて拡大する。高解像のそれが映し出したその姿、見覚えのある顔が見えた。

 

「これは…特殊戦で預かっている子供の一人に似ている」

「ぴくりとも動かん。生きているのか?それともこの空間の物体は静止した状態なのか?いや、待て。他にも倒れている」

 

 まず、最初に見つけた人物はマミそっくりの顔であった。次は杏子。他にも数人ほど倒れていたが、こちらはどれも知らない顔である。

 

「ジャム、これはなんだ」

「これは概念の発生源を辿った先にあった空間を模したものである。貴殿らのいる“空間”とは異なる」

「フムン。つまり、アイツの言っていた話の実態がこれか」

「深井大尉。瓦礫に転がっている看板から地名が読めた、見滝原…これは日本国内か」

 

 その瞬間、風景は一変した。再び、上下の空間が分厚い雲で覆われたのだ。桂城少尉は唖然としながら呟いた。

 

「消えた…」

「この空間はジャムのさじ加減一つ、という事だろう」

 

 そして、深井大尉は一つ質問を飛ばす。

 

「お前の正体を聞きたい。そちらは人間の存在を認識しているのに、こちらがそちらの正体を知らないのは不公平だろう。その時点でそちらの要求を受け入れる事は出来ない。そもそも、お前は何者だ?機械か、生物か、それとも情報だけの存在か…少なくとも人語を完全に理解できているとは思えない」

 

 そして、ジャムは少し間をおいてから回答した。

 

「貴殿の理解している概念では、我を説明することは不可能。我は、我である」

 

 桂城少尉はその回答を聞き、つい笑ってしまった。我は我…まるで深井大尉の様に答えてきたからだ。ジャムの言った特殊戦がジャムと似ているという意味がなんとなく分かった気がした。

 

「説明が不可能であるなら、これ以上の言葉での交渉は無意味だ。そちらの要求を拒否する」

「了解。拒否であると認識した」

 

 ジャムは拒否の回答に対して、ただ一言そう言った。感情の起伏など一切ない口調で。そして、それを聞いた零は雪風とフライトオフィサに宣言する。

 

「戦略偵察完了、帰投する」

<i have control...Lt>

 

 零の宣言を聞いた雪風が操縦を渡すように言ってきた。それに対して零はすぐさま雪風に操縦を預けた。この空間をすぐにでも脱出するつもりなのだろう。そして、加速を開始。しかし、ジャムもぴったりとついてくる。相手はスーパーシルフのコピー、加速力ではメイヴと同等だ。だが、電子的な攻撃をしてくる素振りは無い。ただ、真横にじっと張り付くように飛ぶだけだ。桂城少尉はそれを見て、気味の悪さを感じながら周囲を見渡した。新手が出てきてはたまったものではない。正面に明るい光が見える、あれが出口であればいいのだが。そんな事を考えながら周囲を見渡すと、背後に異常があった。雲の間隔が狭まっている。

 

「背後に異変」

「空間が閉じているんだ。レーダーでも確認、まるで押しつぶされているようだ」

「これは、このままだと潰される」

「それは御免だ」

「深井大尉、どうするつもりだ。手はあるのか?」

 

 後席から桂城少尉が聞いてくる。その声は平静を装ってはいるが、彼の不安を感じさせる問いであった。

 

「落ち着け少尉、ジャムは俺たちを生け捕りにするつもりだ。叩き落とすつもりなら、交渉が決裂した時点でとっくにやっているだろうさ」

「だが、生け捕りにしてどうする」

「どこか別の世界に飛ばされて、そこで徹底的に分析されるかもしれない」

「どこに飛ばされると思う?」

「未知の空間か、さっき見たような場所か…フェアリイ星の偽物に飛ばされるかもしれない。帰還したと安心させるために」

「冗談じゃない、そんな場所に飛ばされたら二度と元の世界には戻れないじゃないか」

「その時は雪風を信じて脱出策を考えるしかない」

「正気か?では、せめて雪風に今この状況を脱出できる策があるのか聞いてくれ」

「いや、駄目だ。今、余計な負荷は与えたくない。しかし、出口を目指して飛んでいる以上、脱出する気はあると判断できるだろう」

 

 そして、桂城少尉はぽつりと呟いた。

 

「脱出できなかった時に備えて、何か外に情報を伝える手は無いだろうか」

「少尉、悲観的に考えるな。周囲警戒に集中しろ」

「そうだ…大尉。ミサイルに情報を載せて、それを出口に発射することを提案する」

「何?」

「ミサイルだよ。ミサイルにも情報入力用のメモリが載っている。雪風ならそれに何かしらの情報を書き込むことができるんじゃないか?」

「できるかもしれないが、やったことは無い。だが、やったとして味方に回収される可能性は極めて小さい。それにデータのサイズも小さくなる」

「それでも遺言代わりにはなるよ。脱出できなければ終わりだ。僕は誰にも知られることも無く、こんな所で最後を迎えるのは嫌だ。あなただってそうだろう」

「分かった、発射タイミングを計算して備えろ」

 

 桂城少尉は発射準備を整えようと火器管制システムを操作しようとする。だが、それより早く雪風がミサイルの発射準備を整えた。こいつも同じ気持ちなのだろうか、そう考えながら操作を進める。データ入力が終わり、発射可能という表示が出る。一方、零はこの行動を不審に思っていた。雪風がこの手を使うというのは脱出を諦めた時だろう。そして、そう考えた直後である。雪風がミサイルを二発発射した。レーダーを見た桂城少尉は悲鳴を上げた。攻撃目標は2つ。まず、隣の偽スーパーシルフ。そして、もう一つは雪風自身であった。ミサイルは既に反転動作に入っている。偽スーパーシルフは電子的妨害手段でミサイルを妨害しようとし、回避運動に入った。電波を探知するESMアンテナが猛烈な妨害電波を捉えている事から確実だ。しかし、雪風は自らに向かってくるミサイルに対して位置と速度を調整、確実に当たるコースへと動く。これは自爆するつもりだ。桂城少尉が回避と叫ぶ。しかし、零はディスプレイに表示された一文を見て唖然とする。それはジャムへのメッセージである。これは威嚇射撃ではない、と。

 雪風はジャムに脅しをかけているのだ。脱出させないのならば乗員諸共自爆する、と。ジャムに自分たちの価値を問う行為だ。だが、雪風は勝算があると踏んでいるのだ。もし、自爆に至ったとしてもジャムが交渉対象として生かそうとした戦略目標を破壊、それにより相手の企てを頓挫させることができる。これは賭けであるとともに戦略的な戦闘行為であった。やはり、雪風は恐ろしい化物だ、零は改めてその実感を受けたのだ。こうなれば覚悟を決めるしかない。ディスプレイには命中までの予想秒数が表示される。そして、<thanks>という一文も。

 一方、桂城少尉は脱出ハンドルに手を伸ばしたまま動けなかった。リスクを考えたのではない。ただ、体が動かなかった。そして、彼の視線の先にはミサイルがあった。その先端のシーカーと目が合ったように感じた。嫌な物を見てしまったと考えながら。

 

 着弾までまもなく。零は覚悟を決めていた。こういう最後なら悪くはないとも考えながら。だが、おかしい。ミサイルの動きが遅く感じる、まるで時が止まったかのようだ。事実、ミサイルは視線の先にまだある。ああ、これはまだ間に合うかもしれない。心のどこかで声がして操縦桿につい手を伸ばす。

 

「そうだ、ここで終わりなんてよくないだろう。操縦桿を引け。まだ間に合う」

 

 これは心の声か?いや、違和感がある。

 

「こんな最後は望んでいないはずだ。我に従え、そうすれば阻止しよう。返答せよ」

 

 間違いない、これはジャムだ。回答はノー。心の中で答える。

 

「何故だ、何故拒む。我の正体を知ることができないぞ」

 

 決心を邪魔するこの声に猛烈な怒りすら感じた。よって、更に強い意志でこの声を拒む。すると、頭上で何かが光る。ミサイルが炸裂したか?まあ、いい。これであの声の誘惑には勝ったのだから。

 

 ハッと意識が戻る。呼吸が荒い、汗も噴き出している。そして、零はディスプレイの表示をとっさに見る。ミサイルが外れたという表示が出ている。先ほど見たのは夢か現か、それともジャムの幻影か。そう考えた所で、警報音とストロボで射出座席が作動寸前になっている事に気づく。後席の桂城少尉がハンドルを握りしめているのが原因であった。

 

「落ち着け、動くな。今解除する」

 

 そして、動作を解除。警報音が消えた。すると、雪風が文章を表示してくる。

 

<you have control...Lt/return to home>

 

 ふと気づくと、出口は目の前。閉じる寸前で円形の穴が残るのみ。そして、ジャムは消えていた。賭けは雪風の勝ちであったようだ。雪風から操縦を任されたので操縦桿を握る。自動操縦解除、アフターバーナー点火、機体は轟音を響かせて急加速。小さくなった穴に飛び込んだ。そして、凄まじい揺れと衝撃を感じる。その刹那、視界が明るくなった。だが、靄か雲の中に飛び込んだらしい。一面が灰色で外が見えない。

 

「機体の状態を確認しろ。少尉」

「了解、機長。左側第一尾翼、脱落。油圧系統に異常有。だが、別系統は正常。左エンジン破損、完全に壊れているようだ。右エンジン停止中」

「了解。油圧系統切り替え。そして、エンジン再始動チェックリスト確認」

 

 尾翼の破損があるが、この程度なら飛行可能だ。だが、エンジンが再始動しなければ飛ぶ事は出来ない。不時着を考えないといけなくなる。よって、再始動を試みる…結果、右エンジンはなんとか息を吹き返した。そして、フェニックスエンジンの轟音が響く。

 

「各レーダー異常なし…いや、空間受動レーダーは不調。しかし、針路上に障害物無し」

「了解。いや、コンタクト。不明機確認」

「IFF、返答有。カーミラ…B-2だ」

「現在位置は?」

「確認、リッチウォー基地上空。他の機影無し。カーミラのコンピュータがデータリンクを要請してきた。支援するとの事」

「拒否しろ」

「了解」

 

 雪風は機位を得た。ここはフェアリイ星、ジャムの基地の上空だ。ここも攻撃対象の基地であり、地上は瓦礫の山である。だが、ここが本当に本物のフェアリイ星かの確証はない。しかし、雪風は静かだ。

 

「B-2が特殊戦司令センターと交信中。驚いたな、作戦中なのに通常の無線だ」

「すべて記録しろ」

「了解。現在の燃料でフェアリイ基地まで帰投可能」

「では、帰ろう」

「B-2、背後に回った。攻撃態勢。これは疑われているかな」

「特殊戦司令センターに繋げ」

「了解」

 

 無線を特殊戦司令センターに繋ぐ。返信はすぐ帰ってきた。クーリィ准将自らが無線に出たのである。

 

「こちらB-1、B-2の攻撃態勢を解除してくれ。解除しない場合、対抗処置をとる」

「司令センターからB-1へ、了解した。損害はあるか」

「帰投可能な程度。だが、対ABC汚染洗浄の用意を求む。何かついていそうだから洗い流したい」

「司令部了解。用意する」

 

 無線交信を終えた。カーミラは攻撃態勢を解いた様子で、雪風と編隊を組む。

 

「さて、桂城少尉。話題に出たほむらの話でも説明しながら帰るか」

「了解。色々あったけど、それも気になるな」

 

 雪風はフェアリイ基地へと針路を向けた。

 

 

 

 場所は変わって地球の南極。通路に近いロス島にあるマクマード基地では、職員が気象レーダーを見ていて何かに気付いた。

 

「おい、フェーズドアレイに変な雲が映っているぞ」

「どれ、こいつはでかいな。初めて見るタイプだ」

 

 その知らせに気象担当の観測隊員が次々集まる。ここでは初めて見る部類の嵐が突如現れたのだ。

 

「通路の方向に進んでいる」

「面白い、気象衛星を借りてこよう。誰か、南半球観測してるやつを使えるように許可取ってくれ」

「このままだと通路に突っ込みそうだ。レーダーのデータを記録し続けろ」

 

 嵐は真っ直ぐ通路に向かって進んでいく。まるで引き寄せられているかのように。スピードもだんだんと上がっているようだ。

 

「おい、こいつは奇妙だ。データを取りこぼすな」

「近くの国連艦隊にも知らせろ。向こうにも観測協力の要請を出せ」

 

 そして、観測隊員たちがレーダーディスプレイを見つめる中、嵐は通路にぶつかった。そして、跡形もなく消えた。もしや、フェアリイ星に飛ばされたのだろうか?そうだとすれば、これは前代未聞の現象だ。騒ぎの中、気象衛星の記録したデータを解析している職員が、通路に消える直前の嵐を撮影した画像を見て呟く。

 

「この影、人形かぬいぐるみのような何かにも見える。気のせいか?」

 




ジャムはほむらに興味を抱いた理由を話した。
だが、当人はこの出来事をまだ知らない。しかし、この情報は全て記録されている。
ほむらの秘密が特殊戦に知られるまであと僅か。



※雪風とジャムの緊迫したやり取りをもっと楽しみたい方は是非原作を!
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