「おい、このコンテナ…検査履歴がなんかおかしいぞ」
「確かに。電子タグのデータが飛んでいる。万が一という事もある、探知犬を呼ぼう」
FAFではすべての食料品を地球から運び込んでいる。その理由は未知の土地で農作を行うのは危険である事。そして、FAFが暴走しないように地球側が手綱を引くためでもあった。そして、今日も輸送機で送り込まれた生鮮品のコンテナを防疫担当の隊員が一つ一つ確認していく。万一、危険な病原菌や害虫、害獣が混入しているとFAF全体の衛生問題に関わる。その為、この作業は慎重かつ丁寧に実施されるのである。
そして、担当者達は怪しげな特殊サイズの大型コンテナを見つけたのであった。記載上、積荷はキャベツやジャガイモとあるが…探知犬がコンテナの臭いを嗅ぎまわる。すると途端に吼えだした。何かがある、とその場にいる人々は確信した。
「よし、開けよう。準備しろ!」
問題のコンテナを倉庫内の密室に運び込み、外部と完全に遮断する。中から何が吹き出てくるか分からない為の対応だ。耐爆仕様付の化学防護服を着込んだ隊員達がコンテナの蓋を開ける。すると、中に食料品の山はない。代わりにもっと大きな何かが入っている。それに向かってライトを当てる。
「おい、人だ。人が倒れている!」
「大勢だ、しかもみんな子供だ!くそ、内部からガス反応有。除染装備を持ってこい!」
「至急、至急!!医療班を呼んでくれ!」
暁美ほむらは与えられた課題をこなしていた。数学、化学に物理、語学系…それは問題ないが、ブッカー少佐が個人的に出した宿題が難問であった。それは哲学。中学生ではほぼ触れない学問である為、どのように取り組めばいいのかがいまいち掴み切れない。そう頭を抱えながら悩んでいる時であった。
「暁美ほむら、お前に話がある」
「何でしょうか、深井大尉」
特殊戦パイロット、深井零…彼が話しかけてきたのである。彼とは数度しか話したことがない。初めてフェアリイ星の空を見たあの日である。
しかし、彼はいきなり質問をぶつけてきた。むしろ尋問に近いかもしれない。
「単刀直入に聞きたい。お前は何を隠している?」
「それはどういう事でしょうか?」
「猫を被る必要はない。魔女とは何か」
「魔女…FAF内の暗号か何かでしょうか?それはさっぱり」
「フム…では、更に質問を変えよう。キュゥべえという名に心当たりは?」
「何…?」
途端にほむらの表情が変わった、目つきが鋭くなったのだ。口調も変わる、敬語を止めた。これが本来の彼女なのだろうか。零は更に話を聞き出そうとする。
「心当たりがあると見た」
「その名前をどこで聞いたのかしら」
「直接会って聞いた」
「は…?」
零の返答にほむらの思考が固まった。それもそのはず、インキュベーターの姿は普通の一般人にはまず見えない。いったい何をどうやったのか…
「あなたはあの生命体の正体を知っているのかしら」
「宇宙人という事は分かっている。そして、一般的な方法ではそいつを観測する事も不可能。どういう訳か、さっき会って話をしたが」
「そう、それならば話は早いわ。あれと関わるべきではないわ。あれは人類の敵よ」
「フムン。だが、アイツは逆にお前が怪しいと言っていた」
なるほど、インキュベーターは私をこの部隊で孤立させようとしたのだ。周囲に危険人物と認識させて居場所を消す。そうすれば困り果てて契約に引き込む事が出来るだろう、と考えたに違いない。だが、そうはさせない。
「インキュベーター…あの怪しげな生き物の言う事を信じると?」
「あれも信用できないが、お前も信用できない。が、お前が何かを隠しているのは間違いない」
「どちらが信用できると?」
「現時点では大差ない。お前次第だな」
さて、どうしたものか。彼はこちらを完全に怪しんでいる。いっそ全てを話すか?いや、駄目だ。証拠がない、何を言っても信用されるはずもない。魔法少女としての能力でもあればまだ説明材料になるだろう。だが、今の自分は完全なる一般人。そんな話をぶつけても信じてくれるはずもない。
「説明できる証拠がないわ。口で言って信じるとも思えない。むしろ精神異常を疑われてしまう」
「証拠が無い、か」
「ええ、証明も実演も困難よ」
「では、とりあえず知っている事を話してもらおうか」
「それで疑いが晴れるのなら喜んで」
そして、説明を始める。まず、魔女とは何か。そして、その魔女を倒す存在である魔法少女とはいかに生まれるか。そして、魔法少女の末路。
「絶対信じてもらえないわね」
「ああ、よくできた作り話としか思えない。その設定で小説でも書いたら学生辺りに当たりそうだ」
「…」
駄目か?そう考え始めた時だった。背後から声が聞こえた。フォス大尉だ。その腕にはタブレットのような端末を抱えている。
「深井大尉、彼女は嘘を言っていない。MAcProⅡは少なくともそう判定したわ」
「そうか。では、精神医学的に彼女の説明はどう見る」
「世間一般的に見たら極度の妄想と思われる事間違い無しね。でも、それにしては話がしっかりしていると思う。まあ、少なくとも彼女があの白い生命体と会った事がある、ということは確実と判断できるわね」
「フムン」
だが、フォス大尉は一つ問題点を投げかけた。
「しかし、これでは魔法少女や魔女の存在は証明できないわ」
「ええ、エディスさん。そうよ、ここには魔女も魔法少女もいない。それに一般人が魔女を見る事は困難よ。よって、今の私にあなた達を納得させることは不可能ね」
ほむらは諦め気味にそう言う。それを見た零はシンプルかつ確実な問いを投げかけた。
「では、聞こう。お前は俺たちの敵か、味方か?」
「味方よ、間違いなく。私は正真正銘の人間ですもの」
ほむらの目は零を真っ直ぐ見据えていた。それは覚悟が定まった目だ。零はそれを見てフォス大尉に尋ねる。
「いいだろう。少なくとも敵ではない。そうだな、エディス?」
「ええ、MAcProⅡの結果もそう出ている」
「しかし、どうやってジャックに説明するか」
「根本的に説明に必要な証拠が不足しているわ。ほむらちゃんの話をいきなり話しても唖然とするだけよ」
「では、あの宇宙生命体とコンタクトを取った事だけ説明するか。ほむらの件は調査中という事にして」
「それでいいの?」
「説明できないものはできない。仕方のない事だ。まあ、雪風のセンサ記録だけは残っているから宇宙人と会ったという事実だけは説明できる」
ほむらは一つ疑問を抱いて尋ねる。
「たったこれだけで私の事は味方であると判断するの?」
「なんだ、敵として扱ってほしいのか?」
「いえ、それは勘弁してほしいわ。でも、大した話もしていないもの」
「いや、情報源があの胡散臭い宇宙人だけというのは心許ないからな…そういえば、インキュベーターは魔法少女なんて訳の分からないものを作り出して何がしたいんだ?」
「連中の目的…?ああ、そういえば言ってなかったわね。あいつらの目的は宇宙の熱的死を防ぐこと」
「熱的死?宇宙の膨張で宇宙空間の温度がいつか絶対零度になるとかいうあれか。あんなものはただの仮説だろう」
「それを前提に大真面目で無茶苦茶やっているのよ」
「フムン、宇宙人はそれが本当に起きると考えているのか。だが、それで魔法少女とやらを作り出す意味が分からん」
「連中、魂を物体化することが可能なの。それで人間の感情をエネルギーに変えるそうよ」
「存在しないものを質量のある物体に変える…まあ、そうすれば理屈は分かる。質量はそれだけでエネルギーとなりうる」
「でも、変ね」
フォス大尉がその話に疑問を投げかけた。
「感情さえあればいいのなら少女に限る必要なんてない。感情のアップダウンなんてそれこそ個人差が大きいもの」
「さあ?その辺りは分からない。この年代の少女が特に多感だからというような話はしていたわ」
相手はメンタル面の専門家だ。下手な事を言うと話について行けない泥沼になりかねない。ほむらは当たり障りのない返事で返す。
「魔法少女が魔女になる時、負の感情によってその魂が変質。その変化をエネルギーとして取り出すそうよ」
「それがさっぱり分からん、やはりファンタジーだな。素直にその魂の固形物とやらを核分裂でも核融合でもすればもっと手っ取り早くエネルギー源になるだろうに」
「アイツらの考える事や理屈は分からないわ。その対価として願い事を何か一つ叶える、そういう契約よ」
「フムン。命と引き換えか」
「ええ。でも、そんなデメリットの説明はろくにない。まさに悪徳商法でしょう?」
「ああ…だが、お前はこの話をどうやって知った?」
今、聞かれて最も困る質問が飛んできた。さて、どうしたものか…だが、ここまで話したのだ。素直に話してみよう、そうほむらは考えた。しかし、インキュベーターだけには聞かれたくない。
「問題のアイツにだけは聞かれたくないのだけど」
「フム…雪風の機内で話すか。空の上なら聞かれる心配はない」
「名案…ではあるけど、どうする気?」
「手はあるさ。この前、ちょうどジャックとこんな話をした」
それは数日前の事である。
ブッカー少佐のオフィスにて、零と少佐が話し合っていた時であった。
「そういえば、ほむらの件なんだが」
「どうした?俺に子守をしろというのは困るぞ」
「そうじゃない。彼女は航空身体検査で問題なしと結果が出ているんだが…一度彼女を機体に乗せて飛ばしてみてくれないか」
「結局、子守じゃないか。飛ばす意味も分からん」
「いや、いざとなったら戦闘機の後部座席に乗せて地球に脱出させる必要があるかもしれない。それに備えてだ。准将の許可は取ってある」
「なるほど…楽しい遊覧飛行にはなりそうもないな。考えてはおく」
「ああ、頼む。専用の与圧服も用意してある」
「という事があった。これを使おう」
「好都合ね。ほむらちゃん、それでいい?」
「え、ええ…」
あれに乗るのか、内心ほむらは不安であった。偵察機とは言うが、ほぼ戦闘機である。乗ってどうなるか想像が付かない。
「さて、ジャックに連絡するか」
例はブッカー少佐に連絡を取った。
「零か、どうした」
「今、雪風のログを見る事が出来るか?」
「ああ…出来るが」
「2時間前のログを見てくれ」
「…っ!?なんだこれは!例の生命体じゃないか!なんですぐに報告しなかった!?」
案の定、ブッカー少佐は受話器の向こうで仰天している。
「いや、どう報告するか検討していた。どう話したものか悩んでな。フォス大尉と相談していた」
「それはそうか…で、何があった」
「ああ、会話の内容を記録できればよかったんだが…アイツはどうもテレパシーらしきものを使うらしい。その姿以外は何も記録できていない」
「会話したのか!?これと?」
「ああ、キュゥべえとかいう名前の宇宙人…ジャムとは無関係でこの戦争を見物しているそうだ」
「そんな事を大真面目に言ったと?」
「俺の頭がおかしくなっていなければそう言っていたよ。フォス大尉も証人だ」
「だが、こいつは大問題だぞ。ジャムでないとしても、異星人とコンタクトしたなんてそう簡単に済む話じゃない。准将には報告するが…今後どうなるかはまるで想像できん」
「あと、簡単には見つけられない問題もあるな。話し合うだけでも難題だ。もっとも、個人的にはあまり関わりたくない部類だが」
「何故だ?」
「何もかも胡散臭い」
「なるほど、そういう直感は大事だ…特にこの職場ではな。参考にしておくよ。まあいい、レポートを出せ。准将にはどうにかして説明しておく。恐らく…いや、確実に呼び出しが来るかもしれんが」
「そうだ、ジャック。別件だが、もう一件話がある」
「なんだ?」
「ほむらを乗せて飛ぶ話だが、この後すぐに飛ばしていいか?フライトオフィサの席はまだ空席だろう。それに技量維持程度の簡単な飛行だ」
「夕方の訓練飛行に?別にいいが、ずいぶん急だな」
「ああ、ちょうどさっきジャックの出した宿題を手伝う羽目になってな、その時にあの話をしたんだ。そしたら大喜びで首を縦に振った、善は急げというだろう?」
「ああ、そうか…桂城少尉が来たらやる暇もなさそうだし、確かにタイミングはいいな。では、よろしく頼む」
連絡を終えた零はほむらに言った。
「4時間後に飛ぶぞ。いいな?」
「ええ…本当に大丈夫かしら」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
そして、4時間後。ほむらは特殊戦の格納庫区画前にやってきた。深井大尉とフォス大尉が耐爆扉の前に立っている。
「時間ちょうどだ。よし、中に入るぞ」
3人で区画に入る。警告は鳴らなかった。区画に入る許可はしっかり出ているようだ。そして、ほむらの目に一機の偵察機が映った。
雪風。特殊戦1番機、深井大尉の愛機である。黒い機体、戦闘機はよく知らないが、デザインは未来的なものを感じる。まるでSFの世界から出てきたような雰囲気だ。操縦席の脇には白く“雪風”と小さな漢字で書かれている。
「さて、ほむら。お前に合うサイズの飛行服とヘルメット、酸素マスクは我が特殊戦にはない。そこで、専用与圧服を用意した」
「この宇宙服みたいなやつかしら?」
「ああ、それだ。そいつを着て乗ってもらう」
フォス大尉に手伝ってもらって与圧服を着る。ヘルメットを試しに被ってロックする。完全に密閉されていてまるで宇宙服だ、そう思った途端にバイザーが曇る。しまった、今は酸素供給されていない。慌ててヘルメットを外した。
「ヘルメットは座席に乗って酸素ホースを繋いでから被れ。非常時の手順は読んだな?」
「ええ。大急ぎでだけど」
「よろしい。では、搭乗しろ。エディス、手伝ってくれ」
「了解、その前にMAcProⅡだけ起動しておくわ。雪風も興味があるかもしれない」
「ああ、頼む」
ほむらはやっとこさ後部座席に乗り込んだ。座席のベルトを与圧服に固定。酸素供給ホースを与圧服に接続する。そして、空気が来ることを確認、ヘルメットを被って固定する。与圧服のコネクタにハーネスを接続、与圧服のシステムと無線をチェック。深井大尉からの音声が入る。返事を返すと相手も了解の返事を飛ばしてきた。
「こちらB-1、準備完了。格納庫を出る」
「了解、後席のお嬢さんに気を付けて」
司令センターから軽口交じりの返答が飛んで来る。すると自動制御の無人牽引車がやって来て雪風をエレベーターへ牽引する。そして、エレベーター上に機体が載ると、地上へ向けてエレベーターが動き出す。出撃シーケンスは零と雪風が進めるのでほむらは見ているだけだ。メインディスプレイに様々な表示が出るが、専門用語が並んでいて理解できない。
一瞬、ガクンとした軽い衝撃を受ける。エレベーターが地上に着いたのだ。エンジンの回転数が上がって機体が動き出す。
機体はエプロンまで自走、そこで一度停止する。そして、地上整備員が機体各所の最終チェックを実施、安全ピンが全て抜かれている事を報告してくる。零は計器を再びチェック、全て問題なし。整備員にそれを伝えると、彼らはグッドラックのサインを送って雪風から離れていく。零は右手で答える。この間、ほむらは何も出来ない為、見ているだけだ。
機体は誘導路を進み、その端で一時停止する。
「今は離陸許可待ちだ。覚悟はいいか」
「ここまで来たらどうしようもないわ」
「ああ、いい覚悟だ」
そして、管制塔から離陸許可が出る。
「タワーからB-1、離陸許可。300まで上昇、その後は予定通りに飛行されたし」
「B-1よりタワー、離陸許可」
そして、雪風は加速する。凄まじい勢いで。アフターバーナーの轟音が機内にまで鳴り響く。ほむらがその轟音と加速の衝撃を受けている間に機体は浮かび上がった。ギアを格納する音が響く。
「よし、離陸した。一応、これは訓練飛行だ。その予定通りに飛ぶぞ」
「ほんとに飛んだ…」
「同乗者、呆けてないで形だけでも周囲を確認しろ。念のためだ」
「り、了解」
ありえないだろうが、機体のどこかにアイツが貼り付いていては困る。首を必死で回しながら機体上面を一通り確認。怪しげな影はない。
「アイツの影は無し…よ」
「分かった。左旋回するぞ。方位200、舌を噛まないように注意しろ」
零がそう言うと、機体が斜めに傾く。そして、ほむらは体が下に押し付けられるような感覚を受ける。旋回し、Gが体にかかっているのだ。もっとも、3G程度の比較的軽い旋回なのだが、未経験の一般人にはそれでもきつい。
「よし、ここからしばらく水平飛行…では、聞かせてもらおうか」
「ええ」
零は雪風に今回の特殊な情報収集の内容を、先の会話内容の概要と共に事前に入力していた。そして、機会が来るまでこの間の機内会話記録を秘匿する事、それを下命したのである。本来、飛行中の情報は全て記録する特殊戦機がこのような事をやっては問題になりかねないが、この会話内容で特殊戦内、それどころかFAFそのものに混乱が生じたらそれこそ大問題だ。それを防ぐ為でもある。雪風がその命令に納得した理由はデータが少なく、何故かジャムに狙われている可能性が大きいほむらに興味があるからであろう。
「無茶苦茶な話になるけど、とりあえずは事実として聞いてもらうわ」
「ああ、この星なら無茶苦茶が日常だからおおよそは慣れている」
そして、ほむらは話し始めた。
「私が魔女や魔法少女の事、インキュベーターの目的を知っているその理由、それは私が魔法少女だったからよ」
「何?」
「これから詳しく話すわ」
私には一つ大きな秘密がある、それは魔法少女になった時に得た能力の時間操作。そして、それの影響か、同じような別の時間軸に移動する力も手に入れた…たくさんの時間軸で何度も同じような経験をしてきたの。そして、友達を救うために何度も戦った。でも、何時やっても駄目。そして…またやり直す、また戦う、また失敗する、の繰り返し。それで今回もやり直そうとした。
でも、そこでおかしな事になった。いつもと違う病院で目が覚めて、ここはどこかと思いきや別の星。元の世界にはそんな星なんて無かったし、まるで異世界にでも飛ばされた気分よ。そして、更なる驚きは体が普通の人間に戻っていた事。いつもは魔法少女のままなのに…
「フムン、確かに何もかも無茶苦茶だ」
「今まで幾人かに何度も説明してきたけど、おおよそお察しの通りの結果よ」
「だろうな。しかし…並行世界に移動する力か」
「でも、さっき言ったようにこんなに違う所に飛ばされた事はないわ。あなた達とは初めて会う」
「フム。それで初めて会った時、あんなに警戒していたのか」
「あら、分かっていたの?」
「あんな目をしていればバレバレだ。もっとも、ジャックはお前に対する先入観で気づいていなかったが」
「不幸中の幸いね」
そして、ほむらは空を見る。夕暮れの空、連星が沈む間際。そして、連星から延びる赤い帯が見える。地上からでは見えなかったものだ。
「あそこに見える赤い帯みたいなのがブラッディ・ロード、あの連星の片側から噴き出したガスだ。地球じゃ拝めないぞ」
「ええ…初めて見るわ」
「さてと、訓練飛行を続ける」
情報収集ミッション完了、機密会話は以上。と、メインディスプレイに零が入力する。すると、ディスプレイに雪風の返信が返ってきた。
<roger Lt. / i judged her as a friend>
彼女を味方と判断した。この一文が表示されたのである。
「フム。これは…」
「いい事、なのかしら」
「ああ、そうさ。特殊戦にようこそ。暁美ほむら」
そして、雪風はそのまま訓練飛行を続けた。連星の夕日を背に浴びながら。
「B-1、訓練飛行完了。帰投する」
フェアリイ星人はこうして、魔女と魔法少女の真相を知った。
一方、魔法少女は妖精の空を垣間見た。
そして、妖精は彼女を知った。