鉄血無敗の神装機竜   作:やーみん

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1年以上投稿が遅くなって申し訳ありません。
今後はなるべく早めに投稿できるよう精進いたします。
それと、原作である最弱無敗の神装機竜の完結おめでとうございます!(超今更)
明月千里先生、ありがとうございます&お疲れ様でした!


第4話 幻神獣(アビス)

機竜使いが敵として警戒に値するのは、同じ機竜使い(ドラグナイト)だけではない。

否、それより余程気をつけなくてはならない、人の天敵がこの世界にいる。

幻神獣(アビス)

十余年前、機竜が発掘された遺跡(ルイン)から時折現れるようになった、正体不明の幻獣。

その種類は無数にあり、見つけた人間や動物を見境なく襲うと言われている。

獣と違うのは、その尋常ならざる強さと不可解な生態、そして特殊能力だ。

故に、殆どの大国では遺跡の近くに砦や関所、城塞都市を幾重にも置き、機竜使いを配備して不測の自体に備えている。

この城塞都市(クロスフィード)遺跡(ルイン)と王都の間ある、防衛拠点も兼ねた都市なのだ。

だが――――、

 

「きゃあああぁっ!?」

「な、なんでこんな所に幻神獣()が―――!」

「どうして警報が鳴ってないのよ!?」

「落ち着け!下級階層(ロウクラス)の生徒は機攻殻剣(ソードデバイス)を抜くな!慌てずまとまって、校舎へ避難しろ!」

 

観客席の女生徒達から、次々と悲鳴が上がる。

機竜使い(ドラグナイト)の士官候補生とはいえ、実戦を経験した者は少ない。

幻神獣(アビス)は出現率こそ低いのだが、基本的に機竜使い(ドラグナイト)の数倍の戦闘力を備えている。

しかも、本来は城塞都市(クロスフィード)から、数十Kl(キル)も離れた遺跡(ルイン)から飛んでくるのだから、近くの砦や関所から連絡が来ているのが普通なのだ。

更に観客席という密集地帯で機竜を展開しようとすれば、召喚までに手間取るのは目に見えている。

観客席の障壁を張るために配置されていた生徒の機竜使い(ドラグナイト)八名ですら、この未曾有の事態にまるで身動きが取れずにいた。

 

「一体、何が……?」

 

女教官のライグリィは生徒をまとめつつ上空を睨み、腰の機攻殻剣(ソードデバイス)に手をかける。

しかし、幻神獣の習性は攻撃を仕掛けた者に反撃し、逃げようとした獲物を追う傾向が強い。

地上から迂闊に手を出せば、上空にいる幻神獣(アビス)が反応し、眼下の観客席に攻撃を仕掛けるかもしれない。

故にライグリィは判断に迷う。

だが、そのとき――――、

 

ギィイアアアアイイエェェエエアアアアア!

 

翼人のフォルムを持つ機械型の幻神獣(アビス)、ガーゴイルが吠える。

同時に、その両翼を羽ばたかせて急降下を始めた。

軌道は一直線、高速で降ってくるガーゴイルの視線の先にあるものは――――、

 

「ッ……!!」

 

リーズシャルテだ。

このままガーゴイルの突進を許せばただではすまない。

しかし、《ティアマト》は暴走状態を無理矢理抑えたためか、右腕以外まともに動かせない。

必死に操縦桿を動かし続けるリーズシャルテだが、それも徒労に終わるだけであった。

そうしている間にもガーゴイルが迫り、牙を剥く。

無慈悲な怪物が、死が近づいてくる。

リーズシャルテの心に焦りが生まれ、顔が青冷める。

 

「させるかっ!」

 

しかし、寸前でオルガが割って入り、身構える。

そしてガーゴイルの体当たりが、オルガに直撃した。

 

「きゃあっ」

 

しかし、オルガはパルチザンを前へ突き出した事で、ある程度は衝撃を抑えられた。

が、それでも幻神獣(アビス)の攻撃は強力で、《獅電》は背後の《ティアマト》ごと吹き飛ばされてしまい、リーズシャルテから悲鳴が漏れる。

背後の壁にぶつかる一歩手前でどうにか態勢を整え、激突を回避できたが、手に持っていたパルチザンの柄が完全に折れてしまった。

先程、リーズシャルテから奪ったキャノンは《天声(スプレッシャー)》で砲身が潰れてしまい、もう撃てない。

《獅電》に残された武装は、ルクスから借り受けた一本のワイヤーテールと数本のダガーのみ、幻神獣(アビス)を相手にするにはあまりに心許ない。

そのうえ満身創痍の《獅電》でどうにかできるのか?

と、考えるオルガだが、そんな余裕もすぐに消えてしまう。

 

「な――――!」

 

ガーゴイルが、眼前に迫っていたのだ。

獲物を仕留め損ねたが故の追い打ちか、右手に生えた鋭い鉤爪を振りかざしている。

真っ二つのパルチザンでは防げない、かと言ってワイヤーテールとダガーでは盾にならない。

肩の小盾で防ごうにも、鉤爪の方が先に胴体に当たる。

ひび割れた装甲など、簡単に砕けて中の肉体が切り裂かれるだろう。

 

(またこんな、呆気なく終わるのか?俺は――――)

 

かつて、突然現れて自分の命を奪った刺客達。

この殺意を向けるガーゴイルという化け物にそれらと姿を重ねながら、オルガは二度目の死を覚悟する。

が、しかし。

 

――――――!!。

 

突如、ガーゴイルの後方から轟音が響く。

何事かと思ったガーゴイルは攻撃の手を止め、そちらを振り返る。

 

「オルガッ!!」

 

オルガの名を叫ぶと同時に、猛スピードで何かが迫って来た。

それが自身にぶつかる直前でガーゴイルは横に避け、態勢を整える。

オルガは一体何が起きたのかと、前方に現れたそれを確認すると……

 

「オルガ、大丈夫!?」

「ライドじゃねぇか!」

「ルクスだよ!絶対わざとでしょ!?」

 

全身を覆う青い装甲、汎用機竜《ワイバーン》を装着したルクスが立っていた。

 

「って、こんなこと言ってる場合じゃなかった。オルガはリーズシャルテ様を連れて早く逃げて!コイツは僕がなんとかする!」

 

ルクスはオルガにそう告げてブレードを構え直し、ガーゴイルを睨みつける。

先ほどまでルクスがいたであろう観客席の方には、格子が破壊されて大きな穴が開いている。

ガーゴイルが突撃したタイミングで《ワイバーン》を展開し、強引に介入したのだ。

 

「あ、ああ、わかった。けど気ィつけろよ」

 

オルガはルクスの指示に同意し、リーズシャルテの方に振り向く。

対するルクスはガーゴイルの注意を惹くためにブレードを振るう。

ガーゴイルは寸前で躱すが、これにより標的をルクスに変更、咆哮を上げて襲いかかる。

並の機竜使い(ドラグナイト)ならたじろぐ気迫だが、ルクスは動じる事なく冷静にブレードを操り、ガーゴイルの猛攻を受け流す。

 

「おい、リーズシャルテ!無事か!?」

「あ、ああ、なんとかな……」

 

リーズシャルテに近づいたオルガは彼女の安否を確認する。

幸い、装甲機竜(ドラグライド)の障壁のお陰で、目立つ外傷は存在しないようだ。

 

「アレの事はルクスに任せる、俺達は下がるべきだ。早く《ティアマト》を解除してくれ」

 

オルガの見た所、《ティアマト》はまともに動けない。

《獅電》で運ぼうにも機体の状態は良好とは言い難く、かなりの時間を費やしてしまうだろう。

そのため《ティアマト》を解くよう、促すが……

 

「いや……それはできない」

「アンタ正気か!?んな状態でまともに戦えるわけねぇだろ!」

「違う!《ティアマト》が解除できないんだよ!!」

「――――――」

 

汗と砂で汚れ、焦りを隠せない顔で、リーズシャルテは怒鳴り返す。

その答えにオルガは言葉を失う。

であれば、彼女はここで足を止めざるを得ない事になる。

今はルクスが食い止めているが、自分達を守りながら戦うのは苦しいだろう。

何かの拍子でガーゴイルがこちらに向かって来る可能性も否定できない。

他に手は無いのか?とオルガは辺りを見渡す。

前方にはルクスとガーゴイル。

少し離れた横には散らばった《空挺要塞》。

そしてルクスがいる場所より向こうの観客席には―――。

 

「……リーズシャルテ、右腕が動くってんなら、その大砲も撃てるのか?」

「え?まあ、な。精々一度が限界だろうが」

 

オルガは脳裏にある一つの案が浮かび、改めてリーズシャルテに問う。

あの時、右腕だけが動いていたのを見逃さなかったのだ。

 

「じゃあ俺とルクスで奴の気を引く。合図をしたらそいつでトドメを刺せ」

「お、お前、わたしに命令する気か?大体、お前こそそんな状態で幻神獣(アビス)とまともに……」

「言ってる場合か!いいから聞け!」

 

リーズシャルテは反論を遮られるが、それほど不快感は感じていなかった。

目の前の男なら、きっと解決してくれる。

オルガの目から、どこかそんな安心感を感じたからだ。

 

「……いいだろう、お前の策に乗ってやる。だが気を引くと言ってもどうする気だ?それが難しいと、お前自身が一番理解しているはずだ」

「もちろん、分の悪い博打だろうよ。けど無計画って訳じゃねぇぜ、俺達ならできる。見ててくれ」

 

オルガはそこで話を終え、半壊の《獅電》でルクスの下に向かう。

その背に浮かぶ、傷だらけの赤い花のエンブレムが、リーズシャルテの目には輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「全員よく聞け!帯剣している生徒は全員抜剣だ!頭上に障壁を展開しろ、剣を持たない生徒の盾になれ!敵の始末はこちらでやる。

今は幻神獣に手を出すな!」

 

一方その頃、観客席とその周囲は混乱と恐慌に包まれていたが、教官の叱咤により複数の生徒が次々と装甲機竜(ドラグライド)を身に纏う。

 

「やれやれ、候補生の皆さんはまだ突発的なトラブルには弱いんですよね」

 

少し離れた位置で生徒達を眺めながら、アイリはため息をつく。

身体が弱く、文官志望であるアイリは機攻殻剣を持っておらず、三和音の三人が機竜を展開し、もし巻き添えを食らっても問題ないように彼女の周りで障壁を張っている。

 

「YES.ですが無理もないかと、学園に幻神獣が現れたなど前代未聞で、ましてや警報も無い完全な不意打ちです」

「確かにね」

 

ノクトの言葉にシャリスは周囲を見渡し、同意する。

 

「彼女達は幻神獣(アビス)の力に動揺してしまっている、待機と防御を命じて正解だ。私の父も言っていたよ、一度恐怖に支配された兵はその戦闘ではまともに動けないと。ルクス君はそうでもなさそうだが、やはり幻神獣(アビス)相手に汎用機竜一機だけでは無理だ。リーズシャルテとオルガ君もあの状態で、早く他の教官達が来てくれなければ―――」

「敵はどうやら、一体だけのようですね」

 

緊張を帯びたシャリスの声に反し、アイリは余裕の笑みを崩さずに呟く。

 

「なら、負けませんよ。兄さんなら―――」

「ちょ、ちょっと何してんの!?危ないって!」

 

しかし、突然のティルファーの叫びに遮られてしまいノクトとシャリスに伝わる事はなかった。

決め台詞を邪魔されて、アイリは不服そうにティルファーを睨むが、彼女が前方の斜め上を見上げているので視線を合わせてみると……

 

「み、三日月さん!?」

 

先ほどまで近くにいたはずの三日月が、自身の巨大な機攻殻剣(ソードデバイス)を背負い、格子をよじ登っていた。

アイリだけでなくノクトとシャリスもそれを目撃し、驚きの表情を見せる。

 

「早く戻れ!目の前の幻神獣(アビス)が見えないのか!?」

 

シャリスの呼びかけが聞こえてないのか、あるいは無視しているのか、三日月は構わずに上り続ける。

今すぐ飛んで連れ戻せば事は済むのだが、自分達より上の立場の教官から待機を命じられた以上、動くことができない。

最も、ガーゴイルが彼に向かったら、その命令に逆らってでも救助に向かうつもりだが、それで間に合うかは分からない。

 

「どうしてこう、兄さんの周りには困った人が多いのですか……!」

 

 

 

 

 

 

 

『ルクス!リーズシャルテが動けねぇから撤退は無理だ、俺に策があるからもう少し時間を稼いでくれ!!』

 

四、五分ほど前に、遠距離の機竜使い(ドラグナイト)相手と会話を可能にする装甲機竜(ドラグライド)特有の機能、竜声からオルガの声が響いた。

一方的に伝えられたルクスは反論しようとしたが、ガーゴイルの相手で精一杯だ。

しかしそれでもガーゴイルの攻撃を防ぎ躱し、今この時までその場から動かさないよう粘り続けていた。

 

「ああもうっ、どいつもこいつも!」

 

先程から自分の周囲で何かを物色している様子のオルガに対して、ガーゴイルにも対してルクスは悪態を吐き、ブレードを振るう。

しかしそれはガーゴイルには届かず、躱されてしまう。

お返しと言わんばかりに鉤爪による攻撃が飛んでくるが、寸前に直撃する前にルクスは必要最低限の動きで避ける。

隙ができたガーゴイルの脇腹に、次は装甲機竜のエネルギーを収束して打ち出す連射型の小銃、ブレスガンを撃ち込む。

装甲機竜(ドラグナイト)の一般的な装備だが、一発一発の威力はそう高くなく、ガーゴイルには数発当てた程度では効果が薄い。

 

キィエァアアアア!

 

だが、ガーゴイルにとってそれは不愉快なものらしく、怒気を孕んだ叫びと共に鉤爪が高速で飛んでくる。

今度は両腕を使ってくるが、右腕と左腕で距離が違う。

先に右の鉤爪で切り裂き、外した際の保険も兼ねた左の鉤爪で追い打ちをかけるつもりだ。

左右から繰り出されるこの二撃は、並の機竜使いでは避ける事も防ぐ事も叶わないだろう。

 

「―――」

 

しかし、ルクスは動揺せずに視線を鋭くし、右腕が命中する寸前でブレードを構え攻撃を逸らした。

鉤爪とブレードがぶつかり合い、激しい火花を起こす程の衝撃を利用し、ルクスは身を屈めつつ一回転。

二撃目がすかさずに迫るが、それは頭頂部の真上の空を切るだけで不発に終わる。

ルクスはこれにより生まれた隙を逃さずに、構え直したブレードを振り上げた。

すると、それはガーゴイルの金属製の左腕を切り裂き、バチバチと電流を吹き出させた。

 

ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァ!?

 

完全に切断とまではいかなかったものの、装甲の隙間に当てられ中の銅線も裂かれたガーゴイルは叫び、無事な右腕で傷を抑えつつルクスから距離を取る。

あの人間は必ず葬らなければならないと、機械の表情を険に変え、殺意を隠しきれない瞳でルクスを睨む。

ルクスの戦闘経験は王都のトーナメントだけではない。

遺跡の警備という仕事をこなし、幻神獣(アビス)と交戦したことも幾度となくある。

更に、この5分の時間でガーゴイルの動きも完璧に把握した。

ルクスはブレードを構え、ガーゴイルを睨み返す。

頭の中で勝利の方程式が組み立てられ、相手がどのような行動を取ろうとも対処できると確信する。

しかし、戦っているのは自分だけじゃない。

ガーゴイルは巨大な翼を広げて身を屈め、突進の姿勢を取る。

そして、曲げた足を蹴ろうとした矢先―――。

 

ガッ……!?

 

突然、自身のこめかみに鈍器で殴られたような衝撃が走る。

ガーゴイルはよろめき倒れそうになるが、咄嗟に姿勢を整えどうにか転倒を防げた。

何事かと、衝撃が来た方向にガーゴイルは顔を向けると、金属製の物体が間近に迫っており、再び直撃してしまう。

 

「待たせたな、ルクス!」

 

物体の正体はティアマトの《空挺要塞(レギオン)》だ。

リーズシャルテが制御を切断し、単なる鉄塊と化したこれらをオルガは拾い集め、ガーゴイルに向かって投げつけたのだ。

極めて原始的な手段だが、対象に飛ばしてぶつける用途の空挺要塞なら使い方もあながち間違ってはいないのかもしれない。

しかし遠巻きに見ていた所有者のリーズシャルテからは「そんな風に扱うなー!」という野次が飛んでくるが、オルガは構わずに次々と《空挺要塞(レギオン)》を思い切り投げる。

ガーゴイルは無数の飛んでくる《空挺要塞(レギオン)》を避け、防ぎ、鉤爪で弾いて対処する。

 

「おっ……らぁッ!!」

 

そして最後の一つを力強く投げ、バックパックの火を吹かして前方に飛ぶ。

ガーゴイルも《空挺要塞(レギオン)》を弾き飛ばし、前方から向かってくる獅電を迎え撃つため腕を振るう。

だが、ガーゴイルはオルガに集中するあまり失念していた。

オルガの攻撃で完全に注意が逸れた隙をルクスは見逃さずにワイバーンを加速、すれ違い様にブレードでガーゴイルの片翼の根本を切断した。

 

グギャアアアアァァァァアアアアッ!!

 

闘技場に悲鳴が上がり、弧を描いて宙を舞う翼が地に叩きつけられる。

背後からの奇襲に身体の一部を失った痛みでガーゴイルの振るった腕も空だけを切る始末。

そのままガーゴイルの後方へ抜けられたオルガは脚を強く蹴り、上空へと跳んだ。

バックパックの後押しもあり、上へ上へと飛んでいくオルガの視線の先には、闘技場と客席の間にそびえる格子の天辺があり、その上に――。

 

「ミカァ!!」

「オルガ!!」

 

騒動のどさくさに紛れて格子をよじ登り、その頂上で機攻殻剣(ソードデバイス)を掲げる三日月の姿があった。

オルガの叫びに答え、相棒の三日月が機攻殻剣(ソードデバイス)を投げつける。

ぐるんぐるんと回転しながら降ってくるそれをオルガは掴み取り、進路を180度回転させて加速する。

幻神獣には通常の武器兵器は通用しない。

故に人類は装甲機竜(ドラグライド)を纏い戦う以外に対抗手段が無い。

しかし三日月が持つ機攻殻剣(ドラグライド)は従来の物より一回りも二回りも大きく、硬く、重く、それこそ装甲機竜の兵装であるブレードに匹敵する。

オルガは機攻殻剣(ドラグライド)を大きく振りかぶり、眼前の標的であるガーゴイルに迫る。

断たれた翼の断面を抑えようにも手が届かず、痛みに悶え続けるガーゴイルは頭上から飛んでくる物に気がつき、臨戦態勢をとろうとするがもう遅い。

振り下ろされた機攻殻剣(ドラグライド)がガーゴイルの頭部を直撃、轟音と衝撃を響かせた。

ガーゴイルはそのままゆっくりと倒れ、ピクリとも動かなくなった。

オルガは『獅電』を着地させ、大きく一息つく。

眼前の相手に大きなダメージを与えたのは間違いない。

だがそれで、安心できる理由はオルガには無い。

呼吸を入れ直したオルガは機攻殻剣(ドラグライド)を構え、それを被せるように肩の小盾も構えて万全の態勢をとる。

すると――。

 

――――――!!

 

とても正常な生物のものとは思えない、けたたましい絶叫が闘技場に響いた直後に『獅電』に重い衝撃が走り、大きく後ろに吹き飛んでしまう。

先の模擬戦でひびの入った小盾が砕け散るが、防御の構えをしたお陰でオルガ自身と機攻殻剣(ソードデバイス)は無事だ。

 

――!――!?

 

ガーゴイルが起き上がり、『獅電』に一撃を加えたのだ。

頭部を大変強く打たれれば大抵の生物は命に関わる。

しかし、その大抵の生物の一線を画す幻神獣(アビス)にとってはそうでもない。

顔の半分が潰れていようが構わずに動き、人間を攻撃する。

だが片方の目玉が潰れ、もう片方の目玉も飛び出したガーゴイルは相手を見据える事ができない。

今の攻撃も記憶に頼りきった当てずっぽうにすぎない。

喉も口も潰れ、呻き声しか出せなくなったガーゴイルは何もない周囲に腕を振り回すしかなくなった。

 

「今だ、撃て!!」

 

叫びと共にオルガは視線を向ける。

その先には砲口の奥が光り、いつでも火を吹くことができる《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》と、それを構えるリーズシャルテの姿があった》

 

「言われずとも……な!!」

 

リーズシャルテの掛け声と同時に、《ティアマト》の最強武装である《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》の砲口から7筋の極大な光柱が放たれる。

それらはガーゴイルの強固な金属の身体をいともたやすくぶち抜き、粉砕した。

 

――――!?!?!?

 

視界を失ったガーゴイルは自分の身に何が起きたのか理解できぬまま、爆散した。

後には黒煙が上がり、パラパラと舞い散る黒い金属片が残ったのだ。

鉄の魔物の敗北と戻った平和に、待機していた女生徒から安堵の歓声が上がってくる。

 

「まったく、なんて男だよ。お前……いや、お前達というヤツは」

 

七つの竜頭(セブンスヘッズ)》を握った《ティアマト》の腕がだらんと垂れ、完全に動けなくなったリーズシャルテは笑う。

そのリーズシャルテの様子に「へへっ」とオルガは笑い返し、ルクスもその二人を眺めて微笑む。

まだ格子の頂上に立つ三日月は無言ではあるが両手を大きく振っている。

 

「しかし――やはり大馬鹿者だな」

 

リーズシャルテは毒吐くも、その表情に毒気は無い無垢な笑顔で天を仰ぐ。

そして、興奮と歓喜の収まらない生徒達を見据えて息を大きく吸った。

 

「聞け!この場にいる皆の物よ!新王国の王女であるわたしから、重大な話がある!!」

 

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