【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート5 裏 前編 『魔術師ちゃんの朝は早い』

「んんっ……ふぅっ! 今日も良い天気」

 

 窓から差し込む太陽の光で目が覚める。

 私は伸びをした後ベッドから起き上がり、昨日畳んでおいたローブを手に取って、そこである事を思い出した。

 

「あ、コイツの事すっかり忘れてた」

 

 隣のベッドには、昨日から一党を組む事となった疾走騎士が居た。

 彼はまだ熟睡している様子で……っていうか、よく兜を被ったまま眠れるわね……。

 

「それにしても、今思えばちょっと大胆過ぎたかしら……?」

 

 会ったばかりの男と同じ部屋で寝泊まりなんて、普通に考えて女子としてマズイ行動だったのでは? 今更ながらそんな考えが頭をよぎるが──。

 

「で、でも一党を組んだものね。これくらいは普通普通……」

 

 うん、そう思うことにしよう。個室を二部屋借りるよりもこっちの方が節約になるし、これは合理的な判断なのだ。

 

「昨日は様子もおかしかったし、もうちょっと寝かしておいてあげましょうか」

 

 彼が目を覚ましていない事を改めて確認してから、そそくさと寝巻きからローブに着替える。

 流石に男性の目の前で着替えをする趣味は持ち合わせていない。

 着替えを終えて、魔術師の帽子を被り、杖を手にして私は部屋を出た。

 

「あ! おはようございます! ゆうべはおたのしみでしたね!!」

 

 ……せっかく頭を切り替えられたのにこれだ。

 

「いや~、言ってみたかったんですよねこの台詞! やっぱり宿屋としての憧れというか!」

「だ か ら ! 私と彼はそういう関係じゃないの! ただの一党(パーティー)!」

 

 全く、相手しててもキリがないわね。つい溜め息が出てしまうわ。

 

「アイツが起きてきたら先にギルドに向かったって言っておいてもらえる?」

「おかのした!」

「あとさっきみたいな変な事、アイツには絶対言わないでよ!」

「考えておきますね!」

「そこは言わないって言いなさいよ!!」

 

 ああもうっ! これがロスって一番言われてるのよ! 多分! よく分からないけどなんかそんな気がする!!

 

「って、早く行かないと依頼が貼り出される時間に間に合わない! 行ってくるわ!」

「行ってらっしゃいませー! お気をつけて!」

 

 慌てて私は宿屋を飛び出し、ギルドへと走った。

 

 

──────────────────

 

 

「……ふぅ、ふぅ、ホントに体力無いわね……私」

 

 すぐに息が上がってしまったが、ギルドとの距離はそこまで離れていないため、到着まではすぐだった。

 辺りを見回すが、どうやら依頼の貼り出しまでには間に合ったらしい。

 さて、間に合ったは良いものの、ここからが問題だ。

 私達冒険者は依頼を受けて生計を立てている。

 つまり張り出される依頼はすぐに取られてしまうと言うこと。

 実入りの良い物なら尚更だ。

 

「アイツに恩を返すためにも、どうすれば効率良くやれるかを考えないと……」

 

 とにかく報酬の良い依頼を見付ける? いや、それでは他の冒険者と同じだ。

 そもそもそういった依頼は難易度が高く、私達白磁には受注すら認められない可能性が非常に高い。

 

「そう言えばアイツ、昨日は下水道に行ってたのよね……」

 

 確かに下水道の依頼は、白磁の冒険者にとって堅実に報酬を得るための、ある意味で貴重な依頼なのだが……。

 

「下水道ってあれほど稼げるものなのかしら……?」

 

 少し確認してみよう、私は昨日世話になった受付嬢の下へと向かった。

 

 

─────────────────

 

 

「ねえ、ちょっといい?」

 

 いつものようにこれから掲示板に貼り出す依頼を纏めていた私は、一人の冒険者に声を掛けられた。

 彼女は昨日、ゴブリン退治に向かい、仲間を失った魔術師である。

 しかしその後、私が仲介した甲斐もあり、同じ新人冒険者である疾走騎士と無事一党を組む事が出来たようだ。

 

「あ、おはようございます! どうされました? 依頼の貼り出しはもう間もなくですが……」

「あぁ、違うの。そうじゃなくって……ええっと」

「?」

 

 一体どうしたのだろうか? 彼女は少し悩む仕草を見せながら問いかけてきた。

 

「昨日、疾走騎士が下水道の依頼を受けてたみたいなんだけど、それがどうにも報酬が多かったのよ。どうやったのかなって……」

 

 あぁ、成る程。昨日彼が受けた下水道の依頼は、確かに結果的に見れば報酬は多くなっていた。

 しかし、それにはちゃんとした理由がある。

 

「あぁ……実はあの人、昨日の時点で残ってた下水道での討伐依頼を全部持っていったんですよ……」

「ぜ、全部!?」

「しかも不意に遭遇した暴食鼠(グラトニーラット)も討伐したらしく……本当に驚きました」

 

 本当にあの人は新人の冒険者なのだろうか?

 いや、没落したとはいえ騎士だったらしいし、戦いには元々慣れているのかも……?

 

「そう言えばそんな事言ってたけど……ん? いや、そうか。そう言うことね」

 

 うんうんと唸っている魔術師だが、そういえば彼女と一党を組む事になった疾走騎士の姿は見当たらない。一体どうしたのだろうか?

 

「あのう、疾走騎士さんが見当たりませんが、何かあったんですか?」

「ん、アイツならまだ寝てるんじゃない? 昨日さんざん働いて疲れてたみたいだし」

「あぁ、成る程。昨日は張り切ってましたからね」

 

 ゴブリン退治と下水道でのハードワーク。そうなるのも仕方のない事だろう。

 

「起きたらすぐこっちに来ると思うから、先に依頼だけでも受けておこうと思ったのよ」

「そうでしたか。どうです? あの方とはうまくいきそうですか?」

「うーん、どうかしらね。その為に私も頑張らなきゃって思ってたところだけれど」

「……ふふっ」

 

 腕を組んで頭を傾げる彼女の返答を聞いて、私は昨日の疾走騎士が言っていた言葉を思い出し、ついつい笑みが溢れてしまう。

 

 

 

 

『彼女の面倒を見るためにも資金が要るんです』

 

 

 

 

「きっと、大丈夫だと思いますよ?」

「そ、そう? なら良いのだけれど」

 

 多く白磁の冒険者を見てきたが、この二人には特に安心感を覚える。……少し羨ましく感じる程に。

 

「では私は戻りますね。もうすぐ依頼の貼り出しをしなきゃいけないので」

「あ、ごめんなさい。助かったわ。ありがとう」

 

 そうして私は職務に戻り、貼り出す依頼の束をまとめにかかった。

 

 

────────────────

 

 

「きっと、大丈夫……か」

 

 彼女は色んな一党を見てるものね。疾走騎士と一党を組めたのは彼女のお陰でもあるし、感謝しないと……。

 

「それにしても目から鱗だわ。そんな方法考えもしなかった……」

 

 受付嬢の話を聞いたお陰で、彼がどのようにして多くの報酬を得たのか、目星を付けることが出来た。

 恐らく疾走騎士は下水道での依頼を複数受け、それらをまとめて遂行したのだろう。

 たとえ複数の依頼であっても、遂行する場所が同じであれば並行してこなす事が出来るため、効率良く消化する事が出来る。

 一つ一つ依頼を受けるよりも、結果的に報酬が多くなるという寸法だ。

 

「下水道ね。あんまり行きたくはないけれど……」

 

 私はあの男に借りっぱなしだ。命を救われ、銀等級の魔女に師事する切っ掛けを作ってもらい……。

 

「だからせめてこれぐらいは……ね?」

 

 受付嬢が依頼の束を持ち席を立った。どうやら貼り出しの時間が来たようだ。

 

「……あれ? 昨日アイツが全部受けたなら、下水道の依頼って今日も残ってるのかしら? ああもうっ! 聞いておけばよかった!」

 

 ええい一か八か! とにかく『下水道』に絞って、依頼を即奪取よ!

 

────────────────

 

「何だかんだ悪くはない成果……よね?」

 

 結果的に得られた依頼は巨大鼠(ジャイアントラット)の討伐。巨大蟲(ジャイアントローチ)の討伐。下水道でのクエストを受けたまま帰ってこなくなった冒険者の捜索。……うん、おいしいわ!

 他の白磁には申し訳ないけど、これも資金のため、卑怯とは言わないでよね。

 

「……ん?」

 

 冒険者達でごった返すなか、たまたま目についた一つの依頼、掲示板の一番隅っこにあったそれを手に取る。

 

「手紙配達? 隣町まで……へぇ、こんなのもあるのね」

 

 報酬は良いとは言えないわね。

 まあ、だからこうして残ってるのでしょうけど。

 

「体力……付けなきゃね」

 

 これくらいなら一人でもいけるかしら? そんな事を考えて私はその依頼を受ける事にした。

 

「あとはアイツ待ちね……」

 

 ギルドの隅にある椅子に座り疾走騎士を待っていると、暫くした後に彼がやって来た。

 顔の見えない兜を被り、両手に盾を携えたその風貌はあまりにも特徴的だ。

 

「やっと来た。遅いわよ」

「すみません、少し寝坊してしまいました」

 

 うん、昨日のようなおかしな様子は見られないし、どうやら回復したみたいね。

 

「ほら、適当にいくつか受けといたわよ。出発は遅くなっちゃったけど、昨日アレだけ依頼を受けてたアンタなら問題は無いでしょ?」

「え……」

 

 先程受けた依頼を疾走騎士に渡すと、それを彼は手に取り、暫く眺めたあと……。

 

「……よくここまで一纏めに依頼を受けれましたね。他の冒険者も多かった筈では?」

「私ほど字を読む事に慣れてる新人冒険者、そう居ないわよ」

 

 実際、他の白磁が読み始めた辺りで剥がしちゃったものね。悪いことしたわ。

 

「凄いですね。自分はあまり字は得意ではないので……」

 

 良かった、役には立てたみたいね。これで余計な事をしちゃってたら立ち直れない所だったわ。

 

「そ、そう? まあ悪い気はしないわね」

「……ありがとうございます。助かりました」

 

 そう言うと疾走騎士は深々と頭を下げ、礼を述べた。

 

「べ、別に……私達、一党だし? これくらいは当たり前よ!」

 

 っ! 顔が熱くなっているのを自分でも感じてしまい咄嗟に帽子で顔を隠した。……ダメだ、つい頬が緩んじゃう!

 

「……その依頼は?」

 

 疾走騎士が指差したのは、彼に渡した依頼とは別の、最後に取った手紙配達の依頼だ。

 

「あぁこれ? 手紙配達の依頼よ。体力付けろってアンタ言ってたじゃない? 丁度いいと思ったのよ」

 

 取るに足らない、ただのおつかいと言っても過言ではない簡単な依頼。それを見た疾走騎士は──。

 

「…………」

 

 何も言わなくなってしまった。

 

「ど、どうしたの? 私、何かまずい事したかしら?」

「……いえ、その依頼は下水道の依頼を終わらせてから……で、構いませんよね?」

「それは勿論だけれど……え? 付いてきてくれるの? 私一人で行くつもりだったのよ?」

「付いていきます」

 

 き、急に圧が強くなったわね。この依頼に何かあるのかしら? どう見ても普通の手紙配達の依頼よね……?

 

「わ、わかったわ。それじゃあ先ずは下水道ね?」

「そうですね。パパパっとやって終わらせましょう」

 

 彼の反応に一抹の不安を覚えながらも、私達はまず下水道へと向かうのだった……。




Q.魔術師ちゃんに語録が伝染してる……してない?

A.知らなーい!
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