【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート6 裏 後編 『勝ったな風呂入ってくる』

 夜、ギルドが冒険を終えた者達で賑わいを見せる時間だ。

 それは冒険に成功した者達だけが得られる、勝利の美酒である。

 受付嬢である私としても、彼らが無事に戻って来られた事は何よりも喜ばしいことだ。

 するとそこへ、新たに二人の冒険者が帰ってきた。あの疾走騎士と魔術師だ。

 私はいつもの営業スマイルで彼らを迎える。

 

「お帰りなさいませ! 手紙配達の依頼はどうでしたか?」

 

 よく見ると二人の装備は若干焦げた跡がある。

 ただの手紙配達でこうはならない筈だが……何かあったのだろうか?

 

「手紙は無事に届けたわ。あとそれと──」

「マンティコアを討伐しました」

「……え」

 

 疾走騎士が背負っていた袋から取り出した物は、とても大きな蠍の尾に見える。

 これは紛れもなくマンティコアの物だろう。

 

「ちょっと待っててください!」

 

 私は慌てて奥にいた至高神の司祭である監督官を呼びに行く。

 こういった大きなイレギュラーによって功績が発生した際、報告に虚偽がないか彼女の《看破(センス・ライ)》で確かめる必要があるからだ。

 

「えっと、では報告をお願いします」

 

 本を読み休憩していた彼女に訳を話し、受付へと来てもらう。

 私は疾走騎士に対し、マンティコアを討伐するに至った経緯の報告を促した。

 

「手紙を配達する道中にある岬にて、飛行しているマンティコアを発見。魔術師である彼女の《火矢(ファイアボルト)》にて先制攻撃を行い、墜落したマンティコアの頭部をこの盾で串刺しにしました」

 

 控えめにいってドン引きであった。何故マンティコアを見付けた時点で逃げなかったのか。

 明らかに白磁、それどころか冒険者登録を行った翌日で相手にしていい怪物ではない。

 念の為《看破(センス・ライ)》を使っていた監督官の方を見るが、彼女は何も言わず頷いた。……どうやら事実らしい。

 

 それにしたってマンティコア……ん? マンティコア?

 

「す、すみませんもう少々お待ちを!」

 

 あることに気付いた私はバタバタと奥へ戻り、山になった書類の束から一枚の依頼書を取り出す。

 

「あった……マンティコアの討伐依頼……」

 

 この依頼はつい昨日受理されたものの、早朝の貼り出しまでに処理が間に合わず、明日掲示板に出される予定だったものだ。

 マンティコアが目撃された場所が隣町の近くにある岬であることからも、彼等が討伐したマンティコアがこの依頼に記載された個体である事は明らかだった。

 

「あー、チェック漏れだねぇ」

 

 付いてきていた監督官の言葉に、ガーンという音が私の中で鳴り響く。

 本来こういった依頼があった際には、近辺での依頼を受ける冒険者に注意を促すのも私達の仕事の1つ。

 とはいえ、冒険者が依頼を受けるのはあくまで自己責任であり、これに関してはギルドが善意で行っている事である。

 

 ……それでもだ。不備があったのはこちら側、二人を危険な目に遭わせてしまったのも事実である。

 

「どうしましょう……」

「うーん、一応支部長に相談してみたら?」

「……そうですね」

 

 がっくりと項垂れつつも、私は事の顛末を上司でもあるこのギルドの支部長に話した。

 その結果返ってきたアドバイスは、一度ちゃんと謝ったうえで彼らには昇級審査を受けてもらおう、という内容だった。

 

「将来有望な若者じゃないか。どんどん先へ進んでもらおう!」

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 そして私は再び彼等の下へ戻り、こちらの不備を説明したうえで謝罪した。

 

「申し訳ありません……こういった不測の事態が起きないよう、管理するのも、我々の仕事なのですが……」

 

 私は深々と頭を下げる。彼らがこうして無事に帰って来れたのは幸いだった。

 もし万が一、最悪の結果になっていたら、私は暫く立ち直れそうになかっただろう。

 

「貴女が悪いわけでは無いでしょう。依頼を受けるのは自分達冒険者の自己責任です。これに関してどうこう言う資格なんて、我々にはありませんよ」

「そう言って頂けると、こちらとしても助かります……」

 

 どうやら疾走騎士は一切こちらを責めるつもりは無いようだ。

 ホッとしたと思いきや、疾走騎士の横に居た魔術師が口を開いた。

 

「でも、それで私達が死んでたらどうしてたのよ」

「う……」

 

 魔術師の棘のある指摘が突き刺さる。常日頃から冒険者を死地に送り出している私にとって、その言葉はとても効くのだ……特に胃の辺りに。

 

「こうして無事に帰って来れたんですし、良かったじゃないですか。送り出した相手が帰ってこないというのは、辛いものですよ?」

「……そうね、ごめんなさい。そっちの都合も考えずに……」

 

 疾走騎士の言葉を聞いて素直に謝罪する魔術師。

 私は気を取り直し、貰ったアドバイス通り彼らに昇級審査の話を持ちかけることにした。

 

「い、いいえ! それでですね、お二人にギルドからお話がありまして」

「話……ですか?」

 

 頭を傾げる疾走騎士に対し、私は話を続ける。

 

「今回の功績を評価して、黒曜への昇級審査をさせて頂きたいのです」

「黒曜……私達が?」

 

 戸惑う様子の魔術師に対し、私は笑顔で頷いた。

 

 昇級審査の基準には、報酬金額や貢献度だけでなく『人格』や『信用』も含まれている。

 

 疾走騎士は『人格』に関しては問題無し。礼儀正しく、私達受付嬢に対する気遣いも見られる。

 では『信用』に関して言えばどうか? 実力は非常に高い。

 しかし冒険で少し無茶をするのが玉に瑕である。

 とはいえ、今日の朝は魔術師の彼女がうまく立ち回っていた。

 今後は彼女がカバーしてくれる事だろう。

 

 魔術師に関しては『信用』に関しては都の学院を卒業したという経歴を持っており、今回の件でマンティコアを撃ち落としたという報告からも白磁としての実力は十分。

 『人格』に関しては、人を寄せ付けない鋭い目付きと棘のある言動は目立つものの、先程のように疾走騎士の言葉はちゃんと受け入れている様だ。

 

 詰まるところ、うまく補いあっているのだろう。冒険でも、それ以外でも。

 

「今日はお疲れでしょうから、また明日の朝、お越し頂けますか? こちらの準備もありますので……」

「分かりました」

 

 疾走騎士が頷いて返事をする。

 私は用意していた今回の分の報酬を取り出した。

 

「それでは報酬をお渡しします! もちろんマンティコア討伐依頼の分も含めてありますので、どうぞ受け取ってください! お疲れ様でした♪」

「ありがとうございました。ではこれで」

 

 報酬の入った袋を笑顔で手渡し、それを受け取った疾走騎士は頭を下げ、この場を後にした。

 しかし魔術師はこの場に留まり、何かを言いたげにこちらを見ている。

 

「え……と、何か?」

 

 気まずくなり私から問いかけると、魔術師は俯いてしまい、帽子で顔が見えなくなる。

 すると彼女は申し訳なさそうに口を開いた。

 

「……さっきはごめんなさい。貴女はアイツと一党を組むのに手助けしてくれたし、本当は感謝してるの。……ちょっと色々あってね」

「そうでしたか。大丈夫ですよ、お気になさらないで下さい。あなた方をサポートするのが、私達のお仕事ですから」

「ありがとう。じゃあ……アイツを待たせるわけにはいかないから」 

 

 そう言って立ち去る魔術師。微かに見えたその表情は、晴れやかに微笑んでいるように見えた。

 

「……私もああやって後ろを付いていければなぁ」

 

 私は、今はここに居ないとある冒険者の事を想う。

 自らが冒険者ではない以上、あの人と一緒に居られる時間は少ない。せめてお食事に誘ってくれたりとかしないかなあ……。

 私はそんな事を考えながら、再び書類仕事を再開するのであった。

 

───────────────

 

 依頼の報告を終えた疾走騎士と魔術師は、ギルド内の酒場で食事を摂ることにした。

 

「フリッテッラの盛り合わせを二人前。飲み物は……自分はミルクで」

「私もミルクがいいわ。お酒飲めないし」

「はぁい!」(うーむ、やはり牛乳なのかしらん……)

 

 フリッテッラは衣揚げの事で、肉や卵だけでなく、ドーナツのようなデザートにも使われる料理だ。それなりに量があり、空腹の二人にはもってこいの注文である。

 

 なお、女給が去り際に魔術師の胸を見つめていたが、魔術師は一切気付かなかった。

 

「お待たせ! しましたぁ!」

 

 注文がテーブルに並べられると二人は女給に礼を言い、料理に手を付け始める。

 

「それで、次は? どうするの?」

「今日やることはもうないですね。これを食べたらお風呂にでも入ろうかと」

「あ、良いわねそれ。……うん、おいしい!」

「ごちそうさまでした」

「はやっ!」

 

 いつの間にか完食していた疾走騎士と、それを見て慌てて自分の分を食べきる魔術師。

 

 あまりにも早い完食に女給は困惑していたが、疾走騎士は意に介さず支払いを済ませ、二人はギルドから出た。

 

「ところで、この街のお風呂ってどこにあるんでしょうか?」

「あの宿、お風呂あるわよ? 別途料金取られるけど」

「本当ですか? じゃあ帰りましょう。今日は大変でしたからね」

「私も早くサッパリしたいわ。一日でこんなに汗かいたの初めてかも」

 

 魔術師は胸元が不快なのか、自らの服を引っ張りながら手で扇ぐが、焼け石に水でしかない事は明らかだった。

 ……彼女の胸元から汗の滲んだ谷間がのぞく。普通の男が見れば唾を呑む光景だろう。

 しかしその普通に、無論疾走騎士は含まれていなかった……。

 

 そして宿へ戻った二人。扉に付いた鈴が鳴ると、奥からあの小さな女主人が出てきた。

 

「お帰りなさいませ! 今日も御無事で何よりです!」

「ただいま、今からお風呂って使えるかしら?」

「勿論ですよ! お一人様銀貨1枚になりますが、構いませんか? あとそこまで広くはないので、ご利用頂くのはお一人ずつとなります」

 

 どうやらこの宿のお風呂はそういう物らしい。

 確かに大浴場等を用意している豪華な宿とは違い、客足が少ないここではその方が効率的なのだろう。

 

「ええ、大丈夫」

 

 了承した魔術師が銀貨を2枚支払い、女主人はそれを受け取った。

 

「申し訳ありません……」

「良いのよ、そっちも商売でしょ?」

 

 この宿の宿泊費を考えれば、入浴代合わせても結果的には安く感じる程だ。全く問題にはならない。そう考えて魔術師は返事をしたのだが──。

 

「お二人ご一緒に入れる大きさじゃなくって……」

「謝ったのそっち!? 誰もそんな事求めてないからっ!!」

 

 女主人は今日も平常運転だった。

 ちなみにこの後二人は入浴後、彼女に再びダブルの部屋を薦められるが、それを魔術師が拒否したのは言うまでもない。

 




Q.また疾走騎士くんが宿に入ってからボーッとしてる……。

A.よし! もう宿だし指示いらんやろ! 俺も風呂入ってくるわ!
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