【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート9 裏 中編 『魔術師ちゃんと水着みたいなアレ』

「ふあぁ……よく寝たわ」

 

 昨日、私はゴブリンスレイヤーから燃える水(ガソリン)を貰った後、宿屋へ戻って眠る事にした。

 一応寝る前に疾走騎士の防具も軽く洗っておいたけど……どうなのかしら? やらないよりはマシよね?

 

「……まだ寝てるじゃない。大丈夫かしら、流石にこのまま寝たきりって訳じゃないわよね?」

 

 疾走騎士の方を見るが、未だ目覚める気配はない。

 いっそのこと強引に起こしてみるかと考えてみたが、流石に悪い気もする。

 

「あの一党、確か僧侶が居たわよね……?」

 

 そこで私は救助した鋼鉄等級一党の中に、回復職である僧侶が居た事を思い出した。

 昨日の事もあって少し気まずいようにも感じるが、頼んで治療の奇跡を使ってもらおうかと思案する。

 そもそもこうなったのも彼女達が原因なのだから、それくらい頼んでも問題は無い筈だ。

 

「四の五の言ってられないわね、そうしましょう」

 

 私はいつものローブへと手早く着替え、部屋を出る。

 すると目当ての鋼鉄等級一党がカウンターで宿の主人と話をしているのが見えた。

 

「昨日、硬いものを叩いたような大きい音が鳴ったんですけど……御存知ありませんか?」

「ギクッ! ……さ、さぁ? 私達は知らないよね?」

「あ、あぁ! 身に覚えはないな」

「そ、そうですね! きっと子供が近くで遊んでたんですよ!」

「えぇ、困ったものですね」

「うーん、やはりそうなんでしょうか? 突然すぱこーん! って鳴ったんですよ! それも三回ですよ三回。ビックリしちゃいました」

 

 身に覚えがないって明らかに嘘でしょあれ、顔が引きつってるじゃない。リアクションが分かりやすすぎるでしょ。

 

「ところで当宿の泊まり心地は如何でしたか!? お客さんは少ないですが、宿としての自信はあるんですよ!」

 

 あ、話題が変わってホッとしてるわね。

 全く、一体なにをやってたんだか……。

 

「いやーこんな安くて良い宿があるなんてねー!」

「全くだ、特に羽毛のベッドが素晴らしい」

「お風呂があるのもいいですね!」

「私達も今後、ここに宿泊させて頂きます」

「わぁ! ありがとうございますっ!」

 

 えぇ……これからもここに泊まるつもり? 何か嫌な予感がするんだけれど?

 しかしそこで私は、背後に人の気配がある事に気付く。

 

「……あっ! 疾走騎…!?」

 

 振り返ると、そこに居たのは疾走騎士だった。

 しかし、彼の姿を見た私の心臓は大きく跳ねる。彼がいつもの兜を被っていないのだ。

 

「ちょ、ちょっと! 兜っ! 忘れてる!」

 

 私は彼の手を掴み部屋へ引っ張り込むと、置いてあった兜を取って手渡した。

 

「昨日私が外して洗ったのよ。汚れてたから……」

 

 彼は兜を被ると、そこでようやく口を開く。

 

「ありがとうございます。助かりました」

 

 ……やっぱり礼を言われるのは恥ずかしいわね。

 さっきこいつの目を見たせいでまだ鼓動が早いままだし、ホント心臓に悪いやつだわ。

 

「い、良いわよ別に。それより、もう心配は要らないのよね?」

「はい」

 

 腕を組み、平静を装いながら問いかけると、彼は頷いて返事をした。

 相変わらず淡々とした会話だけれど、それがどこか心地よく感じてしまい、思わず笑みが溢れる。

 

「そ、じゃあ行きましょ」

 

 そして部屋の扉を開ける。

 すると目の前には鋼鉄等級の一党が横並びで待ち構えていた。

 

「うわっ!? な、何よあんた達!?」

「すまなかった!!」

 

 驚愕する私を余所に、開口一番メンバーの一人である森人がこちらに頭を下げて謝罪してきた。

 

「昨日は善意で私達を助けてくれたにも拘わらず、無礼を働いてしまった! どうか許してくれ!」

 

 あぁ、昨日疾走騎士が降格された冒険者じゃあないかって疑ってた件かしら?

 正直ちょっと腹が立ったけど、まあ私が口を挟むのはおかしいわよね。

 ここは疾走騎士に判断を任せましょ。

 

「あ、いいですよ」

 

 か、軽いわね。

 それはそれで……ちょっと私が納得いかないんだけれど?

 

「警戒心が強いのは、冒険者として当たり前ですからね。森人なら尚更です。寧ろ素晴らしい事だと思いますよ?」

「ほ、本当か!?」

 

 疾走騎士の言葉に彼女達全員が安堵している様子だ。

 そして頭目の自由騎士が一歩前へ出る。

 自らの胸に手を当てて、疾走騎士を真っ直ぐに見詰めながら発した彼女の言葉は、私を更に驚かせるものだった。

 

「この御恩は決して忘れません、我々に出来る事なら何でも仰って下さい!」

 

 な、何でも!? ……い、いやいや、これは私と同じで変な意味じゃあないはず。

 私達って言ってるし、何もコイツら全員がそのつもりな訳ないじゃない。

 ……ないわよね? 目を輝かせて疾走騎士を見てるのがすっごく怖いのだけれど?

 

「それでしたら……もし良ければ、自分達と協力関係を結んでもらえませんか?」

 

 人差し指を立てながら提案する疾走騎士に、彼女達全員が口を半分開けてポカンとする。

 

「いざという時に頼れる人が居れば、とても心強いですからね」

 

 ……成る程ね、確かに今までの冒険では疾走騎士が無理をしてばかり。

 私も力を付けてきてはいるけれど、一党が二人だけだとどうしても限界があるし、頼れるあてがあれば受注出来る依頼の幅も広がるものね。

 

「す、少し待っていて下さい。話し合ってみます」

 

 すると彼女達は少し距離を離し、こそこそとメンバー同士で相談を始めた。

 

「一応これが無難な所だと思いますが……どうですか?」

「ま、下手に無茶な要求するよりは良いんじゃないかしら?」

 

 待っている間に疾走騎士は私にも意見を求めてきたが、私としても異論はない。小さくため息をつき彼の意見に賛同することにした。

 

 

「ん? 今何でもするって言ったよね作戦は失敗ね」

「おっかしーなー、うまくいくと思ったんだけど……」

「やはり言い方が回りくどかったのだろう」

「ですが協力関係という事ですし、一歩前進と考えて良いのではないでしょうか?」

「と、なると答えは一つね……」

 

「「「「私共一同、末永くよろしくお願い致します!!!!」」」」

 

 やっぱり今からでも反対した方が良いのかもしれない。

 相談していた内容も思いっきり聞こえていたし、その内容があまりにも不穏過ぎる。

 先程の判断が致命的な失敗(ファンブル)で無いことを、心の中で祈るばかりだ。

 

「六人部屋を用意した方が良いのでしょうか? 六人用のベッドは今から発注するのでお時間が掛かりますが……」

「しなくて良い!!」

 

 横で聞いていた女主人がまたもやいらぬ気を利かせようとして来たので、全力で阻止しておいた。

 

───────────────

 

 

 

「街道に陣取る盗賊の殲滅……ね、これも宣託(ハンドアウト)?」

「えぇ、まあそうですね」

 

 その後、疾走騎士と魔術師の二人はギルドで黒曜の認識票を受け取り、次の依頼を受注した。

 怪物を相手にした今までの依頼とは異なり、今回の依頼討伐目標は盗賊、つまり同じ人間である。

 疾走騎士が鋼鉄等級一党との合同で、この依頼を受注する事を提案し、彼女達もそれを了承。準備を整えるため、まずは工房へ向かうこととなった。

 

「そんなポンポンと啓示送られてアンタも大変よね。よっぽど気に入られてるのかしら?」

「それは……どうなんでしょうね」

 

 魔術師の問いを、どこかばつが悪そうにはぐらかす疾走騎士。

 一方後ろから着いてきていた鋼鉄等級一党、その頭目である自由騎士が二人の会話を聞いた途端、再び目をキラキラと輝かせだした。

 

宣託(ハンドアウト)……!」

 

 自分達を救った彼が宣託(ハンドアウト)を受けて行動していると聞いた自由騎士は、輝かせた目を疾走騎士に対して向けている。

 そんな彼女を見た他のメンバー達はお互いに見合ってから頷き、一つの結論を導き出した。

 

「やっぱり壊れてるじゃないか……」

 

 森人魔術師の呟きは、自分の世界に入ってしまった自由騎士には、届きそうになかった。

 

 そして工房に着くと、まず疾走騎士がマントを購入し、その身に纏う。

 彼が選んだのは深緑色に塗られた革のマントだ。

 

「ほう、森や草原で隠れるには最適だな」

 

 彼の衣装を見て森人魔術師が感心したように呟く。

 

「自分の盾は目立ちますからね。相手が人間なら、こういった物も必要かと思いまして」

 

 彼が持つ盾ごとマントに覆われるので、印象もかなり変わってしまうが、どうやらそれが目的のようだ。

 

「そうだ、鎖帷子とか着込むのはどうですか? そのローブだけでは身を守れないでしょう?」

 

 並べられた防具を眺めている魔術師に、疾走騎士が声を掛ける。

 彼女が今装備しているローブは厚めの布で作られた物だが、その防御力はあまりにも低く、冒険者として最低限の物と言っても過言ではないだろう。

 

「でも流石にこれ以上着るのは色々と辛いのよね……」

 

 そして魔術師自身も今の装備に不安を感じていた。

 しかしそれは防御力の面ではなく、動き辛さ、そして暑さによる体力の消耗などと言った面での問題だ。

 これ以上装備を増やせば余計にバテやすくなるのは目に見えていた。

 

「それならそちらも新しく買い換えましょう。なるべく薄い物が良いですかね?」

 

「え……そ、そういうのが疾走騎士の好み?」

 

 疾走騎士の言葉を耳にした魔術師の顔は真っ赤になった。

 なぜなら疾走騎士と魔術師の一番近くには、薄くて軽い……まるで水着のような防具……と言って良いのかも分からない物が飾られているからだ。

 しかし決して疾走騎士はそれを指し示した訳ではなく、彼はただ、自らに与えられた『なるべく薄いやつ』という指示通りに発言しただけに過ぎない。

 

 しかし魔術師はごくりと唾をのみ、息を荒くしながらその防具へ手を伸ばす──。

 

「これはどうだ? 動きやすさでいえば悪くない筈だ」

 

 ──が、そこへ森人の魔術師が別の防具を持ってきて疾走騎士に手渡した。

 彼女が持ってきた防具は胸元に大きな隙間があり、他にも肩から脇にかけて露出してしまうような部分がある。

 しかし下はスカートではなく、裾に足を通すズボンタイプであり、これはもはやローブとは言い難い。

 とはいえ、その形状故に動きの制限は一切無く、今回の要望を全て満たす代物である事に違いはなかった。

 

「かなり動きやすそうですね。良いと思いますが……どうですか?」

 

 疾走騎士はそれと鎖帷子も加え、二つの防具を魔術師に差し出す。

 魔術師は安心したような、しかし微かに残念そうな表情を見せたが、頷いてそれを受け取った。

 

「ん……じゃあ着替えてくる」

 

 魔術師は防具を試着する為にあるスペースへと入っていった。

 ちなみに工房では装備を試着できる。

 サイズが合わなかったり、思ったより動き辛かったりといった問題を後で発生させない為だ。

 

 疾走騎士は魔術師を見送ったあと、魔術師へ渡した防具二つの値段を確認する。

 

「……ギリギリ宿代が残る程度ですね」

 

 先程買ったマントは革製ではあるものの、殆ど加工に手間が掛かっていない為、そこまで高価な物ではない。

 しかし魔術師に渡した物はそうではなかったらしく、マンティコア討伐の稼ぎを殆ど吹き飛ばす程の物だった。

 

 すると、自身の所持金と防具の値段を見比べていた疾走騎士に対して圃人野伏が声を掛ける。

 

「いざとなったら私達の部屋に来る? ついでに先輩のお姉さん達が色々と教えてあげちゃうよ~?」

 

 圃人野伏は口をまるで猫のようにして不敵な笑みを浮かべながら疾走騎士に寄りかかった。

 しかしその瞬間、彼女は兜を被った自由騎士に耳を摘ままれ、疾走騎士から引き離される。

 

「流石圃人、油断も隙もないわね……」

「ちょっ! 痛たたたた! リーダー待って! 耳がのびちゃう! 森人になっちゃう!」

「そんな事で森人になられてたまるか!」

「色々って、どういう意味なんでしょうね? 私達にも教えてもらえますか?」

 

 一党メンバーの手により工房の隅へと連れていかれた圃人野伏は、滝のように汗を流しながら種族柄小さめであるその身を更に縮こませる。

 

「前回の反省を踏まえて新しく兜を買ったのだけれど、頭部をキチンと守れるか不安だったの。丁度良かったわ」

「ちょ、丁度良いとは……?」

 

 自由騎士が被っている兜は顔が隠れるタイプではない。

 視界を遮ってしまえば状況の把握が遅れるかもしれないと考えての事だろう。

 しかし頭はキチンと保護されており、スリングの投石を受けてもびくともしない程度には頑丈そうだ。

 

「これで大丈夫なら、問題無しって事ね」

「……ま、まさか」

 

 そんな兜を被った自由騎士は、圃人野伏の頭を両手で掴むと自身の目の前でガッチリと固定した。

 

「暴れないでよ……暴れないで……」

「り、リーダー許して! そっちの兜が大丈夫でも私の頭が壊れちゃーう!」

 

 圃人野伏は手足をバタつかせるが、一切抜け出せる様子はない。

 最早彼女には絶望しか残されていないのだった。

 

「スゥー……《聖撃(ホーリー・スマイト)》(頭突き)ッ!!」

「にゃー!!!」

 

 工房に鈍い打音と汚い悲鳴が響き渡った──。

 

 

─────────────────

 

 

「疾走騎士、どう……かな?」

「あぁ、良いですね」

 

 防具の装着を終えた私は疾走騎士の下へ戻り、意見を求めた。

 彼はうんうんと頷いて満足気。とはいえそれが見た目ではなく性能面での話だということは察しがつく。

 師匠の装備に比べて、肌を露出している面積は引けを取らないだろう。

 しかしその露出している部分も鎖帷子に覆われている為、防御力に関しては見た目以上に期待が持てる。

 胸元が開けてるお陰で前みたいに蒸れる事もなさそうだし、機能面で言えば正直凄く良い。

 サイズもぴったりだし、スカートじゃなくてズボンになってるのが動きやすいわね。

 ただ全体的にぴったり過ぎて体のラインがそのまま分かってしまうのはちょっと恥ずかしいかも……。

 

 まあ、さっき飾られてた危ない水着のような防具に比べれば……全然普通よね?

 

「でもこれじゃあ斥候とかに間違えられないかしら?」

 

 今私が着ている装備は身軽さを重視しながら防御力も確保するため、結果として魔術師には見えないデザインになってしまっている。

 すると疾走騎士が頭を傾げながら答えた。

 

「それで良いと思いますが……」

「え? ど、どうして?」

 

 彼の意外な返答に私は戸惑った。

 もしかして魔術師の格好が似合わなかったとか、そういう? だとしたらちょっと……いや結構ショックかも……。

 

「魔術師って率先して狙われてしまう役職なのに、自分は魔術師ですってアピールする必要は無いじゃないですか」

「!」

 

 た、確かに……それは盲点だったわ。

 いや本当にそうよね。神官とかと違って教えがあるわけでもないし、それっぽい装備に拘る必要はないじゃない。

 

「……ふふっ、アンタってやっぱり変わってるわね」

「そうですか?」

「そうなのよ。でも……それが良い所よね」

 

 失敗ばっかりで、不幸な目にばっかりあって、それでも色んな事を考えて……頑張ってる。

 だから私はそんなコイツに惹かれていて……放ってはおけないのだろう。

 

「失礼、身内が無礼を働きました。では参りましょう」

 

 するとそこへ鋼鉄等級の一党も戻ってきた。

 無礼? 私が着替えてる間に何があったのか聞きたい気もしたけれど、頭に大きなコブを作った圃人が頭目の彼女に担がれているのを見て、私はため息をつくだけに留める事にした。

 

 そして、私達は盗賊退治へと赴くのだった──……。

 




Q.装備によって役職をアピールするメリットは無いのですか?

A.不足している役職を求めている一党から誘われやすくなるというメリットはあると思います。その点魔術師ちゃんは他の一党に行くつもりは無いみたいなので……。
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