【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート10 裏 後編 『北の遺跡へ』

 随分と懐かしい夢を見た。

 故郷の小さな農村で暮らしていた時の夢だ。

 母は優しい人だったが、昔から体が弱かった。

 父は自分が幼い頃、怪物に襲われて死んだらしい。

 だから自分が働いて、何とか暮らしを支えていた。

 そんな自分を気の毒に思ったのか、村の人達は皆、優しくしてくれた。

 

 農業の手伝いをして、食料を分けてもらう。そんな毎日に自分は十分満足していた。

 しかしそんな日常も、あるきっかけを境に終わりを告げる。

 

 ……村に疫病が蔓延したのだ。

 

 体力の無い老人や子供から……一人、また一人と息を引き取っていく。

 元々体が弱かった母も日に日に衰弱していった。

 

 病に苦しむ人達の呻き声が、村のあちこちから聞こえてくる地獄のような有り様。

 

 それから毎日、自分は村にあった教会に通った。皆の病を治してくれと、この村を救ってくれと、ただ祈り続けた。

 

 ……しかし──。

 

 《祈りは天に届かなかった》──。

 

 ある日、感染していない者達だけで集会が行われた。

 都に医師を呼びに行こう、このままでは間違いなく村が滅びる。そう、一人の若者が声を上げた。

 とはいえ、都には急いでも二日はかかる距離。おまけに途中怪物に襲われる危険もある。

 誰が行くかという話になり、皆が黙り込んでしまったので自分が手を上げた。

 

 自分が居ない間、母は教会のシスターに預ける事にした。

 彼女は自分が幼い頃から教会へ祈りを捧げに行くと、必ず共に祈りを捧げてくれた人だ。

 いつも笑顔で、優しくて、まるで姉のような存在だった。

 

 ……しかし、彼女も既に感染していたのだ。

 

 村を出る際、母から手紙と、一振りの剣を渡された。

 話を聞くと、母は元々騎士の家系だったらしく、農民である父との結婚を反対され、半ば駆け落ちする形でこの村へ来たのだそうだ。何とも思い切った事をしたものだ。

 

 母は、私に何かあれば……私の父、あなたの祖父を頼るようにと、咳き込みながら告げる。

 

 ……そうならないよう、頑張っているというのに。呆れたように言うと、シスターも笑っていた。

 

 そして……走った。なるべく怪物との遭遇(エンカウント)を避けながら、眠る間も惜しんで走り続けた。

 ……やむを得ず戦う羽目になる事も何度かあったが、母に手渡された剣を振るい、なんとか生き延びて都に到着。

 

 自分はすぐに医者を探した。

 疫病を治せる医者は居ないかと聞いてまわった。

 すると、自分の前に現れたのは──。

 

 

 ──軍の兵士だった。

 

 

 あぁ、今考えれば当然だ。疫病の蔓延する村から来た人間を、そのまま放置する訳にはいかない。

 都から追い出された自分は村へ戻るしかなかった……。

 

 失意のなか、突然胸に鋭い痛みが走り、咳き込む。

 口を抑えていた手には血が付着していた。

 

 ここ数日で疲労が限界に達していた為、抵抗力が落ちていたのだ。

 都に病を持ち込んでしまっただろうか? いや、そんな事はもうどうだっていい。

 

 ……死にたくない。

 

 そんな、ごく単純で、この世界ではありふれた祈りは……遂に届いた。

 

 奇跡が起きたのだ。胸の痛みは病と共に一瞬で消え去った。

 

 ようやく手に入れた希望。これがあれば皆を救える。

 疲労で意識を失いそうになりながら、それでも必死に走り、何度も躓いては転んだ。

 そうして丸一日走り続け、遂に故郷の村へ着く。

 

 しかし……そこで自分が目にしたのは……。

 

 

 

 

 ──真っ黒に燃やし尽くされた故郷の村と、黒いコートに身を包み、鳥のマスクを被った只人だった。

 

 

 

 

 黒い鳥の制止を振り切り、教会があった場所に向かう。

 焼けた瓦礫しかそこには無かったが、それを押し退けた所でシスターを見付けた。

 彼女はまだ辛うじて息があったが、まともに動く事も出来ない状態だった。

 なんとか彼女を引きずり出して、その場へと寝かせる。

 

「シスター、ただいま戻りました」

「うん、おかえりなさい」

「シスター、自分、解毒の奇跡を賜りました。これで皆を救えます」

「ふふ、良かった。貴方ならきっとやってくれるって信じてた」

「…………っ!」

 

 しかし、全ては手遅れだった。

 この村も、住んでた皆も、全て燃えてしまった。

 

「ごめん……ね? お母さん……も」

 

 シスターの言葉も、実際は殆んど聞こえていない。

 口の動きと微かに出た声で、辛うじて何を言おうとしているのかが分かる程度だ。

 

「良いんです、もう……話さないで」

「……羨ましいな。私じゃなくて、地母神様はきみを選んだんだ」

「本当に……何ででしょうね」

「ふふ、私には分かるよ? きみ、放っておけないもん」

「……」

「慌てん坊で、臆病で、失敗ばっかりで」

「……酷いですね」

「でも、頑張り屋で、優しくて、挫けない……」

「シスター……」

「ねぇ、お願いがあるの」

「はい」

「抱き締めて?」

「……はい」

 

 溢れそうになる涙を堪えて、シスターを抱き締めると、彼女もこちらの背中に手を回す。

 

「大丈夫、きみは強いから、これから何があっても乗り越えられる。お姉さんが保証する」

「はい」

「地母神様への祈りはこれからもちゃんと捧げてね」

「はい」

「女の子は泣かせちゃダメよ?」

「……はい?」

「きみ、慌てん坊ですぐどこかへ行っちゃうから、いつも言いそびれてたんだよ?」

「何を……ですか?」

「……言わないよ。今回は私の番だから」

「……」

「それじゃあ……ね」

「……はい」

「きみを好きになる娘は……私よりももっと……積極的になるようにしてあげないと……いけない……かな」

「え……?」

 

 その言葉と共に、背中に回されていた彼女の手がするりと落ちる。

 

「シスター?」

 

 ……彼女の表情は穏やかなままだった。

 

 暫く涙が止まらなかったが、亡骸をそのままにはしておけない。シスターを……いや、皆を弔ってやらねば。

 立ち上がり、焼け残った農具が無いか探していると、背後から黒い鳥がやって来た。

 何をしているのかと聞かれ、自分はせめて、皆を土に還したいと答えた。

 

 見付けた円匙(スコップ)で大きな穴を掘ると、変わり果てた皆を一人、また一人と瓦礫から見つけ出しそこへ埋めた。

 ……もちろんその中には母とシスターも居る。

 

 それを黒い鳥は後ろからずっと見続けていた。自分は振り返って、黒い鳥へ告げる。

 

 ──殆んどの人が既に手の施しようがない状態だった事は確かだ。

 感染が別の村や都へと拡がる可能性も十分にありえた。早急に対処を行ったのは合理的な判断だ。

 

 しかし、まだ助けられた人が居たことに間違いはない。

 それだけは覚えておいてくれ──と。

 

 黒い鳥は驚いた様子で、私を恨まないのかと聞いてきた。

 ……自分はただ空を仰いだ。

 

 女の子は泣かせたらダメだと言われたばかりだ。

 彼女との約束を……早々に破りたくはないと思った。

 

 俯いた黒い鳥の表情は、マスクで読み取れなかった。

 あぁ……本当に、何故こんな事になってしまったのか。

 誰が悪い訳でもないのに、こんな事が起こってしまうのか。

 この世界は一体何なのだろうか。

 分からない、何も分からない。

 

 そうして皆を埋め終えて、自分は意識を失った──。

 

───────────────

 

 疾走騎士の朝は早い。

 ギルドでは朝に依頼の貼り出しがある為、それまでに用意を終える必要があるからだ。

 

 目が覚めた彼は身支度を整え、先ず兜を被ったところで魔術師を起こす。

 声を掛けながら眠る彼女の肩を揺らすと、豊かな胸が更に大きく揺れた。

 

「ふぁ……おはよ」

 

 魔術師は目覚めると、小さく欠伸をしながらすぐに羽毛のベッドから出た。

 

「準備の間に此方は装備の手入れをしてますので、終わったら声を掛けてください」

「ん」

 

 寝惚け眼の魔術師を背後に、疾走騎士は部屋の隅に座り込むと油を染み込ませた手拭いで盾の手入れを始める。

 

「着替えるから振り返らないでよ?」

「勿論です」

「……それはそれで納得いかない」

 

 黙々と疾走騎士が作業をする後ろ姿を見ながら、魔術師は一旦下着姿を晒すも、直ぐに帷子を身に付ける。

 荒い目で編まれたその鎖の胴衣は黒く塗られており、隠密性がかなり高い。

 鎖自体も細く、かなり軽い作りではあるが、それでも防御力は十分備わっている。

 魔術師としても気に入っている品だったが……勿論性能だけが気に入っている理由ではないことを、彼女は自覚していた。

 そして革のズボンとビスチェを身に付け、着替えを終える。

 

「もういいわよ」

「此方も丁度終わりました。では行きましょう」

 

 疾走騎士は手入れ道具をしまい込み立ち上がると、部屋の扉をそっと開け、辺りの様子を伺う。

 

「何してるのよ?」

「……また待ち伏せされているのではないかと」

「あぁ……」

 

 こそこそと部屋を出る疾走騎士と、その後ろからいつも通り堂々と着いていく魔術師。

 すると受付でホットミルクを飲みながら本を読んでいた女主人が二人に気付く。

 

「あ! おはようございます! 昨夜はお楽しみでしたね!」

 

 魔術師は女主人のもはやお馴染みになった挨拶に、ぐぬぬと苦い顔を浮かべ、それに対して疾走騎士は辺りを見回していた。

 

「あの一党はまだ起きてきていないんですか?」

「そうみたいです。どうかなされました?」

 

 女主人の言葉に、疾走騎士はホッとしたように息をつく。

 

「彼女達に、今日の所は自分達だけで問題ないと伝えておいてもらえますか?」

「なるほどお……分かりました!」

 

 昨日は自由騎士率いる一党と協力し、合同で依頼を遂行していた疾走騎士だったが、今日のところは彼女達の手を借りる程の依頼を受けるつもりは無いようだ。

 

「よろしくお願いします、では」

「いってらっしゃいませー!」

 

 女主人が二人を見送ると、その直後、ある一室の扉が勢いよく開け放たれる。

 そこはあの鋼鉄等級一党が宿泊している部屋だ。

 

「あああああああああ!! 寝坊したああああ!」

「全く! たるんでるぞ!」

「あの……寝坊したのは私達全員ですよ?」

「昨日は夜更かししてしまったわね……」

 

 慌ただしく部屋を出てくる彼女達は、昨晩自由騎士が帰ってきた後も暫く眠る事なく、話し合いを行っていたようだ。

 

「おはようございます! 昨日はお楽しみでしたね!」

「えぇ、少し盛り上がってしまいました」

「だってリーダー、あの人の素顔見たんでしょ? ずるい! 私見たこと無いのに!」

「意外と優男……だったか。確かにあの戦いぶりからは想像も出来んな」

「冒険者は容姿を見られがちですものね。侮られたりしないように、あの兜で隠しているという事でしょうか?」

 

 昨日、疾走騎士は魔女への報酬として兜を脱いだ時、その場に居た自由騎士もまた、彼の素顔を見ていた。

 その話を聞いたメンバー達は騒然とし、眠るのが遅くなってしまったという訳だ。

 

「その彼から伝言を預かってますよ? 今日は大丈夫だって言ってました」

 

 その言葉に圃人野伏がガックリと肩を落とす。

 

「な~んだ、残念」

「仕方あるまい。あちらにはあちらの都合があるだろうしな」

「今回は私達だけで頑張りましょう!」

「えぇ、いつまでも彼に頼っていてはいけないわ。私達は、私達の為すべき事を為しましょう」

 

 疾走騎士の頼もしさを既に知っているが故に、彼が今回同行出来ない事は確かに残念に思う。

 とはいえ、彼とはあくまでも協力関係に過ぎないのだ。

 自身の一党だけで苦難を乗り越える強さを身に付ける必要があると、自由騎士は考えていた。

 

「そだね。よっし! それじゃあ、張り切ってこー!」

「やれやれ、元気な奴だ」

「ふふ、良いことではないですか」

「そうね、それでは行ってきます」

「はぁい! お気をつけてー!」

 

 宿を後にする自由騎士達を、女主人は手を振って見送る。

 

「……皆さん、生きて帰って来て下さいね」

 

 宿に泊まっていた冒険者がある日突然帰って来なくなる。この世界では良くある事だ。

 祖母の手伝いをしていた頃、子供の自分に優しくしてくれた冒険者の遺品を泣きながら整理した事もあった。

 願わずには居られないのだ。

 どんな形であれ、彼らの幸せを──。

 

───────────────

 

「で、この依頼で出てくるのは何なの? ドラゴン?」

 

 魔術師は一枚の依頼書を二本の指で挟み、ぺらぺらと揺らしながら疾走騎士に問う。

 

「どうしたんですか? 藪から棒に」

「だって、今までずっと効率の良い依頼ばっかり受けてたのに、突然ただの輸送依頼なんて……何かあるとしか思えないじゃない?」

「それはまあ……」

「それはまあ……じゃないですよ!! 何ですか人聞きの悪い!!」

 

 バァン! と受付のカウンターを叩き二人の会話に割り込んだのは受付嬢である。

 一枚の依頼書を持ってきた途端とんでもない事を話し出した二人に、彼女は御冠のようだ。

 

「前回の事は申し訳ないと思っていますし、冒険に不測の事態が付き物だというのは分かりますが、そういう話をされるとギルドの評価が下がるんです!」

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 あまりの迫力に疾走騎士と魔術師の二人は声を重ねて謝った。

 以前マンティコアと遭遇してしまった事や、彼の生い立ちを含め、疾走騎士の不運さを受付嬢はよく理解していたが、そう何度も同じことがあってはギルドとしてもたまった物ではない。

 

「依頼内容に不服があるのでしたら、受けなくても結構ですよ?」

「う、受けます」

「なら、今回は大目に見てあげましょう」

 

 ──困惑する彼の姿が、どこかゴブリンスレイヤーと重なって、つい意地悪をしてしまった。

 受付嬢は気を取り直し、依頼の概要を説明し始める。

 

「えっと、依頼主は医師さんですね。都から派遣されて、方々の村で活動しているみたいなんですが、食料品や薬品の消耗が激しいらしく、その補給をお願いしたいとの事です」

「都から派遣された医師……ですか」

 

 すると疾走騎士は何か思うところがあるのか、俯いて黙り込んだ。

 

「目的地は……北の方? 結構距離があるわね……」

「物資は工房で受け取れますので、よろしくお願いしますね!」

「えぇ。任せてください」

 

 受付嬢の言葉に対して少しの間を置いて返事をすると、疾走騎士と魔術師の二人は背を向けて、工房へと向かった。

 

───────────────

 

「途中雨が降りそうね……」

 

 工房にて、物資の受け取りと消耗品の買い揃えを済ませた私達は、直ぐ様街を後にした。

 すると徐々に雲行きが怪しくなって来ている事に気付く。

 どうしましょ、コートでも買った方が良かったわね……。

 

「もし降ってきたら二人でこのマントを被りましょう。雨は凌げる筈です」

「え……二人でその一枚のマントに?」

「そうなりますね」

 

 それなら何とかなりそうだけど……う~、なるべく降らないでよね。

 

 ──或いは、それが悪かったのか。それからものの数分で雨は降り始め、徐々に勢いを増していく。

 彼は自身のマントを頭から被ると手で拡げ、私はその内側へと入れてもらう。

 

「失礼しますね」

「あっ……」

 

 すると突然彼に肩を抱き寄せられ、密着する形になる。

 

「足元に気を付けてください」

「う、うん……」

 

 私は瞬時に悟った。

 

 

 ──これはヤバイ……と。

 

 

 何がヤバイと言われれば何もかもがヤバイ。

 顔が熱い、心臓がバクバク、頭もパンクしそう。

 何か……何か話題を探さなきゃ……。

 

 あ、そうだ。

 

「ね、ねぇ。この依頼の主って疾走騎士の知ってる人?」

「……何故そう思ったんですか?」

「受付で話を聞いてた時、ちょっと変だったから」

 

 いつもなら依頼を受けて即行動、の疾走騎士が今回は不自然な間があった。

 確か依頼主は、都から派遣され方々を回っている医師……という話だったが──。

 

「もしかしたら……そうかもしれません」

「そう。仲が良かったとか?」

「いや、少し話したことがある程度です」

「ふぅん……」

 

 彼の返答に、私は少し疑問を持った。そんな相手に対して、あれほど神妙そうにするものなのかしら? ……と。

 ……まあ、いいわ。私は私の為すべき事を為すだけだし。

 

 少しぬかるんだ地面に足跡を付けながら、転げないよう慎重に前へと歩み続ける。まるで冒険の様相を再現するかのように。

 もしつまづいても、きっと疾走騎士が支えてくれるだろう。

 でもそれじゃあダメだ。私は、この男と支え合える強さを身に付けたいのだから。

 

「で、この依頼ではソゥシーヤからどんな啓示(ハンドアウト)を受けてるの?」

「騙して悪いがって言ってました」

 

 やっぱり何かあるんじゃない(諦め)

 彼が受ける啓示(ハンドアウト)は、決まって疾走騎士自身を危険に晒すものばかりだ……。

 

───────────────

 

 輸送の目的地である村の跡地に到着すると、雨も止み、太陽が顔を覗かせ始める。

 

「依頼人とはここで合流するはずなのよね?」

「……はい」

 

 彼は村の焼け跡を眺めていた。

 その後ろ姿がどこか虚に見えて、私をとても不安な気持ちにさせる。

 

「大丈夫?」

「大丈夫です」

 

 本当かしら?疾走騎士、いつもと違うように思えるけど……。

 

「それらしい人、居ないわね」

「……見てください」

「え? あ、それ足跡? どこへ行ったのかしら」

 

 疾走騎士がぬかるんだ地面に付けられた足跡を見付ける。どうやら私達が来た方向とは別の方向へと続いているようだ。

 雨が降った事で足跡が付きやすくなっていたのだろう。あの雨も、悪いことばっかりじゃなかったって事ね。

 足跡が伸びている先へ目を向けると、広野にそびえ立つ遺跡が見えた。少し遠いが、走ればすぐに着く距離だ。

 

「行ってみましょう」

「そうね、ここで待ってても始まらないわ」

 

 走り出す疾走騎士の後を追い、私も走った。

 そして遺跡に着くと、それは思ったよりも巨大な建造物である事が分かった。

 所々崩れかけており、建てられてからかなりの年月が経っている事を感じさせる。

 遺跡の地面は石畳になっており、足跡もそこで途切れている。

 しかしその先に見える入り口らしき大扉は、人が一人通れる程度に開いていた。

 

「あそこから中に入ったみたいね」

「引き返した足跡は見当たりません。まだ中に居るのでしょう」

 

 そうして私達は、静寂に包まれるその遺跡へと足を踏み入れるのだった──。

 




Q.故郷を燃やされて、疾走騎士くんはよく怒りませんでしたね……。

A.疾走騎士くんの故郷に来た医師もまた、都に派遣された医師でした。疫病が蔓延している話が伝わってしまい、迅速に対処されてしまったという訳です。彼女が悪い訳では無いことを、疾走騎士くんも理解していたのでしょう。
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