【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート 作:もふもふ尻尾
「ゴブリンスレイヤーさん……その、さっきはすみませんでした」
疾走騎士達と別れた後、西の巣穴を目指して道無き道を歩くゴブリンスレイヤーと女神官。
二人はギルドを出てから互いに暫く無言だったが、唐突にゴブリンスレイヤーの後ろを歩く女神官が俯きながら口を開いた。
「なんの話だ」
「ギルドで……勝手な事を言ってしまって……」
自身が迷惑を掛けてしまったと思い、謝罪の言葉を口にした女神官。
しかし、ゴブリンスレイヤーの方は一切気にしている様子はなかった。
「俺は構わん。あの男はどうか知らんが」
「……はい」
自身が言い出した事なのに、結局は疾走騎士任せになってしまった事に対しても、彼女は気を重くしていた。
「それで、襲撃の時間は覚えたか」
ゴブリンスレイヤーの問いに女神官は気持ちを切り替え、問いの答えを導き出そうとする。
「あっ、ええっと、『早朝』か『夕方』。ゴブリンにとっての『夕方』か『早朝』……ですよね?」
「そうだ。次、突入する際の手順は」
足を止めず、更に次の問い。女神官がすかさず答える。
「火を焚いて燻し、追い出します。巣の中は危ないですから」
「そうだ。踏み込むのは手がないか、時間がないか、確実に皆殺す時だけだ」
或いは、正面からあらゆる障害を排除する力を持っているかだが……しかし、それが出来る人物は限られているだろう。
それを難なく実行していた疾走騎士の姿を、ゴブリンスレイヤーは思い浮かべる。
あの盾は正に攻防一体。そしてそれを持つ疾走騎士も、自身を守りながら敵を討つ動作が徹底されていた。
そこでゴブリンスレイヤーは考える。あれがもしゴブリンだとすればどう対処するべきか……と。
冷静に考えれば接近戦は分が悪い。やはり飛び道具か罠で対処するのが定石か──。
「ゴブリンスレイヤーさん?」
「む……」
女神官に声をかけられ顔を上げる。その先にはゴブリンの足跡があった。
「……巣が近いな。行くぞ、ゴブリンは皆殺しだ」
「は、はいっ!」
その言葉に間違いはなく、彼はゴブリンを皆殺しにする。
故に彼はゴブリンスレイヤーなのだ。
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「はっ! せいっ!!」
一方その頃、鋼鉄等級一党はゴブリンの群れと交戦していた。
ゴブリンの一匹が振るった棍棒を自由騎士は剣でかち上げ、直ぐ様振り下ろして斬り捨てる。
「大物、頂きっ!」
「ふっ、油がのっていてよく燃えそうだな! 《
群れの中に居た一際大柄なホブゴブリンに向けて、圃人野伏が弓を引き絞り矢を撃つと、更に森人魔術師が《
「GUBU!?」
ホブゴブリンの頭に矢が突き刺さるのと、《
背中から仰向けに倒れ、それを見た他のゴブリン達が慌てふためく。
「やりぃ! 今のは私っしょ!」
「何を言う、私の《
「もうっ! 戦闘中に喧嘩はやめて下さいってば!」
と、女僧侶に叱られつつも、余裕があることの表れだろうか、彼女達は前衛の自由騎士に的確な援護を行い続けていた。
「これでっ、終わりねっ!」
仲間が全滅し、逃走を試みようと背を向けた最後のゴブリン。それに鋭い刺突を見舞う。
首を貫かれたゴブリンは骸と化し、その場へと倒れた。
「ふぅ、思った以上に数が多かったですね……」
彼女は全てのゴブリンを討伐し終えた事を確認すると、剣に付着した血を振って払い、鞘に納めた。
「私達の敵じゃ無かったけどね~」
「とはいえ、この前の事もある。油断はするなよ」
「そうですね。あの方が来てくれたのは本当に運が良かっただけですから……」
いつ何が起こって全滅の危機に瀕してもおかしくはない。彼女達はそれを学んだばかりだ。
それぞれがお互いに注意を促しつつ、彼女達は巣の中を探索を行う。
……しかし、鳥の羽が散乱していた以外に目立ったものは無い様子だった。近くの村から盗んだ鶏を食料にしていたのだろう。
「どうやら攫われた人は居ないようですね。帰りましょう」
「私もう疲れた~。早く帰って
「全くこれだから
「はい! 《
念のため圃人野伏の体力を回復させたあと、帰路に就く鋼鉄等級一党。
生き延びた彼女達にとっては、何の問題もない冒険であった。
───────────────
「こんな環境で、まともに戦えるわけがない」
俺は冒険者になったばかりの戦士だ。今ちょっと色々あって洞窟の中で悪態をついてる。
だってしょうがないだろ? 初めての冒険、初めての戦闘、それは俺達にとって散々なものだったんだ。
ゴブリンの巣穴の洞窟に入ったらいきなり不意を打たれて仲間の一人がやられちまって……この狭い洞窟内で回りを囲まれたんだぜ? 無理だぜこんなの。
幸い別の冒険者……ギルドで見かけた盾持ちのヘンテコな奴が来て助かったが、あのままだと間違いなくやられてたよな。
俺はヒーローってのに憧れて冒険者になったのによぉ……。
「やべ、いつの間にかやられてたのか?」
同じ一党の魔法使いが目を覚ましたみたいだ。
あいつはいきなり襲ってきたゴブリンに短剣で刺された。しかもその短剣、毒が塗ってあったらしいぜ? ホントありえねぇよな。
さっきのヘンテコが
「もう少し待って。解毒は出来たけど、治療がまだよ」
体を起こそうとする魔法使いだが、神官戦士はそれを止めた。
あいつも俺達と一緒に冒険者になった仲間だ。
変な奴だが悪い奴じゃあない。……多分。
俺はとりあえず魔法使いの奴に状況を説明した。気絶してたしな。
んで、その間に傷も治ったみたいだ。やっぱ奇跡ってすげえよなあ。
「なあ。さっきの二人を追わないか?」
「俺はもう行けるぜ。最強だからな」
「……仕方ないわね。一応治療は終わったけど、まだ無理は厳禁と言うこと、忘れないでね」
このままじゃ俺達、カッコ悪いまま終わっちまうし……。
そ、それにもしかしたらアイツらもこの先で危ない目に遭ってるかもしれないしなっ! よっしゃ行くぜ!
……で、洞窟の一番奥まで着いたんだが、そこにはさっき俺達を助けてくれた二人と、近くの村から攫われてた女の人達が居た。
「もうっ! 武器を置いていくなんて何考えてるのよ! 心配するこっちの身にもなってよ……」
「す、すみません……奴を逃がせばまた巣を拵えると思ったので……」
なんだ喧嘩してるのか? ……いや、どっちかと言うと怒られてるって感じだな。……あれ? 結局ゴブリンはどうしたんだ?
「……もう終わったのか?」
声を掛けると二人がこっちを向いた。……なんだあの魔術師のねーちゃん、目付きがめっちゃこえぇ……。
最初見た時はエロい装備着たナイスバディとか思ってたけど……あれか? 綺麗な薔薇にはなんとかってやつか?
「あぁ、あなた方でしたか。もう全て倒しましたよ」
「ちょっおまっ……マジかよ……」
返事を聞いた魔法使いが驚いてたけど、俺も正直ビビったぜ。
いやホントマジか。道中のゴブリンも全部倒されてたし、すげえな。
「はぁ、結局なんも出来なかったか」
「ふむ……では、すみませんが彼女達をこの先の村へ送り届けてもらえませんか? 自分達はこのまま町へ戻らなければならないので」
お? もしかして向こうも困ってんのか? よっしゃそう言うことならやってやるぜ! 元々は俺達の依頼だしな!
「マッハで送り届けてやんよ」
「自分で言うのもなんだが、役に立つと思うぜ」
「つまり、貴方は私達の救世主ということ。さっきの
んで、村娘達を連れて二人とは別れた。
あの魔術師のねーちゃんにはなんでか終始睨まれたままだったけど、ヘンテコの方は良い奴だったな。
しかも村に送り届けたらめっちゃ感謝されたし、これでめでたしめでたしだ!
まあでも、攫われてた彼女達は気の毒だよな……送り届けてそそくさと帰ってきたけど、なんか釈然としないぜ。
「なんで言わなかったの、助けたのは俺達じゃないですよって」
「しょ、しょうがないだろ!? 言い出しにくい雰囲気だったし……」
人助けをして、礼を言われる前に去っていく。やっぱりああいうのがヒーローっていうんだろう。カッコいいなあ、俺もあんなふうになりてえぜ……。
「無理だろ」
「無理ね」
「くそぉ!」
見てろよお前ら! 俺は絶対にヒーローって奴になってみせるんだからな! この剣、セレブリティ・アッシュに懸けて誓ってみせる!
「その田舎から持ち出してきたデカすぎてろくに振り回せない大剣がなんだって?」
「つまり、文字通り身の丈に合ってないという事」
「だぁー!! いちいち突っ込んで来るなお前らは!!」
これでも威力はあるんだ。デカブツにならきっとワンチャンある! ……あれば良いなぁ。
「でもよ、ゴブリンって思ってたよりヤバい相手なんだな」
「ん? ……あぁ、そうだな」
「……今後は気を付けましょう」
どこまでも残酷で、最悪な奴等。あんなに泣いてる女の子達を見て……許せる訳ねぇよ。
Q.英雄志望の戦士くんの剣はどんな武器ですか?
A.漫画版で本当にちょこっとだけ見えますが、身の丈ほどある大剣です。とても新人が扱える物ではなさそうですねクォレハ……。