【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート 作:もふもふ尻尾
「小鬼王の戦斧より放たれし恐るべき
ポロンポロロン……。都の大通りにて、リュートを奏でる吟遊詩人。
彼が歌うのは英雄譚。一人の勇者と、一匹の忠犬による物語。
「忠実なる
ポポポダルビッシュ……。猛き演奏に聴衆が沸き上がり、吟遊詩人は尚も歌う。
「かくて小鬼王の野望も終には潰え、救われし美姫達は勇者の周囲を取り囲む。しかれど彼らは小鬼殺し、訪徨を誓いし身、傍に侍うことは許されぬ」
チャカポコチャカポコ。物語はエピローグへ。旋律も哀愁を感じさせるものへと変わる。
しかしこれで終わりは迎えない。勇者達は突如として危機を迎えた。
「勇者達を追う姫達、その手に疾走騎士の尾を掴む。勇者小鬼殺しは忠犬の背より転がり落ちるも振り返る事なく立ち出づる。犠牲となった疾走騎士、逃れる事終に叶わず姫達の胸に抱かれた」
デデドン! 奏でられた短い旋律が絶望的結末を演出し、物語の終幕を飾った。
「辺境勇士、小鬼殺しの物語より、第一章『山砦炎上!美姫たちの逆襲』の段、まずはこれまで」
聴衆からは盛大な拍手と多くのお捻りが送られる。
置かれた帽子には溢れんばかりの小銭が放り込まれ、吟遊詩人が優雅に一礼をした。
「まさか救ったお姫様達が裏ボスだったとはたまげたなあ」
「自らを犠牲にして主を逃がす疾走騎士に……涙が出、出ますよ……」
聴衆が去った後、吟遊詩人は帽子とお捻りを拾って今回の稼ぎを勘定する。
そこへ外套を羽織った人物が声を掛けた。
「ねえ、今歌ってた冒険者だけど、ホントに居るの?」
涼やかな声。年若い女性特有のそれは、歌えばさぞ人を魅了するだろうという印象を吟遊詩人に受けさせる。
「ああもちろんだとも! 二人ともこっから西の辺境へ二~三日ばかし行ったとこの街にいるって話だ」
「二人? 疾走騎士は犬じゃなかったの?」
「あ……いやそれは…………あはははは」
彼女の問いに対し、
歌は多少、彼なりの改変が入っていた。より多くの人を惹き付ける物語にして、より多くの稼ぎを出すために。
つまりこれは商売なのだ。それ故に彼は冷や汗を流し、笑って誤魔化すしかなかった。
「まあ、都合が良いわ。
外套の人物がフードをめくり、その素顔が露になると、吟遊詩人は思わず声を漏らした。
誰しもが見とれる整った顔立ちに、長く伸びた耳。彼女は
これが今より二日程前の出来事である──。
───────────────
疾走騎士が一瞬で食事を終えてしまったせいで若干気まずい雰囲気のなか、私と鋼鉄等級の一党は運ばれてきた料理を慌てて食べ終えた。
ホントこれ、どうにかならないのかしらね……。
「しかし、もう追い付かれちゃったかー」
「残念ながらな。まあ仕方あるまい」
「この調子だと、あっという間に追い越されちゃいますね」
「ええ、私達もうかうかしていられないわ」
お勘定! と女給を呼びながら圃人野伏が口を開き、他の面々も続く。
今回、疾走騎士は昇級し、ついに彼女達の階級へと並んだ。
彼女達は疾走騎士の実力を知っている。故に納得している一方で、しかし先輩として負けていられないという気持ちも持っているのだろう、その瞳は闘志に燃えていた。
「こうしちゃいられないね! 依頼だ依頼!」
「くっ! しかし既に昼だぞ。実入りの良い依頼はないんじゃないのか!?」
「どうでしょう、とにかく聞いてみないことには……」
「『彼女』の所へ行ってみましょう。良い依頼を斡旋してくれるかもしれません」
「あの」
女給への支払いを済ませ、受付へと向かおうとしていた彼女達を疾走騎士が呼び止めた。
「無理はしないように。何事も命があってこそですから……」
彼の言葉を聞いた瞬間、鋼鉄等級一党に電流走る──!
「もしかして心配してくれてる? あ、ヤバイ今なら何でも出来そうな気がする」
「《
「一体どういった奇跡を使ったのでしょう、体から力が溢れます!」
「こ、これが想像力の力……!」
多分違うと思うのだけれど……鋼鉄等級達の体からうっすらとオーラが出ているのを見るとハッキリとは否定出来ない。
もしかして本当に奇跡を使ったのではと疾走騎士の方を見るが──。
「これもうわかんねぇな」
どうやらそういう訳ではないようだ。だとすると彼女達は自前で? え、何それ怖……。
疾走騎士の影響により士気旺盛となった彼女達はまるで嵐のように去っていき、静けさだけが残る。
「大丈夫そうですね」
「なんかもう殺しても死ななそうよね……」
でも、それなら寧ろ何よりだ。
彼女達が居るからこそ、私達もこうして愉快な時を過ごせる。
仲間を失うのはもう嫌だもの……ね。
───────────────
時刻は昼、そろそろ休憩に入って食事をと考えていた私の前に、恐らく余所から来たであろう冒険者が三人、受付へとやって来ました。三人ですよ三人。
そんな彼等に面くらっていると、その中の一人である森人が聞いた事の無い言葉を口にしました。
「オルクボルグを探してるのだけれど」
「えっと、
「だから、オルクボルグよ! オルクボルグ! このギルドに居るんでしょ!?」
受付のカウンターをバァン! と叩きながら迫真の剣幕で迫ってくる森人の彼女。
う、こういうせっかちな人は少し苦手ですね……。
ギルド中に彼女の声が響き渡り、辺りの冒険者達も何事かとこちらの方へ視線を向ける。
「えっと……そういう方はちょっと……」
オルクボルグ……聞いたことの無い名だった。
だがこのギルドに『居る』ということは職員か、或いは冒険者という事になる。
しかし同僚達にそのような名前の者は居らず。自身が担当している冒険者もそれなりに記憶しているが、思い当たる節はない。
もしかすると、他の人が担当している冒険者なのかも? そう思い隣の監督官に目を向けるも──。
「これもうわかんねぇな」
どうやら彼女も知らない様子。となると彼女が言う『オルクボルグ』なる人物はこのギルドには居ないということになる。
どうしたものかと悩んでいると、そこへ盾を二つ背負った彼、疾走騎士さんが現れた。
「すみません、少しいいですか?」
彼はついさっき昇級した後、昼食を取る為に酒場へ向かったはず。何か用なのだろうか?
だとしても、この人達の対応でそれどころではないのですけれど……。
そして案の定、横入りされた事に対して不快感を露にした森人が彼の肩を掴んだ。しかし──。
「ちょっと! 今私達が話して……って、その二つの盾……もしかしてあなたシエルドルタ?」
「ほう、とっとこ丸か! こりゃあ聞いていた通り面白い盾を持っとるわい!」
驚くことに、森人と鉱人の二人が彼の事を知っているように話している。
しかし『シエルドルタ』や『とっとこ丸』と彼を呼んでいるのはどういう事なのだろうか?
彼自身も身に覚えの無い呼ばれ方をしている事に、頭を傾げている。
「森人の言語と鉱人の言語でのアンタの事よ。疾走騎士」
魔術師さんの言葉に納得した様子で彼が頷き、私も成る程! と手を合わせた。
流石、賢者の学院の卒業生だ。彼女はどうやら彼等の言語が分かるらしい。
「……で、どうしてアンタ達はコイツの事知ってるの?」
あ、確かに……彼はこのギルドでは凄まじい速度で昇級をしている新人として有名ではあるものの、この人達のような余所から来た冒険者にも知られる程の成果を上げている訳ではない。
一体どういった経緯で彼の事を知ったのだろう?
「オルクボルグの歌に出てくるのよ。盾を二つ背負った小犬が」
「えぇ……」
その返答を聞いた魔術師さんが頭を抱えてしまった。
オルクボルグの歌? 子犬? 私がイマイチ理解できていない事を察した彼女が声を掛けてくる。
「ねえ、さっき言ってたオルクボルグ。あれはゴブリンスレイヤーの事よ」
「え、そうなんですか?」
成る程、つまりゴブリンスレイヤーさんの活躍が歌となっており、それに登場する疾走騎士さんは何故か犬として登場しているという事なんですね。
ゴブリンスレイヤーさんが吟遊詩人に歌われる程評価されているという事に、私は自分の事のように嬉しくなったが、疾走騎士さんが犬として扱われているというのは少し気の毒だ。
一体どうしてそんな伝わり方に……流石にこれには彼も怒るのでは……?
「もう許せますよ」
許せるんだ……寛大なんだってハッキリ分かりますね。
「食事を終えた後に声が聞こえてきたから、教えてあげようって事で私達は来たのよ……」
「あ、そうでしたか! ありがとうございます!」
親切心で来てくれた二人に対し、感謝を述べる。
二人はこの一党の探している人物がゴブリンスレイヤーさんである事を、わざわざ教えに来てくれたようだ。
「シエルドルタ、あなたならオルクボルグの事知ってるでしょ? どこに居るのよ」
「彼は今ゴブリン退治に出ています。そろそろ帰ってくる頃だと思いますが……談話室でお待ちしますか?」
「しょうがないわね。そうさせて貰おうかしら」
あれ? いつの間にか私をそっちのけで話が進んでいる。
ゴブリンスレイヤーさんの事ならギルドの担当である私に聞くべきなのに……というか──。
「あの……勝手にギルドの部屋を使われると困るのですけれど……」
部屋を管理しているのはギルドであり、利用するのであればせめて私達職員の許可を得て欲しい。
そう伝えようとした所で隣に座っていた監督官が腰を上げた。
「
あぁもうこの人は……パパパッと皆さんを談話室へと案内しにいく彼女。もしかして彼の昇級審査を見に行けなかったの、根に持ってます……?
受付に一人置いていかれた私は大きくため息をつく。どうやらお昼を食べるのはもう少し後になりそうだ……。
Q.なんだこの汚い歌はたまげたなあ。
A.ホモ特有の風評被害いい加減にしろ!