【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート4 裏 前編 『疾走……魔術師?』

「疾走騎士さんと組んでみては如何でしょうか」

「アイツと……?」

「はい、きっとそれが一番かと思いますよ?」

 

 ゴブリン退治の報酬を受け取った後、ギルドの受付嬢から、疾走騎士と新たに一党を組んでみてはどうかと進言された。

 確かにそれが可能なのであれば、一党が壊滅してしまった私にとっては願っても無い話だ。

 しかし先程の冒険で私は彼の足を引っ張り、迷惑を掛けたばかりである。そんな私と組んでもらえるのだろうか?

 

「……じゃあ、一度話してみようかしら」

 

 悩んでいても仕方ない。

 私の一党だったあの二人は……もう居ないのだ。

 このまま一人では、冒険にも出る事も出来ない……。

 

「大丈夫ですよ。同じような方は何人も居ましたから、任せてください!」

 

 信用できるのだろうか?

 ……いや、なりふり構ってはいられない。

 ここは彼女に頼んでみる事にしよう。

 

───────────────

 

「悪いわね、呼び出して」

 

 そうして彼がやって来た。

 周りは冒険から帰ってきた冒険者達が各々食事をしたり、酒を飲んだり、なかなかに騒がしい。

 

「いえ、それで話とは?」

 

 彼は向かい側に座り、こちらを見据える。

 私は単刀直入に聞くことにした。

 あまり回りくどい話を彼は好まないだろう。

 それが最善であるとの、私なりの考えだ。

 

「……あなた、私と組まない?」

「難しいですね」

「っ! ……そう」

 

 即答。まるで僅かな希望をバッサリと切り捨てられたような感覚だった。

 

「……何故、自分と組もうと?」

 

 兜を斜めに傾けて、彼が問う。

 私は俯いて、顔を伏せながらも答えた。

 

「別に……ただあいつらはもう居ないから、残ったアンタくらいしか頼れる当てが無かっただけよ……」

 

 実際には他にも新入りの一党はいくつもある。

 しかし、何故かは分からないが、これから冒険者を続けて行くのには、彼が必要な気がするのだ。

 

「……どうしても、ダメなの?」

 

 やはり諦められない。何があってもダメなのだろうか。私自身が彼の助けになれる何かは無いのだろうか。

 

「『難しい』なんですよ。どうしてもと言うわけではありません。貴女次第です」

 

 え? そう言うことなの? 分かりにくい言い方をするわねコイツ……。

 でも、それなら何でもしよう、元より私は『運が悪ければ』一度死んでいた身なのだから。

 

「それなら何でもする! 私に出来る事なら! だからっ!」

「……今、何でもするって言いましたよね?」

「っ!」

 

 『何でも』……彼はこの言葉に即座に反応を示した。

 それが何を意味する物なのか、私は瞬時に察した。

 

「……言ったわ」

 

 それでも引かない。このまま惨めに故郷には帰れない。

 今帰れば私は、学院での笑い者にされるどころか、弟にまで迷惑を掛ける事になる……。

 それだけはごめんだ。それならいっそのこと、この男のモノになってでも、強くならなければならない。

 私は彼から視線を逸らさずに頷いて答えた。

 

「そうですか、では付いてきてください」

「……えぇ」

 

 そういって席を立つ疾走騎士。

 これから宿……だろうか? 不思議と怖くはない。生憎そういった経験は持ち合わせていないが、人並みに知識はあるつもりだ。

 なるべくこの男に満足してもらえるよう努力はしよう。

 心の中でそんな覚悟を決めていると……。

 

「すみません、少し良いですか?」

「あ ら? 何か 用 かしら?」

「えっ?」

 

 疾走騎士は隣のテーブルに一人で座っていた魔女に話し掛けた。見覚えがある人、確か銀等級の冒険者。

 ……え? もしかして彼女も一緒に?? 初めてが三人で??? 私は混乱状態に陥っていたが、次の疾走騎士の発言で目が覚めた。

 

「彼女に呪文を教えて欲しいんです。報酬はお支払い致します」

 

 えっ……そういう事なの? もうっ! コイツの言うことホンット分かりにくいわね!! ……ってそうじゃない! 私が銀等級の魔女に呪文を教わる!? そんな恐れ多い事、出来るわけが──。

 

「いい けど」

 

 いいの!?

 

「そう ね。 ……とっても 『難しい』 わよ?」

 

 彼女はくすくすと笑いながら私に視線を向ける。

 もしかすると、先程まで私たちの話を聞いていたのかもしれない。

 ……しかし、彼女が扱うような、高度な呪文を私が覚えられるのだろうか?

 

「大丈夫です。彼女『何でもする』って言っていましたから」

 

 うぐっ! 確かに言ったけど! でもそれとこれとは話が違う!

 

「ちょ、ちょっと待って!! アナタ私に何をさせるつもりなのよ!?」

「何って……先ずは扱える呪文の数を増やしてもらうつもりです。あと出来れば、体力もつけた方がいいですね」

「どうして!?」

 

 ただただ困惑する私だったが、彼は肩を透かして淡々と解説を始める。

 

「……先ず呪文を覚えて頂く件についてですが、貴女の《火矢(ファイアボルト)》は確かに強力です。しかし貴女自身は、自分の身を守る手段がありません。いくら自分が前衛とはいえ、その全てをカバーしきれる訳ではないですし、最低限自衛の手段を持っていて頂きたい。そして、自分と組むのであれば相応の数の依頼をこなす体力も必要です」

「!」

 

 唖然とした。コイツは私が一党を組みたいと持ちかけた時、『難しい』と即答した。つまり私と組んだときの問題点を、この男は既に洗い出していたのだ。

 

「冒険者は様々な状況に対応する力が必要です。貴女にはそれが足りない。自分と一党を組んだとしても、いつか命を落とすかも──……いや、こればっかりはどんな状況であっても変わりませんね」

 

 そうか、そう言うことか。自分でも分からなかった、私がこの男に付いていこうとしている理由、それが今理解できた。

 

「……それが、アンタの言ってた『難しい』の意味?」

 

 ……今日の冒険で私は、ゴブリンの短剣で貫かれたものの、辛うじて生き残る事が出来た。

 でも私は、冒険者としても、魔術師としても、自信を失ってしまって……だから、最善の行動を知っているこの男に導いてもらおうとしていたのだ。

 

「そうです。……何でもするって言いましたよね?」

「……えぇ! 何でもするわ!」

 

 まるで硬く閉ざされていた扉が開けたかのような気分だった。

 そう、自分がやるべき事は山ほどあるのだ。私はこうして、再び冒険者として立ち直る事が出来た。

 

「と言うわけで、後はお願いします」

「わかった わ。もちろん 報酬はそれなりに もらう わね?」

「えぇ、では自分はこれで」

 

 それだけを言い残して、疾走騎士はこの場を後にする。

 何かに突き動かされるかのように最善を尽くす。それ以外の事には何の興味も持っていない。

 そんな心象を抱かせる彼の後ろ姿を、私は見送った。

 

「……」

「大変 よ?」

「えっ?」

「彼と ごいっしょ するの」

 

 確かに相当な努力が必要だろう。

 それこそ賢者の学院の頃とは比べ物にならないだろうし、体力も付けるとなると、勉強だけでは足りない。

 あの男に付いていくには『決して時間を浪費してはならない』のだろう。

 

「はい、でも……もう私は、アイツと行こうと決めましたから!」

 

 まるで何かに駆り立てられ疾走するかのようなあの男を、私は追いかけたい。

 それがきっと……私の冒険なのだ。

 

「ふふ そう。それなら 頑張りましょう ね?」

「はいっ!」

 

─────────────────

 

「次の依頼を」

「あ、あの……今日はもう休んでは?」

 

 魔術師と話をしていた筈の疾走騎士は戻ってくるなり、まだ依頼を受けると言い出した。

 これは明らかなオーバーワークです……もちろん私は彼を止めようとします。

 

「魔術師の彼女と一党を組むことになりました」

「えっ? あ! 良かった!」

 

 唐突な彼の言葉に、つい反射的に喜んでしまう。

 しかしそれを見逃さなかった彼の一言で、私は凍りついてしまいました。

 

「……やはり、貴女の差し金ですか」

「…………あっ」

 

 

 

 

 

 致命的な失敗(ファンブル)……!

 

 

 

 

 

 

 ため息を吐く彼。私はただ頭を下げるしかありません。

 

「ごめんなさい。本来こういった事はするべきではないと分かっていたんですが……」

「いえ、それに関してはもういいですよ。それよりも──」

 

 疾走騎士は凄まじい圧を放ちながら私に迫る。うぅ……どうやら私はこういう『変なの』とよくよく縁があるようですね……。

 

「彼女の面倒を見るのにも資金が要るんです。次の依頼を」

 

 胃がキリキリと締め付けられるのを感じながら、私は幾つかの依頼を彼に渡すしかありませんでした……。

 

───────────────

 

「やれやれ、とんだ災難でした」

「ほ、本当に一人で暴食鼠を二匹も?」

 

 そして、彼が戻ってきたのは数時間後の夜。その報告は、根こそぎ持っていった下水道での討伐依頼を全て達成し、尚且つ不意に遭遇してしまった暴食鼠(グラトニーラット)二匹を討伐したという、とても白磁には思えない内容でした。

 

「その為に討伐証を持ってきたつもりですが」

「そ、そうですね、すみません……」

 

 それにしてもやはり臭いがひどい……いや、今回は彼が原因ではなく、この討伐証である暴食鼠の前歯二本のせい。

 こればかりは受付嬢として受理しなければならないため仕方がない。

 実際暴食鼠は今まで度々討伐されていたし、今回のような経験は何度かあった。

 

 そして確認が取れたので報酬を渡した所で、疾走騎士が口を開く。

 

「次は───」

 

 体がビクッと反応してしまう。まさかまだ依頼を受けるつもりなのだろうか……? 私は思わず息を呑んだ。

 

「もう、宿で休もうかと。流石に疲れました」

 

 その言葉に一瞬呆然としたが、ついくすりと笑みが出てしまった。

 やはり彼も普通の冒険者の一人、出始めに少し頑張りすぎたのだろう。

 

「はい! お疲れ様でした! ゆっくり休んでくださいね?」

「はい、ありがとうございます」

 

 頭を下げてその場を後にする疾走騎士を、今度こそ私は心からの笑顔で見送ったのだった。




Q.この魔術師ちゃんちょっと脳内ピンク過ぎない?

A.ムッツリ魔術師がこのヤルルォ……。





そろそろ書き溜めが尽きるので、また書き溜めに入るかと思います。そうしたら暫く間が空きますので、気長に更新を待っていただければ幸いです。

SS初挑戦という事で不安だったものの、ここまで楽しんで頂けたのはこちらとしても喜ばしい限りでした。

文章を書く事の難しさを実感しながらも、キャラが生きている物語を書けた時の楽しさがあるので、完走目指して頑張りたいと思います、今後ともよろしくお願い致します。
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