死者に祈りを、兵には讃歌を   作:兎坂

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完璧より完結、完璧より完結、完璧より完結、完璧より完結(クオリティから目を逸らす呪文)

お待たせしました、最新話です。
感想、評価等々お待ちしています。


突破口

 折からの風がすべてを吹き流してはくれまいか。

 

 そんな内心をあざ笑うかのように、眼前をふさぐ塵埃は静かだが着実に膨れ上がりつつある。

 

 ほとんど塗り固められた壁のような圧迫感を与えるそれは、先ほどの爆発で崩落したビルが巻き上げたものだった。

 

 豪雨というにはほど遠く、しかし小雨と笑うにはいささか癇に障る雨はいまだにやみそうもない。舞い上がった微細粒子はほどなくして雨に押しつぶされるだろうが、それがもたらした影響は大きかった。

 

 少なくとも、いましも突入しようというベルナルドの部隊を包み込んだそれは、敵に有利に作用していた。塵埃にもまれた兵員らからは敵の姿は見えず、一方敵は、濁ったモヤをかき分け前進する輪郭を狙うだけでいいからだ。

 

 舌打ちをこらえ、濁りの中から姿を現した戦闘員の影に目を向ける。

 

 副長だった。その背後には、重傷を負った隊員を担いだ衛生担当が続いている。

 

「損耗は」

「戦死八、負傷二。四分隊を除いた数です。一、二分隊は外周の防御線を突破。現在、敵陣地前縁で交戦中。火力で負けとりますな」

 

 ベルナルドの問いかけに、副長は即答した。

 

 戦闘という混沌の中でもたらされた報告としては、十二分すぎる速度と情報量だった。ひとまとめに死傷者という報告ではなく、死者と負傷者を切り分けた損害報告が上がってくるのは、副長の優秀さゆえだ。

 

 そのうえ、防御線の突破に成功した部隊に細部指示を出してきたのだろう。推測ではなく、見たままの事実を述べた彼の顔は、表情らしいものが削げ落ちている。

 

 理由は明白だった。損耗があまりに多すぎたからだ。敵と接触しいまだに合流できていない四分隊分を含めれば、一〇名以上の死者が出ているのは間違いない。

 

 この状況をどのように評価するべきだろうか。ベルナルドはごく短い時間に思考をめぐらせた。すぐに、非難に値すると結論付けた。

 

 客観的に見た場合、防御線の突破に成功したとはいえここから拠点攻略を行う――つまりもっとも強固な抵抗は、これから押しのけなければならない――段にあって、丸っと一個分隊以上の人員を失っているのであれば、そのように評価するだろう。

 

 もちろんそれは、外からこの状況を見た場合どう評価するか、という前提に立った結論でしかない。むしろ彼の内心としては、状況に対して部隊は十二分に健闘しているとすら考えていた。

 

 それどころか、これ以上を求められても困るとすら思っている。

 

「ランチャーの残数は」

「二本。弾薬、その他資材は死傷者分を回収し再分配しました」 

 

 その内心を知ってか知らずか、副長は相変わらず淡々とした声音で応じた。ベルナルドは無言でうなずいた。当然、副長の手回しの良さに対しては満足しているが、その一点をもって上機嫌でいられるほど、状況は芳しくない。

 

 この襲撃で十分な成果をあげられなければ、自身の立場どころか身の安全すら保証されない。その理解があるからだった。

 

 そしてそれは、ある種の神経症に近い猜疑心の生み出したものではなかった。ベルナルドは、人の行動すべてを悪意の前提に立って分析する、アンブレラ社員特有の病とは無縁の男だ。

 

 ただ単に、彼は過去の経験則から、アンブレラが不要と判断した手駒をどのように扱うのかを理解しているのだった。アンブレラはそれがどれだけ貴重な存在であったとしても、望んだ成果をもたらさないのであれば、簡単に処理してしまう。

 

 そして、その理解は副長も同様だった。

 

 彼は無感動そのものの顔のまま、ベルナルドの背後に目をやった。後ろでは、手持無沙汰な様子の”犬”が何本目かの煙草をふかしているところだった。

 

 背後を振り返ることなく、元同僚らとU.S.Sの戦闘推移を見守っているらしい男の気配に意識を向けたベルナルドは、僅かに副長へ目くばせした。その意味を問うことなく、副長はわずかな目の動きで聞かれる心配はないことを示した。

 

「四分隊は、敵の遊撃班を追跡できているか」

「つい先ほど見失ったと。捜索させますか」

「無駄だ。直ちに呼び戻す」

 

 ベルナルドは嘆息交じりに返した。もちろん、四分隊が接触した敵の遊撃――”犬”の言う分遣隊――を追跡しきれると考えていたわけではない。しかし、最低限の追尾すらかなわず見失ったのは痛手だった。

 

「三分隊の状況は」

「迂回は難しいでしょう。”活性死者”と道路封鎖で進路をふさがれとります」

「そうか。四分隊は三分隊に合流させろ。そのまま、三、四分隊は後方の警戒。活性死者と敵遊撃の相手に回せ」

 

 ベルナルドはわずかな逡巡を挟むこともなく、副長に命令を下した。

 

 現在、敵陣地への圧迫、突破を担当しているのは第一、第二分隊だった。彼らには、そのまま突入を継続させる。その配置を変える意味はない。本来であれば全戦力を投じて短時間のうちに達すべきだったが、それは不可能だった。

 

 降下地点がU.B.C.Sチャーリー小隊本部陣地から遠すぎ、また敵との接触が早すぎたのが原因だった。当然、敵は早期接触により防御を固める時間を得たし、その戦闘騒音を聞きつけて”活性死者”が押し寄せつつあったからだ。

 

 当然、部隊が目の前の敵に集中できるのは、背後が安全である前提があってのことだった。であるなら、”活性死者”と敵遊撃、とくに後者の接近を阻止する必要がある。そしてそれは、戦闘員の防御によってのみ果たしうるものだった。

 

 つまりベルナルドと彼の指揮するアンバーは、奇襲の優位性を失い、死傷者を出しているこの状況で、二方向の脅威に対応する必要に迫られていた。当然それは、拠点に立てこもる敵を撃滅するうえで不利と言わざるを得ない。

 

 非難に値するという現状への評価は、そういった条件を加味したうえでのものだった。

 

 そして、この状況が生じた根本の原因は、ベルナルドが責任を負うべき範囲になかった。作戦前にU.S.S司令部がよこした情報では、U.B.C.Sチャーリー小隊は損耗しており、士気は低く装備が不足しているとするものだったからだ。

 

 しかし蓋を開けてみれば、敵は士気旺盛かつ、少なくとも火力という一点ではこちらを圧倒していた。そうは言っても、その程度の要素は当初計画通りに作戦が進んでいればどうとでもなるはずのものだった。

 

 そうならなかったのは、目標建屋屋上の火災であり、浸透中の四分隊の失態による早期の戦闘開始によるところが大きい。

 

 前者はともかく、後者はベルナルドの指揮下でのトラブルであるから責任とは全く無縁だと言い張る気はないが、能力に不安が残る人員を使わざるを得なくなったのは彼自身に起因するものではない。

 

 しかし、そういった問題も、元をたどれば敵の規模に対して十分な戦力を投入していれば些末な話だった。結局のところ、小隊規模の敵拠点への襲撃に、増強小隊程度の戦力で十分と判断した司令部の責任と言っていいだろう。

 

「攻撃を継続なさるつもりで」

「ほかに手が?」

 

 ベルナルドの命令を受け、副長が片眉を持ち上げた。

 

 これだけの損害を出し、なおかつ部隊後方に小規模とはいえ有力な敵が存在する状況で、正面攻撃を継続することへの疑問を呈しているのだった。

 

 無論、それは正当な疑問だった。少なくとも、立てこもる敵を相手に正面に押し出せる戦力が二個分隊では不足どころの話ではない。

 

 しかし、それが今、前に出せる戦力の限界だった。後方の安全確保なしに攻撃の継続は不可能であり、それはそうとしてここで中断する選択肢はない。中断を選択し戦闘による壊滅を回避できたとしても、彼らの身の安全を損なう可能性が高かった。

 

「ありません」

「だろうとも。命令に変更はない。ランチャーは突破に使って構わない。突破口の構築は任せる。了解か」

「了解しました」

 

 当然、それが理解できないほど副官も愚かではない。

 

 アンブレラに育てられた孤児を主とした戦闘員によって構成されるU.S.Sにおいて、ベルナルドと副長は数少ないその例外だった。彼らは世界に冠たる大英帝国の末裔として、フォークランド紛争と湾岸戦争を戦い抜いたベテランだった。

 

 であるがゆえに、彼らは暗澹たる心境を隠したまま戦わねばならないのだ。

 いっそ、自身を救い上げた飼い主に対しての妄信を抱えたままでいられたのなら、どれほど楽だっただろうか。

 

 

 

 

「生き残った警戒員はすべて合流しました」

 

 激しい銃撃の喧噪が、報告に駆け寄った部下の声の半分を塗りつぶした。

 

 すでに本部施設外の防御線はすべて放棄していた。可能な限りの時間を稼ぐべく、外で抵抗をつづけた部隊員が合流したという知らせに、ハリソンは静かに頷きつつ問うた。

 

「敵は」

「こちらを半包囲していますが、それきりです。前面に出ている頭数も、いいとここっちとトントン。そんなところかと」

「ノーマッドの攪乱の効果、そう思っておこう」

 

 ハリソンは部下の返答にそう答えた。

 

 実際、それがすべてと言わないまでも真実の大部分であることに確信を持っている。そうでなければ、正面から押し込まれる火力はいまより一層厳しいものであるはずだからだ。

 

 そうなっていないのは、敵が正面にのみ注力していられる状況ではないからだろう。そしてハリソンの知る限り、U.S.Sが戦闘騒音につられた活性死者を恐れる組織だとは思えなかった。

 

 となれば、敵の圧力が不十分である理由は一つだ。それはもちろん、獰猛かつ俊敏な狩人を警戒しているからに違いない。

 

 しかし、ノーマッドがどれだけ高い戦闘力を有する集団であったとしても、その能力には限界があることを忘れてはならなかった。

 

 本来であれば彼らの合流を待ってから後退へと移行したいところだったが、それはどうあっても不可能になりつつあった。少なくとも敵が後方の警戒を捨てた様子はなく、である以上、ノーマッドは正面から防御を突破し帰還するという不可能を達成しなければならないからだ。

 

「先遣からの報告は」

「負傷者の移送は完了しました。全非戦闘員の退避完了はあと五分ほど」

「よろしい。ノーマッドと通信はつながるか」

「いえ。ただ、無線不通となる旨、報告がありました。通信回復の際はノーマッドから呼び出すと」

 

 汗で鈍く光る部下――無線手の顔は、要領を得ない報告の自覚を滲ませていた。

 

 なるほど、ノーマッドから受け取った連絡を、そのままその通りに伝えたのだろう。もちろん、ハリソンにそれを責めるつもりはなかった。戦闘というのは切迫し、流動的で、混沌としているものだからだ。

 

 危険を肌で推し量り、有限の時間を切り崩して最善を模索する中にあって、意図の不透明さを理由に問答をするのは不毛と言っていい。少なくとも、そういう時もある。

 

 切迫――敵がごく至近に存在し、通信による位置の露見を避ける、というような――状況にあるか、地下のような通信が不能となる閉鎖空間を通るか。おおかたそんなところだろうとアタリをつけたハリソンは、了解したとゆるく手を振る。

 

「先遣に連絡。主力は陣地放棄を開始し、段階的に後退を開始する」

「了解」

「直ちに障害構築を実施し、地階の防御は放棄。軽機関銃手(ガナー)と補助を中央階段に当てろ」

 

 ハリソンは言った。それは事前の取り決めの通りだった。

 

 非戦闘員の撤収完了目途がつき次第、地階防御を放棄し、階段での時間稼ぎを行いつつ屋上まで退避する。これが本部陣地撤退の最終段階だ。当然、敵はビル内になだれ込んでくるだろうが、幸いにして外階段を除けばビルの階段は一つきり。そして、外階段とエレベーターはとっくに”破壊”を済ませている。

 

 命令を受けた無線手は直ちにその内容を同一周波数帯に送信した。

 

 ハリソンは自身のカービンを右わきに抱え込み、周囲を見回した。彼がいるのは二階の階段前だった。オフィスの窓のそばでは戦闘員がせわしなく走り回り、接近を試みる敵に火力による圧迫を叩きつけている。

 

 結局のところ、段階的な撤退とはこの戦闘の主戦場が建屋外から中へと変わるだけのことだ。当然、防御は中に立てこもる分だけより有利になる。

 

 敵は、こちらが待ち構える階段を血と火力をもって押し上げるよりない。

 

 十分に時間は稼げる。後退は問題ない。問題はその過程でどれだけの部下が死ぬか。そこに尽きる。

 

 そう考えた時、目を転じた窓の外の闇に濁った外界が、白煙に閉ざされつつあるのが見えた。無線が、敵が発煙弾を一斉に投擲したことを報告する部下の声を運んでいる。

 

 脳裏に、慢心という言葉がちらりとよぎった。

 

 下階で爆発が生じたのは、まさにその時だった。

 

 

 

 

 U.S.S襲撃チーム”アンバー”の戦闘員らは、それまで敵に対して有利に働いていた粉塵による視界阻害を、さらに悪化させることで状況の改善を成し遂げた。

 

 それは、状況の劣悪さからするとあまりにあっさりと達成された。彼らが使用した手段はシンプルというよりない。ありったけの発煙弾を投じてビル内から抵抗するU.B.C.Sの視界を完全に遮ってしまえば、敵は場当たり的な射撃を繰り返すよりなくなるからだ。

 

 もちろんそれは”アンバー”にとっても同様だったが、ほとんど一方的に噴煙の向こうから射撃を受けていたと考えれば、不利に傾いた天秤が水平に戻ったというだけで十二分の価値がある。

 

 そしてベルナルドと副長の下した決定はそれにとどまらなかった。

 

 発煙弾による視界のはく奪のみで終わるのであれば、結局突入の段階で大損害を受けざるを得ない。常識以前の理解として、建屋に立てこもる敵の主要戦術は進入路を限定し、その限定した進入路に対して可能な限りの火力を貼り付けるものであるからだ。

 

 当然、そこに兵員を押し込めばどうなるかは想像に難くない。

 

 入口に銃口を向けた軽機関銃の斉射で瞬く間に死体の山が積みあがることは、火を見るより明らかだった。

 

 であるがゆえに、ベルナルドはランチャーの使用を許可したのだ。

 

 それはもともと、ラクーンに投入された大型B.O.Wに対抗するための装備だった。四本の持ち込みはすでに二本が障害除去に使用されており、残数は二本にまで目減りしている。

 

 ベルナルドはそのうちの一つを使用することで、少なくとも地階への突入口を形成することを決断したのだ。

 

 そして、その効果は明白だった。

 

 ベルナルドは白煙に閉ざされた夜半の街路を一瞬で駆け抜けたロケット弾頭が、ビルの正面玄関口で炸裂するのを見た。白く濁った暗色の視界の中で閃光が弾け、橙色の残滓を網膜に焼き付ける。

 

 炸裂による爆風が煙幕を押し広げ、より一層視界を悪化させたが、それを気にする理由はなかった。むしろ、それは有利に働くはずだとすら考えている。

 

 U.S.Sはそういう組織だった。夜襲――言い換えれば闇討ちを得意とする暗殺部隊であるし、乱戦の方がなじみ深い。

 

『一分隊突入を開始する』

『二分隊は発煙弾を窓に投げ込め。一分隊が侵入し次第続くぞ』

 

 ほとんど輪郭すら見えなくなった部下たちの気配が連鎖してうごめき、硬い編み上げブーツの足音が連なったまま駆け抜ける。彼らは少なからず損耗を出していたが、それでも十分な訓練を受けた戦闘員だった。

 

 損耗を前にしても怯まぬ足取り。そして突破口形成から間を開けず突入していく、有機的な部隊の運動。どれも統率された暴力の存在を示すものだ。その事実を確かめ、ベルナルドは意識的に自分を満足させた。

 

 そうでなければ、得も言われぬ不安を前に悪態の一つでも零れそうだったからだ。

 

 そう、突入に使用したランチャーは大型のB.O.W対策で持ち込んだいわばお守りと言っていいものだった。すなわち、彼らはタイラントのような強力な化け物に遭遇した時、身を守るカードのほとんどを使い切っている。

 

 もちろん、それよりないと判断したから使用したのであって、決して不要な使途だと悔いているわけではない。

 

 ただ万が一の際に打てる手のほとんどを出し尽くしている事実は、神経に不快なさざ波を生じさせるにたるものである、というだけの話だ。

 

「ろくでもない」

 

 ベルナルドは独り言ちた。

 

 このランチャーですら、彼がU.S.S司令部に強弁して持ち出した火器だった。本来、U.S.Sの標準装備には、対戦車ランチャーどころか擲弾発射機すら含まれていない。先ほど使用したランチャーは予備部隊として集結中のU.B.C.Sの他中隊から接収したものだった。

 

 彼の部隊に擲弾発射機がないのは、そういった理由だった。

 

「気に入らないかね」

「手足を縛られて猛獣の前に立ちたがるような被虐趣味は、私にはない」

 

 横合いからの声にベルナルドは応えた。

 

 いつの間にやら隣に佇んでいた元U.B.C.S、チャーリー小隊所属の監視員(スーパーバイザー)は、それには大いに納得するがねと芝居がかった所作で首を振る。

 

 ベルナルドはそれに対し、鼻を鳴らして返事に替えた。

 

 最初の接触からすでに二〇分以上が経過していた。ベルナルドがこの段階でランチャーの使用を許可した理由は、時間の都合もあった。敵がどのようにして非戦闘員を移送しているかの見当はついていたが、その阻害はどうあっても不可能だった。

 

 非戦闘員さえ離脱してしまえば、敵主力はあっという間に逃げ去るだろう。そして、ベルナルドがそれを追うには死者の山をかき分ける必要がある。

 

 つまり、残り二つきりのランチャーをさらに使用する以上、ビル内で粘る敵が後退へ移行しきる前に乱戦にもつれ込む必要があった。

 

 眼前、その輪郭のほとんどを闇と噴煙に溶かしたビルからもつれあった銃声が轟く。少なくとも敵の襟首をつかむという一点においては、目的を達成できたらしい。

 

「ときに、小隊長さんや」

「何か」

 

 あとはどれだけ削れるか。そこまで考えた時、監視員が再び声をかけた。

 

 思考を切り上げ、不愉快さを隠すこともせずに問い返す。監視員を横目に見やれば、粗く削りだした盾のような角張った顔に、薄い笑みを浮かべている。

 

 数日程度であっても、同じ死地を乗り越えた男たちが押し込まれ、死を前にあがいている中で、こういう態度でいられる人間は多くない。そして、ベルナルドはそういった人種を心の奥底からさげすんでいた。

 

 彼はアンブレラの暗殺者であっても、僚友を嬉々として切り捨てる稼業に身をやつした覚えはなかった。彼は、純然たる戦闘員としての能力を買われ、アンブレラに雇われた男だった。

 

「少しばかり暇をもらっても」

「目的は」

「奴らがどこに逃げるかが知りたい。追い打ちをかけるなら、あんたにとっても悪い話じゃない」

 

 監視員は狩猟の愉悦を知る捕食者にありがちな、感情のない笑みを口元に刻んで言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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次回、乱戦。
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