以前書いたものは序盤がありきたりで自分自身がつまらなく感じてしまい中断いたしました。以前の作品を楽しみに待っていた読者の皆さま。いないかもしれませんが、もしいらしたら申し訳ございません。また設定を練ってリメイク版を投稿するかもしれないです。
……まぁ、そんな前置きは終わりにして。
書きたいものがあるから、伝えたいものがあるから、また物語を綴っていこう、と思います。
「先輩って女の子に告白したことありますか?」
放課後、奉仕部の部室へなんの前触れもなく訪れる一色は来て早々爆弾を落とす。
飲みかけた紅茶を机に勢いよく吹きこぼし、ゴホゴホとむせた。
「ヒッキー、きたないっ!」
「部室の備品を穢すのはやめ──いいえ、よくよく考えてみたらあなたも備品だったわね。備品は備品らしく静かにしてもらえるかしら」
「もう、なにやってるんですか……。よかったら、これ使ってください」
誰がどの発言をしたのか、説明するまでもないだろう。シンプルながら心にくるのが由比ヶ浜で、長ったらしく心に鋭利な刃物が突き刺さしてくるのが雪ノ下で、我が愛しの
どうやら俺の周りには味方が一人しかいないようだ。
「助かる」
一色に礼を言い、貰ったティッシュで机を拭き始める。幸いなことに汚れているのは俺が座る正面だけで、雪ノ下達のほうには被害がないようだ。ほんとよかった。マジでよかった。豆腐並みのメンタルがこれ以上削れなくてすんで……。
ゴシゴシ、キュッキュッ、と机を綺麗に拭いて、ふと思う。
そもそもの話、さっきから俺のことをじっと凝視してくるこいつが急に変なことを言ってきたのが原因ではないだろうか。
「それで先輩、告白したことはあるんですか?」
「いきなりなんだよ……」
二度目の問いに今度は無難な言葉を返すことができた。
「もう少ししたらバレンタインじゃないですかぁ。そのことで友達と『誰にチョコを渡すのか』という話題の……ってなんですか先輩その鳩が豆鉄砲を食らったような顔は」
「いや、なに、お前に同性の友達がいたことに驚いてた」
生徒会選挙の一件で、てっきり一色には『ジャグラーばりに手玉にとる男子はいてもバレンタインなどという青春の一大イベント(笑)に向けて話す友達なんていない』と思っていたのだが、どうやら誤解であったらしい。
っつーか、もうバレンタインの季節なのか。一色の話を聞いて思ったけど、小町も学校で友達と『誰にチョコ渡す?』みたいなやりとりをしているんだろうか。小町ももう来年は高校生だし、浮いた話が出てもおかしくない。……お、お兄ちゃんはそんなの絶対に許しませんからねっ‼︎
「驚くなんて酷いです。わたしは先輩と違ってちゃんと友達いますよ。先輩と違っていますからね。まったく失礼しちゃいます……」
「ねぇ、失礼なのは君だよ? 大事なことだから二回言ったの? だいたい俺にも友達いるからね? 戸塚とか彩加とか……あとは戸塚彩加とか」
先程までいつもより少しだけ雪ノ下のほうへ移動し携帯電話を弄っていた由比ヶ浜が呆れた様子でため息を零した。
「それ全部さいちゃんじゃん……。もうヒッキーってば、さいちゃんのこと好きすぎだし」
「ていうか先輩の場合、友達っていうよりも友人ですよね。一人だけですし……」
「一人でも十分多いだろ。だいたい友達ってのは数より質のほうが大事に決まってる」
「言っていることは決して間違いではないのだけれど、言っている人間が間違っているのよね」
ぱたん、と本を閉じる音と共に部室の温度が少し下がったような気がした。
「そういえば一色さん。今日は生徒会の仕事はいいのかしら?」
「いやぁ、その、生徒会の仕事よりも重要な案件が私に舞い込んでおりまして……」
雪ノ下が放つ冷気というか絶対零度に当てられて、一色は体を縮こまらせていた。
その姿を見て、俺はうんうんと頷く。わかる、わかるぞ一色。その気持ちよくわかる。文面だけ見れば普通なのに、雪ノ下が言うと二、三割増して言葉に棘が混ざって聞こえるよな。
今の一色の姿がどうもテストで酷い点数を取ってお袋に怒られているときの小町と被ってしまい、助け船を出してあげたくなる。
「生徒会の仕事よりも重要って、一体なんだよ?」
そう一色に訊くと、よくぞ聞いてくれました! とばかりに目を輝かせてこちらに振り向く。
「だから、最初から言ってるじゃないですか! 先輩って女の子に告白したことあるんですかっ⁉︎」
「なんでそれをお前に言わなきゃいけないんだよ。第一、言うメリットがない」
聞かなければ良かった、と俺は後悔する。
恋バナなんてのは、思春期で浮かれた奴らと勝手にやっていればいいんだ。ぼっちにはハードルが高くて飛び越えらそうにない。
鞄から取り出した読みかけの文庫本に目を落とそうとしたときだった──。
「…………本物」
ボソッ、と俺にしか聞こえない小さな声で語りかけてくる彼女に視線を強制的に引き戻される。
(こいつ…………)
目的の為ならば手段を選ばない。
人の黒歴史を掘り返そうとする一色はさながら悪魔である。
「だいたい、どうして俺の、その……恋愛事情にこだわるんだ? 由比ヶ浜でも雪ノ下でもいいじゃねぇか」
「えっ、あたし⁉︎ あ、あたしは、その……」
まさか自分に話を振られるとは思っていなかった由比ヶ浜が驚いたように声を上げたと思ったら、顔を真っ赤に染め上げた。
伏し目がちに、ちらちらとこちらを覗くような上目遣いを見せるその姿に俺は中学時代の苦い
あれは確か三年前、放課後の教室で日直の仕事をしているときだ。
『あのね、比企谷君…………』
『ん。どうしたの?』
『その、えっと……お昼からね、ずっと比企谷君のこと気になってたんだ』
『えっ、俺のことを⁉︎』
『早く言おう言おうって思ってたんだけど、恥ずかしくてずっと言えなくて……』
『う、うん』
『でもね、やっぱり自分の気持ちに嘘をつきたくないから言うね?』
『え…………、それってもしかして……愛の告白?』
『え、なに言ってんのそんなわけないじゃん、なに、え、マジキモい。やめてくんない』
『あ、はは。だ、だよなー。ちょっとボケてみた』
『いや、今のないと思う……。──もう終わったし、私帰るね』
『お、おう…………』
『──あ、言い忘れてたけどお昼からずっとズボンのチャックが全開だから』
そうして一人教室に取り残された俺は夕日を見ながら涙を流した。しかも、翌日登校してみるとクラスの全員がその話を知られており、男子からは揶揄されて「ナルが谷」と、一部の女子からは軽蔑な眼差しで「変態」と呼ばれる羽目になった。
今思えば、チャック全開のことだけ除けば俺は悪くないはずだ。
あんな頰を赤らめた顔で自分のことが気になっているだなんて言われたら、世の中の単純な男子どもは「こいつ、俺に気があるんじゃね?」と馬鹿みたいに勘違いするに決まっている。
あの出来事を境に、俺は非モテ三原則【(希望を)持たず、(心の隙を)作らず、(甘い話を)持ち込ませず】を心に刻んで生きているのだ。
「……輩、……ですかっ!」
そのおかげで、ぼっち道を極めることになったわけだがそのことに後悔はない。変に勘違いをして黒歴史を作ることはなくなった(ただし、完全になくなったとは言っていない)。
「先輩っ! さっきからわたしたちの話聞いてるんですか!」
「うぉっ! ──ちょっ、近いから離れろ一色」
不意に肩を大きく揺さぶれて、過去の出来事に浸っていた俺を現実世界へと戻してくれたのは一色だった。
ただ、一つだけ問題を挙げるとすれば……俺のすぐ隣に椅子を移動させて何故か知らんが右腕をがっちりホールドしているのだ。そのせいでぼっちには慣れない柔らかい感触が伝わってヤバい。それと雪ノ下たちの視線がすごく痛い……。あ、問題二つあったわ……。
「嫌です。先輩、こうでもしないとわたしたちの話聞いてくれないじゃないですか」
そう言って、さらにギュッと腕に力を入れる。っておい、それ以上は本当にヤバい。
案外一色って着痩せするタイプなんだなとか、肩にかかる亜麻色の髪からふわりと漂う柑橘系の香りがいい匂いだなとか、──あぁ〜、心がぴょんぴょんするんじゃぁ〜。
「もしもし、警さ──」
「おい待て。早まるな、話せばわかる」
どういう考えに至ったのか、恐ろしいことに雪ノ下は俺を通報しようとしたが何とか食い止められた。
ただ、耳から携帯電話を離す雪ノ下は心なしか不機嫌そうに見える。
「何かしらデレが谷くん」
「デレが谷ってなんだよ……。全然デレてなんかないからね?」
「そうかしら? ずいぶんと鼻の下伸ばしていたようだけれど……」
「だよねー。ヒッキー、いろはちゃんにデレデレしすぎだし。あたしにも……って今のなしっ! もぉっ、ヒッキーの変態っ‼︎」
「先輩、わたしにデレデレしてたってホントですかっ⁉︎」
不機嫌丸出しの雪ノ下に、赤面した顔で罵倒を浴びせる由比ヶ浜に、何故かぱぁっと喜色満面の一色。
三者三様の反応に俺はどうしたものかと困惑していると、コンコンコン、と弱々しいノックの音が静かに奉仕部に鳴り響いた。
拙い文章を最後まで読んでいただきありがとうございます。
以前は文体が統一されていなかったので、今回は統一して読みやすい文章を心がけていけたらいいなと思います。
感想を貰えたら、作者はやる気がでます。たった一人でも「面白い!」「続きが気になる!」って思われるように不定期更新ながら、頑張る……いや、楽しく書いていく所存です。