歌って飯テロする予定 作:狗妹
プロローグ
プレゼント・マイクSide
最初の出会いは薄暗く胸糞悪い地下だった。か細く、脆い・・・俺が握っただけでも折れそうな体。けどその瞳はまるで大粒の宝石のように美しく輝いていた。
その輝きに魅了されてか他の奴らに取られまいと我に返った時には養子縁組を済ませた後だった。
そのことについて最初は頭を抱えたがヒーローの仕事も忙しく独身謳歌していた自分がいきなり4歳児の子育てをすることになって毎日が行き当たりばったりの騒がしい日々だったがなんだかんだ周りも助けてくれたおかげであいつにもマシな生活をさせてやれることができたと思う。
そのおかげで暗く、汚いガキだったあいつも
「ひぃ
煌めくカラフルな美しい髪をてっぺんでお団子にしてそれでも収まりきらなかった髪が網戸から吹き抜ける風に遊ばれキラキラと背中で舞う。
付けまつげいらずのボリュームと長さはそこいらの女子よりも多く瞬きする度にバサバサと羽のようにあの時の輝きを維持したままの瞳を覆いつくす。
ガリガリの体だったのが華奢だがしっかりと肉付きもよくなり逆にえr・・・非常に健康的になった。
まあ・・なんというか見事なビフォー&アフターを遂げちまった。
いや、もともガリガリの初期から顔立ちはまぁまぁな方だなと思ったぜ?それがものの数年で絶世の美女に変わると誰が想像できるか!!
こいつの個性だけが原因じゃなく元の素質が一気に開花したようなゲームのたとえ的に言えば卵からかえったばかりのヒ〇バスを不思議な飴と道具で進化させてそこからまた不思議な飴をレベル上限まで与えた結果みたいな人間の進化の神秘を垣間見たわ()
「???どうしたの?」
「いや、今日も美味そうだな!」
机に置かれたつやつやと輝く白米を筆頭に匂いと味覚をダイレクトに食欲に刺激させてくる料理の数々。
毎日こいつの飯を食っているのに飽きないどころか胃と口は正直に鳴き、唾液を分泌させる。
ゴクリと喉をならし椅子にすわり両手を合わせる。
「いただきます!」
「いただきます」
まずは味噌汁で喉を潤す。
ゴクッ モグッ モグモグモグ・・・
「~~~っ!/////////」
キノコのうま味が汁に溶け出し口にキノコのうま味と味噌の濃い味を滑らかにさせてくれて喉を通すとじんわりと温かさと共にうま味が体に溶け出すのが分かる。
さらに具のキノコが噛めば噛むほど自身で出したうま味と味噌のコクとかおりを口いっぱいに広がらせる。
咀嚼したキノコから出る汁と味噌汁は少し違う。味噌汁は味噌とキノコ出汁の調和されたバランスの良い体を優しく受け止めてくれる美味さに対し
キノコからあふれ出た汁は一度出た自身のうま味を味噌の美味しさだけを掻っ攫いさらに自身の中に吸い戻すことによりさらに自身の味を強調させるインパクトの違う美味さだ。
たかが味噌汁、されど味噌汁。
その一言に尽きる。
味噌汁だけではなく他のおかずも同様。一流の料理人なんか目じゃないほどの幸福感と満たされる心と体に朝から食い過ぎたお腹をさすり食事を食べ終わり食器を洗っている養子の背中を見てから自身の体に視線をずらす。
「(本当にいい拾いもんをした)」
胃に入った美味すぎる料理は他の料理と違い【個性】によって作られた特別性であり食べたものはそのうま味に比例し体に栄養をいきわたらせる。
その浸透力は桁違いであいつの料理を食べている現在と過去の俺を見比べても年を取っているにも関わらず現在の方が【個性】のキレも身体能力も遥か上である。
個性【美食屋】
そう告げたあいつの個性はこの世界とは異なる美味すぎる食材がいる世界に行き来し、なおかつその食材で作られた料理は天にも昇る味と身体を驚異的な速度で強化するその個性はヒーローたちにとってとても喉から手が出るほどの逸材だろう。
しかもこいつの個性はこれだけではない・・・
「~~~♪」
チチチッ ピィー♪
「おい、また窓に押し寄せてんぞ」
「え?・・・あっ!ご、ごめん!ほら、これ食べていきなさい」
ピピピッ! チュン!!
窓にひしめく雀から始まりハトやカラスなどがキッチンのすぐ横にある網戸状態の窓にぎゅうぎゅうに詰め寄っている姿に押し花の鳥状態か?とまったく可愛いどころかドン引きするレベルの光景ももはや見慣れた状態で軽く注意すれば気が付いたあいつ・・
窓枠からベランダに移りガツガツとむさぼる野鳥のBGMを聞きながら入れられた食後のコーヒーに口をつける。
個性【言霊】
口に出した言葉が現実に影響する強力な個性だ。
まだ【美食家】だけなら施設でもギリギリ問題なかったがこの【言霊】は扱い方を誤ればとても危険な個性となる。
この個性をしればますますヴィランに付け狙われるであろう。
そしてそれはヴィランのみならず政府といったこちら側の人間にも狙われるであろう。
有無を言わさず即養子縁組したおれグッジョブ!!
今は鼻歌を歌えば鳥や野良猫など集まり戯れるていどの白雪姫レベルでとどまるがこれが絶望といった負の思いを口ずさめば・・・想像に難くないであろう。
今は俺やなにかとフォローしてくれている消太を筆頭に背後を固めてくれたお蔭で横やりはなくなりつつある。
というか扱い方を誤らなければ問題無いのにいちいち「もしも~」を前提に突っかかりやがって!
お金を稼ぎたいと福音が動画サイトなどでお試しデビューした時も歌に個性がのってないのに「これは洗脳にも匹敵する曲ですがやはり個性を扱いきれてないのでは?」と変な言いがかりをつけて寄ってきやがる。
ただ単にこいつの曲が最高なだけだろうが!!
確かに作られる曲はどれも心を揺さぶられるほど凄い曲ばかりで実際ランキングなどもデビューしてからトップを独占しているが!!!
消太の個性をもってしても曲のすばらしさは揺るがない!これが答えだろう!!
ちなみに俺の今のお気に入りは『クワガタにチョップしたらタイムスリップした』だ。
タイトルから吸引力がすさまじい。
前半から腹がよじれるかと思ったわ。
だが後半から雲行きが怪しくなり
聞き終わった後はティッシュを抱え込んでいた。
コメディからのシリアスのギャップが酷い。
腹抱えて笑い過ぎて出た涙がいつの間にか鼻をかんで流れ続ける涙に変わっていきティッシュが手放せなくなった。
そういったどんでん返し(いい意味で)があるこの曲は『先』の可能を知った上で『今』の生き方を否定するわけでもなく自分を信じ生きていけと背中を押されるいい曲だ。
ちなみに消太は二匹の猫の生き方を描いた曲がお気に入りらしいイヤホンでサビの「にゃんにゃんにゃん」が聞こえた。
昔から猫好きだよなぁあいつは・・・間違ってもうちの子に猫耳付けて可愛がるわけじゃねぇよな?な??
「あ、ひぃ兄!これ消太さんの分の弁当!」
・・・ダイジョウブ オレ 信ジテルモン