歌って飯テロする予定   作:狗妹

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入学初日

早起きし、弁当と朝ごはんを作り自分より早く出勤した保護者を見送った後忘れものがないか確認しながら真新しい制服に腕を通す。

 

「~~♪」

 

鏡の前で鼻歌を歌う。前世のペラッペラなコスプレ衣装ではなくちゃんとした生地で作られた制服に胸が高鳴るのは仕方がない。男子用でズボンではあるがそれでも嬉しいことには変わりない。

 

 

ピッ

チチチッ

カー!

 

「~♪・・あ、ヤバッ!」

 

鼻歌につられた鳥がまた窓に張り付いていた。

来てしまったものは仕方ないのでそっと置いてある鳥のえさを外に投げた。

 

この白雪姫スキル(個性)も早いところマスターしないとそのうち個性関係なく家をえさ場認定して近所迷惑になってしまう。

 

 

しかし思わず鼻歌を歌ってしまうほどこの日を待ち望んでいたんだ。

 

るんるん気分で入学日を待っていた福音にひざしも「ウチの子キュートすぎるんだけど!!」と相澤に鬼電をかまして次の日説教されたが、るんるん福音の動画を差し出してなんとか許しを得た。

なお、撮られていた事に気が付いてない福音は後日その動画の存在を知って顔を真っ赤にしながら「消して!」とわめくも時すでに遅し。

教師陣皆にホッコリ動画は布教された事実にその場で膝をつき、ゴメン寝状態のまま相澤の置いてあった寝袋を占拠し拗ねた。スマンとあやまる相澤とひざしに拗ねたまま寝袋を占拠し続けた福音。その光景も動画撮影されていたことに福音は気が付かない。

 

 

 

 

 

 

 

家を出て学校に行く途中、制服も相まって余計に視線を感じるもスルーして歩く。

 

 

 

見えてきた学校にもう規模が前世の大学とかよりも規模が桁違いで凄いとしか言えない語彙力も消し飛ぶほどスケールが違い過ぎるのだ。

 

しかももうすぐで主人公達に会えると相まって変な緊張も生まれる。

とはいっても保護者筆頭に先日友達になった障子や上鳴とのおかげで心臓がバクバクして呼吸が荒いなどのひどい症状とまではいかない。せいぜい冷や汗が出るくらいだ。

深呼吸をし冷静を保ちつつも門をくぐり校舎に入る。

 

漫画でもアニメでも詳細に紹介されていなかった校舎を遊園地に来た子供のようにキョロキョロと見渡しながら目的の1-Aの教室に到着する。

 

デカすぎる扉に手をかけ高鳴る気持ちを抑え込んだまま横にスライドさせる。

 

もうすでに半数以上が登校していたらしく一斉に音がしたこちらに視線を向けられた。

カラフルな長い髪とその美しい美貌を兼ね備えた人物を見て無意識に魅入られてしまう。

しかしそんな視線など慣れてしまった福音は原作主要キャラにあえた事により野次馬精神がキャーキャー騒ぐ。

必死に野次馬心を抑え込みぐるりと教室を見渡すとその中に見覚えのある大きな体格と金髪の姿があった。

 

 

「福音!こっちだ!」

「おー!二人とも早いな。おはよう」

「おはよう、さっき来たところだから早くはないぞ」

 

 

視線をかいくぐり2人のもとに行く。

黒板に貼ってある席順を見ると窓側の一番奥の端っこだった。

21人でどうしてもあまりがある分ボッチでつらいと思う半面自分というイレギュラーがあっても20人全員いてくれてホッと安堵した。

前は八百万さんか・・・・うんデカイ。なにがとは言わないが。前世女としてみれば肩こり大丈夫かな?今世の性別無視して心配してしまう。いや本当に胸がでかいと言ってもあまり女から見ればデメリットが結構あるんだよ?

かわいい下着がないとか肩が凝るとか走るのしんどいとか色々・・・うん、女性には色々とあるんだよ!!(切実な叫び)

 

 

「もう昨日なんか寝れなかったしその所為で朝飯抜きになるし危なかったぜ!」

「いや、気持ちは分かるが・・」

「飯って・・ここで食べていいなら少しなら出せるけど・・それっていいのか?」

「マジか!手作り??」

「わっ!急に詰め寄んないでよ!」

 

お腹に手を当てて空腹アピールしていた上鳴がキラキラ目を輝かせて詰め寄る。

上鳴の手作りというワードに障子もそわそわと視線をこちらに向けてきた。

 

 

「というかここに着くまでになにか食べなかったのか?」

「さすがに登校初日から遅刻はヤベーなって思って考えてなかった!」

 

あっけらかんと言い張る上鳴に頭を抱えそうになる。

普通なら入学初日は入学式などで大した事は起きないが・・・この後起こる出来事を知っている福音は食べさせていいのだろうか頭を悩ませる。

 

「なあなあ何作ったんだ?」

「今あるのは軽食用のおにぎりぐらいで・・」

 

 

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け

 

 

 

 

 

 

 ここはヒーロー科だぞ」

 

 

 

 

寝袋に包まれた不審者らしき見た目の男が現れ教室にいた全員がその男に注目した。

ただ唯一その男の存在をしっている福音は「(あ、消太さんだ)」と呑気に見ていた。

 

 

固まる新入生たちを気にせず纏っていた寝袋から抜け出し全身黒い服装とセットされてない乱雑な髪形、無償髭とさらに不審者率が高まっていく姿が現れる。

 

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たち合理性に欠くね。」

 

 

そう言い放った相澤にまた少しざわつくも相澤は教室内の生徒を軽く見渡した。

そこには福音の姿もあったが目で挨拶をされた。

他の生徒がいるなか反応はしなかったがそれでも目線はあったので福音はなにも言わず大人しく様子見をすることにした。

 

 

「担任の相澤消太だよろしくね。」

 

 

相澤の担任という言葉にさらにざわつきが増すも相澤は無視してごそごそと寝袋の中から体操服らしき服を取り出す。

 

 

「早速だがコレを着てグラウンドへ出ろ。」

 

 

有無を言わせない謎の圧力に抗う事なく生徒たちは渡された体操着を手にその後言われた更衣室に向かう。

 

男女隣同士で言われるまま着替えようと更衣室に入っていくが・・・

最後に福音が入ろうとした時ピンク肌の女子は慌てた様子で福音の腕を掴んだ。

 

 

「ちょっ!そっちは男子の方だよ!」

「え?」

「女子はこっち」

「綺麗な見た目でおっちょこちょいだね」

 

「えっ!待って!俺男だよ!」

 

ぐいぐいと女子更衣室に引っ張られ慌てて訂正する福音

 

 

 

 

 

『え?(は?)』

 

初対面が多い中綺麗にハモッた。

 

この見目麗しいどうっからどう見ても絶世美女が・・・男??

 

 

 

「え?・・・・え??」

「いやいやいやいや!男!!嘘だろ!!胸ないけど今まで見た中で一番美女キタコレ!と感激したのに!!」

「あ、あの・・確か精神病でそういった病状の・・」

『・・・・』(絶句)

「え?そんなさらっさらの天使の輪をつけたロン毛とばっさばさの長いまつげで真っ白卵肌で????は??」

 

思い思いに否定的な言葉を口にして現実逃避する。

腕を掴んだままもう片方の指を福音に向けたまま「え」しか発音しないピンク肌の女子。

一番小さい男子生徒は血走った眼で嘘だ!!と叫び。

女子生徒の中で一番大きい()高い位置で髪を結わいている女子が心配した様子で見つめ。

思考が整理しきれてない数人が目を福音に向けたまま固まったままで。

茶髪の女子生徒が福音の上から下まで見てその美貌が女の自分よりもはるか上に凌駕するという事実に受け止めきれなくて背後にコスモと猫を浮かべる。

 

 

「あ~、分かる。俺も未だ信じられないし」

「・・・」頷く

「え?嘘でしょ?障子、上鳴」

「いや、マジで。今からでもぺったん女子だって言えば許せる」

「許すもなにも男だっていってるでしょ」

 

深々と頷く上鳴と障子に内心「(気持ちは分かるけど十数年男やってきたから少なからず男っぽさあるでしょ)」と思っていた福音の気持ちをたやすく打ち砕かれる。

そもそも女目線の男っぽさなんてただの想像なので実際の男性から見てその<男っぽさ>というのは全然男っぽさなんて無いしむしろオレっ娘や男の娘の仕草にしか見えない。

無理して俺と言っている感じしかしないのにそのままの男女入り混じった口調のままなのはひとえにマイクなどの保護者がその容姿で野郎口調なのは反抗期っぽいので嫌だという身勝手な理由と前世の口調を引きずったままなのが主な原因である。

マイクのフォロー()も相まってちぐはぐな口調も相まってなおさらオレっこ美女という位置づけになっていたのにここで福音本人からの男性発言にクラス一同(うち3名除く)が嘘だ!と心が一つになった。

 

 

 

その後説得するも「なら証明しろ!!その服の下にかくされた白く輝くらt」と荒い息で詰め寄る小さい男子生徒にドン引きし時間も押している中、結局福音一人トイレで着替える羽目になった。

 

 

 

なお、後をつけようとした小さな男子生徒は障子を筆頭に取り押さえられて渋々更衣室で着替えた。

 

 


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