D-Drive   作:Ирвэс

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これまで投稿した回の中身を加筆修正していたら時間が掛かりました。遅れて申し訳有りませんorz。気を取り直してAct7をどうぞ!


Act7:元の世界へ帰る前に

「糞っ垂れ!あのワシ親父、化石返してくれねぇってだけでも胸糞だが、それならそれで事情位教えてくれたって良いだろ!余所モンだからって舐めやがって!!」

 

アドリア達によって無理矢理カステルムアルバの門前まで連れ出され、レキは悪態を吐いていた。自分の世界から奪った化石を返さないばかりか、その理由だって別世界から来た別種族の余所者だからと言う理由で何も教えてくれない。「仕方無い」と言えばそれまでかも知れないが、それにしても事情を聞いた途端に「それは出来ない」と突っ撥ねる処か無理矢理追い出されるなんて、向こうにその気は無いにしてもされる側としては悪意を感じざるを得ない。

 

「……まぁあいつ等の監視付きとは言え、キチンと送り帰してくれるのは良いけどさぁ、何か釈然としねぇよなぁ…。化石返して貰えなきゃ意味無ぇってのに、俺は一体何の為に此処へ来たんだかな…?」

 

だが何時までも怒ってていても仕方が無い。正義感に駆られて1人突っ走ってコル達に拉致された挙句、こんな知らない異世界に連れて来られはした物の、向こうは身の安全を保障して無事に帰してくれると言うのだ。

本来なら()()()()()()()()()か、()()()()()()()()()()かの何れかの措置を取るとホルスも言っていたが、その2通りの顛末を考えるとこれは破格の待遇なのかも知れない。化石を取り戻せなかった点と、生きた恐竜のいる世界とこれで縁切りと言う2点は心残りだが―――――。

レキが門から離れた場所でボヤく中、少し離れた場所ではコル達がスマホらしき端末からホルスからの指令文を確認していた。文面を一通り確認した5人が「良し!」と一斉に頷く中、レキが5人に話し掛ける。

 

「お~い、さっきから5人揃ってスマホみてーなの見てるけど、何か有ったのか?」

()()お前には関係の無い事だ」

「あっそ…ならさっさと俺の事、元の世界に帰してくれよ」

「言われなくてもその心算!」

 

すると直ぐに3機のウラノドラケが飛んで来て近くに着陸した為、6人はまた2人ずつに分かれてそれぞれ搭乗。ネオプテリクスの発着場へと向かう。

窓の外を流れる景色を眺めながら、レキはコルに問う。

 

「なぁ、幾つか訊いて良いか?」

「良いけど答えられる質問にしてね」

「先ず基本的な質問だが、お前等はどうやって俺の世界に来た?そして何時から俺の世界を調べてた?」

 

成る程、最初の質問としては妥当だ―――――そう感じたコルはこう答えた。

 

「私達はあんたを監禁してたあの森の小屋の近くにある()()()って扉からあんた達の世界に来たの。まっ、向こうに生じた次元の入り口はあんた達に分かんない様に隠してたけどね」

 

やっぱりそう言う事か――――。初歩的な疑問が解消されて納得していると、更にコルは説明を続ける。

 

「あんたの世界にアドリア達が派遣されたのは今から1年半前よ。丁度あんたが2年前にアウロラ様を見つけた直後、私達の世界の次元レーダーにアウロラ様の力の反応が一瞬だけど出たの。それから半年の準備を経て、漸く派遣されたって訳。アウロラ様の捜索と、その為に必要な地理や原住民の生態を調べる現地調査の為にね。因みに私が捜索と調査に加わったのは半年前から。何度も往復して世界中周る羽目になったけど、結構楽しかったわよ♪」

 

次元レーダー?良く分からないが、そんなオーヴァーテクノロジーがこの世界には存在するのか……。まぁ何にせよ、コル達がこの世界に来た時期とその切っ掛けが分かっただけでも良しとしよう。

 

「成る程な。じゃあ次の質問だ。お前等の王様、余所モンには市民権与えて永住か、記憶消して帰すかのどっちかを取るっつってたが、この世界には過去にそう言う事例が有ったのかよ?」

 

まさかその質問をするのか―――レキの鋭さに免じてコルは答える。

 

「……そうね。次元門を開けた時に生じる時空の歪を潜って、その世界の余所者が極稀にだけど迷い込む事が有るわ」

「極稀っつーが、頻度としちゃどれ位なんだ?年に数回も無ぇのか?」

「そう何度も無いわね。最短で10年、最長で100年に1回有るか無いかの頻度だけど、そう言う奴への()()()()()()()も一応存在するわ。因みに次元門が作られたのは今から1500年前で、それから何度も改良が加えられて来たの。その間に別世界の余所者が迷い込んだ事が過去に十数件有ったわね。記録だと()()()()()()()()()()()1()()()()で、後は全部記憶を消して送り帰したみたい」

 

やはりそう言う事か……。稀にとは言え、過去に何度も別世界の異邦人が迷い込んだ事例が有って、対応マニュアルと言う知識の集積が出来ていた。だからこそあの城のオルニス族達は人間の自分を見ても警戒こそすれ、其処まで取り乱さずに対処出来たのか?

と言うか、1500年前からオルニス族は人間界に度々訪れていたのか?人間態になる技術が確立してない中で来たのだとしたら、きっと半人半鳥の化け物と思われたのではないだろうか?日本でなら恐らく天狗、欧州とかでは天使や悪魔、ハルピュイアやモスマンの類と見間違われたに違いない。

何にせよ、先程の質問で腑に落ちない点がまた生じたレキは再度コルに尋ねる。

 

「対応マニュアルが有るっつったがよ、本当にそれだけで何とかなんのかよ?情報で知ってるのと実際に体験するのとじゃ違うぜ?最低でも異世界に慣れて、出来れば相手と話した経験は要るだろ?」

 

するとコルはこんな補足説明を加えた。

 

「確かにね。今回の私達みたく、こっち側から扉潜って他所の世界に行ったオルニス族も過去何人もいるし、其処の住民と話した事の有る奴も中にはいるわ。ホモ・サピエンスと話した事が有る奴も過去には居たかもね。因みにさっきも言った通り、CWSは1年半前からあんたの世界にアウロラ様捜索の任務で来てたけど、ホモ・サピエンスと話したのは私もアドリア達もあんたが初めてよ。ついでに異世界に行く事自体も、この任務が初めてだった。けど、結構私はホモ・サピエンスに興味が有ってずっと観察してたから、話すのに抵抗は感じなかったわ。寧ろ内心ワクワクしてた!」

 

成る程、姿形の全く違う異世界人の自分と最初に会ったにも拘わらず、5人が妙に落ち着いて対応出来ていたのも、そうやって1年前から自分の世界に来て異世界慣れしていたからだったのか。

それに加え、恐らくはレキが拘束された身だった点と、自身の実力に自信が有ったから怖くなかった点も有るのだろう。コルの場合、更に好奇心が強かったと言うのも理由としては大きいが……。

 

「人間と話した事が有る奴が過去にね……そもそもこの世界に存在しない人類の俺を普通に受け入れてたんだ。過去に人間と会ったオルニス族は間違い無く居るよな。お前等の王様や役人共が冷静だったのも、異世界経験者だったからか?」

「大臣達は兎も角、ホルス様は私達が生まれる前に何度か異世界人と会ってお話した事が有ったみたい。若い頃に次元門を潜られて何度か異世界に行かれたから…」

 

やはりホルスは異世界経験者だった様だ。然も自分で積極的に次元門を潜って出掛けるなんて、若い頃は随分とアクティヴな男だった事が伺える。そうした豊富な鳥人経験が今の彼を形作っているのは揺るぎの無い事実だろう。

対する兵士達があんな体たらくだったのは、此処が自分のホームである点と、知識で知ってても実際に触れ合った経験に乏しかったが故の余裕の無さからか?まぁ、自分もサブカルで鳥人間の事は知っていたが、いざアドリア達がその本物と知った時には恐怖に駆られていたから気持ちは分からなくも無い。

幾等物を知っていても、やはり実体験によって味わう肉体的感覚やこみ上げる感情が無いと真の知識とは言い難い。真の知識とは、過半数が体験による感情なのだとつくづく思う。

 

「そりゃ経験豊富で良いな。俺を見てピリピリしてた兵士達とは雲泥の差だぜ!だから別世界から来た俺みたいな奴でも至って冷静に話せて、市民権を与えて住人として迎え入れる位の懐の深さを見せられたって訳かい。他の選択肢だって、最悪「口封じに殺す」とか「一生軟禁」ってのも有ったろうに、記憶消して送り帰す程度に留めるなんざ、寛大っつーかお人好しっつーか分かんねーな…」

 

過去の経験からと言うのも有るが、それを抜きにしても器の大きさでは自分如きが勝てる相手ではない――――ホルスはそう言う人物なのだと言う事をレキが改めて再認識する中、コルは笑って言う。

 

「どの道あんたは運が良かったわね。それだけは否定し様の無い事実じゃん?知らなかったとは言え、泣く子も黙るCWSの私達を追って来て、捕まっても恐れずに啖呵切って、外飛び出してドラゴンに襲われたのに無事に済んで、挙句記憶も消されず住民にもならずに帰れるんだもの。一生分の運使い切る勢いだわ♪」

「止めてくれよ…最初の2点は何も知らねぇ若気の至りって奴だよ。つーか今思えば黒歴史だわ。マジで恥っず……!」

「今はそうだろうけど分かんないわよ?これからの流れ次第じゃ、あんたのその行動は間違い無くデカい第1歩になるかも知れないんだから……」

「おい、それ一体どう言う事だよ?」

「内緒」

「何だよ、此処でもまた言えねぇってか。ふざけやがって……」

 

何処までもこの世界では余所者で部外者で、それでなくても何の地位も無い存在――――それが今の自身の立場だから何も教えて貰えない。レキは悔しそうに歯噛みするばかりだった――――――。

だが考えてみればそもそもコル達CWSだってホルス直属の特殊部隊のメンバーであり、この国でも相応に地位が高いのは間違い無く、本来なら自分なんかが対等な口を利ける相手ではない。なのにこうやって気安く話せて、向こうもそれを容認しているだけでも十分だろう。レキはそう自分に言い聞かせ、無理矢理自身を納得させようとしていた。

一方、コルは後部座席からレキをジッと見つめながら、ホルスから下された指令を思い返していた。

 

 

『タケウチレキの送還の為に次元門を開けばメンテナンスの為、一ヶ月のスパンが生じるが、同時にこれを彼の者への猶予期間とする。期間が明け次第、再びタケウチレキの世界へと赴き、その身辺を調査せよ。彼の者が真にアウロラ様に選ばれし者ならば、きっと竜聖剣はその近くに有る筈。何も無ければそのまま縁切りと言う事で捨て置き、改めて各自で捜索せよ。もしタケウチレキが真にアウロラ様に選ばれし英雄ならば、追って新たな措置を検討する』

(1ヶ月間泳がせてからこいつの周りを調べろ、か……)

 

 

正直、コルは未だレキがアウロラなる存在に選ばれた存在であると信じられなかった。仮にもし彼が本当にアウロラ神に選ばれし者だとして、自分達の捜している竜聖剣が見つかったらどうするだろう?少なくとも自分達に例の剣が扱える保障は無い訳だが、もしレキに扱えたとしたら自分達の傘下に引き入れるのだろうか?だがそうなれば、彼の元の世界での日常が狂ってしまうのは火を見るより明らかだ。幾等自分達の世界の為とは言え、本来無関係のレキをこれ以上巻き込みたくない。出来ればレキが無関係で、竜聖剣ももっと別の場所に在って欲しい………。自身の脳内に、そんな()()()()()()()が起こっている様子をコルは感じていた。

 

(って、何考えてんのよ私は?何の関係も無い世界の奴の事なんか知った事っちゃないのに………)

 

そうこうしている内にウラノドラケが発着場に着いた為、一同は降りてネオプテリクスの街の入口へと向かう。

 

「レキ、改めて言う必要は無いが、これから我々はお前を最初の小屋の近くに有る次元門へと連れて行き、そのまま送り帰す。」

「道中での心配はしなくて良いよ?ドラゴンだろうがバジリスクだろうがオイラ達が返り討ちにしてやるから、安心して守られてなよ!」

「ハハッ、そりゃ頼もしい限りで……」

 

アドリアとレグランの言葉に苦笑いしながらレキがそう返すと、不意に一行の近くをキーウィ型のオルニス族と思しき女性が通り過ぎる様子が彼の視界に入る。何と相手は両手から等身大の竜巻を起こしながら、近くのゴミを集めて掃除していたのだ。

まさか、これも魔法と言う物なのか?自分の中に再び好奇心が湧き上がって来るのをレキは感じていた。

 

「おぉ~~~ッ!凄ぇ!!何だあれ!?もしかして魔法か!?風の魔法なんて初めて見たぜ!!」

「レキ、物凄く興奮してるね……」

「あんな物、別に珍しくも何とも無いだろうに……」

 

ラククとフェサが呆れてそう呟くと、熱に浮かされた様子でレキが話し掛けて来る。

 

「なぁなぁなぁ!!折角だから帰る前にもうちょい魔法の事教えてくれよ!!恐竜やドラゴンもそうだけど、コルのやったD-Driveっての見た時からずっと気になってたんだ!!少し位、良いだろ!?」

「甘えるな!!そんな物をお前が知って何になる!?どの道お前はこれから元の世界に戻って、我々ともそれっきり縁切りになる可能性だって有るんだ!知る必要の無い事など知ろうとするな!黙ってさっさとゲートの在る場所へ行くぞ!!」

「あっ!?おい、コラ離せよ!離せったらァッ!!」

 

アドリアがそう一喝すると同時にレキの腕を強引に掴み、彼を街の外へと引きずって行く。だが、その時だった。

 

「待ってよ、アドリア!」

「コル………?」

 

意外にもアドリアを止めたのはコルだった。

 

「何故止める?こいつを送り帰すのは任務の一環だぞ?」

「それはそうだけど、こいつにもこいつの都合ってモンが有るんじゃないの?レキは只、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でしょ!?返せないなら返せないでちゃんとした理由が無きゃ納得出来ないのに、それすら教えられないで一方的に突っ撥ねられて無理矢理帰らされるなんて、こいつからしたら踏んだり蹴ったりじゃん!仮にもしレキが()()()()()()()()()()()()だったとしたら、今までぞんざいに扱われた手前、素直に協力してくれるかな!?少し位、こいつの我が儘に付き合っても罰当たんないんじゃないの!?」

「成る程、それは一理有るな…」

「もしレキが英雄なら、竜聖剣見つけられるかもだしね」

 

コルからの提案に、その場の一同は納得していた。曲がりなりにもアウロラ神の声を聞き、掘り起こした英雄候補である以上、レキに未だ利用価値が有るのは事実である。もしそうだとして、この先罷り間違って必要な存在になって行くとしたら、今ぞんざいに扱うのは如何な物だろうか?機嫌を損ねて不和を生じさせては、今後色々と支障が出るのは明白。社会に於いて組織やチームは仲良しグループでは断じてないが、それでも険悪を絵に描いた最悪の繋がりよりは良好な間柄の方が良いに決まっている。別にレキは()()()()()()()()()()訳だから……。先を見据えての心理的打算とは見事な先見性―――――それがコルに対する4人の評価であった。

だが、当のコルの思惑はまるで違っていた。この時コルは、何故こんなレキを体良く利用する意図の発言をしたのか、自分でも理解出来なかったのである。本心では、レキが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になれば、コルとしても万事OKの筈なのだ。これから自分達の身に起こるであろう戦いとも、レキには無関係でいて欲しかったのだ。だが、それだったらアドリアと一緒に冷たく突き放して元の世界に送り帰せば良いだけの話なのに、心ではどんな形であれ()()()()()()()()()()()()()()がいる。この()()は何処から来るのだろう?内心戸惑うばかりだ。

自身の中の思考を理解出来ないコルだったが、別種族への好奇心と言う形で無理矢理納得させて目の前の相手に対処する事にするのだった。

 

「コル、お前……ってえぇっ!?俺、英雄なの!?」

「そのリアクション、今更遅くないか?」

 

自分が“アウロラ神から選ばれた英雄”とコルから聞かされ、レキは驚愕した。彼等の事情は良く知らないが、「自分がこの世界にとっての英雄なのかも知れない」と聞かされて驚くなと言う方が無理だろう。

呆れるフェサが突っ込む中、驚きの余り声を上げるレキの額をコルが軽くチョップで小突く。

 

「ていっ!」

(いで)ッ!」

 

軽く叩かれただけだが、それでも地味に痛い。額を抑えて思わず痛がるレキに対してコルが言う。

 

「落ち着きなさいよこのアホ猿!未だ街の近くなのにんなデカい声出して、誰かに聞かれたらどーすんの!?」

「そうだな。悪ぃ………」

「ハァ、兎に角先ずはネオプテリクスから少し離れた森に有る私の魔導研究所に行くわ。其処で魔法の事やこの世界の事も話してあげる。英雄云々については()()無理だけどね」

「お、おう。有難うよ……」

 

するとコルは身体から紫のオーラを放ち、自らの身体をトロオドンへと完全竜化。最初にネオプテロスに来た時と同じ様に、レキを背中に乗せて自身の拠点(ホーム)へと向かって行く。アドリア達4人もそれに従って2人は空を飛び、2人は大地を駆けて随伴した。

大地を駆けて5分後、一行は街の近くに有る森へと到着した。森の奥へと続く一本道の先には、洋館風の建物が建っているが遠目で見ると何やら機械的な設備の様な物も随所に見える。あれがコルの魔導研究所=彼女の家なのだろうか?

 

「本当にあっさり着いたな……ってかコル、あれがお前の家なのか?」

「そうよ。私の自宅兼仕事場の魔導研究所。CWSの任務が無い時は基本私はあそこに居るわ」

「基本ウチに居るって、お前意外とインドア派?」

「んな訳無いじゃん。実験の為にあちこち出掛けたりするわよ」

「あっそ……」

 

まぁ別に何だって良いが、取り敢えずコルの家の中で漸く魔法の事とかが聞ける――――その方がレキにとって大事な事だ。一行が森の中を進む中、周囲を注意深く観察していてレキは気付いた。

自分達の世界では見た事も無い様々な植物もそうだが、竜盤類はコンプソグナトゥスやオヴィラプトル、鳥盤類はウネスコケラトプスやグリフォケラトプスと言った然程大きくない種類の恐竜がうろついている事に。

 

「何よレキ?森に生えてる植物やうろついてる恐竜がそんな珍しい訳?」

「まぁ、そうだな。否定はしねぇよ」

 

既に元のカラス型鳥人に戻っているコルの問いにレキにそう返すと、不意に近くの茂みで突然発光する何かをレキは見つける。

 

「ん?何だ?光ってる!?」

「ちょっとレキ!」

「勝手にうろつくな!」

 

コルとアドリアの制止を聞かず、何事かと思って茂みに隠れた光源を確かめると、中には何とトリケラトプスと同じ角竜の一種であるバガケラトプスが()()()()()()()()()()()()()様子が確認された。

 

「こいつは…バガケラトプス?小型の角竜の………?てか何で光ってんだ…?」

 

初めて見る小型角竜をまじまじと見つめるレキ。すると青い光に包まれたバガケラトプスはそのまま走り出したかと思いきや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ではないか!

 

「ななな……何だよあれ?この世界じゃ鳥人間だけじゃなくて恐竜まであんな力使うのかよ………!?」

 

()()()()()()()()()()使()()なんて有り得ない……余りに信じ難い光景にレキは腰を抜かして大層驚いていた。するとコルが隣に歩み出て来て言う。

 

「どうやらあのスモールホーン、D結晶による魔法適性で光の魔力を持ってるみたいね……」

 

D結晶?魔法適性?一体何を言っているのだろう?この世界から来た時からそうだったが、レキの脳内ではこの世界への疑問という疑問が飽和状態に達して今にも決壊寸前であった。

因みにバガケラトプス(Bagaceratops)とは「小さな角の有る顔」と言う意味合いで、バガ(Baga)はモンゴル語で「小さい」、セラトプス(ceratops)はギリシャ語で「角の有る顔」をそれぞれ意味する。英訳だと丁度「スモール・ホーンフェイス(Small horn face)」となる為、先程のコルの呼び方もこれに倣っている様だ。

 

「おい、どう言う事だよ………?D結晶とか魔法適正とかいよいよ訳分かんねーよ!つーかバガケラトプスが光になって飛んでっちまったぞ?最初のドラゴンと言い、この世界の恐竜って一体どうなってんだ……?」

 

確かに我々の地球にはドラゴンなんて実在しないし、絶滅動物も込みで地球上のどの生き物もあんな魔法みたいな力を使ったりはしない。地球の生き物の常識を超えた超生物振りにレキが呆気に取られていると、コルが溜め息を吐いて言う。

 

「だから、さっきのも込みでこれからあんたに説明してあげるっつってんでしょ?ホラ、さっさと行くわよ!」

 

そうしてレキの腕を掴で立たせると、コルは改めて自らの自宅兼仕事場へと向かう。

扉に手を掛けて大きく開くなり、コルが最初に行ったのは当然と言うべきか、開口一番に帰宅の挨拶の言葉を発する事であった………。

 

 

「只今!直ぐまた出掛けるけど取り敢えず戻ったわ!」

 

「おぉ!コル様お帰りなさいませ!」

「今回の任務はどうでした?」

「何か新しい発見はございませんでしたか!?」

 

コルが帰宅を告げると、中に居たオルニス族達が歓迎の言葉と共に集まって来る。レキが周囲を見渡すと、洋風の建物の外観とは裏腹に、内装は随分と現代的な研究施設の様相を呈していた。

果たしてこれからどんな話が聞けるのだろう?期待と不安に胸を躍らせながら、一先ずは成り行きに身を任せる事にしよう。そうレキは考えていた。

 




次回で本章は終了します。

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