リア充とは恐ろしい存在だ。これは誰がなんと言おうが、疑いようのない事実である。
俺がそう断じる理由の一つに、彼らの行動原理を挙げられる。思うに、彼らの行動指針はノリと勢いで決定する。つまり、その時の流行り廃りに流されやすいのだ。例を挙げよう。彼らはタピオカが流行れば我先にと店の前に長蛇の列を作るし、ぴえんという鳴き声が流行れば会話にそれをねじ込みたがる。
無論これを悪いと批判しているわけではない。それで経済が回っているのは確かだし、そこから生まれるものだってあるだろう。インターネットの造語もそうやって増えていく。良くも悪くも、リア充を中心に世界が動いているという側面は否定できない。
だが忘れないで欲しいのは、「それによって被害を受けた方はたまったものじゃない」ということだ。流行ったタピオカはゴミの問題が発生したし、それを掃除するのはそこに住む人や心優しき無関係の人だけである。このように、必ず被害者は発生してしまうのだ。
「そう思わないか?一色。」
「超同感です。」
普段の数倍濁った目で長々と自分の思想を語る俺は、一色と共に現在校内にある部屋へ招集されていた。扉に「会議室」と書かれたプレートが貼ってあるここに、なぜ俺と一色がここへ呼び出されているのか。その理由は、今朝のリア充どもの行動にある。
今朝俺は、例の件で平塚先生からの呼び出しを食らっていた。どうやらそれと同時に、一色も保健室への呼び出しがかかっていたらしい。呼び出された内容は俺と同じだったそうだ。なぜ俺が放送で呼び出されて一色は内密に呼び出されたのか扱いの差に抗議したいところだが、そこは一旦置いておこう。
ともかく、俺も一色も先生からの呼び出しに応じていたため、教室に居なかったのだ。
ところで、総武高校はこの時期に文化祭をやる。当然それに伴って文化祭の実行委員が発足されるわけだが、当たり前のことながら誰もやりたがらない。クラスの出し物もあるのに、その上余計な仕事まで抱え込みたがる人はそうそういないからだ。普段なら、ここでリア充どもがノリと勢いで立候補したり、集団から誰かが祭り上げられたりするだろう。今朝行われていた実行委員の選抜も、例年ならそうなるはずだったのだ。
だが、今回はそうはいかなかった。
クラスに今話題の人が二人もおり、しかもその二人が不在の状況。この格好の餌となる状況に、リア充どもの悪ノリが発動しない訳がなかったのだ。
結果、俺と一色が不在の間に実行委員として動くことが既に決定されていた、という訳である。
「改めて考えなくても酷い話だよな、これ。どっか訴えれば勝てるんじゃねぇの?」
「生徒会にでも訴えてみます?多分相手にもされませんけど。」
これを聞いた一色の機嫌も悪く、心なしか俺の発言への当たりが強いように思える。目にも光が灯っていないように見えるのは気のせいだと信じたい。まあ、この状況を作った理由の半分くらいは俺のせいだし是非もないよネ・・・。
しかし、いつまでも扉の前で文句を言っていても仕方がない。諦めて中に入ると、大体予想通りの光景が広がっていた。いかにも「押しつけられました」といった顔で座っている人や、友人を見つけて談笑している人、やる気に満ちあふれている人といった感じだ。だが、俺は一人だけ予想外の人が座っているのを見つけてしまった。
「比企谷先輩!?なんでここに・・・?」
「その言い方酷くない?ていうかそれそっくりそのまま返すからな?」
ボッチで友人なしの比企谷先輩が奉仕部関係なくここにいる・・・だと・・・?(ほぼブーメラン)
予想外の人がいたことに面食らってしまったが、知ってる人がいたことは正直心強かった。確認を取って隣に座ると、ちょいちょいと袖を引かれる。
「誰です?この先輩。もしかして兄弟とか?」
「いや、全然違う。俺のほぼ唯一の知り合いの比企谷先輩だ。」
小声で話す一色は驚き半分、疑惑半分といったところか。・・・というか比企谷先輩といると毎回聞かれる気がするが、そんなに似てるだろうか。すくなくとも目の腐り方はあちらが上だと思っているが、端から見たら違うんだろうか。俺はまだ濁ってるくらいで済んでると思うんだけど・・・
「で、先輩はなんでここに?少なくとも立候補じゃなさそうですけど。奉仕部関連ですか?」
「半分正解だ。俺は係決めの時寝てたら平塚先生に押しつけられただけだ。・・・奉仕部は関係ねぇよ。」
遠くに雪ノ下先輩が座ってたせいでそう思ったが、どうやら部活は関係ないらしい。ちょっと苦々しい顔をしたのは気になるところだが、何かあったのだろうか。だが、それを聞けるような間柄でもないのでとりあえずスルー安定だな。
それにしてもどうしようもない理由だったのはさすが先輩と言ったところか。常に予想の斜め下を地で行く男は伊達じゃない。
「思ってた二倍くらいしょうもない理由ですねそれ。」
「だろ?俺も予想外だった。ちなみにお前は?」
「朝不在の時にリア充の悪乗りで押しつけられました。こっちの一色も。」
「災難すぎないか?それ。俺のが可愛く見えてくるレベルなんですけど・・・」
どこか自慢げな先輩の様子の先輩は、俺達の理由を聞いてドン引きしていた。ちなみに先輩は自慢げな様子を一色にドン引きされてた。俺の両サイドドン引きで固められてるんですけど・・・これ俺も何かにドン引きしたほうが良かったりするんだろうか。三人揃って3引きの子豚ってところだろうか。この発想が既にドン引きレベルでしたねこれは・・・狼に食われた方がいいんじゃね?(辛辣)
「は~い!それじゃあ人も集まったので、そろそろはじめま~す!!」
俺がしょうもないことを考えていると、どうやら会議が始まるようだ。仕切っているのは、現生徒会長の城廻先輩。全身から溢れ出る癒やしの波動が、この会議室の空気を柔らかいものへと変えていた。あの人に会えただけで今回この仕事を押しつけられたこともどうでもよくなった気がしてきたのはあの人の人徳がなせる技だろうか。隣の比企谷先輩もまんざらでもないらしく、ちょっとそわそわし始めている。不審者度合いが高まってうっかり通報しそうなレベルである。
それはともかくとして、会議はつつがなく進行していった。途中、雪ノ下先輩が城廻先輩にさりげなく実行委員長を打診されていたのをすげなく断っていたのは驚きだったが。まあ姉の雪ノ下さんの名前を出されたらやりたくないのも当然かもしれない。
しかし、雲行きが怪しくなったのはここからだった。
雪ノ下先輩が蹴った実行委員長のポストに座った人―――相模先輩が、どうもに怪しい人だったのだ。怪しいと言っても、素性とか素行といったところではない。単純に、力不足なんじゃないか・・・そう思わせてしまう人だったのだ。
よく知りもしない人を悪く言うのはあまり褒められたことではないかもしれないが、今回ばかりは許して欲しい。なにせ、本当に怪しかったのだから。ちなみに最初に怪しいと思ったのは立候補したとき。どこかへらへらとした様子で立候補した彼女は、若干たどたどしい様子で成長がどうのと言っていたが、正直信用ならなかった。
(大丈夫なんですかねあの人。私早くもここに居ること後悔してるんですけど。)
(俺も同感。これ今年ちゃんと実行できるのかな・・・)
隣の一色も同意見らしい。ちらりと反対隣の比企谷先輩を見てみれば、明らかに「うわぁ」って目をしてたので多分同意見だろう。早くも暗雲が立ちこめ始めたこの会議は、ここから更に雲を増していく。進行役を相模先輩にバトンタッチした会議は、明らかにスローペースになってしまっていた。それでもなんとか各担当部署の割り振りを決めるところまではこぎ着けた。
「あら。あなたたちもここの担当なの?」
「まあな。雑務なら任せておけ。」
俺が選んだのは記録雑務。ちなみに一色も比企谷先輩も同じ所に収まっている。雪ノ下先輩はともかく、それ以外は絶対仕事少なそうだから選んだと思う(偏見)。だって俺もそうだからね!
軽い自己紹介をして、部署事の部長を決めるじゃんけんへ。しかし、仕事の少なさを理由にここに居る人たちが部長などやりたがる訳もなく。負けた人がやるというわかりやすい様式で部長を決めた結果・・・
「えー・・・。記録雑務の部長を務めることになりました、一年F組の城ヶ崎景虎です。至らない点もあると思いますが、ご指導よろしくお願いいたします。」
一年生の俺が部長を務めるという異常事態に。他部署は二年生か三年生が多いせいで、滅茶苦茶浮いているが割り切って受け入れよう。今更あがいたってこの仕事を誰かに押しつけられるわけじゃないし。まあ仕事も少ないだろうし、俺でも務まるだろう。比企谷先輩と一色の哀れむような目線は多分一生忘れないがな。
「じゃあ今日の所は解散で・・・。お疲れさまでした。」
妙に元気のない相模委員長の号令で解散となった、一番初めの会議。「一年の計は元旦にあり」という言葉は「何事も最初が大事」、という意味だが・・・さて、この文化祭実行委員はどうだろうか。
胸に若干の不安を残しながらも、俺は会議室を後にするのだった。
ちなみに雪ノ下先輩が副実行委員長に就任したことを知るのは、次の会議があった日だったことは付け加えておこう。
いろはすの本領発揮はもっと後だと思ってるのでしばらく影薄めです。ここから少しずつ本編との乖離が始まりますのでお楽しみに。