捻くれぼっちと拗れボッチ   作:よこちょ

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名言が思いつかない。訴訟
――――作者

というわけで前書きの名言は思いついたときだけやります。


千葉じゃないのに千葉村っておかしくね?by比企谷

 夏休み。読んで字のごとく「夏の休み」であるこの期間は、学生に与えられた癒やしの時間である。

 杜王町の殺人鬼ですらも浮き足立つサマーシーズンの到来に合わせ、めんどくさい登下校も強制されず、宿題さえ終わってしまえばあとは何をしたっていい。クラスメイトと顔を合わせる必要もなく、様々なしがらみからも解放される。誰に何を言われる必要もなく、気ままに一日を過ごす権利が学校から与えられているのだ。結論:ビバ!夏休み!ということである。ちなみに俺は宿題をさっさと終わらせてしまう派の人間だ。やな宿題を全部ゴミ箱に捨てて許されるのは小学生で魔法少女だけだからね。仕方ないね。

 それに、もし万が一終わらないなんてことがあったら先生に目をつけられてしまうし、ただでさえ諸般の事情で内申点に響きやすい境遇な俺としては絶対にそれを避けたいのである。成績はそこそこ上なだけに、内申で志望校を狙えないなんてオチは最悪だからな。

 

 さて、「夏休みとは休む期間だ」と言ったが、勿論例外はある。それは、「偶発的に発生する予定」だ。本来ならば、友人知人その他諸々が存在しない俺に予定など発生するはずがない。せいぜいあったとしても姉の買い物に駆り出されるか新刊を買いに行くくらいのもので、他人と行動を共にすることは希なことだ。

 

 だが、それは去年までの話だ。

 今年から高校生という肩書きにジョブチェンジをした俺は、二年後に受験が控えている。さっきも言ったが、諸事情により内申に響きやすい俺は少しでも内申点を上げておく必要があるのだ。そして夏休みには、課外活動が存在する。例に漏れず、我らが総武高校にも存在していた。それを担当している平塚先生曰く、「簡単なお手伝い」とのことだったので、迷わず参加を決意した次第である。泊まりがけになるらしいので色々と準備は必要だが、まあ心配はないだろう。・・・しかし、千葉県内で泊まりがけで手伝いができそうな場所なんてあったかな・・・?

 

 そんな思考は隅に置き、とりあえず準備を進めよう。必要なのは寝間着や替えの下着、筆記用具に日中活動用の動きやすい私服。大体普通のお泊まり会と似たようなモンだろう。参加したことねえから知らんけど。

 

 

「ん?トラ、なにやってんの?」

 

 

 準備をしていると、突然話しかけられた。

 話しかけてきたのは、前からちょこちょこ話題に出ていた俺の姉「城ヶ崎沙耶」。俺より3個上の大学生で、県内の文系大学に通っている。ちなみに成績優秀スポーツ万能でスタイル抜群と三種の神器を携えながらも、ひいき目を除いても可愛い抜群のルックスを持つ最強超人である。そんな姉が話しかけてくるのだから、いつの間にか部屋に入られて、俺のベットが占領されているくらいは些細な問題である。いつものことだし是非もないよネ!

 一方の俺は成績普通スポーツ平凡スタイル凡人という標準装備しかしてないので、その差は歴然である。大体試合開始と9回裏ツーアウトツーストライクくらい違う。ほぼ負け確なんだよなぁ・・・。

 俺が勝ってる点を上げるとするなら、こんなハイスペックな姉を持つことくらいだ。まあ逆説的に姉の欠点が俺ってことになるんですけどね。不出来な弟でごめんよワイのアッネ・・・

 ちなみにトラってのは俺のことで、姉は俺のことをこう呼ぶのだ。ちっちゃい頃からそう呼んでたし、それがそのまま続いてる。

 

 

「なにって・・・泊まりの準備。」

 

「トラが泊まり・・・?なに。ついにソロキャンにでも目覚めたの?」

 

「違うって。学校の課外活動に参加すんの。内申のためにね。」

 

「な~んだ。てっきり、ついにボッチを極めすぎたのかと思って心配して損したよ。」

 

「へいへい。すんませんね。」

 

 

 適当に荷物を纏め、パパッと鞄へ放り込む。これであらかた準備は終了だ。

 

 

「それにしても千葉で泊まりかぁ・・・。そんなとこあったっけ?」

 

 

 どうやら姉も同じ思考に至ったようだ。

 当然千葉にもキャンプ場は存在するが、それが課外活動になるとは到底思えない。どこか関連しそうな場所も調べてみたが、めぼしい所は千葉にはなかったのだ。

 

 

「・・・これ、『千葉かと思った?残念千葉村でした~』みたいなことじゃないよね?」

 

「・・・さあな。」

 

 

 千葉村とは、某ディステニーランドのごとく、「千葉にないのに千葉の名を冠するモノ」である。村って言ってるけど、実際はただのキャンプサイトみたいなもんだ。比企谷先輩曰く、「千葉じゃねえのに千葉名乗るのはおかしい」らしいが、そこは同感である。

 しかし、よりによって千葉村かぁ・・・。想像したくはないが、平塚先生ならやりかねない。あの人中身オッサン混じってるんじゃないかってくらいネタが寒い&古いときがあるからなぁ・・・

 

 

「大丈夫なの?もし千葉村でも。」

 

 

 姉が心配そうに尋ねてくる。・・・無理もない、か。

 なにせ、俺の()()()()()()()()()()()()()は、その千葉村で発生したからな。思い出したくもないし、できれば二度と千葉村には行きたくなかった。

 

 

「・・・大丈夫、だと思う。もう、昔の話だし。」

 

 

 笑いかけ、姉の顔を覗く。いつも元気でもぎたてフレッシュな笑顔は影を潜め、本当に心配した表情を覗かせている。どうやら、かなり心配させてしまったらしい。

 もう一度より一層笑って、努めて明るい声を出す。

 

 

「あの時の奴らがいるわけじゃないし、大丈夫だって。」

 

「・・・まあ、トラがそう言うなら大丈夫か。でも!絶対に無理はしないこと!」

 

 

 いいね!?とめっちゃ念を押し、部屋を出る姉。

 ・・・ちゃんと、心配は解けただろうか。

 

 

(・・・まあ、大丈夫だと信じたい。)

 

 

 姉の表情を確認しそびれた俺は、行く末を不安に思いながら駅前集合の日付を待つことにした。

 その先に、過去と向き合う未来が待っていないことを願いながら。・・・って、これも逃げだよなぁ。

 

 

「はぁ・・・。憂鬱だ。」

 

 

 結果俺は思考を放棄することを選ぶ。

 執行の日は近い。




平塚「悪い子は出荷よー」
城ヶ崎「そんなー(´・ω・`)」

って感じで次回、「奉仕部+ワンボッチ」。
今回短いけど閑話だし許してください。
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