捻くれぼっちと拗れボッチ   作:よこちょ

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ぼっちウォッチ

 千葉を抜け、高速で走り抜けること数時間。俺達はようやく、目的地である千葉村に到着した。その間にも色々とあったのだが割愛させてもらおう。大体由比ヶ浜先輩を中心にみんながお菓子食べながら雑談してたりしてるだけだったしね。あとは俺と比企谷先輩の間に新興宗教が誕生したくらいだ。特に問題はない。その後、由比ヶ浜先輩が雪ノ下先輩の肩により掛かって爆睡してたことだけは付け加えておこう。・・・ごちそうさまでした。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・。移動だけでもそこそこ体力使うもんだな。」

 

 

 車を降りてまず目に入ったのは、広大な森林。駐車場から見える範囲はこんなに生い茂ってるのだが、中に入れば実はそうでもない。子供達が遊んだりしても大丈夫なくらいのちょっとした林みたいな物だ。一部深めのとこもあるが、そこは肝試しなんかに使われていたりする。昼でも薄暗い場所なので、あまり近づきたくはないものだ。

 

 

「さて諸君、ここからは歩いて移動になる。荷物を下ろしてきたまえ。」

 

 

 スパッと紫煙を吐き出しながら、新緑の香りとタバコの味を同時に味わっている平塚先生から指示を受け、各々が自分の荷物を回収する。ってか先生それでいいんか・・・せっかくの自然なのに。あれか。タバコも葉っぱだし、似たようなカウントなのか?

 そして全員が荷物を回収し終わった頃。なかなか出発の音頭を取らない先生に疑問を感じ始めていた頃だった。このキャンプ場に、もう一台キャンピングカーが滑り込んできた。こちらもかなり大型だが、家族連れのキャンパーだろうか?

 だが、車は人を降ろして去って行く。どうやらただの送迎車だったらしい。送迎車があれとか豪華すぎませんかねぇ。

 降りてきたのは、いかにも「俺達青春してます」っていう風にウェイウェイしてそうな男女四人組。金髪が居る時点で間違いない(偏見)。なにやら騒がしく降りてきたのが一名に、それをたしなめながらも盛り下げない一名。あとは女性陣二人組。そんな感じの組み合わせだった。

 

 

「うむ。どうやら全員揃ったようだな。」

 

 

 は、ワッツ?あれが連れ?先生ジョーク上手いですね、なんて軽口式現実逃避を謀ろうとしたとき。

 

 

「や、ヒキタニ君。」

 

「・・・・・葉山か?」

 

 

 相手の超絶イケメンリア充で二年生トップカーストに君臨する男、葉山隼人先輩から比企谷先輩が話しかけられたことで俺の現実逃避はご破算となった。いやなんで葉山先輩みたいな人が内申点稼ぎのボランティアに参加してるのか、コレガワカラナイ。ってかヒキタニ君って誰だよ。

 ・・・しかし、改めて近くで見るとやっぱりイケメンだな葉山先輩。なんだか住む世界が違う感じがする。

 そんな不躾&ジェラっている視線を送っていたのがバレたのだろうか。葉山先輩がこちらへとやってきた。

 

 

「やあ、初めまして。俺は葉山隼人って言うんだ。よろしく。」

 

「・・・どうも、初めまして。一年の城ヶ崎景虎です。こちらこそよろしくお願いします。」

 

「うん。短い間かもしれないけど、よろしく頼むよ。」

 

 

 わざわざやってきたのは、どうやら見慣れぬ俺を見てのことだったのか。自己紹介を手短に済ませた後、雪ノ下先輩と少し話してからそのまま自分のグループへと合流していった。それだけのためにわざわざ来てくれるとかリア充の鑑かな?やっぱイケメンは行動もイケメンってはっきりわかんだね。

 

 

「さて、ではそろそろ行こうか。」

 

 

 それを見計らってか掛けられた出発の音頭。俺達は先生に引きつられて、ついに千葉村へと入場した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入場から約30分後。ボランティアの内容を「ここに来ている小学生の手伝い」ということと知らされた俺達は、早速行動を開始していた。今俺達に課されているミッションは一つ。「小学生よりも先にゴール地点へと到着し、昼食の準備をしておく」ことだ。内容的には二つだが、気にしてはいけない。小学生達は今、チェックポイントを回り、クイズに答えていく形式のレクリエーションをしているらしく、既に出発している。

 というわけで一塊になって行動している俺達は、出発した小学生達が通った道を後ろから歩く形となっているのだが・・・まあしかし、さすが小学生。この夏のうだるような暑さと日差しの下でも元気いっぱいだ。こちとら慣れない汗をかきながら歩いているというのに、ペースを落とさないどころかむしろどんどん進んでいくくらいの気概でぐんぐん進んでいる。流石に体格の問題もあって俺達が追いつき追い越してはいるが、小学生の元気さを実感するには十分だった。

 

 

「・・・ほんと元気だよな。小学生って。」

 

 

 俺の横を歩く比企谷先輩も同じことを思っているらしく、こちらはぐちぐちと文句を垂れ流しながら歩いている。やれ俺は悪くない地球が悪いだの言いながら、今にもふらつきそうな足取りはさながらゾンビ。目の腐り具合と相まって、本当に墓から蘇って来たかのようだった。ノーメイクノーチェンジでここまでやれるとかまじで前世ゾンビだったんじゃないか?将来の夢はノージョブに等しい専業主夫らしいし、三つもノーが揃ってるとは恐れ入った。スロットなら大当たりである。・・・いかんな。暑さのせいか変な思考にしかならない。これもすべて太陽が悪いのだ。

 

 

「ん?」

 

 

 途中で会う小学生達に挨拶をしたり発破を掛けたり(葉山先輩達が)しながら進んでいたとき。女子五人で構成された集団と出くわした。最近の小学生はどうにも進んでいるらしく、みな一様にオシャレに気を遣っており、しゃべる内容も女子らしい。顔面偏差値もそれなりに高く、まるでトップカーストの卵みたいな連中だった。従って、コミュ力も高く、アグレッシブだった。

 彼女らは年上の美男美女集団である葉山グループへと積極的に話しかけていた。

 そしてそのコミュ力の高い会話の流れで、いつの間にか一緒にレクリエーションのチェックポイントを探すことになっていた。後ろをついて行くだけだった俺達は完全に蚊帳の外である。

 

 

「じゃあ、ここのだけ手伝うよ。でも、他のみんなには内緒な?」

 

 

 葉山先輩の言ったその言葉に元気よく反応し、俺達と連れだって歩く。秘密の共有はイケメン式ジャグリングの常套手段だってのははっきりわかんだね。そして当然、俺達はその後ろを歩くわけだが・・・

 

 

「・・・比企谷先輩。」

 

「・・・ん。なんだ、お前も気づいてたか。」

 

 

 五人グループであれば、大体の場合2,3で固まるなどして一つにまとまっている。だが、このグループは違った。取っている陣形は1,4。あからさまに離れているわけではないが、それでも確実に2,3歩分距離がある。

 離れている一人は、長い黒髪に垢抜けた服装。可愛いというよりは、年不相応に大人びている。そんな印象を抱く子であり、その容姿も相まって良くも悪くも目立ちそうな少女だった。うつむく少女に向けられているのは、含みのあるクスクス笑い。嘲っているようなその様子からは、孤立させているという実感の見て取れる。簡単に言うと、その少女はハブられているのだ。

 

 

「・・・」

 

 

 黙りこくっているが、雪ノ下先輩も気づいている様子だった。

 だが、俺達はなにかアクションを起こすわけではない。俺としてはなにかをしてあげたいとも思うのだが・・・どうやっても悪手にしかならないのは目に見えている。

 声を掛けても、話し相手になっても、集団に合流させようとしても。すべてはその場しのぎにもならないのだ。悪意ある孤立は、何をやったとしても無駄だ。すべてが水泡と帰す。

 だが、そうは思わない人もいるらしい。

 

 

「チェックポイント、見つかった?」

 

 

 悪手であっても、行動を起こす人が居る。この場において、それは葉山先輩だった。

 

 

「・・・いいえ。」

 

 

 どこか困り顔で答える少女。そんな表情に気づいているのかいないのかは分らないが、葉山先輩は会話を続けていた。

 

 

「そっか、じゃあみんなで探そっか。名前は?」

 

「・・・鶴見留美。」

 

 

 ナチュラルに名前を聞き出すイケメンムーブをかましながら、少女――鶴見さんを集団へと連れて行く。

 

 

「おいお前ら見たか今の。さりげなく名前聞きながら誘ってるぞ。」

 

「イケメンは行動もイケメンでしたね。」

 

「ええ、見てたわよ。比企谷君には逆立ちしてもできないような行動だったわね。」

 

 

 こっちもナチュラルに比企谷先輩にディスりを入れながら会話をしている。しかし、楽しげな会話から一変。二人は難しい顔つきに変わっている。かくいう俺も眉にシワを寄っているのが自分でも分かった。

 

 

「でもあれ、完全に悪手ですよね。」

 

「ええ。あまりいいやり方とは言えないわ。」

 

 

 目線の先には、結果がありありと見て取れる。誘導された鶴見さんと元々の集団は合流し、一見一つのグループになっている。だが、その集団の中からは、笑顔は消えている。外部の力によって強制的に介入された異物は、一瞬だけなじんだように見えるが、やがて分離し、また二つになってしまうのだ。

 

 

「小学生でもあるんだな。ああいうの。」

 

 

 比企谷先輩が、ぼそりと零す。向かう視線の先には、再び二つに分かれた集団がある。元あった4人グループに戻った女子達はまた、楽しそうにお喋りをしている。弾かれた、鶴見さんを除いて。

 

 

「どこも変わんないんじゃないですかね。小学校だろうが中学校だろうが。」

 

「ええ。だって、等しく人間なのだから。」

 

 

 変わらないわ、と小さく付け加える雪ノ下先輩。間違って口から出してしまった俺の失言は気にされることもなく、流される。

  

 その後は特に何か起きるわけでもなく薄汚れた立て看板を見つけ、小学生達と別れた。最後まで、グループの笑顔が変わることはなかったし、鶴見さんの顔に笑みが浮かぶこともなく。揺れる黒髪が木立に吸い込まれていく様を、俺はただ、ぼうっと眺めていた。

 

 

 

「なんだお前、ロリコンか?」

 

「シスコンの先輩に言われたくないです。」




次回はカレー作ったり修羅場ったりすることです。
カレーは辛い方が良い、異論は認める。
と言うことで次回、「カレーで修羅場、インド人もびっくり」。おたのしみに。
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