世の権力者たちはよく問題を起こしてきた。でも、それも仕方がないと私は思っている。
日々の仕事の忙しさや、たえず襲い掛かる重圧は彼らを変えてしまうのに十分ではないだろうか?
というのも、私もまた天魔という地位にあるのだ。天魔というのは天狗の、さらには妖怪の山の長。ここ幻想郷のパワーバランスの一角を担う権力者である。
でも言わせてほしい・・・天魔、まじつらすぎ。
そもそもみんな天魔に任せすぎ!書類仕事とか、緊急時の対応とかはわかる。戦うのも好きじゃないけどまあいい。
でも細かいことまで全部私にやらせるってどうなの!?引っ越してくる住民の管理とか、カッパが発明品でやらかすたびの後始末とか、私じゃなくてもいいじゃん。私は何とかしてって頼む立場じゃないの?
ていうかほかの天狗たちが仕事しなすぎなんだよ。白狼天狗たちはちゃんと仕事をしてくれてる。問題は他だ他。
まず鴉天狗。なんでみんな揃いも揃って新聞作ってんだよ!1つの里になんて新聞1つ、あっても2つか,3つでいいでしょ。ちがう仕事ふってもてきとーに終わらせて、また新聞作りやがって。そのくせ私に年一で新聞大賞を決めさせるのやめて。仕事しないくせに私の仕事を増やすんじゃないよ。
大天狗たちは仕事を全くしないってわけじゃない。でも権力争いがね。そんなに偉くなりたいなら私と代われって言いたいところなんだけど、どうにも適任がいないというか。もし天魔にしたら妖怪の山がやべえってやつ(能力不足)か私腹を肥やしそうなやつ(こっちも妖怪の山がやばい)しかいない。
鴉天狗に天魔としてやっていけそうな子もいるんだけど、本人は望んでなさそうだし、大天狗たちが反対するんだろうな。私も元大天狗ってわけじゃないんだけど。さすがにこの役目を押し付けたり妖怪の山のみんなが困るようなひとを天魔にしたりはできないからね。
他の妖怪たちも全員が協力的ではない。自分勝手な子が多いし、いうこと聞いてくれない子もいる。そういう子とかがよそに迷惑かけたりするたびに私が怒られるってわけよ。いや、確かに私が悪いんだけどつらいもんはつらい。
とくに幻想郷の賢者、八雲紫の説教はたまったもんじゃない。よくわかんない言い回しでネチネチと。はっきり相手に伝わるように話せないの?
今はいないけど、昔は恐ろしい上司がいて、その人たちの機嫌取りまでさせられた。パワハラにアルハラ、果てにはセクハラ(同性)まであるんだから恐ろしい。すぐに喧嘩吹っ掛けてくるし。
つまり、なにが言いたいかっていうと、こんだけ苦労してるんだったら秘密のストレス解消法があっても仕方ないじゃんってこと。
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「あら、澪じゃない。上がっていきなさい」
「ありがとうアリス♡えへへ、それじゃおじゃましまーす」
私の隠された趣味。それは親友の家に遊びに行くことだ。え、普通だって?
それが私の場合はすこしちがう。じつは、私が天魔だってのは教えてないのだ。ちょっと不誠実かもだけどそうでもしないと友だちどころじゃないからしゃーない。しゃーなくない?
天魔ってだけで敵対されたり恐れられたりするからね。そりゃ気持ちはわかるけどさ。お偉いさんって聞くだけで緊張するもんね。
私が天魔になって一番つらいのは友だちができないってことだったりする。私と仲良くしてくれるひとがいても友だちってわけじゃない。こう、仕事上の付き合いですよって感じなのよ。
これが意外と心に来る。たまの休みにだれと遊ぶってわけでもなく、家で一人とかちょっと死にたくなる。だから山から離れたところに行って友だちを作ろうとしたんだけど、これがまた大変だった。
普段私は姿を変えている。というのも本当の私の見た目はまるっきり幼女で威厳がない。それはさすがにまずいでしょってことで大人っぽい見た目に
周りの目がなんだこいつってかんじで泣きそう、というかもはや半泣きだった。そんなときに私に話しかけてくれたのが、今では私の親友のアリス・マーガトロイドだったってわけ。思わずてんぱっちゃったんだけど、優しく頭をなでなでして落ち着かせてくれたのだ。
こんな優しいひと、友達になるしかないって思って私からお願いし、今の関係が始まったのだ。もう今では家で遊ぶぐらいの仲になった。そうこれは運命みたいなものなのだよ!
「ずいぶんと久しぶりじゃない。こっちに来なさい。ぎゅーってするわよ。ほら、ぎゅーっ」
座っているアリスの胸の中にすっぽりと収まる。いい感じの圧迫感と不思議と落ち着く匂いについつい身体をあずけてしまう。アリスの膝の上はすんごい心地いい。めっちゃやわっこいし、たまになでなでしてくれるし。心の底から落ち着けるっていうかなんというか。
いやはや友だちってのがこんなにいいもんだとは知らなかったよ。
ちょっと恥ずかしいけど友だちの間ではこれぐらい普通らしい。アリスがそう言ってた。アリスは今まで友だちがいなかった私に友だちどうしの常識を教えてくれる。ふふふ。これで新しい友だちができても安心だ。
「ぜんぜん会いに来てくれなかったわね。ほんとに寂しかったのよ」
「ごめんね。私も会いたかったんだけど、なかなか時間がとれなくて」
「ふふっ、しょうがないわね・・・じゃあこれで許してあげる」
ふぇ!?アリス、今ほっぺにちゅーって。
「あ、ありす!?」
「どうしたのあわてちゃって?私たちぐらい仲がいいなら普通じゃない。知らなかったの?」
「し、しってたよ。ちょっとびっくりしただけ」
そうなんだ。私ちゅーは結婚してないとダメだと思ってた。
うーん・・・でもなんかむずむずするなあ。私がそういうことだって思ってるからかな。
うんうん唸っていた私は気づかなかったのだ。私を抱えたアリスが罠にかかった獲物を見るような笑みをうかべていたということに。
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私が澪と出会ったのは、人里での人形劇を終えて帰っている途中のことだった。普段まったく自分たちの山から出てこないことで有名な天狗が歩いていたから注目を集めていた。よく見たら泣きそうになってたし、さすがに見ぬふりはできないと思って声をかけたのが今の関係の始まりだったのだ。
今思うと本当に幸運だった。こんなに愛らしい彼女と出会え、信頼されるようになったのだから。
それから澪は私の家に訪ねてくるようになった。
澪は世間知らずというか、無防備すぎる。私の言うことなんでも信じちゃうのがかわいくってついついいろんなことを教え込んでしまう。
澪が悪いのだ。あんなにかわいくて。私のこと信じてくれて。あんなに幸せそうな笑顔を私に向けるから。だから、私が澪に夢中になってしまったのも、ぜんぶ澪のせいだ。
こういう話、だれか代わりに書いてくんないかな