何卒ご了承ください
三人称が書きやすいのは口調に気を使わなくてもいいから。東方キャラは登場作品によって口調がかなり変わったりするので、どんな口調にするか決めづらいです
天の声side
ほんの二月ほどで幽香は教えた魔法を自在に使えるようになったので、パチュリーと美鈴は中断していた旅を再開することにしたようである。
目指すは信州諏訪。まだ人々に認知され、強大な力を行使できる二柱は人間ではない彼女らにどのような対応をするのだろうか。
「あー、美鈴?今どのあたりかわかるかしら」
美鈴が日本の地理を知るはずはないだろうに。
「わかりませんよ。ただでさえ山ばかりでどちらに進んでいるのかもわからなくなりそうなんですから」
実際はもうあと四十キロもないほどには近づいていたりするが。というか飛べばすぐわかるはずなのにあくまでも歩いて目指すのは何かの意地なのだろうか。
ここに来るまでに立ち寄った村は二十ほど。依頼を受けてはこなしてさっさと旅を再開するせいで金だけは困らない程にあるようで、とても持ちきれないため今はパチュリーの謎空間にしまわれているとか。
金を使うことがほとんどなくなったのには美鈴の食事の減少も関わっていたりする。彼女も食事は嗜好品に近くなってきたのだ。今まで過ごしてきた数千という時間を礎にして、ここ数百年の密度の高い修行の末ついに彼女も高位の存在に足を踏み入れたのだ。
四時間後
パチュリーside
「途中走ったりもしたけどどうやら一里ほど先に見えている国が諏訪ね。この延々と続いた山登りもようやく終了ね」
「まぁ私としては修行にもなりますし、あちらに住むことになっても日課として毎日五つほどは山に登るかもしれませんね」
まじか美鈴、流石は妖怪ね。しかも最近は一日一食でも全く問題なさそうだし。いよいよ美鈴も上級妖怪の仲間入りか。
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ここが諏訪の国か、思っていたより大きいわね。流石は二柱もいる国だ。
「ちょいと待ちな、お二人さん。流石にこの国の代表としては妖怪の侵入を許すわけにはいかないね。
おとなしく祟られるか、抵抗してから祟られるか、あんたたちの好きな方を選びな」
「あなたは……神?」 まあ答えは知っているのだけれど。
「ああそうさ。私はミシャグジを束ねるこの地の土着神、洩矢諏訪子さ」
「私はパチュリー・ノーレッジ。都では大都庶樺菜と名乗っている魔法使い兼陰陽師よ」
「へぇ、この山奥にまで名前が轟く大陰陽師は人間ではなかったのかい。
大陰陽師の正体見たり魔法使い、ってかい」
語呂悪すぎでしょ。
「うーん、そんな陰陽師を祟ったとなれば民からの信仰が無くなってしまうかもね?」
「冗談を。土着神への信仰がそんなに簡単になくなる様ならその土地はもう駄目ね。
民に強く信仰されているからそこまでの力があるのでしょうに」
「あれ、分かっちゃったか。ま、これは単なる言い訳なのさ。あんたたちがこの国に入るのを見逃すためのね」
「あら、入ってもいいのね。それは私たちが人間を傷つけるようなことは万が一にもないことが分かったからかしら?」
「あぁ、その通りさ。恐らくあんたたちの変装を見破れるのもこの国にはもう一人だけだからね。
おっと、もう一柱、だったね」
「一つの神社に神が二柱もいるなんて大変なのね」
「今となってはそうでもないさ。昔はそれはそれは大変だったんだけどね。
さて、ならもう一人のあんたは美鈴なのかい?」
「はい、私は紅美鈴。見ての通り妖怪ですが、私も都では陰陽師をしていました」
「どっちともここらでは聞かない名前だね。特に聞くことがないぱちょりいの方は不審に思われないように偽名なんて作ったんだろうけど」 ぱちょりいって何よ。
「私の名前はパチュリーよ。……パ」「ぱ」「チュ」「ちゅ」「リー」「りい」
「パチュリー」「ぱちぇりい」…うん、もう諦めようか。
「もう何でも好きに呼んで頂戴」 「うーん………………うん。じゃあ『ぱっちゃん』で」
おぉう、意外と普通に呼んでくれるんだね。
「じゃあ自己紹介も終わったし、私たちの神社にでも行こうか」
「そうね。
それにしてもこの国は広いのね、都ほどではないけど」
「当たり前だよ。私を誰だと思ってるんだい」「神」「その通り」
なんだか嬉しそうね。まあ自分の土地を褒められて嫌な人なんていないか。
「なんだか楽しそうね?諏訪子」
「この国を褒められたんだから当り前さね、神奈子」
「そちらのお二人さんはどうやら人間ではないみたいだけど?」
「ふふん、聞いて驚け神奈子よ。実はこの二人が世間に名を轟かせている樺菜と美鈴なのだ!」
「ほぉ~。妖怪が陰陽師とはまたよくわからない事をしていたのね。
そうそう、自己紹介がまだだったわね。私は八坂神奈子。表向きに神社に祭られているのは私よ」
「なるほど、だから二柱も同じ神社にいるのね」 「どういう事ですか?」
「つまり、表向きには神奈子を信仰しているように扱う、しかし実際には裏で諏訪子も信仰を得ているのよ。だから祭神は神奈子なのだけれど諏訪子も消えることが無い、というわけ」
「そんなこともあるんですね」 「いえ、これは異例中の異例ではないかしらね」
「あんた存外頭が切れるんだね。見直したよ」 「そりゃどうも」
ま、頭の回転は紫の方がかなり速いのだけれど。
「ま、取り合えず神社まで行こうか。うちの巫女も待っているだろうし」
「あら、いい子なのね」
「勿論だよ。なんたって私の子孫なんだからね」
なんだか嬉しそうね。まあ自分の子孫を褒められて(以下略
「何て名前なの?」 「
「あなたならもっとおかしな名前を付けるかと思っていたのに、普通の名前なのね」
「当たり前でしょう?名前というのはそれだけで存在を固定してしまう。だからあんたも樺菜であるあんたとぱっちゃんであるあんたでは
「ところでぱっちゃんって何なの?」 「この子の渾名みたいなもんさ。言いにくいからね」
「へぇ、なんていうの?」「パチュリー・ノーレッジよ」
「ぱ、ぱちぇりい?確かに言いにくいわね。「言えてないけどね」私もぱっちゃんで妥協するしかないのね。
くっ、神ともあろうものが妥協をしてしまうなんて」「何でも早くいいから神社行きましょうよ」
いつまで国に入って少しのところでお話してるのよ。
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「あれが私たちの神社さ。立派なものだろう?」
「えぇ、参拝客もかなりの数来ているみたいね。もうすぐ夕刻だというのに」
「この国の神社はあそこだけだし、ここの民は皆私を強く信仰してくれているからね。当然の事さ」
本当に住民と神のつながりが強い国だ。残り1200年余りで存在が危ぶまれるまでになるとは思わないくらいに。
「あっ、稔里だ。おーい、今帰ったよ」
「あら、諏訪子様に神奈子様もお帰りになられたのですね。して、そちらのお二方はいったい?」
「大都庶樺菜と紅美鈴だよ。今日からしばらくはこの神社に住んでもらうから仲良くしてあげてね」
「しばらくというと…?」 「二百年くらいかな?」
「なるほど二百年ですか……って二百年!?お二人は人間ではなかったのですか?」
「えぇ、私も美鈴も妖怪兼陰陽師よ」 「よ、妖怪が陰陽師ですか。凄い時代になりましたね」
「あはは、やっているのは私たちくらいのものですよ。まあそういうわけでこれからよろしくお願いしますね、稔里さん」
「わたしもよろしくね、稔里」
「はいっ!こちらこそよろしくお願いします。美鈴さん、ぱっちゃん」
……………………え?
この話から先はよほどのことが無い限り数字部分は漢数字にします
「神社に二柱がいる理由」はパチュリー自身が推測したものです。知識からではないです
稔里は穣子と被らないような漢字にしました
では次回も読んでいただければ幸いです