行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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寵姫的第十五話

パチュリーside

 

 

 あれからもう百年ほど。私たちは相も変わらず仙人の陰陽師として活動している。一度大江山にも行ってみたことがあったが、既に天狗の山と化しており鬼は一人たりとも見つからなかった。

  私のせいなのかもしれない。辛い世界だよ。

 

 最近は都でとある噂が立っている。どうやら最近床に臥しがちになっている鳥羽上皇には誰をも魅了するほどの美貌を持つ寵姫(ちょうき)がいるという事らしい。そんな者の顔も一目見てみたい気もするが、側近は安倍泰成。晴明直系の子孫なだけあってかなり優秀な陰陽師だ。

 

 ん?そういえば鳥羽上皇の寵姫って確か…………

 

 

「追えっ!逃がすなよ!くそっ、妖のくせにのうのうと過ごしておったのか!」

 

 

「そんなつもりは一切ありませんでしたのにっ!くっ、私もここまでな…………の?え?」

 

 

「あ奴どこに消えやがった…。出てこい!……………………くそっ!跡形もなくっ!

 仕方ない。明朝から捜索を再開するぞ!有力な陰陽師たちにも協力してもらうから適当な陰陽師に声をかけて回れ」

 

捜索は面倒だけれど上皇の寵姫の顔を拝むチャンスだと思って声がかかったら参加しよう。

 

 

「もし、そこにいるのは大都庶殿とお見受けする。今の騒ぎを聞いていたのなら貴方もあの妖狐の捜索に協力してはくれまいか?」

 

「分かったわ。明朝からだったわね」「うむ、それではよろしく頼むぞ」

 

 

 

 

では、美鈴と一緒に捜索を始めようかな。

 

「手始めに他の陰陽師たちが手を付けていない森から行きましょうか」

 

 

「はい、それはいいのですがパチュリーが捜索に協力するなんて珍しいですね」

 

「それは顔も見てみたいし、ちょっと確かめたいことがあったからよ」

 

あの妖怪が逃げているときにどこかに行った絡繰り、あれは彼女自身が発動したものではない。彼女もかなり驚いていたから。

 

となるとあんなことができる奴は私の知る限り一人しかいない。

 

「紫。…あなたなんでしょう?」

 

 

「いきなり呼ばれて唐突に『あなたなんでしょう?』はちょっと意味が分からないわね」

 

「昨晩上皇の寵姫を逃がした、というかスキマに落としたのはあなたなんでしょう?」

 

 

「あぁ、それね。そうよ私よ。彼女は今まだ眠っているからここには来られないけど。どうして助けたのか知りたいかしら?「えぇ」それはね、彼女があまりにも可哀そうだったからよ。

 それに彼女は人間に近づきたがった妖怪。私の夢には非常に相性がいいと思わないかしら?」

 

「ふーん、なるほどね。よく分かったわ。それで?その子をあなたの式にでもするつもりなのかしら?」

 

 

「よく分かったわね。ええ、彼女がそれでいいと言えばそうするつもりよ」

 

「昨晩ちらっと見ただけだけれど彼女、九尾でしょう?妖獣の最高峰の存在を式にできる実力が羨ましいわね」

 

あの九尾でさえ私なら苦戦は免れないし、負けることもあり得る。マジ紫チートじゃん。

 

 

「そうそう、貴方の忠告のおかげで鬼たちを全く殺されることが無かったと言って萃香が貴方にお礼を言っていたわよ」

 

「………………………………………………え?萃香生きていたの?じゃあ人間たちが持ち帰ってきたあの鬼の首は別の鬼ものだったってこと?」

 

 

「誰も殺されなかったと言ったでしょう?貴方が見た首は萃香の分身のものよ。恐らくは翌日くらいには消えていたでしょうね」

 

ほんっとうに良かった。これで百年以上もあった心のしこりが取れたようだよ。

 

「前に山に行った時にはいなかったのだけれど、彼女らは今どこにいるのかしら?」

 

 

「彼女らの希望で人間のいない地獄に私が送ったわ」

 

文字通り地獄送りにしたのね。

 

 

「それは良かったです。彼女たちが生きていて安心しました」

 

そういえば美鈴はかなり鬼の皆と打ち解けていたみたいだったしね。かなり不安だったのだろう。

 

「それは良かったのだけれど、今人間たちはあなたが連れ去った九尾を探しているわよ。まあ連れ去らわれたと思っている人間は皆無なのだけれど」

 

 

「それなら大丈夫よ。だっていま彼女が寝ているのは私のスキマ空間の中。見つかることはまずあり得ないわね」

 

スキマの中だと?あの目がぎょろぎょろしているところで目覚めたら悪夢でも見ている気になるのではないのかな。

 

 

「スキマ空間に家を建てているのよ。だから目覚めても悪夢を見ている気にはならないわ」

 

「そ、そうだったのね。というか勝手に心を読むのはやめて頂戴」

 

 

「さっきの貴方が分かりやすすぎただけよ。顔が青くなっていたし」

 

なーんだ、そうだったのね。てっきり紫が新しい能力に目覚めたのかと思っちゃったじゃないか。

 

「まあ町の力ある陰陽師たちが挙って捜索しているから彼女を外に出すのは五十年以上経ってからの方がいいかもしれないわね」

 

 

「まあ彼女も退治されるほど弱くはないけれどねえ。精神が弱っている今付け込まれるのは確かに嫌ね。気を付けておくわ。

 それで貴方は九尾を見つけたと報告するのかしら?」

 

「するわけないじゃないの。別に悪行を働いたわけでもなし、私が参加したのは本当にあなたが連れ去ったのかを確かめたかっただけよ。思わぬ収穫もあったけれどね」

 

 

「うふふ、そうね。ではまた何かあったら何時でもよんでね」「えぇ」

 

 

 

 

「そっちは何か手掛かりを見つけられたか?」

 

「いいえ、私の仙術ではただの狐でも感知してしまうから。あちこち行ったけれどすべてただの狐だったわ。だから私はもうあまり役立てそうにない。狐なんてそこらにいすぎて」

 

 

「む、なるほど。仙術には意外な欠点があったんだな。では貴方は通常の陰陽師業を再開してもらっても良いぞ。腕の立つ陰陽師も一人は京に常駐していた方が良いからな」

 

よしよし、怪しまれることなく脱退できたね。仙術なんて実は一回も使っていないけど。では普通に陰陽師を続けましょうか。

 

 

 

結局手掛かりはないまま捜索は打ち切りになった。紫が絡んでいるのだから当たり前だけどね。

 

そんな感じで京の町は本日も平和である。そういえば今日は午前は仕事をして午後からは紫に呼ばれていたんだっけな。紫から呼び出すとは珍しい。どんな用事だろうね。

 

 

 

実は午前の仕事とは病にかかっている町民の診察だったのだ。最近はこういう依頼も増えてきて、基本妖怪退治は美鈴、こういうのは私がやっている。このような依頼がない時は私も妖怪退治をしたりしているけれど。

 

 

 話は変わるが、実は陰陽師の本来の仕事は陰陽五行思想を使ったものなので、私とはべらぼうに相性が良かったりする。これが私の実力が陰陽師として頭一つ分抜けたところにある理由の一つなのだ。あとは勿論単純に人間よりも強いから、仙術を使えるからなどである。仙術は基本使わず、魔法で似たようなことをしているだけなんだけれど。

 

 

 

 

紫との待ち合わせ場所に美鈴と来たけど早すぎたかな?

 

「少し早かったかしらね?」

 

 

「そうですね、いつも紫さんは時間ちょうどくらいに来ますからねぇ」

 

 

「あら、そうでもないわよ?」「紫!?」「ごきげんよう」「寿命が五年は縮まったわ」

 

 

「じゃあ驚いていないのと同じね。ってやめてよその顔。私が悪かったわよ」

 

「わかればよろしい。それで今日はどんな用事なのかしら?」

 

 

「今日は私の新しい式を紹介しようと思ってね」「あ、了承されたのね」

 

 

「えぇ。本当はすぐにでも貴方たちに紹介したかったのだけれど、急に私から送られた力になれなかったようでね。こんなに時間がたってしまったのよ」

 

「あなたはもう少し自身の妖力量を自覚した方がいいわね。そんな言い方をすればその子が悪いみたいだけれど、悪いのは十中八九紫よ」

 

 

「あらあら、悲しいですわ。およよ」

 

「喋り方まで変えちゃって。わかりやすい嘘泣きね」「てへっ」

 

「てへっ、じゃないわよ。まったく、早く紹介なさいよ」

 

 

「それもそうね。今から呼ぶわ……………………ほいっと」

 

 

「うわっ、ちょ、紫さm………………どうも初めまして。紫様の式をしております、八雲藍です」

 

「あ、はい。パチュリー・ノーレッジです。貴方が聞いたことのある名で言うなら大都庶樺菜です」

 

 

「紅美鈴です。パチュリーと一緒に活動しています」

 

 

「貴方たちどうしてそんなに堅苦しいのかしら?」

 

 

「「「あなたのせい(です)よ!!」」」

 

 

「そ、そうなのね。まあとりあえずこの子は藍。貴方たちも仲良くしてあげてね」

 

 

「ちょ、紫様、このお二人は有名な陰陽師の方なんですよね?!どうしてそんなに仲がよろしいのですか?」

 

 

「あらあら、藍にはわからないのねぇ。この二人は人間ではないわよ」

 

 

「え"…そうだったんですか。初めて知りました」

 

 

「馬鹿ねぇ、自分たちは妖怪ですって言いながら陰陽師する奴なんているわけないでしょう?」

 

 

「まあそれもそうですか。ではパチュリー様、美鈴様、これからもよろしくお願いしますね、紫様を」

 

「えぇ、任せておきなさい。というかあなたよく私の名前言えたわね」

 

 

「お二人の名前は既に紫様からお聞きしていたので、お恥ずかしながら練習をしていたのです。紫様の式に適応しているときにですが」

 

 

「貴方、まさかそのせいで適応するのが遅れたのかしら?」「うぐっ」

 

「まあいいじゃない。あれこれ詮索してもどうしようもないわよ」

 

それに私としてはすごくうれしいし。

 

 

「はぁ、パチュリーがそういうのならもうこれ以上の詮索はやめておこうかしらね」

 

 

「助かりました、パチュリー様」「…何のことかわからないわね」「あらあら、うふふ」

 

ここは白を切るしかないね。まあ二人の仲も良さそうで安心したよ。




大体出来事一つ辺り一話で書いていきます

実は一人の視点だけで一話終わるのは回想回を除けば第一話以来だったりします

次回は水曜日です
 
では次回も読んでいただければ幸いです
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