天の声side
最近京には不穏な空気が毎晩漂っている。二条天皇もこれに恐怖し、ついに寝込むまでになってしまった。天皇がそんな様子なので相手がどのような姿なのかを判明させた者には褒美をとらせる、とお触れを出すまでになった。
というのも、その妖怪はまさに正体不明といった感じなのである。
ある者は顔は猿、胴は狸、手足は虎で尻尾は蛇だったという。
またある者は背が虎、足は狸で尻尾は狐だったと言い、またある者は頭は猫、胴は鶏で尻尾は蛇だったと言う。
誰が見てもその妖怪の真の姿がどれなのかよくわからず、討伐しに行こうにも人々の言う姿が全く違うせいで対象を絞りにくいのである。
ここで白羽の矢が立ったのが長き時を生きた仙人と呼ばれる大陰陽師、大都庶樺菜と紅美鈴なのである。彼女らの智慧と力があれば退治できない妖怪はほとんどいないと噂されているため、京の人々はもう安泰だと考えたようである。
パチュリーside
京の町で正体の分からない妖怪が毎晩出没するせいで、天皇が病になってしまったらしい。
そこで私たち二人にその妖怪の退治要請が来た。時は平安、妖怪は正体不明。この世界を知っている私が相手の正体をわからないはずがない。
妖怪の正体は鵺、名前は封獣ぬえ。姿かたちは恐らくどの人間が語っていたものでもない。正体不明がウリの妖怪の正体を知ってしまっているとはこれ如何に。
「美鈴、もうすぐ夜になるから出かける準備はしておきなさいよ」
「例の妖怪退治の件ですね。それでどのあたりに向かうつもりなのですか?」
「私の予想が正しければ清涼殿の鬼門、つまり丑寅(北東)あたりに出没するはずよ」
昔から人間が恐れるのは悪霊が来るとされる丑寅。人間の恐怖によって生まれた最強の種族である鬼があのような姿をしていることからも容易に察することができる。
ぬえは人間を恐怖に陥れることを楽しむ妖怪。ならば京の人間が最も恐怖に感じるであろう場所、つまり天皇の御殿である清涼殿の丑寅にいるのは確実だろう。
「相手はきっと大妖怪。滅することは難しそうだから今回は封印させてもらうわ」
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「何か黒い靄がかかっていますね」
「間違いなく、これは京の町を恐怖に陥れた妖怪の仕業ね」
「その通り。この場所がよく分かったわね。たいていの人間はたどり着けないと思っていたんだけど。
それで?貴方たちは私を殺しに来た、ということでいいのかしら?」
「私たちはあなたを封印しに来たのよ。殺しに来たのではないわ。私たち以外の陰陽師であればあなたを殺しに来ていたかもしれないけど。
ところであなた、人間たちの間では様々な姿で語られているけど実際どんな姿をしているの?」
「人間たちはどう言っているのかしら?」
「そうねぇ。例えば、頭は猫、体は鶏、しっぽは蛇、とか、そんな感じよ」
「何それ、気持ち悪いわね。流石にそんな化け物じみた姿じゃあないわよ」
「でもだからこそ想像だけで正体がわからないから恐れられているのではないのかしら」
「まあその通りなんだけどね。でも私は一度も人間の前に姿を現したことなんてないわよ。人々が勝手に想像して私の正体不明さをさらに高めてしまっているだけ。まったく愚かな奴らだよ。
でもここまで来られた貴方たちには特別に私の姿を見せてあげる」
それは光栄ね。
「私は封獣ぬえ、幾多の人々を恐怖に陥れる正体不明の妖怪よ!」
「自分で正体を明かしては駄目じゃない…………。私は大都庶樺菜、京の陰陽師としてあなたを封印させてもらうわ。意外に明るいかもしれない地の底にね!」
「貴方を葬って私の正体不明を取り戻すから別に構わないのよ。
さあ、私の正体を知ってしまった者よ!正体不明の
弾幕戦になるのなら美鈴では分が悪い。
「美鈴、私が勝負をするからここぞというときにこの札を彼女に投げなさい。それで封印ができるはずよ」 「えぇ、負けないでくださいよ」
「行くよっ!」 『平安京の悪夢』
そういえばぬえってExボスだったね。ま、私もEx中ボスなんだけどね。
かなりパターン化できる弾幕ではあるけど、完全耐久が来たか。平安京のきれいな区画を見立てているのかな?
考え事をしていたら遅れそうになるけど回避は一応間に合っている。運動していなかったらここで人生終わっていたね。
今は喘息は出る気配も全くない。これならこちらも存分に弾幕を張るのに集中できそうだ。
「こちらからも行くわよ」
ごっこ用に調整していない私の最高傑作。長い修行と実験の果てにようやっと完成にまでこぎ着けた、五行のすべてを詰め込んだ大技をその身に受けてみよ!
『賢者の石』
美鈴side
今回は珍しくパチュリーが戦うようだ。彼女の判断は正しい。私は格闘の方は得意だが、弾幕はかなり苦手で練習してもなかなか上手くならなかったからだ。
相手のぬえという子が放つ弾幕は密度が高いのに加えてかなりの美しさがある。でも相手の姿が見えないのはなぜだろうか。
実践経験の多いパチュリーでも避けるのは大変そうだし、当たったらパチュリーの身体ではその部位が吹き飛びかねない。見ているこっちが緊張してしまう。
彼女の言っていた好機はいつ訪れるだろうか。彼女がすべての弾幕を避けきった今か?
「こちらからも行くわよ」
まだっぽいね。彼女は一体どんな弾幕で応戦するのだろうか。
『賢者の石』
あれはっ!パチュリーの最高傑作として作られたもの?!まさか賢者の石を弾幕に適用してくるとは。あの弾幕にぬえが当たった時、その時にこれを投げようか。
「げっ、これは避けづらいわね。どうしましょうかっ?!って痛っ痛いッ」
今だ!
ヒュンッ ペタリ
「こっ、これは?!力が入らない?」
「よくやったわ、美鈴。それは封印の札よ、地獄直行のね。安心してもいいわよ、恐らく九百年ももたないわ。ではまたいつか会いましょうね」
「まさかっ、貴方はただの人間ではなかったの?!そんなことg…………!」
「…………行っちゃいましたねぇ。行先は本当に地獄なんですか?」
「えぇ、地獄なら悪いことをしようとしても鬼がいるから大丈夫だと思うし、地上に封印してしまうと人間たちに解かれる恐れもあるから」
「結構色々なことを考えていたんですね」
「勿論よ。先の事を考えて行動するのが人の行動原理だから」
覚えておこう。
天の声side
このようにしてパチュリーと美鈴は正体不明だった妖怪を無事に退治し、天皇の体調もみるみるうちに良くなっていったようである。
これまでになしてきたことに加え、天皇の不調を救ったこの功績により、彼女らの名前は陰陽師の間でも代々語り継がれ、多くの歴史書や物語の登場人物としても広く登場することになるのだが、それはまだ誰も知らない事である。
特に大都庶樺菜に関しては彼女が天皇の生命力を仙術により強化していたために天皇が重症になる前に回復できた、という話もよく町人の噂(真実)として流れていた。
とにかく鵺退治を成し遂げた二人にはかなりの額の金が与えられた。それは今はパチュリーの例の空間に突っ込んでいるらしい。それに加えて彼女らには京一の職人に作らせた、彼女らの名前入りの上質な着物が贈られた。彼女らがいかに京に貢献したかがよくわかる事例である。
そんなことがあってから少しした頃、とある有名な歌人が亡くなったといううわさが流れ始めた。
『願わくば花の下にて春死なむその如月の望月の頃』
彼が作ったこの歌の通りに亡くなったらしい。彼が亡くなった後何故かその春、屋敷の桜の木の下で自害するものが後を絶たなくなったそうだ。
平安京の悪夢を使ったのは今が平安だからです
書いていて思いましたが、効果音が下手すぎて辛いです。なかなか臨場感がでません
今回は少し短めですが、次回はいつもより少し長めです
では次回も読んでいただけると幸いです