面白いものでもないので飛ばしてもらっても構いません
本編はきちんと明日出します
天の声side
紫の発言により自分の力に自信を持っている者たちが一斉に湖の月に飛び込んでいった。
今夜は満月であるため妖怪の力はより一層強くなっている。故に普段は腕に自慢があるわけでもない妖怪も我先にと飛び込んでいった。向かう先は己にとっての地獄ともいえる場所になるとも知らずに。
ある妖怪side
俺は普段は特に腕に自信があるわけではない。たまに通りすがる人間を喰っていればそれで満足だと思っていた。
ある日俺たちの住む場所の頭領ともいえる妖怪のもとにある話が入った。なんでも妖怪で徒党を組んで月を侵略するつもりらしい。月に侵略ってなんだ。月に人でも住んでいるのか?
頭領といえる妖怪はこの地の妖怪たちを捨て駒として扱うのではなくきちんと個人(個妖)として扱ってくれる。そうでなければこの地を出ていく者も少なからずいたに違いない。
とにかくそんな頭領は俺たちにも選択をさせてくれた。すなわち月に攻め入るか、ここに残るか、だ。ちなみに頭領は攻め入るらしい。最近腕がなまりそうだからとか何とか。
俺は初めは行くつもりなんて全くなかったし、攻め入るのなら死の覚悟もしなければならない。そんなものとは無縁な生活で満足していたのだからたとえ行かないのが自分だけでも、俺はここに残るだろうと考えていた。
それから二日後くらいだったか、俺は生まれて初めて運命の分岐というものを幻視したような気がする。近隣の妖怪たちは当然のごとく参加するらしい。その中でも俺と比較的仲の良かった奴から『お前も勿論参加するよな』と言われて『しない』ときっぱり言える勇気が俺には無かった。
そこから運命の歯車は勝手に加速しながら回りだしてしまったかのようだった。俺にこうなる運命が見えていたのならもっと別の方向に転んでいたのかもしれない。だが俺は運命を見るどころか能力すら持っていない。こうなることは決まっていたのだろう、悲しいことに。
結局この地の妖怪は全員参加ということになった。俺たちだけで数百はいるだろう。あんな小さな月に本当に人など住んでいるのだろうか、精々虫程度の大きさの生き物しか住めそうにないのに。
決行は月の綺麗な夜で妖怪たちが最も力をつける夜だった。普段は大人しい俺でさえできないことはないような気さえした。それも含めてあの首謀者の妖怪の思惑通りなのだとしたらどれほどまでに恐ろしい妖怪だろうか。
もう既に俺の仲間たちのうち大半は月に行ってしまっていた。あとその場に残っていたのは首謀者妖怪を含んでも数十だった。俺はついに行く決心と生まれて初めて逝く覚悟をした。
何とも不思議な空間を通り抜けた先はちっぽけな球体ではなかった。確かに向こうの方は丸くなっているが景色は地上と大差ないように見えた。生えている木が桃の木ばかりであることを除けば、海があることさえ変わりはない。
戦闘をしているのか少しうるさいと思った方向に行ってみるとそこは血の海だった。人間の血ではない。もちろん人間の血もあるにはあるが、血の海を作っているのは同族たち、つまりはこの地に攻め込んできた妖怪たちの血だった。
妖怪は死んでしばらくすると跡形もなく消滅するという。見たことが無いので本当かどうかは知らないが。つまりここに血の海ができているという事は死んでからまだそんなに時間が経過していないという事でもある。
つい先ほどまで生きていた存在、俺は今まで人間を喰うにあたってこのような感情は抱いたことはなかったがその時初めて”死”というものを実感した。そして同時に俺の覚悟はまだまだだったと思わざるを得ない。
こんなに多くの妖怪が攻めるのに負けるはずはない、と心の奥底で考えていた自分がいた。頭領がいるなら俺たちの出番はないだろう、と思っている自分がいた。
それがこの状況だ。俺は本当に救えない奴だったのかと自嘲したくなるほどに覚悟が絶対的に足りていなかったのだ。
運命は俺を捕らえた。
俺が生き残る未来は無い、という事がはっきりと理解できた。
もう行くしかなかった。俺にはもう未来がないのだから。
月の人間と思われる奴らは不思議な武器を使っていた。今まで見たことも無いような形、聞いたことも無い爆音。それにあの人間たちの武器からは嫌な感じがした。まるで俺たちの真逆であるような、そんな感じが。
また断末魔が響く。もはや妖怪のものなのか人間のものなのか区別がつかなくなってしまった。
月の人間たちは妖怪相手にも全く怖気づかない。ただ排除するためだけに戦っているような気がした。あまりに人間的では無いので俺はむしろ彼らに恐怖した。
そして今、俺はついに戦場に入った。ここは戦場、一瞬の油断が命取りだ。特にあの武器からの攻撃を食らうのは拙い、と考えていた。それが油断になっていた。
敵の刀が俺を切ろうとしてきた。俺はとっさに身体を捻る。「ほう、今のを避けますか」とか感心している敵に俺は蹴りを仕掛ける。こんな俺でも妖怪の端くれだ、当たれば致命傷にはなるだろう。
しかし相手の人間は女だというのに俺の蹴りを手で止めてきやがった。
「さて、貴方たちを月に送り込んだ愚か者はいったい誰なんですか?」
余裕そうな顔で話してきやがった。妖怪としてこれ程までの屈辱は無いだろう。
「確か八雲紫とかいう妖怪だ。胡散くせぇやつだよ」
「答えていただいてありがとうございます。
それで貴方をここで滅すか、無用な殺生は嫌いですので見逃すこともやぶさかではありませんが」
ここで見逃すという選択肢もあるわけなのか。ふむ、では答えはこうしようか
「ならお言葉に甘えて…………
あんたの本気の力で俺を滅していただこうか。
どうせ見逃されてもそこらの兵にやられるのは眼に見えている。どうせ死ぬのなら強者にやられた方が俺としてもスッキリするんでね」
「…………仕方がありません。では神の力で貴方を黄泉に送って差し上げましょう。
『
あれが神の姿なのか。巫女っぽいがやけに眩しいものだ。しかし有象無象ではなくこのような存在に殺されるのならこの地に来た甲斐もあったのかもしれないな。
天の声side
月面戦争は最終的に紫の降参という事で幕が下りたが、それに至るまでに集めた妖怪のほとんどが犠牲になったことは妖怪にとっては大きな痛手になるのかもしれない。
この事態を引き起こした紫は不本意なことだが月では知らない者がいなくなるほどに名が広まり、地上でも帰ることができた少数の妖怪たちによりかなり有名になってしまった。
月面戦争が終わり、ようやく彼女の夢『幻想郷』が形になりつつある頃、彼女のもとにパチュリーが訪れて美鈴が言語を覚えたら欧州に帰るということを伝えた。紫にとってパチュリーと美鈴は完成したらまず見せたい知り合いのうちの二人だったが、仕方のないことだと諦めたらしい。
「またいつか見に来て頂戴よ」
「私たちがこの世界に住めなくなった時には行くわよ」
なおいつ頃になるかはパチュリーしか知らない事であるが。
今回は前回の補足的なものを書いてみました。紫の名前の事とか
あと運命運命言っていますがレミリアとの関係は皆無です
途中までは回想じみていますが、この妖怪の生き残りルートは月に行かないくらいしかないので普通に黄泉に送られています
短めだと思った方もいるかもしれませんがここ二話が長めだっただけです。多分