行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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あまり日常という言葉は使いたくなかったのですが、何も思い浮かばなかったので


日常的第二十一話

フランドールside

 

 

私にはある能力がある。物理的な物ならば何でも破壊できる『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』。

 

私の教育係でもあるパチュリーに言わせるとこの能力を使えば、殺し合いにおいては負けることはないらしい。パチュリーはそう言っているが私の能力にも欠点がある。

 

先ず破壊対象の「目」を私が認知できなければならない。そして認知した「目」を右手に移して握りつぶすのも一瞬で、というわけにはいかない。更には実力が私よりもはるかに高い者には恐らく行えない。握りつぶすことができないからだ。試したことはないけれど、パチュリーや美鈴、それに小悪魔には効かないだろう。

 

小悪魔は召喚時にはその名の通りの実力しかなかったらしいのだが、ここ百年ほどの修行の末にかなりの強さになってしまっている。修行以外にも理由はあるらしいのだが。

 

私ももう百歳を超えたのだから強くはなっている。でもこの館の他の住人が強すぎるだけなのだ。

 

ちなみにこの館はお父様が出て行ってから随分と寂しくなった。もともといた執事たちは皆お父様の黄金期に仕えるようになった者たちばかりだったのでお父様がいなければこの館にいる意味はなくなったらしい。

 

お姉様はそれをわかっていたのかお父様が何処かへ行った次の夜には皆解雇されていた。あとこの館にいるのは私を含めて五人というわけだ。

 

この広い館に五人しかいないうえにパチュリーと美鈴の部屋は相変わらず図書館になっているところで、小悪魔も同じところで寝ていたりするから館の部屋はほとんど空になっている。

 

そんな部屋のすべてをきれいに保つために毎日昼間はパチュリーが掃除しているらしい。あとパチュリーがしているのは洗濯。調理はとても嫌がっていたパチュリーに代わって小悪魔が担当している。美鈴は勿論門番。

 

パチュリーは実は家事全般をかなり高いレベルでこなす。何故そんなにできるのか聞いてみるとどうやら昔友人に叩き込まれたらしい。厳しい人だったのかな?

 

たまに人肉じゃない時があるとパチュリーが料理をすることもある。そんなときは彼女らが長年住んでいた土地の料理が出てくることがある。こちらの料理と比べて味は薄い気はするけど、彩はいいし美味しいから私は結構気に入っている。

 

お姉様はそんなときに一度出てきた納豆というものをいたく気に入ったらしい。お姉様は肉が出てきてもそんなに食べないのにコメと納豆が出てきたらよく食べる。私的にはあんなねばねばしたものよりも肉の方が美味しいと思うんだけど、お姉様は

 

 

「私も昔色々あったのよ。だから肉はあまり食べないの」

 

らしい。何があったのかはすごく気になるが何故か悲しそうな表情になっていたから聞くのはやめておいた。お姉様の傷をえぐるような事は極力したくないから。

 

 

 

 

 最近は毎晩パチュリーに手伝ってもらいながら能力制御の練習をしている。将来的に必ずかなりの実力を持つようになる、とパチュリーに言われた。もしそうなってしまえば、私に壊せないものはなくなってしまうかもしれない。

 

そうなってしまっても世界を破壊しつくさないようにするためにこの制御は絶対身に付けておかなければならない。だから勉強が終わったら毎回必ずこれをしているのだ。

 

だけどこの制御も完璧とは言えないのでたまに私の意識がなくなって狂気的になってしまうらしい。そんなときには美鈴が狂気(裏人格)を落ち着けてくれているらしい。

 

今はまだいい、私は美鈴には到底敵わないから。

 

 

 

  パチュリーside

 

 

フランドールは普段は大人しいし、頭の切れる子だ。しかし狂気に染まってしまったときには美鈴が居なければどうにもならないくらいには危険な子になる。フランドールは理性的に行動する子であるが狂気は本能的に行動するのだ。吸血鬼の身体能力を使って飛び回られると厄介なことこの上ない。私にそんな身体能力は無いから。

 

 

今は昼間だ。美鈴は門番をしている。吸血鬼は寝ている時間の()()()

 

そう()()()()なのだ。

 

「また出てきたのね、狂気さん」

 

今は美鈴を呼べない、ならば私に残された選択肢はこれしかないでしょう。

 

「来なさい…………こあ」

 

 

「はいは~い、どんなご用件でs…………あらぁ、なるほどわかりましたよ」

 

流石はこあね。強くなってくれて良かったわ。たった百年でここまで強くなれるってことはかなり伸びしろがあったのだろう。

 

 

「アハハハハ!今日モイッパイ遊ビマショ?」

 

「…こあ、ちょっと聞きたいことがあるからこの子の動きを止めてくれないかしら」

 

 

「お安い御用ですよ。さあさあ遊びましょうか、狂気ちゃん」

 

こあと狂気のアソビが始まった。本能全開の吸血鬼とはいえまだ百歳くらい、妖怪としては幼子のようなものだからかわいいものだ。

 

特に何の問題もなく五分ほどで拘束出来た。

 

「さて、あなたに聞きたいのだけれど、あなたとフランドールの魂は完全に同一のものなの?」

 

 

「そうヨ。ワタシはフランノ無意識二近い存在なノ。ダカラワタシとフランハ切ってモ切り離せナイ関係ニアルノよ」

 

「フランドールの無意識、か。それなら確かに切り離すことはできないわね。魂が同一のものなのならば魂を分けることでもしなければ切り離すことはできない」

 

動きが止まっていれば、魔法は簡単にかけられる。狂気には眠ってもらおう。お休み。

 

 

「魂は分割できないんですか?」

 

「できるにはできるわ。そういう魔法も存在する。

 

でもね、それは禁忌の魔法。やり方を知っている魔法使いは少ないし本もかなり少ない。まあ私は知っているけれど」

 

 

「それではなぜしないのですか?すれば妹様が救われるかもしれないのに」

 

「先ほども言ったようにこれは禁忌の魔法なの。何故禁忌かというと魂を分ける前の本体にも後遺症が残るし、何よりもその魔法は人を殺すことで成立する魔法だから。

 

分かるかしら?これでもフランドールは救われると思うかしら?」

 

 

「なるほど、そうだったんですね。ならばどうすればいいのでしょうか」

 

「この狂気の人格はフランドールの無意識部分、故にフランドールには永遠に狂気を知覚することができない。またこの狂気もフランドールを知ってはいるけれどフランドールの意識状態では休止状態になる。

 

だからフランドールがなるべく意識状態でいられるようにすればこの人格は出てこれなくなるわ。でもそれは難しい。定期的に相手をするために私たちもまだまだ強くならなければならないわね」

 

こあや私や美鈴はまだ強くなれるのだろうか。あと伸びしろがたっぷりなのはレミィか、頑張ってもらおう。うん。

 

 

 

 

   レミリアside

 

 

何か最近は美鈴との鍛錬とパチェからの勉強が厳しくなった気がする。気のせいだと思っていたかったけど気のせいではないと確認させられた。

 

この前までは夕食の後三時間ほどの鍛錬だったのに最近は夜食直前までするようになっている。パチェの勉強も四時間くらいになっている。これは流石におかしい。

 

 

「いきなりどうしたの?こんなに厳しくなって」

 

「あと大きな伸びしろがあって狂気を抑えられる不死性を持つのはあなただけだから」

 

なるほど、つまりフランを助けるための最後の槍としての役割を私が担うことになるわけか。確かに強くなったフランはまさにあらゆるものを破壊できるようになってしまうだろう。

 

そうなった時にパチェや美鈴、小悪魔では身体を破壊された時点で死んでしまう。いくら実力はフランより上でも、フランが成長すれば破壊できる範囲に入ってしまうだろう。

 

けれど私なら吸血鬼特有の死ににくさがあるし、霧散して躱すことも可能、という事なのね。

 

 

「なるほどね、如何に私たちより力を持っていようともそうなってしまえば確かに貴方たちじゃ無理なのね」

 

「そういうことよ。強くなって私たちを助けてね?当主さん」

 

 

「フフッ、任せておきなさい。それが上に立つ者の義務だからな」

 

この館の住人はフランを除いて皆私より歳が上だし、私たち姉妹の方が後にこの館の仲間入りをしたんだけどね。

 

 

「そういえば鍛錬ばかりしても実戦を一度もしたことないんだけど」

 

「ああ、それね。それは美鈴が強すぎて襲撃者がこの館の敷地に入れていないからね。

 

実戦をしたかったら美鈴を一時的に門番から外してみなさい」

 

そんなことがあったのか。

 

「そういえば最近は吸血鬼の館を攻めるのなら昼じゃなくて夜、という話も出ているようよ」

 

 

「何それ…………。人間になめられまくりじゃないのよ。まあ美鈴にはちょっと休んでもらうことにするわ。それに夜に来てくれるのならこちらも都合がいいというもの」

 

あまり殺す気はないけれど実戦は経験しておきたい。

 

 

 

 

 

「…………と、いうわけで美鈴はしばらくの間門番しないでね。鍛錬の一環だと思ってさ」

 

 

「はぁ、分かりましたけど来る人間なんてそんな強いのは基本いないですよ」

 

 

「まあそれでもいいわ。でも実戦は大事でしょう?」

 

 

 

 

   天の声side

 

 

レミリアが一時的に門番をいなくしたことが功を奏したのか人間はよく攻めてくるようになった。しかしそれと同時に昼間も門番がいないという噂が町に広がってしまい、昼間にも敵襲があるようになってしまった。

 

これによって寝られなくなったことにはさすがのレミリアも参ったようで僅か一週間で美鈴は門番に戻らされた。世の中上手くいくことばかりではなく、完璧だと思っていた計画にも僅かな綻びは存在するものである。

 

何はともあれレミリアも一応実戦を経験できた。物足りなさが凄そうだが、美鈴が大方の人間はそんなものですよ、と諭すことで何とか納得できたようだ。

 

 

「そもそもあんなのが実戦なのなら美鈴と鍛錬していた方が圧倒的に強くなれる気がするわ」

 

 

「それは当たり前ですよお嬢様。私は妖怪で彼らは人間なのですから自力どころか生きてきた年月も桁違いですよ。まあお嬢様たちのように幼くして強者と渡り合えるような存在もいることにはいるんですがね」

 

 

「私ももう百歳超えてるのよ?いつまでも子ども扱いしないでよ」

 

 

「申し訳ありませんねぇ。でも妖怪における百歳はとても幼いのですよ。それはまだまだ伸びしろがあるという事に他なりませんし、その歳でそこまでの強さがあることには驚いているのですよ?私が百のときなんかもう思い出せませんがそこらの下級妖怪くらいだったかもしれませんねぇ」

 

美鈴も機嫌の悪くなったレミリアを慰めるのに必死になっている。

 

「レミィもまだまだ幼いわね、美鈴の誉め言葉に気づかないなんて」

 

 

「あー?私いつ美鈴に褒められてた?」

 

「『お嬢様たちのように幼くして強者と渡り合えるような存在もいることにはいるんですがね』って言っていたじゃないの

 

幼くして強者と渡り合えるというのは立派な誉め言葉よ。でもそれに気づかなかったレミィにはもっと勉強してもらいましょうか?」

 

 

「!?い、嫌だ~!美鈴!私を助けて!」

 

 

「仕方がありませんねお嬢様、きっちり自分の事は自分で護れるようにお嬢様にはもっと鍛錬してもらうことにしましょうか」

 

 

「み、味方がいない?!ひどいわ美鈴もパチェも…………」

 

レミリアは自分の味方がここにいないと知っていじけて部屋に籠ってしまったらしい。

 

「少しいじりすぎたのかしら。まあ事実なのだけれど」

 

 

「まあまだ子どもなのは事実ですけど、次からはほどほどにしておきましょうね」

 

勿論美鈴もパチュリーもレミリアがいじけるのを目的としてやったわけではないのだが、お嬢様の心は傷つきやすいらしい。

 

 

 

 

   美鈴side

 

 

お嬢様が急に実戦をしたいから門番やめろと言ってきたときは本当に驚いた。何か言い方は違った気もしなくはないが、解雇されたのかと本気で思った。

 

でもお嬢様の実戦は寝る時間が無くなるという事で結局すぐ終わった。私も仕事が無ければ暇だったし、お嬢様に加勢することは禁じられていたから裏庭で鍛錬をするかパチュリーやこあちゃんとお話するくらいしかできなくて辛かった。

 

門番に戻って五日ほどするとあまり人間たちが来なくなってしまった。どうやら私がまた門番に復帰したという話が町に流れたらしい。私は自分の事を弱いとは思っていないがそんなに強いとも思っていない。

 

日本を出る少し前に紫さんに出会った時でも最初にあった時と同じような感じがした、絶対に敵わないという。この館の前当主も私を強いと言ってくれたしパチュリーに言わせても私はかなりの実力者になったらしい。

 

そもそも魔法使いのように捨食の魔法を使わず、仙人にもなっていないのに食を娯楽として考えるようになっただけで強者としての資格は十分らしい。そんなものなのかなあ。

 

 

 最近になってお嬢様と妹様が自分たちの妖力を使って武器を創ったらしい。妹様の方は変な形の棒から剣を創るらしい。名前はレーヴァテイン。確か北欧神話の神器の一つだったような気がする。図書館で一度読んだ。

 

お嬢様の方はグングニル。こちらも北欧神話に出てきていた。確か投げれば必中の槍だったか。二人ともとんでもないものを創ったものだ。

 

そのお二方がどうやら私に剣術と槍術を教わりたいらしい。でも剣の方はともかく槍の方は投げる用のものじゃないんですか?と聞くと

 

 

「ただ投げるだけなら赤子でもできるだろう?だから基本の槍術は習っておいて損はない。

 

しかも投げたら戻ってくるまでは待たないといけないだろう?それならできるだけ持って戦った方が時間を無駄にしないし美しくもあるだろう?」

 

なるほど一撃必中とはいってもそれで相手が倒れてくれるとは限らないし、むしろ妖怪相手なら倒れてくれる方が少ないからか。

 

 

「確かにそうですね。しかし私が教えられる槍術と言えば三国時代のものですし、剣術に至っては極東の刀のようなものでしかやったことが無いのですが」

 

刀と剣では勝手が違いすぎるような気がするが。

 

 

「私たちはそれでいいわよ。そのカタナっていうのも剣みたいなものなんでしょ?」

 

 

「形状はかなり違いますし、振り方も全然違いますがまあ吸血鬼の力があればおよそ似たような動きはできるかもしれませんね」

 

実際どんな違いが生まれるのかはわからないけれど。

 

 

「じゃあそういうわけでこれからよろしくね。今夜は私、明日はフランって感じで続けていくから」

 

良かった、流石に二人同時には教えられないと思っていたところだ。

 

 

「では始めましょうか、お嬢様。まずはですね…………」

 

 

 

 

   小悪魔side

 

 

私はこの百年で昔とは見違えるほどに強くなった。そんな強くなった私にパチュリー様が頼みたいことがあるらしい

 

どうせいつも通り本棚の整理を手伝ってほしいとかそんなところだろうけど。本棚の整理もかなり得意になったし、ここの司書らしく膨大な本の中から求める一冊を探してくることだってお手の物だ。

 

 

さてさてどんな用事なのか。

 

「あ、来てくれたのね、こあ。ちょっとあなたに聞きたいことがあってね」

 

 

「一体何なのでしょうか?」

 

「あなたたち悪魔は魔界に通じているわよね?そこでお願いなのだけれど、魔界への入り口がこの辺りのどこにあるのか教えてくれないかしら?」

 

 

「この辺り、ですか。そもそも魔界自体下界にオープンな感じではないですからねえ」

 

「それじゃあやっぱり非正規ルートで入るしかないのかしら。非正規ルートで入ったら拙いことになるのかしら…………」

 

 

「別にどのルートから入っても問題はないと思いますよ。ようこそ、って感じではないですけどパチュリー様ほどの力があれば魔界で騒がれることはあまりないと思いますし、魔法使いを拒むような場所ではないと思いますよ」

 

魔力量が高くて騒がれることはあるかもしれないけど…………。

 

「そうだったのね。昔一度行こうとしたけれどそんなこと知らなかったから行かなかったのよね。

 

そうと決まれば早速準備をしましょうか、こあ」

 

 

「………………………………え?私もついて行っていいのでしょうか?」

 

「あなたは私の護衛でしょう?そのために強くなってもらったのに」

 

そういえばそうだった。だからパチュリー様はわざわざ()()()()()私を今日呼んだのか。

 

 

「でもどうやって行くんですか?入り口が無いのに」

 

「なければ無理矢理作ってやればいいだけよ」

 

界の狭間にどうやって入り口なんて作るんだろうか。いくらパチュリー様でもそんなことができるのだろうか。

 

もしかして召喚の応用であちらに送るのかな?

 




今回は全員の視点からです。そのせいで今回は6500字行ったんですけど

減らしたいのにむしろ増えるとは

一応前回言っていた原曲について。個人的にはあまり一番を決められないのです。強いて言うならという感じのTOP10は道中曲も入りますが上から、稲田姫様に叱られるから、妖怪の山、ラクトガール、ヴォヤージュ1969、人形裁判、逆転するホイールオブフォーチュン、もう歌しか聞こえない、プレインエイジア、春色小径、彼岸帰航、ですかね。一目見てわかるように、私は4ボスの曲がかなり好きです(作品として好きなのは風神録です)


では次回も読んでいただければ幸いです
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