行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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ロストワードやっていたらストックがなくなってきた今日この頃。あと二話分しかストックがないのは流石に拙いかもしれない


幻的第二十八話

パチュリーside

 

 

かなりの衝撃が来てふらついてしまったがどうやら無事に幻想郷に着いたようだ。自然豊かな匂いがする。

 

 

「ねぇパチェ、ここは幻想郷であってるの?」

 

「確認したいのなら外を見てきてみなさい」     「わかったわ」

 

ここは間違いなく幻想郷だがレミィも一度ここの空気を吸っておいた方がいいだろう。今は夜だから出歩いても全く問題がないし、湖の霧も晴れているはずだ。

 

「美鈴も外の空気を吸ってきてもいいのよ?ここの空気は懐かしさを感じられると思うわよ」

 

 

「そうですね。でもそういうならパチュリーもですよね。どうせなら皆で出て行ってみます?」

 

「そうね。そうしましょうか」

 

紫が夢をきっちり実現させて創った理想郷。私が日本にいた頃はまだ彼女に同調する者は私と美鈴とあと少しくらいしかいなかったはずだ。よくもまあ創り上げたものだ。幻想郷の賢者たちも変わった人たちが多いだろうに。

 

彼女の苦労もわかってはいるが次に起こる吸血鬼異変は私には止めることができない。これは幻想郷にとっても非常に重要なことになるはずだから。

 

レミィが欧州で最後にかき集めた妖怪の数も大したものだ。数百はいるかもしれない。かなりの人数をもって絶対に勝てないと分かっている敵地に攻め込む、か。まるで月面戦争の時のようだ。

 

今のレミィはあの時の紫と同じだ。あの時の彼女は負けるとは思っていなかったし、今のレミィも思ってはいないはずだ。レミィの場合は見ようと思えば運命を見てわかるのだろうがそうしようとはしない。

 

それは戦う前から結果が分かると面白くないからだろう。結果の分からないレミィと紫、分かり切っている私。構図は完全に一致する。

 

流石に古い友人の世界を敵に回して戦うのは避けたかったし、戦っても私程度ではどうにもならない。まあ私ではどうにもならないというのは月に行った時もだったのだけれど。

 

 

「ここは空気が美味しいわね。前に住んでいた場所とは大違いだわ。ねぇ、パチェもそう思うでしょう?」

 

「えぇ、あちらがどれだけ空気の悪いところだったのか身に染みて感じるわ。それで?あなたはいつから仲間集めを始めるのかしら?」

 

 

「勿論、今からに決まっているじゃないの。そのために夜に来たんだから」

 

「妖怪は夜の方が活発だものね。でも気をつけなさいよ。幻想郷の妖怪は日本語だけれど、あなたが連れてきた妖怪たちはあちらの言葉なのだからケンカを起こさないようにね」

 

 

「それは確かに心配ではあるわね。そんなことより昼間はこの館が見つからないように結界でも張っておくのかしら?」

 

「そんなことをする意味は無いわね。結界の管理人はこの地を覆う大結界を何者かが通過した時点で感知するはずだもの。私たちの侵入はもうばれているというわけよ」

 

 

「なんだ、そうだったのね。まあ昼間は門番だけ置いて、私は大人しくして目を付けられにくくしておきましょう」

 

美鈴がいる時点で紫には私も居ることはばれるだろうけれど。

 

 

   紫side

 

 

この幻想郷に大結界が張られてからはそれ以前よりもさらに流入する妖怪が増えた。その背景にはやはり人間による妖怪の淘汰があるのだろう。

 

ほんの二、三百年前くらいの人間は妖怪に怯えながら生活することを仕方のないことだと考えて生活していた。しかしその生活を終わらせるものが大陸の西の方から伝えられてしまった。

 

人間は夜の闇を電気で克服し、妖怪や神の仕業だと考えられていた現象を明確に説明しだしたのだ。彼らは自分たちを脅かす妖怪を滅ぼしにかかり、知らぬ間に神まで滅ぼしていたのだ。

 

やはり私は間違っていなかった。今この幻想郷が無ければ恐らく妖怪の数は今生きている数の四分の一もいなかっただろう。いくら力が強くとも存在が保てなければ意味がない。

 

そして昨夜、今まで外の世界にいた妖怪がまたこの幻想郷にやってきたらしい。最近は結界を通る者が増えてきたせいで確認するのも煩わしいので、来た者たちの確認及び監視はすべて藍にやってもらっている。

 

大結界と言えば張ると決まった時にはとても大変だった。何故か管理される側の人間たちには絶賛されたが、妖怪たちを納得させるのは大変だった。幸い力の強い鬼たちは既に地底にいたから酷い事態にはならなくて済んだのだけれど。

 

結界を通ってくるときには大体が一個体ずつ来る。妖怪は天狗や河童、鬼などを除いて基本的に群れないからだ。

 

しかし今回の者たちは建物ごと何百体も来たらしい。建物ごと来る時点で相当な実力を持っているのは確かだろう。それに加えて建物は相当な大きさの洋館らしい。

 

仮にかなり遠くから何百もの妖怪を転移させるのをたった一人でしたのなら恐ろしいほどの実力だ。負けることは無いだろうがなるべく戦闘は避けたいところである。特に今は幻想郷の妖怪たちが弱ってしまっている状況だ。これも何とかしなければならない問題の一つだ。

 

藍からの情報では夜の間は活発に外を出歩き、幻想郷にいた妖怪たちと接触したうえでそのほとんどを館に連れ帰っていたらしい。これはあちらに侵略の意図があるとみていいだろう。

 

わざわざ仲間を集っているところからして今すぐに戦闘、とはならないだろうが準備はしておくに限る。一応私の方でも相手の様子を窺っておこう。

 

 

 

 

あれは…………あの門に立っているのは…………もう五百年前に別れたきりの懐かしい友人だ。藍は接点が殆んどなかったから気づけなかったのだろう。

 

という事はあの館にはパチュリーとそのお供の悪魔がいるとみていいだろう。そして館を転送してきたのはパチュリー一人、か。

 

はっきり言って幻想郷側が勝てる気がしなくなってきた。美鈴だけでも十分に厄介なのにそれに加えてパチュリーとあの悪魔がいる。それにこの館の当主の実力はわからないがあの美鈴を門番として使えるほどの実力はあるのだろう。

 

パチュリーに昔聞いたことがある。私は吸血鬼の館にいる、と。ならばあの館の主は十中八九吸血鬼だろう。あの時は吸血鬼が何なのかがさっぱりわからなかったから調べてみたところ、どうやらかなり歴史の浅い種族であるようだ。

 

しかし膂力は鬼にも劣らず、速さは天狗と同等、そして一番の特徴はその回復力だ。頭以外が吹き飛んでも一晩で完治するらしい。

 

これはかなり厄介だ。私以外が相手なら数多くある弱点を突いてもそれを上回る驚異の回復力で千日手になるのがオチだろう。満月の下ではさらに強力になるみたいだ。

 

妖怪は皆満月から力を得るが、吸血鬼の場合のそれはほぼ不死身になると考えていい。あの館の登場で幻想郷のパワーバランスが大きく変化してしまった。

 

もうすぐ阿礼の九代目が生まれるが、その子にはかなり驚かれるかもしれない。幻想郷のパワーバランスが変化すること自体があまりないことだからだ。

 

直近でも風見幽香がやってきた時なんじゃないだろうか。間違いなく今回の方が変化が大きいのが本当に嫌になる。

 

 

「藍、此度の戦はかなり危ういものとなるでしょう。くれぐれも油断はしないように」

 

 

「紫様がそこまで言うほどの者たちなのでしょうか?彼女らが集めている妖怪の数は確かにかなり多いですが実力は大したことはないと感じましたが」

 

 

「能ある鷹は爪を隠すのよ。覚えておきなさい」

 

決戦は満月の晩になるだろう。それまでにこちらも入念に準備を整えておかなければ。幻想郷があの館の天下になるのだけは阻止しなければならない。

 

 

 

 

   パチュリーside

 

 

いよいよ満月がもうすぐ昇る、という時刻になった。私は全く関係がないのだけれど。

 

レミィが集めた妖怪たちは連れてきた者とここにいた者を合わせて七百近くになったのではないだろうか。私は図書館に籠っていたから興味はなかったが、咲夜によるとかなり鬱陶しいらしい。

 

それはそうだろう。何せ七百近くがこの館内部にいるのだから。咲夜がいなければこの館には入りきらなかっただろう。

 

因みに咲夜の能力に幅を与えたのは私。彼女は時間を止めるだけの能力だと思っていたらしい。そこで私が時間と空間の密接な繋がりや、時間の加速などを教えてあげたわけだ。

 

そんなことがあったからか、ただ単純に仕事や勉強で私と一番関わっていたからかは知らないが、咲夜は私に一番懐いているようだ。私的にはレミィにも懐いてもらいたいのだけれど。今は身長も同じくらいなのだし。

 

彼女は今日は戦わないので、ここで本を読むことにしたらしい。というか上には妖怪が非常に多いので最近の咲夜は大体この図書館にいて、仕事は美鈴が行っている。

 

咲夜と美鈴、それにフランドールが来て少ししたら不意に外が騒がしくなり始めた。スペルカードを用いない最後の戦争が始まったのだ。

 

 

と思っていたのに図書館に誰かが来た。まさか紫が館内にスキマを開いて刺客を送ってきたか。

 

「こんばんは。あなたは一体何をしに来たのかしら?」

 

今この場には送られてきたであろう刺客のアリスと私しかいない。変に拗れることはないはずだ。

 

 

「何をしに来たって…貴方は何か知っているのではないのかしら?」

 

「知らないわね。それに私は戦争に参加していないのにどうして紫が刺客を送ってきたのかさっぱりわからないわ」

 

 

「あら、紫と知り合いだったのね。まあこの際どうでもいいわ。私が送られたのは紫の考えよ。私にもさっぱりわからないけれど」

 

「あぁ、なるほど。そういう事だったのね」    「そういう事ってどういう事よ」

 

「貴方が今手に持っている魔導書、きちんと読めるのかしら?」

 

 

「これ?『Gurimoir of Alice(こっち)』はまあ大体読めるわ。でも『The Grimoir of Patchouli(こっち)』はあまり読めないわね」

 

「へぇ、『The Grimoir of Patchouli(それ)』も少しは読めるのね。かなり若い魔法使いみたいだけどなかなかやるじゃない」

 

 

「貴方に何がわかるのよ。この本はこの世界には無かった本なのよ。それも原本のみで置いてある場所も誰も入れないようなところだったのに」

 

「自己紹介がまだだったわね。私の名前はパチュリー・ノーレッジ、その本の著者よ」

 

 

「…………え“っ?!パチュリーさんだったんですか?」

 

急に敬語になった。何故かはわからない。

 

「パチュリーでいいし、敬語もいらないわ。私がパチュリーなのは本当よ。神綺に勧められて書いた私の本気の二冊のうちの一冊。まさか彼女の部屋からくすねてきたのかしら?」

 

 

「…………人聞きの悪いことを言わないでよ。この本は貰ったのよ。いつか読めるようになりなさいってね。もう一冊は貰えなかったけど。

 

あぁ、そうそう。私の名前はアリス・マーガトロイド、元魔界人よ。よろしく、パチュリー」

 

「えぇよろしくね、アリス。話が脱線してしまっていたけれど紫があなたをここに送り込んだ理由を私の予測で良ければ教えてあげるわ。

 

紫と私はかなり昔からの友人なのよ。あぁ、私は昔は日本に住んでいたのよ。五百年前くらいまで。まあそんな友人だったから魔界に行く時にも彼女に送ってもらったの。その時の帰りに紫と神綺が知り合ったんだったわね。

 

だから紫は私が魔界で本を書いたのを知っているのよ。それでその手に持っている本を見た時に私の所に送ろうと思ったのでしょうね」

 

 

「私が招集されたのは優秀な魔法使いも戦争に出てくるだろうからっていう理由だったけど……………」

 

「あの紫でも予想外だったのかしら。私が紫の創り上げた幻想郷に敵対するなんてことは未来永劫あり得ない事なのに」

 

 

「そうなの?何故そう言い切れるのかしら?」

 

「それは勿論私もこの幻想郷の創立に大きく関っているからよ。紫の意見に初めに賛同したのは私。そのあとも結構な手伝いをしたわ。残念ながら完成前に私は欧州に帰ってしまったけれど」

 

 

「そうだったのね。争う気がないのならこのまま話をしないかしら?私は魔界を出てからは貴方に憧れていたのよ。貴方が書いたというこの本の魔法を私も見てみたいわ」

 

おぉ、私が憧れとか恥ずかしいね。だから敬語になっていたのか。

 

「まあ見せるくらいなら大丈夫かしらね。どの魔法が良いのかしら?」

 

 

「私はほとんど読めないから貴方が決めてくれて構わないわ」

 

そういえばそうだった。私はあの時いったいどんな魔法を書いていたんだっけな。

 

 

 

 

   アリスside

 

 

私が紫のスキマで送られた先にいた魔法使いは私が来ても驚くことなく本を読んでいた。紫もここの魔法使いは私では荷が重いだろうとは言っていたが、ここまで脅威に思われていないと思うと少し悔しかった。

 

でも彼女の名前を聞けばそれも仕方がなかったことだと理解できた。なんと彼女は魔界では知る人ぞ知る魔法使いだったのだ。

 

魔界でしか売られていない上に写本のみが売られているという事で、原本が見つかれば通常の魔導書の三倍以上の額がオークションで付けられるだろうと噂されているほどの幻の本だ。内容は中級レベルのはずなのだが。実は家にあったことを知った時はかなり驚いた。

 

他にも魔界でかなり流行った遊びにも彼女のもう一冊の魔導書が出てくる。かなりの額の売り上げ収入は本人がもう魔界にいないという事で様々な寄付に回されている。まあ魔界に寄付が必要な所はあまりないけど。

 

魔界の住人の殆んどはパチュリー・ノーレッジの魔導書をその二冊しか知らない。というのも彼女が書いたもう二冊はあまりにも高度すぎて読める者自体が少ないし、危険だから市場に回すことを彼女自身が禁止したそうなのである。

 

私も魔界を出るときに渡されなかったらこの本の存在は知り得なかっただろう。Gurimoir of Aliceでもかなり苦労したものだがThe Grimoir of Patchouliになるともうお手上げ状態だった。

 

初めの私はその本を開くことすらできなかったのだ。読むためには先ず開かなければならない。かなりの勉強と鍛錬の末ようやく開くことができたが、解読することもできないような恐ろしい魔導書だった。

 

私が読めたのはごく一部のみだ。さっきパチュリーに『あまり読めない』と言ったのは単なる強がりだった。実際には『九割八分読めない』。

 

今パチュリーに頼んでその本の魔法を使ってもらっているが実際に見てもよくわからない。

 

情けないことだが、彼女は魔法陣を使う事を好むようだ、くらいしかわからない。しかしその魔法陣の構成すらも美しい。

 

私は今かなり興奮している。かなり強くなったと思っていた私を叩き直してくれた魔導書の著者、魔界でも幻と言われるほどの実力者が目の前にいるのだ。

 

会ってみたいとは思っていたが、まさか本当に会えるとは思ってもみなかった。紫には感謝しておくべきなのかもしれない。

 

「どうだったかしら?このレベルの魔法を使うのはかなり久しぶりだったから心配だったのだけれど失敗しなくてよかったわ」

 

 

「とても素晴らしかったわ。あの魔法陣の美しさの原因はいったい何なの?」

 

「あぁ、あれね。あれは人が最も美しいと感じるといわれる黄金比を取り入れてみたのよ。そのせいでかなり複雑な形になってしまったけれど、美しいと感じてくれたのね。とても嬉しいわ」

 

 

「多分見た人は皆思うわよ」

 

「あなたも勉強を続ければこれよりも尚美しい陣が描けるはずよ。あなたにはその資質がある」

 

まさかパチュリーからそんな言葉を頂けるとは夢にも思っていなかった。彼女の期待を裏切らないようにさらに努力をしよう。

 

 

「ありがとう。貴方にそう言ってもらえて嬉しいわ。

 

勉強はこれからたくさんするけど貴方が私の師になってくれない?」

 

「弟子を取ってもその子の得意とする魔法を私が伸ばすのは難しいのよね。特にあなたのように基礎をかなりしっかり修めている子なんかは。

 

でもそうねぇ、どうしてもというのならば私があなたの実力よりももう少しだけ上の魔導書を書いてあげるわ。上から目線のようで申し訳ないのだけれど。

 

それと何か聞きたいことがあったらこの図書館にいつでも来るといいわ。当主には私から話をつけておいてあげるから」

 

えっ?それってかなり凄いことじゃないの?パチュリー直筆の魔導書を貰えてしかもこの図書館を使わせてもらえるなんて。

 

 

「本当に良いの?自ら進んで魔導書を書かない魔法使いだと聞いていたんだけど。それに私からすれば損することが無いのだけど」

 

「私も別に損をしないからいいのよ。それに私が書かないのは自分の手元に置いておく気が無いからよ。だから書いたすべてを魔界に置いてきたの。まあこあが買っていたみたいだけれど。

 

さて、どうやら外の戦争は終わったみたいね。魔導書を書く時間が必要だからまた少ししてからいらっしゃいね。図書館を使うだけなら別に明日から来てもらっても構わないけれど」

 

じゃあありがたく明日から活用させていただこう。

 

「今日は楽しかったわ。またね、アリス」「こちらこそ。また会いましょう、パチュリー」

 

 

 

 

   少し前の紫side

 

 

「さて、準備はよろしいですか?皆さん。いよいよ開戦です。相手はかなりの大人数ですから気を引き締めてかかってください」

 

美鈴が門からいなくなっているし、パチュリーの魔力の高まりも感じない。彼女らは幻想郷に敵対する意思はないとみて良さそうだ。

 

これは本当にありがたい誤算だ。彼女らが敵対すればその時点で戦力が倍以上に跳ね上がるだろう。ここは呼んだのが無駄になってしまったアリスへのちょっとしたサプライズでもしてあげよう。少し心に余裕ができたらかなり楽になった。

 

相手は総勢七百というところか。ただの弱い妖怪が七百も集まったところで何ができようか。特にこちらのメンバーはかなりのものを揃えてきた。私は当主の吸血鬼に集中できそうだ。

 

            ・

            ・

            ・

 

 

「貴方がここの主なのかしら?」

 

 

「えぇそうよ。私こそが誇り高き吸血鬼にしてこの紅魔館現当主、レミリア・スカーレット」

 

 

「……っ?!スカーレット?!「む、どうした?」あぁいや、何でもありません。私はこの幻想郷の管理人八雲紫。それで今回はどういったご用件で?」

 

 

「わかっているだろう?引っ越しついでにこの地を私の物にしてやろうと思った次第だ。手始めにこの館周辺から始めたが存外楽そうだ。皆ホイホイついてくるからな」

 

 

「わかりました。私が勝てば貴方には少しの間大人しくしていただきますよ」

 

 

「私が首謀者なのに殺しはしないのかい?」

 

 

「本来ならそうするべきですわ。しかしこちらにも事情がありますので」

 

流石にパチュリーと美鈴の同居人を殺すわけにはいかない。見たところ本来の同居人らしき者はこのレミリアだけだ。

 

 

「では始めるとしようか。果たして貴様に満月の下の吸血鬼を打ち負かすことができるかな?」

 

 

「赤子の手をひねるよりも簡単なことですわ」

 

そういえばレミリアは非常に流暢な日本語を話しているがこれもパチュリーと美鈴の教育なのだろうか。まあそんなことは後回しだ。吸血鬼は非常に弱点が多い。

 

私にしかできない弱点の突き方もある。例えばこれか、”気体と液体の境界”

 

 

「んなっ!急に雨が?!それに私の所だけ?くそっ」

 

あら、霧になって逃れられたか。私の友人のようだ。ならば戻すのは簡単ね。

 

 

「あれ?!戻ってる?!ど、どうして?っていたたたたた、痛いっ!」

 

あら、効果が切れちゃった。

 

 

 

「どうかしら私の一つ目の技は」

 

 

「ちっ、よくもやってくれたわね。次はこっちから行くわよ、グングニル」

 

へぇ、北欧神話の。となると投げられれば必中か。私には当たらないけれど。

 

 

「ふんっ!」「おっと、危ないわね」

 

まさか投げずに槍術を使ってくるなんて。これはかなり予想外だ。ならばこちらからは押しつぶす攻撃をしましょうかね。

 

    『ぶらり廃駅下車の旅』

 

外の世界で使われている車両で押しつぶす。

 

 

「こんなもの!ふっ!!」……………………そういえば膂力は鬼にも劣らないのだった。

 

 

「あらあら、これも防ぎますか。では最後にとっておきの技を披露いたしましょう。これを使うのは恐らく今回が最初で最後でしょう」

 

まるでものすごい大技をするときのような言い方をしているが実際は今後使い道がないだけだ。

 

   『昼と夜の境界』

 

 

「くっ、があぁぁぁ!!!」

 

吸血鬼にしか効かないからね。昼と夜などと大層な名前を付けてはいるが今回はただ月光を弄っただけだ。月光も元をたどれば日光になる、それだけだ。

 

あら、気絶して灰になりかけてしまっている。早く戻してあげないといけない。

 

他の皆も終わったようだし今回は幻想郷側の完全勝利だ。パチュリーと美鈴の二人がいなくて本当に助かった。

 

あ、美鈴とアリスが屋敷から出てきた。どうやらアリスも楽しんでくれたようだ。

 

 

「お久しぶりです、紫さん。五百年ぶりでしょうか?」

 

 

「えぇ、その通りよ。久しぶりね美鈴。早速で悪いのだけれど明日私が今後の処遇についての話をしに来ます。当主に言っておいて頂戴ね」

 

 

「わかりました。しっかり伝えておきますよ。ですがしっかりと門を通ってご来館くださいね。

 

それでついでなのですが、このアリスさんがパチュリーに教えを請うために毎日図書館に来るようですので送ってあげるか道を教えてあげるかしてください」

 

 

「分かったわ。ではまた明日会いましょう。アリス、帰るわよ」

 

 

「また明日ね美鈴」

 

さてさてこれから先も考えなければならないことが多くある。幸いにもパチュリーがいてくれるから相談は楽になりそうだ。




私の最も好きなキャラであるアリスさんが初登場。アリスって二次創作の世界ではかなり可哀そうな立ち位置にいて悲しいです

今回は初の8000字超え。戦闘よりも途中のまったりの方が長い吸血鬼異変でした。長々続けるのも嫌なのでサクッと終わってもらいました。参加した妖怪は皆さまのご想像にお任せします


では次回も読んでいただければ幸いです
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