レミリアside
私が霧を幻想郷中にばらまいてからかなり経ったと思うのに全然来る気配がない。まさか気づいていないのだろうか?
一応今日の私の運命を見ておこう。…………ふむ、どうやらようやく来てくれるらしい。紅白の少女と弾幕勝負をしているようだ。
パチェも見ているようだがその横にいる白黒はよくわからない。彼女は明らかに博麗の巫女ではないようだが…。運命を見るのもこの辺りでやめにしておこう。知りすぎてもつまらない。
さっきまでの風景を思い出すと来るのはどうやら夜になってからみたいだ。久しぶりに昼間に寝ておかなければならない。
「今日は昼に寝るから昼食は咲夜にお願いするわ。別に他の者でも構わないけど」
咲夜には料理は一応教え込んでいる。この館の住人以外が訪ねてきた時に主人が料理をするわけにはいかないから。美鈴に頼むと中華確定だし、小悪魔に頼むと肉料理ばかりが並ぶだろう。パチェに頼めば立派な会席料理が並ぶだろうが、パチェは従者という立ち位置にいない。館の仕事はしてくれるけど。
だから消去法で咲夜しかいないのだ。教え始めたのはここでの生活が落ち着いた数年前からだったけど今では店に出しても恥ずかしくない味になったのではないだろうか。
「そう、今日巫女が来るのね。相変わらずの反則能力ね」 これだけでわかるとは流石親友だ。
「まあ普段はあまり使わないようにしているけどね。今日来ることは一応フラン以外の皆にも伝えておいて頂戴。早く寝ないと夜起きられないと困るし」
「おかしな吸血鬼もいたものね。まあ伝えておくわよ。おやすみ」「ありがとう、おやすみ」
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久しぶりに日中寝たけどよく寝れて良かった。
夕食も食べ終わったし、フランはもう寝てしまった。あの子はまだ咲夜以外の人間を見たことが無い。食料以外の形では。
だからあの子が寝ている間に事を収束させる必要がある。今の私にできるのはそこまでだ。
さて、どうやら一人目の侵入者が門を突破したみたいだ。美鈴は弾幕以外だとかなり強いのに弾幕になると急に弱くなるように思える。そこまで苦手なのだろうか。
記念すべき一人目の人間は紅白ではなく白黒の方だったようだ。これは少し意外なことだ。彼女も弾幕勝負の腕に相当な自信があるのだろうか。
こちらには来なかったことを考えると向かった先は大図書館か。少し可哀そうかもしれない。
おや、もう一人来たみたいだ。あれが正真正銘博麗の巫女だろう。私は屋上付近にでもいることにしよう。強い者は一番高いところにいるものだから。
いやまあ美鈴は地上にいるし、パチェに至っては地下にある図書館なんだけど。
「あんたがこの異変の主犯?」来たか。
「えぇ、そうよ。普段とは違う景色も存外楽しめたでしょう?」
「残念、私は青い空が好きなのよ。あんたはここで退治するわ」
「私にこの世から出て行ってもらいたいのかしら?弾幕勝負はどうするつもりなの?」
「勿論弾幕で決着はつけるわ。不幸な死はあるかもしれないけどね」
なかなか面白い、肝の据わった人間だ。興味はあるが彼女はこの世界の調停者である。あの歳で大変なものだとは思うが。
「ふふっ、久々に楽しい夜になりそうだわ」「私は永い夜になりそうだと思うわ、はぁ」
「さて、始めましょうか。博麗の巫女よ、我が弾幕の嵐をかいくぐってみよ」
神罰『幼きデーモンロード』
うんうん、我ながら綺麗な弾幕だわ。…巫女の避け方も華麗だけど。どうしてあそこまで回避が上手くできるのだろうか。まさか彼女にも未来が見えている?
「なかなかやるわね。貴方未来でも見えているの?」
「教えてあげるわ。巫女の勘はよく当たるのよ。何事に於いてもね」
うっわ、何それ。反則じゃないのか?でもそういう子でもなければ咲夜には勝てないし、調停者にもなれないか。幻想郷はいつ命を落とすかわからない場所だから。
「納得いかないけど次、行くわよ」
獄符『千本の針の山』
うーん、これもすいすい避けられるねぇ。まったく困ったものだ。あら、パチェと白黒が来たみたいだ。運命で見ていたのはこの辺りだったみたいだ。
「よそ見してると足元掬われるわよ」
霊符『夢想封印』
あれは妖怪特攻の光弾か。直に食らうのはいくら吸血鬼といえど拙いかもしれない。少しずるい気もするが霧化して回避させてもらおう。
「そんな避け方されるとこっちも納得いかないわね。今ので決まったと思ったのに」
「あまり吸血鬼をなめない事ね。次行くわよ?」
神術『吸血鬼幻想』
もう半分が終わる。あたる気配は微塵もないか。彼女ならもしかするとパチェの鬼畜弾幕も避けられるかもしれない。
パチュリーside
レミィのスペルも最後のものまですべて攻略されてしまった。霊夢が使ったのは不意打ちの一回のみ。恐ろしい回避能力だ。
レミィも普通にHard、Luna級の弾幕を撃っていたはずなのにそれを避けるにあたってはスペカを使用しないとは。
「あらら、全部攻略されちゃったわね。これは私の負けね」
「わかったら早く霧を消しなさい。早く帰りたいんだから」
「わがままねぇ。まあいいわ。パチェ!聞いていたでしょう?消しておいて頂戴」
「もう消したわ。外を見てごらんなさい」こうなるのはわかっていたし。
「あの規模をこの一瞬で消したのかよ。お前の実力の底がしれないぜ」
「私にも限界はあるわ。そこまで行ったことはないけれど」
そもそも私は本気で戦わないからねぇ。そんな状況にもならないし。
さてと、私は次の準備をしておくか。そんなに大変なことではないけれど。
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異変解決から少し経った。その間に魔理沙が本を勝手に持って帰っていたり、アリスとお茶を飲んだりと忙しい日々だった。魔理沙の方は危ない本は持って行っていないようなので今のところは放置していても大丈夫だろう。彼女も勉強のために持ち帰っているはずなのだし。
流石に彼女では危険そうな本を持ち帰ろうとした場合はこあに止めるように言ってはいるけれど。返してもらいたい時は魔法で呼び寄せればいいだろう。
今日はレミィから頼まれている用事をしなければならない。館の周辺に雨を降らすのだ。この日のためにフランドールにスペルカードルールについて教え込んだ。
名目上はフランドールが異変翌日に羨ましがったから彼女もできるように教えた、としているがこれはレミィと私で立てた計画の内なのだ。
今日はレミィに神社に行ってもらっている。そうしないと霊夢や魔理沙が来てくれないだろうからだ。レミィが館に帰れない状況をわざと作り出すことで人間がこの館に来るように仕向けるのだ。
全てはフランドールのため。彼女がこの幻想郷で元気に生活できるようにするにはやはり人間をよく知らなければならない。
そこから少しずつ門の外にも出ていけるようになってもらいたいのだ。折角結界も解けたのだから外を知らないのは勿体ない。
蝙蝠が一匹図書館に入ってきた。これはレミィからの合図だ。館の周囲のみに雨を降らせることができるように色々細工をしておいた。あとは魔法陣に魔力を注ぐだけだ。
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雨自体は吸血鬼が通れない程度の小雨なのでそこまで濡れはしないが、まあ不快にはなるだろうから入ってすぐの場所には乾燥魔法でも仕掛けておこう。
紅魔館の印象を悪くしないためにもこういう気づかいは大切だろう。
因みに今からが所謂Extraになるわけだが私は勝負はしない。どのみちフランドールのところに通すわけだから勝負をしても時間の無駄になるだけだし。
ようやく来たようだ。結構早く来てくれたみたいだ。意外。
「雨を降らせているのはあんたでしょう?やめて頂戴よ」
「この雨はレミィの妹を今は外に出さないようにするための雨。当主の妹が満足するまで遊んでくれたら止めるわ」
「はぁ~、面倒ね。その吸血鬼は何処にいるのよ」
「今はそうねぇ、確かレミィの部屋の三つ隣の部屋にいると思うわ」
「そう、魔理沙行くわよ」「おう」
地下の部屋ではないから館の修復は必要になるかもしれないがまあいいだろう。レミィもそれを承知でこの計画に乗ってきたのだろうし。
さて、私は遠見の魔法でも使ってみておきましょうか。遠見といっても精々二里が限界だけれど実用的ではある。雨はもう止ませてもいいだろう。
これの欠点は音が聞こえない所だろうか。残念だが何を言っているのかはさっぱりわからない。一応それっぽく口の形から読み取るとえーっと、
『人間って咲夜以外見たことが無いの』『495年間一回も、門より外には出てないのよ』かな。
この世界では普通にレミィが料理出来ちゃうからねぇ。まあ人間を捌いているのは咲夜かこあだけれど。
どうやら始まったようだ。フランドールは張り切っていたからか、かなりカードの枚数が多い。集中力を保って最後まで行くのはなかなかに大変だ。
今回の目的はフランドールを楽しませることだから別に最後まで行かなくても良いのだけれどね。今見ているとどうやら楽しめているようだし。
これで人間に慣れてくれれば良いのだけれど。いずれは里にも連れて行ってあげたいし、宴会にも参加させてあげたい。
「ただいま、パチェ。フランの様子はどう?」
「あらレミィ、早かったのね。今のところはかなり順調よ。これでフランドールは人間に慣れてくれるかしら」
「それは私にもわからないわ。でもそうなるといいわね。そのために宴会の日取りをここまで延ばしたんだし」
「そういえば宴会ももうすぐね。宴会ではレミィは料理出来ないから咲夜、頼んだわよ」
「えぇ、問題ありません。味はお嬢様より数段劣りますが精一杯努力させていただきますので」
「本当に咲夜は何でもできる子になったわねぇ。まだ来たばかりの頃が懐かしいわ」
「本当にね。あの頃は態度も悪かったしねぇ」
「お二人とも私をいじめるのをやめてくださいよ。反省しているのですから」
「ふふっ、そうね。あら、もう終わりそうね。最後のカードももう攻略しそうだわ」
「そうなの?ならもう一度雨を降らせておかないとね。私たちも一度神社に戻ることにするわ」
実際彼女たちを呼んですぐに雨が止んでいたとなると何か言われそうだ。
「ではまたあとでね。あぁ、今日は私が夕食を作るからあなたはゆっくりしていていいわよ」
「あら、そうなの?一体何が出てくるのかしら。楽しみね」
「今日はフランドールにとっては特別な日でしょうからね。楽しみにしておきなさい」
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「私たちは疲れたけどあんたのとこの吸血鬼の妹は満足したみたいよ。早く雨を止ませなさい。まったく、吸血鬼が居座っている神社なんて…………」
「私は別に疲れてないがな。いやー、あいつの初めての実戦の割には楽しめたぜ」
「どうもありがとう。私ではあの子の元気さにはついて行けないから助かったわ。雨は今止ませたわ。レミィにも帰ってくるように言っておいて頂戴」
私の仕事はこれからだ。事前に紫に頼んで入手した幻想郷には無い食材を使った料理を振る舞うには今日が一番だろう。作る料理は寿司。レミィですら恐らく食べたことは無いだろう。
一応何を作るかは教えていないので、咲夜による時間停止空間には入れずに私の方にいれている。菌がいなければ時間が進んでも傷むことは無い。
米は事前に炊いておいたし、海苔やその他食材もかなり揃えた。美鈴にも手伝ってもらいたかったが、彼女が門にいないとレミィに怪しまれてしまうから今回は私一人だ。
握ったらすぐに謎空間に入れていくがこういう時に私の空間の特性は便利なのだ。時間が進んでいることによって空間内の温度は絶対零度にならず、冷蔵庫程度の温度が維持できるのだ。
いちいち魔法で並べていくのは面倒くさいが。
今回作るのは一般的な握り寿司、ちらし、巻きと三種類作ってみた。巻きの内容はサラダ、河童、鉄火、納豆の四種類。
魚と卵、それに一部の野菜以外は勿論庭で採れたものを使っている。
大豆がたくさん採れるせいで遂に醤油まで作り出したのには驚いた。あとは乳牛、卵用の鶏、食用の豚なんかを飼い始めてしまえば全然困らなくなるだろう。目の前は湖だし。
そんなことを考えていると気づけばかなりの量ができていた。用意した食材もほぼ使い切っているし今日はこれくらいでいいだろう。
「おまたせ。料理ができたからテーブルについて。咲夜、あなたもね」
「はい、それで今日の料理は一体何なのでしょうか?」
「それは見てからのお楽しみね。今から出すから少し待って頂戴」
蓋をして中が見えないようにしている。やはり楽しみは重要だ。
「はい、これで全部ね。開けてもいいわよ」
「こんなにたくさん?まあいいわ。それじゃあ開けるわよ」
「おぉー、これが寿司なの?言ってたのと違う形のもあるけど」
「これが寿司よ。私が言っていたのはこれね。どれでも好きなだけ食べていいわよ」
「流石はパチュリーですね。この短時間でこれだけの量を作るとは。うん、それに美味しいですね。何処か懐かしい味です」
「まあ寿司は久しぶりだものね。それで、どうかしら?咲夜とフランドールは」
「えぇ、とても美味しいです。魚を生で食べるのは少々意外でしたがご飯にもあっていますね」
「とっても美味しいよ。でも海の魚って幻想郷にいたっけ?」
「それ、私も気になっていたわ。どうして海の魚があるの?」
「紫に頼んで外から持ってきてもらったのよ。寿司を作るのには必須だから」
「なるほどねぇ、あの八雲紫にねぇ。まあいいわ。それよりこの納豆巻き美味しいわね。やっぱり納豆は自家製に限るわ」
「あぁ、それで思い出したのですがお嬢様、里に売り込むとか言ってませんでしたっけ?」
「勿論そのつもりよ。この味は皆が知るべきだと思うわ」
「凄い熱意ね。醤油や味噌は売らないの?」
「うーん、あれはまだ改善の余地があるからまだ売りはしないつもりよ」
将来的には売るつもりなのだろうか。とにかく今日の寿司が皆に好評で良かった。作るのは久しぶりどころじゃなかったから不安だったのだけれど。
「そうなのね。ところでフランドール、知らない人間と話してどうだったかしら?」
「うーん、やっぱり慣れていないから緊張したけど悪くなかったと思う」
「後日宴会があるのだけれど、あなたも来たいかしら?」
「そうだね、うん。行きたい…かな。門の外には出たことが無かったし丁度良い機会だと思うから。それに外にも慣れないといけないし」
「そう、良かったわねレミィ」「えぇ、本当にね」
レミリアside
今日は待ちに待った宴会当日だ。今日の調理場担当は咲夜と霊夢みたいだ。今回は人数も多くないし二人でも十分に回るだろう。
それにしてもフランが来てくれて本当に良かった。姉としてこれ程嬉しいことも無い。フランが外に出る決心をしたあの日の寿司は単純に驚かされた。
私自身知ってはいたものの作れないから食べたことは無かったのだ。初めて食べたはずなのに何故か美鈴と同じ気持ちになった。
今日の宴会の主催は一応私たち紅魔館。この人数の宴会の費用は困ることも無い。最近は買い物で使うお金も減っているし。
肉や牛乳も困らないように家畜でも飼おうかな。飼料は育てているもので何とかなるし。今度パチェに相談しよう。
今はもう既に酔いつぶれた小悪魔の面倒を美鈴が見ている。パチェは魔理沙と何か話しているようだ。フランも何度か見たことのある湖の妖精たちと何やら話をしている。
良いものだ。人、妖怪、妖精が構わずに触れ合っている。
私の生まれる前からパチェや美鈴、八雲紫はこの光景を夢見ていたのだろう。今まさにその場にいるからこそ現実だと実感できる光景。
話を聞くだけでは単なる作り話とでも思っていたかもしれない。千年以上もの時を超えて夢を実現させる、それが如何に難しいことなのかはまだ五百を数えたばかりの私にはさっぱりわからない。
それでも凄いことを成し遂げた、というのはわかる。この世界を作り上げた八雲紫、スペルカードルールの基となったというパチェの命名決闘法など様々な要素が組み合わさってできている。
「あぁ、素晴らしい光景だ」『うふふ、そうでしょう』
八雲紫の声が聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
やはり結界の中にいるだけではわからなかった。この幻想郷は私に次はどんな景色を見せてくれるのだろうか。その時の運命は今見るべきではない。
何か最終話的な雰囲気になってしまいましたが、勿論違います
Extraはもともとあまり書くつもりはなかったのでこのくらいで終わらせます。只管に弾幕ごっこをしているだけで会話もあまりないので
では次回も読んでいただければ幸いです