パチュリーside
最近まで花見ができていなかったことが嘘のように最近では宴会の連続だ。これはもう萃夢想が始まっていると考えてもいいだろう。
彼女も回りくどいことをするものだと思ってしまう。鬼は人間を見限って地獄に行ったと紫から聞いた。それを提案したのが萃香だという事も。
この異変はわからない者にとっては何も思わない異変だし、知っている者からすればまあ動機もわからなくもない。
それにこの異変が起きたという事は紫の言っていたことが本当で、萃香が生きていたという事の証明に他ならない。私としては嬉しい限りだ。
今日も宴会が開かれるらしい。宴会料理は幽々子が来るせいで私や美鈴も手伝わなければならない。それは別に構わないのだが、萃香にも早く再開しておきたいところだ。
宴会風景を見た感じでは気づいているのは私以外には幽々子と美鈴、後はレミィくらいか。霊夢は違和感はあるみたいだがまだそこまで気にしていないようだ。
この妖気の薄さで感づいているのはもはや人間かどうか疑いたくなるけれど。
さて、今日もたくさんの料理を作らないといけない。酒は日本酒が主流だが、料理は飽きさせないために外国の料理も作っている。
料理の分担としては洋食が私と咲夜、中華が美鈴、和食は妖夢、つまみは霊夢と藍という感じだ。同じ場所では流石に全員は料理出来ないので、調理器具を三組ほど紫からもらって外でも料理ができるようにしてある。
かなり効率よく作業できるおかげで料理の完成も早い。幽々子を満腹にさせることはできないが、参加者のほとんどは満足して帰ってくれているので量はこんなもので十分なのだろう。
私が終わったタイミングで丁度美鈴も終えたようだ。咲夜は早々にレミィの方に行ってしまったが私は彼女と少し話すことにしよう。
中華はそこまで量を作る必要はないが、一人で作ってこの早さなのは流石美鈴といったところか。
「丁度貴方も作り終わったのね。一人だと大変ではないの?」
「そんなことはありませんよ。作り慣れた料理ですし。
そして今日もですか。パチュリーは気づいていますか?」
「流石、気を使うだけはあるわね。そうね、屋根の上で話をしましょうか。誰かに聞かれると彼女が可哀そうだわ。折角こんなことを催しているのだから」
「確かにそれはそうですね。では屋根に行きましょう」
美鈴side
最近の頻繁な宴会には見えない参加者がいる。これは初めの宴会の時から気づいていたことだ。
一度戦った相手の気はほとんど覚えている。それに彼女の実力は私よりも格段に上だった。そんな相手を覚えていないはずが無い。
初めの宴会の時にはとても薄くなっていたせいで、誰が引き起こしているのかがわかっていたのは恐らく私だけだっただろう。パチュリーでさえ誰かは特定できなかったみたいだ。
それが回数を重ねるごとに濃くなってきている。まるで誰かに気づいてもらいたいかのようだ。今ではもう数名が気づいている。
思い切ってパチュリーに尋ねてみると、彼女もどうやら特定は終了していたみたいだ。
屋根まで来れば盗み聞きはされないといっても過言ではない。パチュリーの遮音結界が張られるからだ。中に入られたら普通に聞かれてしまうが、私たちが気づけないままに入ることができるような者は一人くらいだろう。
「彼女も回りくどいことをしていると思わないかしら?」
「それは徐々に妖気の濃度を高めて周りに気づかせようとしているという事でしょうか?」
「まあそれもあるわね。でも私が言いたいのは彼女の目的の方よ」 「萃香さんの目的?」
「そう、恐らく彼女の目的は鬼を地上に呼び戻すこと。彼女は昔人間に失望して地獄に向かったでしょう?そして今になって地上に出てきた。
これは彼女が再び人間と関わりたいと思ったからに違いないわ。だから彼女は鬼の好きな宴会を開かせて鬼を呼び戻そうとしているのではないかと思うの」
「そんな意図があったのですか?…………む、この気配は」
「やぁ、久しぶりだね。あの時はどうも、助かったよ」
「本当に久しぶりね。あの日人間たちが持ち帰った物を見てあなたが死んでしまったのではないかと思ったわ。生きていてよかった」
私もあの時は本当に心配した。
「私ら鬼は簡単にはやられないさ。それで美鈴、どうだい?あれからまた強くなったみたいだけど一戦やるかい?」
鬼と戦うなんて絶対に嫌なことだ。それにこの言い方は弾幕勝負でもないだろう。
「遠慮しておきますよ。私は貴方主催の宴会に来たのであって戦闘しに来てはいないのですから」
「なんだ、私が主犯だと気づいていたのかい。いつから気づいていたんだい?」
「初めからに決まっているじゃないですか。私の能力を使えばすぐにわかることですよ」
「あぁ、そういえばそうだったかな。もう千年以上も前の事だからね、忘れてたよ」
「そうそう、萃香。いくらこのような宴会を催したところで鬼は地上には帰ってこないわよ。というか来られないと言った方が良いのかしらね」
「なんだ、私の計画までお見通しだったってわけかい。それで?何故来られないんだい?」
「簡単なことよ。地底と地上には不可侵条約というものがあってね、そのせいで地底の妖怪は地上に出られないし、地上の妖怪は地底には行くことができないの」
「私は来ることができたのにかい?」
「そこが分からないのよね。何故紫があなたを見逃したのか」
「私が紫の友人だからじゃないかい?」
「案外そうかもね。紫って友人が少なそうだものね」「誰が友人が少なそうですって?」
「あら、紫も来たのね。丁度あなたの話をしていたのよ」
パチュリーは平然と流しているが私はかなり驚いている。気配のないところから急に出てこられたら仕方ないと思う。私が如何に能力に頼っているかを痛感するが。
「訂正する気がないというのははっきりと分かったわ。それで萃香、貴方に言っておこうと思うことがあったのよ」
「なに?地底に戻れってのかい?」「違うわよ。この異変、そろそろ終わりにしないかしら?」
「なんだよ紫、これからが面白くなるんじゃないか。まだ私に気づいている奴も少なそうだし」
「あらあら、感づいている者は意外に多いかもしれないわよ。それでは私はこの辺りで帰らせてもらうわ。藍と橙をよろしくね」
「あなたは参加しないの?折角の宴会なのに」
「私は次回参加するわ。次回が楽しみねぇ」「何か言いたげだね。一体何が言いたいんだい?」
「いえいえ、何でもないわ。ただ次回は貴女にも私の最高傑作が披露できるのね、と思っただけよ。言い忘れていたけれど、スペルカードルールを守らなければ地底に帰ってもらうから忘れないで頂戴ね。ではまた会いましょう」
本当につかみどころのない人だ。彼女の最高傑作というとやはり博麗の巫女なのだろうか。
聞くところによると弾幕勝負においてはあの紫さんさえ凌駕するほどの実力を持つらしい。人間とは何だったかを考えなおしておかなければならない。
「ちぇ、紫のやつ言いたいことだけ言って帰りやがったな。でも異変はまだまだこれからさ。お二人さんも料理頑張りなよ?」
「結構大変なのよ、あれ。それにいつもいつも食材提供しているから私たちの食べるものが少なくなってしまうわ」
「まあ食材に関しては実際はさしたる問題も無いのですがね。少量でも満足できる料理が出てきますし、私たちは本来必要ないですしね」
「それもそうなのだけれどね。でもほどほどにしてもらえると助かるわ」
「むー、困ったなぁ。まあまた次回考えることにするよ。おや、そろそろ宴会もお開きになりそうだ。あんたたちも早く戻った方が良いんじゃないかい?」
「そうね、そうさせてもらうわ。ではまた会いましょうね」「さようなら」
今夜はようやく萃香さんが姿を見せてくれた。久しぶりだったけどあまり変わっていなかったようで良かった。地獄にいたのに精神に応えている様子が全く無いのはどうなのだろうか。
紫さんの言葉から察するにこの異変は次回を以て終了するみたいだ。私もそろそろ疲れてきたころだったのでありがたい。
パチュリーside
次がこの異変解決後の宴会になることは間違いないだろう。霊夢の異変解決モードに巻き込まれるのは勘弁願いたい。
咲夜とレミィだけで満足して帰ってもらいたいものだ。上手い言い訳を考えておかなければならない。辛いねぇ、まったく。
霊夢が紅魔館に来るとすれば次の宴会の前日だったか。その日だけ人里に行くことにしよう。前回行ったのは三月ほど前に燃料になる薪をもっていった時だし。
というか最近買い物には滅多に行かなくなっている。もはや吸血鬼の館と言われてもわからない程に庭は植物でいっぱいだし、家畜の小屋まで建ててしまっている。
美鈴は毎日することが増えて大変だろうと思っていたけれど、彼女は彼女で楽しんでやっているみたいだ。いやまあ西洋にいた頃からいずれはこうなるかもしれないとは思っていたけれど予想外にレミィの行動力が高かったみたいだ。
でも流石に自分たちでは調達できない物もある。いつもはレミィが足りない食材を補う工夫をしているが、たまには他の食材も食べてみたいだろう。
良いことを思いついた。結界が解かれたことでレミィも人里には行くことができるようになった。いっそのこと彼女と一緒に買い物に行ってみるのも悪くないかもしれない。買う物もレミィが見極めた方が確実だろうし。
そうと決まれば早速誘ってみるか。予定は早いうちに立てておいた方が後々楽になる。流石に美鈴は連れていけないが。
レミリアside
最近の宴会、引き起こしている者が何者なのかはわからないがかなりの実力者のようだ。宴会に参加している者の中で実際に気づいていそうなのは私の他にはパチェ、美鈴、西行寺幽々子、八雲藍くらいだろう。霊夢もわずかではあるが気にしていたようだが。
しかしあの宴会に八雲紫が参加していないのが気にかかる。従者とその式だけが参加しているというのも何かおかしなことのように感じる。
彼女の頭の中は私では到底暴けないが何かしらの思惑はあるのだろう。私も行動してみようか。
おっと、誰かが部屋の外にいるようだ。自慢ではないが種族柄耳は他に比べるとかなり良い。足音からすると咲夜ではないしフランでもないだろう。となると残っている中でこの部屋に来そうなのはもう一人しかいないだろう。
「パチェなの?用があるなら入ってきてもいいわよ」
「そういう事なら遠慮なく入らせてもらうわ。
まったく便利な耳を持っているものね。羨ましいわ」
「それで、何か用事があるから来たんでしょう?どうしたの?」
「そうね、明後日一緒に里に行かないかしら?あなたはまだ行ったことが無かったでしょう?」
「唐突ね。しかしなんで急に私と一緒に人里に行こうと思ったの?」
「まあ理由はいくつかあるわ。たまには違う食材も食べたくはならないかしら?私が一人で買い物に行っても良いのだけれど、折角レミィも行けるようになったのだし目利きはあなたがした方が確実に良い物が手に入るじゃない」
「絶対他に理由があるでしょう?もう長い付き合いなんだしそれくらいはわかるわよ」
「流石は親友ね。そう、私があえて明日ではなく明後日に行こうとするのは面倒ごとに巻き込まれたくないからよ。あなたは能力を使えばすぐにわかるでしょうけど次回の宴会の直前にこの異変は終わる。これは紫に聞いたこと。
解決者は勿論霊夢になるでしょう。その霊夢が明後日来る気がするから館から出ておこうと思ったのよ」
「八雲紫が言うのなら間違いないかもしれない。とすると今回の異変の犯人は八雲紫になるの?そんな感じはしなかったけど」
「鋭いわね。今回の異変の犯人は紫ではないわ。彼女とは旧知のとある妖怪よ。現代では人間はおろか若い妖怪ですら覚えてない程の古い種族のね」
「そんな奴が何故異変を起こしているの?というか感じた雰囲気ではかなり強そうだったけど、忘れ去られたという事は実は弱いという事なの?」
「異変を起こしている理由は自分で考えなさい。まあ答えは実際に会わないと分からないでしょうけど。
それと彼女の強さだったわね。彼女が弱いなんて天地がひっくり返ってもあり得ない事ね。彼女に真剣勝負で勝てる見込みがあるのは紫ともう二人くらいかしらね。私の知る妖怪たちの中では。
それほど強い。種族としては間違いなく最強ね。
それで、結局買い物には行くのかしら?」
「えぇ、構わないわよ。私も避けられる面倒は避けたいし、里にも行ってみたかったし。
でも貴方がそこまで言う妖怪とは一度戦ってみたいかもしれないわね」
「私がそこまで言う妖怪と戦って良いことなんて一つもなかったんじゃないの?紫との戦いでよくわかったと思っていたのだけれど」
「まあね。でも自分の実力がどこまで通じるかは試してみたいじゃない?」
「私にはよくわからない感情ね。とりあえず戦うとしても決闘方式にしておきなさいよ。丁度良いルールもあるのだし」
「勿論よ。わざわざ死ぬ危険を冒すほど愚かな生き方はしてきていないもの」
「なら良いのだけれど。では明後日空けておきなさいよ。朝から行くから」「わかっているわ」
パチェったら本当に心配症だ。私が約束を破ることなんてできやしないのに。
しかし最強の種族か。パチェから見ても天狗や吸血鬼より強いという事だ。ここに来てから自分より強い者がたくさんいるせいで感覚が狂っていたが、何故西洋ではあんなに周りが弱かったのだろうか。
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いよいよ初めての人里に訪れる日が来た。運命を見てみたが霊夢が今日来るというのは確かなことらしい。美鈴は勿論、館に何かあれば困るので咲夜も置いて行くことにした。
「日傘ももう少し大きい物を買った方が良いかもしれないわね。翼が少し焦げているみたいだけれど大丈夫なの?」
「これくらいどうってことないわ。もう慣れてしまったしね」
初めの方は気になっていたけどいつの間にか気にならなくなった。不思議なものだ。
「果たしてそれでいいのかしら。まあ今はいいわ。では行くわよ」
「えぇ、咲夜も昼食を任せてしまって悪いわね。それじゃあ行ってくるわ」
「お気になさらず楽しんできてください。くれぐれもお気を付けていってらっしゃいませ」
人里というからには人間がたくさんいるのだろう。ここ十年ほどで見た生きた人間は咲夜と霊夢と魔理沙の三人だけだ。
それに三人とも能力を持っているせいで普通の人間を見るのは本当に久しぶりの事になる。大勢の人間を見るのも同じくらい久しぶりになる。
少しばかり緊張するし、妖怪に寛容な里ではあるが決して友好的ではない。それなりに視線を気にして買い物をしなければならないかもしれない。
夜の王と呼ばれていても昼間ならばこんなものだ。とりあえず何かしらの約束事を違反しないようにだけ気を付けておかなければならない。
結果的に楽しい買い物ができればよいのだが。
レミリアの話し方は相手によって変わります。主に二種類を使い分けている感じです
しかしただの宴会料理なのにこの豪華さ。ぜひとも参加してみたいものです
今回は目標の6000字丁度位で収まりました。良かったです
では次回も読んでいただければ幸いです