パチュリーside
レミィは早速今日から白玉楼に行っている。行動力があるのは良いことだと思うがそれに振り回される側としては大変なことこの上ない。
先ほども久々に図書館に来たと思ったら農地拡張の相談だった。確かに今庭の広い範囲を使ってしまっている温室や樹木類を別の場所に移せばコメの生産量もかなり増えるだろう。
だが今でさえ毎年のように豊作になるものだから紅魔館内の住人の分だけなら十分な量が収穫できている。これ以上増やして一体何を新たに作ろうとしているのだろうか。
普通のコメではなくもち米でも育てるつもりなのだろうか。和菓子にももち米はたまに使うし。
まあそんなことは今考えていても仕方がない。プランがあるから相談してきたのだろうし。
作物を育てられるような屋上を作るのはそこまで難しいことではない。温室なども魔法で環境を作っているだけなので移動は簡単だ。
問題は本当に外からしかアクセスできないようにするか否かだ。レミィは別に中から行けなくても良いというが流石に不便ではないだろうか。
期間はまだあるからじっくり考えておかないといけない。
「パチュリー様、お客さんですよ。門までお越しください」
「そういえば今日だったわね。今行くわ」
考え事をしていたらこあに呼ばれた。そういえば今日は穣子様と文が来る日だった。
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「お久しぶりですね、穣子様、文」
「丁度一年ぶりくらい?」
「いえ、秋にも会いましたよ。静葉様と一緒に」
「そういえばそうだったかしら。最近は秋に豊穣を祈る人たちに呼ばれることがあるんだけど、そんな時期に呼ばれても私何もできないわよ。どうなっているのかしら」
「まあまあ落ち着きましょう。最近は豊穣の秋という言葉につられる人間が増えているのですよ。仕方のないことでしょう。むしろ忘れられていないだけ良かったではありませんか」
「うーん、納得いかないわ。それって忘れられているのと大して変わらなくない?」
「穣子様もパチュリーもお喋りはそこまでにしましょう。今日は用事があって呼んだのですから」
「そうね。今年も私の力を見せつけてあげるわよ」
「それは頼もしいことです。文もこっちに来ていなさい」
「あやや、忘れられたのかと思いましたよ。そういえばパチュリー様が誰かを様付けすることなんてあったんですね。少々意外です」
「秋姉妹には毎年かなりの恩恵を受けているからよ。恩恵を受けているのに様付けもしないなんて罰当たりなことでしょう?」
「確かにそうですね。しかしそんなにたくさんの恩恵を受けているのですか?」
「えぇ。穣子様がいなければ紅魔館の食事情は大きく変化してしまうわ。それに静葉様がいるからこそ毎年ここの当主が満足する景色を生み出せるのだし」
「そうですよ。お二柱がいなければ私たちの生活は急変してしまいます。だから毎年この時期にはお呼びしているのです」
「ふむ、そうだったのですね。これはネタになるかもしれません。『豊穣の神は秋に呼んではいけない!』これで記事が書けますかね?」
「題名をもう少し何とかしないと完全に誤解されてしまうわよ。あと書くのならきちんと神は敬いなさいよ」
「何?私たちの事を記事にしてくれるの?これで知名度アップ間違いなしね」
「もう終わったのですか?今年は作物の量も増えたのでもう少しかかると思っていましたが流石ですね」
「当たり前じゃない。なんたって私は神だからね。これくらいできて当然よ」
「何かパチュリー様が敬語で話すと違和感が凄いですね。初めて聞いたからでしょうか」
「そんなことは無いですよ、文さん。私も毎年聞いていますが違和感は凄いですから」
二人とも好き勝手言っているがそれは私もわかっていることだから反論もできない。
「それじゃあ私はここで。またお姉ちゃんも呼んであげてね」
「えぇ、勿論ですよ。静葉様にもよろしくお伝えください。では」
「今年もありがとうございました。毎年助かりますよ。それではさようなら」
「帰りましたね。さてと、それなら私も帰って新しい記事でも書きましょうかねぇ」
「私はまだ来たばかりですが」「そうですか…………って誰ですか?!」
「どうも久しぶりねぱっちゃん、美鈴。まあぱっちゃんの方はそこまでですけどね」
「ぱ、ぱっちゃん?!一体パチュリー様とはどういう関係なのでしょうか?」
「どういう関係、か。まあ古い友人ですかね。それで貴方は天狗のようですがこの館で働いているのですか?」
「違いますよ。私は清く正しい射命丸文と申します。種族はお察しの通り鴉天狗です。そして貴方は一体何者なのでしょうか?どこか妖怪の苦手な雰囲気をまとっているようですが」
「私は東風谷稔里と言います。種族は天人。妖怪が嫌がるのはそのためでしょう。天人の肉は妖怪にとっては毒ですからね。仙人の肉は御馳走みたいなものらしいですが」
「ほほう、それでどうして天人が地上に?天人は地上を見下しているものだと思っていましたが」
「その認識は間違っていません。現に多くの天人は地上に降りることはしたくないようです。私が地上に来るのはぱっちゃんと美鈴に会う、ただそれだけのためです。
ぱっちゃんがいなければ私は天人になっていなかったでしょう。ぱっちゃんは恩人でもあるのです」
「どうしてパチュリー様がいなければ天人にならなかったと言えるのでしょうか?」
「それは簡単なことですよ。ぱっちゃんがいなければ私は仙術を学ぶことができなかったのです。
簡単にお話しましょう。昔私はある神社の巫女をしていたのです。二柱の神様が同居する珍しい神社でした。そんな時に噂でしか聞いたことのなかった陰陽師が二人私のいた国に来たのです」
「その二人がパチュリー様と美鈴様なんですか?」
「はい、その通りです。そしてその日からお二人も神社で暮らすようになりました。その時に私は仙術を教わったのです。そして修行の末天人に至ることができたのです。
私が仕えていたお二柱は力のある神様ですから外の世界で消えるより前にこの地にやってくるでしょう。神の血が途絶えていなければ私の子孫がきっと巫女をしているはずです。
その子には私の事は教えないでいただけるとありがたいです。混乱してしまいますからね」
「そんなことがあったのですね。しかし天人にまで友人がいらっしゃるとはお二人の交友関係の広さは尋常ではないですね」
「天人の友人がいると言っても一人だけだし、この子が人間の頃からの友人だから正確には天人の友人ではないのかもしれないわね。それに稔里は私が唯一師と仰いだ人物でもあるわ」
「ぱ、パチュリー様の師匠なのですか?!一体どんな力を…………」
「ぱっちゃんったら大げさね。あれくらいの事で」
「まあいいじゃないの。事実ではあるのだし、あの後も結構役に立ったわ。
そうそう冥界の管理人とは会えたのかしら?」
「うん、会えたよ。少し話をしてたら他の客が来たから切り上げて本来の目的だったこっちに来たってわけよ」
他の客、ね。十中八九レミィたちの事だろう。稔里が来る直前に穣子様も帰っていたしタイミングは示し合わせたかのようにばっちりだ。
稔里も奇跡系の能力を持っているのかもしれない。
「なるほどね。亡霊らしくない子だったでしょう?」
「そうね、まるで人間と変わらなかったわ。言動の底知れなさは妖怪みたいだったけど。でも歌人の娘だっていうのは少しわかった気がする。所作も品のあるものだったしきっと良い教育を受けて育ったのね」
幽々子の言動は彼女の友人に問題があると思う。私と美鈴は除いて。
「そうね。そういえばさっき神奈子と諏訪子はこの地にやってくると言っていたけれど、何か根拠があるのかしら?」
「根拠というか、まあほとんどは勘かな?あとは約束よ」「約束?」
「うん、最後にお二柱に会った時に約束したの。私が天人になれたら会いに行くから何があっても消えないでください、ってね」
「そうだったのね。でも神奈子はまだ良いとしても諏訪子は土着神。簡単に諏訪を離れないのではないかしら?」
「その通りよ。そこが一番心配なところ。でもきっと諏訪子様なら血のつながっている者との約束は破らないと思う」
「さっきから気になっていたのだけれどあなた、諏訪子と血のつながりがあることに気づていたの?」
「仙人の修行の一つに自身の過去を全て思い出す、というものがある。その修行中にわかったのよ、諏訪子様とのつながりが」
「なるほどねぇ、よくわかったわ。恐らく長く続く東風谷の家系でも知っている者は三人もいないのではないかしらね」
「そうかもね。そろそろ帰ることにするよ。あの文っていう天狗も帰ったみたいだし」
「あら、本当ね。美鈴は何か話したいことは無いの?」
「いえ、私は稔里さんに会えただけでも十分ですよ。元気そうで良かったです」
「そうですね、美鈴さんこそ元気そうで何よりですよ。じゃあ今日の目的は達成できたからまた会いに来るわ。じゃあね」
「またね」「さようなら、また会いましょう」
レミリアside
今日はとても有意義な時間を過ごすことができた。妖夢によると私の和菓子作りのセンスはかなり良いらしい。今まで様々な料理を経験してきたからだろうか。
しかし褒められて悪い気はしない。今日作った柏餅は『皆さんで食べてみてください』という事だったから持って帰ってきている。
味見は向こうで一応しておいたが、以前食べた物や妖夢が作ったものとは比べ物にならないように感じた。こんなものを皆に食べさせても大丈夫だろうか。そこだけが心配だ。
「おや、お帰りなさい。お嬢様、咲夜さん」
「えぇ、ただいま。どうしてそんなに嬉しそうなのかしら?何か良いことでもあったの?」
「はい、とても良いことがありました」
何があったのかは言わないという事は特に私が突っ込むべきところではないのだろう。彼女の私事を無理に話させるのもおかしなことだから何も言わなくても良い。
「それは良かったわね。そろそろ夕飯を作るから今日はもう引き上げていいわよ」
「そうですか。ではお言葉に甘えて中に入ることにしましょうか。それでどうでしたか?妖夢さんの和菓子作りは」
「彼女の腕は相当のものだったわね。いつか追いつける日が来るのかしらねぇ。
そうそう、私が今日作った物は持って帰ってきたから夕飯の後にでも皆で食べましょう。味はいまいちだけどね」
「初めてなんてそんなものですよ。お嬢様が料理を始めた時もそうだったじゃありませんか」
確かにあの時はひどかった。今では当たり前にできることをあの時はとても苦労してやっていたものだ。そう考えれば和菓子も当たり前に作れる日が来るかもしれない。
「そうね、これから努力すれば良いだけの話だったわね」
「その意気ですよ、お嬢様。では私は図書館にでもいますね」
「えぇ、まあすぐにできると思うけどゆっくりしていなさい」
夕飯は何を作ろうか。昼にドリアをしたから夜は…………唐揚げでもしようかな。
「咲夜「ここに」…今夜は唐揚げをするわ。貴方はフラン用の物を作って頂戴」「わかりました」
人間が人間を調理するとはこれ如何に。まあ咲夜の場合は殺すことに何ら思うところが無いからだろう。私も過去の事が無ければそうだったのかもしれない。
咲夜にはフラン用の物を任せたから残る全員分は私が調理しなければならない。鶏肉は筋が多くて切りにくいから今まで積極的に調理してこなかったが、包丁を鍛えなおしてもらってからは全然そんなことが無くなった。
一体どうすれば同じ包丁をこうも変化させられるのだろうか。里の技術力もなめたものではない。
そんなこんなで二キロ分ほどの唐揚げができてしまった。パチェはそこまで大食いではないし、私もそうだ。咲夜もそこまで多くは食べないだろう。咲夜の場合は何処か遠慮しているようにも見えるが。
となると残るは美鈴と小悪魔だ。小悪魔には期待ができる。美鈴はどうなのだろうか。彼女は何も食べなくても生きていける体質だ。どのくらい食べてくれるかがさっぱりわからない。
「お嬢様の方はもう終わったのですね。私は今から揚げるところですのに」
「まあ人間の加工は難しそうだものね。時間がかかっても仕方のないことだわ」
何故時間を止めずに料理をしていたのかは謎であるが。と思っていたら一瞬咲夜がブレた。
「いえ、そんなことはありません。ほら、もう揚がりましたよ」
「そんなことをするくらいなら初めからそうすればよかったのに」
「私の料理の手際をお嬢様と比べてみたかったのですよ。私の方が切る量も少なかったはずでしたが全く及びませんでしたね」
なるほど、そういう理由だったか。私ってそこまで手際が良かったのか。
「なるほどね。でも貴方ならいつかは私を越せるかもしれないわね。さて、皆を呼んできて頂戴。私は配膳やらなんやらをしておくから」
「かしこまりました」…………本当に便利な能力を持っていることで。
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「今日は唐揚げなのね。それにしても多すぎないかしら?私たちだけでは恐らく食べきれないわよ。いくらこあが頑張っても」
「やっぱりパチェもそう思う?私も作りながら思っていたんだけどついついね」
「まあとりあえず揚げ物は冷めないうちに食べるべきね。早速頂きましょう」
「そうね。それじゃあいただきます」「「「「「いただきます」」」」」
「言い忘れていたけど間違ってもフランの所から取っては駄目よ。小悪魔はいいかもしれないけど。あと食後に今日私の作った和菓子もあるから腹八分目までで我慢しておきなさいよ。
まあそこまで美味しくないから食べなくても良い人は満腹になるまで唐揚げを食べても良いけど」
「初めて作った和菓子なんでしょう?味を覚えておかないと将来弄るネタがなくなってしまうわ」
「ひどいわね。でもまあ私が上達するとは思ってくれているのね。期待に応えられるように頑張るわ」
「えぇ、応援しているわ。それにしてもレミィも成長したのね」
「どこからその話が出てきたのかしら。まったくわからないんだけど」
「いえ、言葉の裏側に隠された発言者の意図をきちんと酌める様になったのだと思っただけよ」
「一体いつの話をしているのよ」
「もう四百年近く前ね。レミィは覚えていなくても仕方がないわ。美鈴も覚えていないでしょうけれど」
「馬鹿にしてますか?パチュリー。私って結構記憶力はあるのですよ。気配から相手が誰かを読むのには記憶が重要ですからね。
ここにいる六名は勿論の事…………六名?って紫さん?!どうして勝手に入って来ているのですか?」
「いや何最近疲れてしまってねぇ。丁度唐揚げの匂いがしたから寄ってみたのよ」
「どんな鼻をしているのよ。まあいいわ。とにかく唐揚げはあげないからさっさと帰りなさい。藍とか言う狐が待っているのでしょう?」
「確かにそうですわ。早く帰ってあげないと心配しているかもしれませんわねぇ」
「なら早く帰りなさい。折角の団欒を邪魔するのはやめてほしいわ」
「そこまで言うのなら帰りますわ。紅魔館には格安で食材を売ってもらっている恩もありますし」
「はいはい。ではさようなら」「冷たいわねぇ。えぇ、さようなら」
唐揚げはどうせ余るからくれてやっても良かったが、彼女に私の料理を食わせるのは気が進まない。胡散臭いからだろうか。
何にせよ大人しく帰ってくれて助かった。やはり恩は売っておくものだ。
大体これよりもう少し少ないくらいの文字数で毎回抑えたいです
相手によって話し方が変わるキャラを書くときは注意しないと誰が話しているのかがわからなくなるので大変です。気を付けていてもわからない時もありますが
鶏肉が切りにくいと感じるのは私が包丁を研ぐのをさぼっているからなのでしょうかね
では次回も読んでいただければ幸いです