行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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オマケを除いて遂に四十話まで来ました。定期更新がどこまで続けられるかはわかりませんが、何としてでも完結はさせたいです


狂気的第四十話

   ???side

 

 

 この竹林は慣れない者なら必ず迷う。罠にかけるのも簡単だと思っていたが鈴仙みたいにホイホイかかってくれない。

 

兎たちから聞いたところによると今夜は今私が後をつけている二人組の他にもう三組来ているらしい。流石のお師匠でも八人を相手に戦えるのだろうか。まあ死ぬことは無いから心配はいらないが。

 

永い年月を生きてきた私にとって尾行など朝飯前だ。何か特別な能力でも持っていない限りは気づかれることも無い。

 

 

「咲夜、貴方ならこの竹林の空間を把握して敵の本拠地を見つけることもできるのではないの?」

 

 

「それがですねお嬢様、先ほどからしようとはしているのですが結界のような物が張られているようで把握できないのです。そこの竹の後ろにいる兎くらいなら容易く見つけられるのですが」

 

何か特別な能力を持っている人間を尾行していたなんて幸運の兎が聞いてあきれてしまう。

 

 

「じゃあその兎に聞いてみるとしようか。こんな場所に住んでいるんだ。どうせ妖怪兎なんでしょう?」

 

 

「えぇ、その様です。捕らえて来ましょうか?」「えぇ、よろしく」

 

捕らえられるのだけは勘弁だ。幸い私は逃げ足も速いと言われているし簡単には追いつかれまい。特にこの竹林は私の慣れ親しんだ場所だ。初めて来た二人組に遅れなど取らない。

 

 

「捕らえましたよ。とりあえず逃げられないように縛っておきました」

 

と思っていたのにいつの間にか縛られていた。訳が分からない。一体何者なんだ、この二人組は。

 

 

「よくやったわ、咲夜。では質問しようかしら、準備はできているかしら?兎さん」

 

どうせできていなくても質問はするんでしょうが。こういう時は下手に嘘を吐かない方が楽だ。もう皮をはがれるのは勘弁願いたい。実際辛かったのはそのあとだったけど。

 

 

「くっそー、いつの間に縛ったのよ。全然気づかなかったわ。で?質問?異変の元凶ならここをまっすぐ進んだ先にあるお屋敷に住んでいるよ。答えたんだからさっさとこの縄をほどいてくれたら助かるんだけど」

 

この道をまっすぐ進めば確かに永遠亭にはたどり着ける。その道中に嫌と言うほどの罠が仕掛けてあるだけで。

 

 

「ほう、そうかそうか。助かったわ。じゃあ解放してあげるわ」

 

やはりまだまだ若い。私にとってはありがたいことだけどね。

 

 

「ここにね」  「げぇっ!」

 

丁度落とし穴の真上に降ろされてそのまま落ちてしまった。私の作った罠などすべてお見通しとでも言いたいのだろうか。

 

 

「おやおや、まさか丁度落とし穴があったとはね。これは悪いことをしたわね。でも私たちは急いでいるから助けられなくてごめんなさいね」

 

絶対わざとだが何を言っても無駄そうだ。とりあえず落とし穴は飛べる存在なら簡単に抜け出すことができる。底にさらに仕掛けを施した落とし穴もあるっちゃあるがここの物はそれではない。

 

はぁ~、あんな奴らがあと三組もいると思うとぞっとしないねぇ。とりあえず私も屋敷の方に戻った方が良いだろう。鈴仙はどうせボロボロになるだろうし。

 

 

 

   アリスside

 

 

 紫の案内で敵の本拠地に六人全員で向かう事になった。魔理沙の方はまだ決着が着いていないことを不満げにしているが、霊夢の方はもう続ける気はないようだ。

 

まあ魔理沙にはあれくらいのしつこさがあってこそだと思う。彼女のそのしつこさが裏目に出ることもあるが、しつこくなければあそこまでの努力はしていなかっただろうし異変解決何かには手出しもできなかっただろう。

 

霊夢の方は逆にサバサバしすぎている気がしなくもない。誰にでも分け隔てなく接するが誰にも関心を示さない。博麗の巫女としては満点の性格だがそれが修行嫌いに繋がっている気がする。

 

今しても仕方のないことだが、面倒を嫌う彼女の性格がこの世界を崩壊させないかが心配だ。

 

 

「そこまでよ!もうさっきみたいなことはしない!ここから先へは通さないわ」

 

いつの間にか建物内に入っていたようで主人のペットなのか兎が出てきた。妖怪兎をペットにしている時点で主人はただの人間ではないことがはっきりした。

 

 

「あそこの扉が少し開いているわ。手分けしていきましょう」

 

 

「じゃあ私と魔理沙でこの兎さんの相手をしてあげる」

 

 

「じゃあ私と妖夢はさっきの弓を持った人のところに行こうかしらね」

 

 

「では私と霊夢であそこの扉に行きますわ」

 

三手に別れた方が効率はかなり上がるからこれは良い作戦だと思う。問題はレミリアたちがどこにいるかだ。兎の話によると先ほど一組通してしまってるようだからそれがレミリアたちなのだろう。

 

向かった先はあの扉の先か、それとも廊下の先か。

 

 

「くっ、扉が開いているとは。私としたことが…………迂闊だったわ。とにかくあんたたち二人はここでお終いよ。あんたたち二人に月の狂気から逃れることはできるかしら?」

   幻波『赤眼催眠(マインドブローイング)

 

これはかなり厄介。でもどうやらある一定の時間ごとに弾の当たり判定がなくなっているようだ。この間にどれだけ周囲を観察してそこに動けるかが勝負のカギになるだろう。

 

 

「なかなか当たらないのね。じゃあ次はどうかしら?」

  狂視『狂視調律(イリュージョンシーカー)

 

これも先ほどの物と同じ。だんだん離されている時に如何に冷静でいられるか。魔理沙の方も忍耐力は人一倍だからかなり余裕があるみたいだ。

 

 

「うーん、これでも当たらないのね。じゃあ次に行くまでよ!」

  散符『真実の月(インビジブルフルムーン)

 

一見不可能弾幕に見えるが攻略法は先ほどまでと同じか。ただ密度はかなりの物だから油断はできない。まあ初めから油断なんてしていないけど。でも次で最後だ。

 

 

「いい加減当たりなさいよ。はぁ~、このままじゃお師匠様に叱られるわ」

  月眼『月兎遠隔催眠術(テレメスメリズム)

 

先ほどまでより幻術が強い…………?どういう原理なのだろうか。魔法使いとしては気になるところであるが今回の弾幕は特に油断ならない。横方向からの弾幕は得意ではないのだ。

 

案の定一度ボムを使う事になってしまったが勝ちは勝ちだ。異変の主犯はこの先か。

 

 

「で、さっき言っていたお師匠様とかいうのが今回の異変の主犯なのか?」

 

 

「そうよ。異変を起こしたのはお師匠様。でもあんたたちには彼女を倒すことはできないわ。あんたらみたいな馬鹿どもは月面一の頭脳を相手にはできない」

 

 

「あー?弾幕に頭脳?馬鹿じゃないのか?弾幕はパワーだよ」

 

 

「そういうこと言うから馬鹿扱いされるのよ。弾幕はブレイン。常識よ」

 

パチュリーは確か頭を使って如何に物量があるように見せるか、とか言っていたような気もするが。

 

 

「とりあえずあの扉の奥に向かってみましょうか。近いから」

 

 

「そうだな。もしかしたらまだ霊夢たちが遊んでいるかもしれないからな」

 

             ・

             ・

             ・

 

 

部屋にいたのは見知らぬ女性と紫と霊夢とレミリアと咲夜。どうやらもう勝負はついていて話し合いをしているところのようだ。いつの間にか止まっていた夜も進み始めている。

 

 

「あら、アリスたちも来たのね。こいつは蓬莱山輝夜。不老不死のお姫様らしいわ」

 

 

「蓬莱人の生き胆を食すと不老不死になれるらしい。咲夜も不老不死になってみない?」

 

 

「私は一生死ぬ人間ですよ」

 

 

「本当にそうかしら?貴方は自分の存在がどういうものなのか分かっていないのでしょう」

 

 

「貴方にはわかるというの?輝夜」

 

 

「えぇ。咲夜の持つ力は人間には過ぎたものよ。咲夜の能力に対抗できるのは私だけ。恐らくどの世界に行ってもね。この意味が分かるかしら?」

 

 

「なるほどなるほど、よくわかったよ。しかしそれは単なる憶測に過ぎないのではないの?」

 

 

「お嬢様、私には話がよくわからないのですが」

 

 

「今はまだ知らない方が良い。貴方の一生に深くかかわってくるでしょうから」

 

まさか咲夜が…………?にわかには信じがたいことであるが輝夜の自信から見るに恐らく真実なんだろう。

 

 

「憶測ではないわ。まあこれも永琳が来たらわかることよ。でもこの話はここでお終いね。そろそろ永琳が来るでしょうけどそこからは私たちとそこの八雲紫との話になるから。もう日が昇ってくるかもしれないから早く帰った方が良いのではないの?」

 

 

「確かにそうね。咲夜、私たちはもう帰るわよ」「わかりました」

 

 

「あぁ、そうそう。宴会は三日後、博麗神社で行うわ。費用は永遠亭持ちで」

 

仕方のないことではあるがやはり咲夜は不満そうだ。

 

 

「さて魔理沙、私たちも帰るわよ。これ以上ここにいても特にすることは無いから」

 

 

「そうするか。おい、霊夢も一緒に帰ろうぜ。どうせお前もすぐ帰るんだろ?」

 

 

「そうね、夜通し起きていたせいで眠いったらありゃしない。早く帰って寝たいわ」

 

やはり霊夢は変わらない。まあこれくらいの方が付き合いやすくはある。私も寝ていないから眠い気がする。魔法使いとしてはおかしな話だが未だに人間的な習慣は抜け切れていない。別にこのままでも大して困らないからいいんだけど。

 

今回の異変は妖怪にとっては非常に危ないものだったが、何とか解決できて良かった。

 

 

   パチュリーside

 

 

 フランドールの狂気が収まってから四半刻ほどが経過した。もうそろそろ解決されても良いころ合いだと思うのだが。

 

 

「あっ、パチュリー様、魔力の異常が治りましたよ。夜も進み始めたようです」

 

「本当ね。もうフランドールの部屋の見張りはしなくても良さそうね。お疲れ様こあ、美鈴」

 

 

「いや~、狂気自体は大したことなかったですけど不定期に来るのが厄介でしたねぇ」

 

 

「そろそろ持ってきていた本も終わりそうだったので丁度良かったです。それにしてもお嬢様も咲夜さんも無事ですかね」

 

「彼女たちなら大丈夫だと思うわよ。さて、折角だから朝ご飯を作って待っていてあげましょうか。レミィも咲夜も寝ていないから疲れているでしょうし」

 

 

「それはいいですね!早速作りましょう」

 

「では私と美鈴で朝食は作るからこあは本を片付けて、もう少ししたらフランドールを起こしてくれるかしら」     「わかりました」

 

あまり凝ったものを作っても疲れている身体には良くないだろう。納豆となめこの味噌汁でも作るか。キノコ類は日本の気候と相性が良すぎて持て余し気味になっていたから丁度良かった。

 

美鈴はどうやら焼き魚にしたようだ。あとは副菜におひたしでも作れば良いだろう。私は質素な日本の朝ごはんが実は結構好きなのだ。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「ただいまー。あら、ご飯を作ってくれていたのね。気が利くじゃないの」

 

「お帰り。当たり前でしょう?疲れているでしょうから今日はゆっくり休んでもらっていいわよ。勿論咲夜もね」

 

 

「いえ、私は普通に仕事はするつもりですが」「レミィ」

 

 

「えぇ。咲夜、今日は貴方の休暇という事にするわ。館内でゆっくりするもよし、里でのんびり過ごすもよし。ただし仕事をすることだけは許さないわよ」

 

 

「そ、そんな。…………わかりました。今日は休ませていただきます」

 

「それで良いのよ。さて、もうフランドールも食堂に来ているからあなたたちも早く食卓について頂戴」「はいはい、行くわよ咲夜」「はい」

 

 

「それで今日の朝ごはんは何なのかしら?」

 

「今日は久しぶりに質素な朝ごはんよ。あなたも嫌いではなかったでしょう?」

 

 

「そうね。私が作るといつも気合が入ってしまうからなかなかできないんだけど」

 

「良いことだとは思うわよ。ねぇレミィ、あなたは料理が好きになって良かったと心の底から思っているかしら?」

 

 

「パチェにしては珍しい愚問ね。そんなこと聞くまでも無いでしょう?今となっては料理をしない私なんて考えたくもないわ。どうして?」

 

「いえ、何でもないわ。私の杞憂で良かったってだけよ。さて、食べましょうか」

 

 

「えぇ、いただきます」 「「「「「いただきます」」」」」

 

 

「そうそう、宴会は三日後ね。場所はいつものところ。今回は永遠亭……今回の異変の主犯のいる屋敷からも一人料理人を出すらしいわ」

 

「そう。なら美鈴は宴会を楽しんでいなさい。いつも門番の仕事ばかりで退屈でしょうから」

 

 

「全然退屈ではありませんよ。植物に水をやったり、鍛錬をしたり、湖の妖精たちと遊んだりもしていますから。でもパチュリーがそう言うのならありがたくお言葉に甘えさせてもらいますよ」

 

もう宴会をするという事はExはそもそも無しか。まあこの世界ではする理由もなくなっているから仕方ないね。

 

 

  

   妹紅side

 

 

「はぁ?!三日後に博麗神社で宴会をするぅ?!どうして私が参加しないといけないのよ」

 

 

「貴方も永遠亭とのつながりは深いでしょう?だから誘っているのよ。それに慧音も行くみたいよ?」

 

 

「ぐっ、まあ行ってもいいけど私が行っても大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫よ。私を拒絶しなかったんだから貴方が拒絶される理由もないわ。違って?」

 

 

「いやまあその通りか。なら慧音と一緒に行くことにするよ」

 

私は異変に全く関わっていないのに本当に行っても大丈夫なのだろうか。嫌な目で見られるのは慣れているが気分の良いものではないから出来るだけ人に関わらないように生きてきたというのに。

 

まあこれだけしつこく誘われれば行かないわけにもいくまい。再開したのはつい四、五百年前だが輝夜が私のことをわからなかったのは傑作だった。

 

かなり見た目も変わっていたから仕方のないことだったのかもしれないが、あのことは今でもあいつを弄るネタになる。

 

まああまりやりすぎると教育係(永琳)が怖いからやるとしてもほどほどにだが。こっちが不死だと分かっているから余計に怖い。

 

しかし宴会か。普段は慧音と家でしか飲んでいないから雰囲気が想像できない。料理も鈴仙ちゃんがいるから普通に美味しいものが出てくるだろうし楽しみだ。




永夜抄本編は終了。私の十番目に好きな鈴仙やてゐが出てきました。まあてゐの名前は一度も出ていないのですが

鈴仙やレミリアのスペカの名前は結構好きだったりします


では次回も読んでいただければ幸いです
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