行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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記憶的第四十一話

   パチュリーside

 

 

 今日は久々の宴会だ。今回も幽々子は来るが料理担当の人数は変更なしだ。人手が多すぎても邪魔になって効率が落ちるだけだからだ。

 

前回と違うのは美鈴が鈴仙に代わることくらいか。あのわがままっ子の月姫に食事を出しているくらいなのだから料理の腕はかなり高そうだ。どのジャンルの料理が得意なのかは聞かなければわからないが。

 

美鈴がいないという事で中華を作る者がいない。まあ今回初参加のメンバーは和食中心だろうから、私が少し作っておけば大丈夫だろう。

 

しかし今回の参加者を見て驚いた。異変に関わった永遠亭組や慧音、リグルにミスティアはわかるが妹紅まで来てくれるとは思っていなかった。

 

輝夜との仲は未だ良好という事なのだろう。見た目は随分と変わってしまっているが、知っている者が見れば面影が残っていることがわかる。

 

およそ千三百年の時が経ってしまっているが、彼女は私たちの事を覚えてくれているのだろうか。そういえば確か慧音に初めて会った時に『友人から聞いていた』と言われたような気がする。という事は覚えてくれているという事で良いのだろう。嬉しいことだ。

 

 

「パチュリーさん、そろそろ料理を作り始めますよ。あまり待たせるのも悪いですし」

 

「そうね。あら?そういえば今日は藍はどうしたのかしら?」

 

 

「藍さんは今日はお仕事があるとか。だから代わりにミスティアさんが一緒に料理をしてくれるみたいです」

 

「ミスティアが?それは頼もしいわね。分担はどうしましょうか」

 

 

「そうですね、私と咲夜さんはいつも通り和食、洋食を作るとして…………鈴仙さん、で良かったですか?」

 

 

「えぇ、私の名前は鈴仙・優曇華院・イナバよ。それで何かしら?」

 

 

「どのような料理が得意ですか?和食や洋食などで言えば」

 

 

「それなら和食ね。洋食なんてほとんど作ったことも無いわ」

 

「ミスティアは何でも作れたわよね。なら分担はこうしましょう。私と咲夜で洋食と中華、妖夢と鈴仙で和食、ミスティアと霊夢でつまみね」

 

 

「私は何でもいいわ。ちゃちゃっと作って早くお酒を飲みたいわ」

 

 

「あはは…流石は博麗の巫女ね、自由だわ。さて、私もパチュリーに期待されたからには気合を入れて料理するわよ」

 

本当にミスティアは頼もしい。たまに里からの帰りに屋台に寄っているくらいだがあちらの認識では常連扱いらしく毎度少しだけ値引いてくれる。

 

ミスティアは決して豪勢な料理を振る舞うわけではないが、確実に相手を満足させる料理を作る。そのあり方はレミィにも通ずるところがある。

 

彼女たちは意外に気が合うかもしれない。今度レミィを誘ってミスティアの屋台に顔を出してみよう。

 

 

「あの~、すみません」「どうかしたのかしら?」

 

 

「貴方がパチュリーさんなのですか?」鈴仙もおかしなことを聞いてくるものだ。

 

「えぇ、そうよ。自己紹介がまだだったわね。私の名前はパチュリー・ノーレッジ、魔法使いよ」

 

 

「やはり貴方が姫様たちのおっしゃっていた…………?」

 

「あぁ、輝夜と永琳ね。あの二人も見た感じ元気そうで何よりだわ。まあ病気になっても永琳がいるし死んでも死なないから元気なのは当たり前のことなのかもしれないけれどね。

 

それで、私に何か用でもあったのかしら?」

 

 

「いえ、特にそういうわけではありません。つまらないことを聞いてしまって申し訳ありませんでした」

 

「別に気にしていないわ。それよりその堅い口調の方が気になるわね」

 

 

「まあ改善できるように努力はしますよ」

 

善処する、と言った時には実際にはする気がないことの方が多い。鈴仙も当分は話し方を変えてくれないだろう。

 

「頑張って頂戴ね。さて、私たちも料理をしましょうか」

 

再会の挨拶は何が良いだろうか。

 

 

 

   妹紅side

 

 

 ここまでの人数を見たのは実に千年以上だと思う。ここ数百年は竹林の中で生活していたし、その前も人間の目につかない所で生活していたし。

 

最後に見たのは恐らくお父様が亡くなった時のあのクズのような親族たちだろう。あの時の私の判断は後悔していない。どうせあの家に私の居場所などなかったから。

 

家出の判断は後悔していないが蓬莱の薬を服用した後は数百年間後悔し続けた。初めて妖怪に殺された時には大きな絶望が心を支配していたが、いつの間にかそれも無くなってしまった。

 

輝夜と再会できたのはほんの偶然だった。たまたま竹林に立ち入った時に追いかけた兎があんな幸運を届けてくれるとは人生何が起こるかわからないものである。

 

今私が永遠というモノに絶望せずに生きていられるのも輝夜や永琳などの同類がいるからだ。彼女たちが月に帰ってしまえば私はどうなってしまうのだろうか。

 

 

「どうしたのさ妹紅、神妙な顔なんかしてさ。宴会なんだから楽しんだ者勝ちだよ。ほらほら、そこの料理も頂いちゃうよ」

 

いけない。考え事ばかりしていても宴会は楽しめないから思考を切り替えなければ。

 

 

「いや、何でもないよ。それにそこの料理はやらん」

 

普段は筍などしか食べていないから、ただのつまみが豪華な料理に見える。こんなことを言えば慧音に心配されてしまいそうだから言わないけど。

 

 

「貴方は妹紅さんですよね?生きていたのですね。お久しぶりです」

 

この宴会の参加者をぱっと見たところ私の知り合いはいなかったような気がするんだけど。それに”生きていた”だと?私の事を知っているのに私が不死であることを知らないのか?

 

 

「えーっと、あなたは一体?」

 

 

「あぁ、そういえばこの姿では初対面になるのでしたね。私は紅美鈴、もと陰陽師と言えばわかりますか?」

 

 

「えぇっ?!美鈴だったの?随分とかわったみたいだけど」

 

 

「こちらが妖怪としての本来の姿ですよ。あの時はパチュリーに変装させられていましたからね。でも姿の変わりようは貴方も人に言えたものではないのではないですか?

 

私は自身の能力で判別できましたがパチュリーにはわからないかもしれませんね」

 

 

「あぁ、樺菜の本名だっけ?確かにわからないかもしれないね。美鈴の言い方だと樺菜も宴会に来ているみたいだけど…………誰なのか全然わからないよ」

 

 

「あぁ、パチュリー…いや、樺菜なら今料理をしているところですよ。今妹紅さんが食べている焼売も樺菜が作った物ですよ」

 

 

「へぇ、これは焼売と言うのか。食べたことない味だったけど美味しいね。樺菜は料理もできたんだね。ほんと驚かされるよ」

 

 

「樺菜の料理の腕はそこらの料理人以上ですからね。少し待てば彼女も来ると思いますよ。私は輝夜さんたちにも挨拶しに行ってきますね」

 

樺菜がこの地にいるというのは本当の事だったのか。慧音が嘘を吐くとは思わないけどあまりに信じがたいことだったから疑っていた。

 

しかしまさかこんな再会があるとは思わなかった。あの時宴会に誘ってくれた輝夜には礼を言わなければならない。

 

樺菜は私を見て藤原妹紅だと信じてくれるだろうか。美鈴がいれば大丈夫だろうが。

 

しかし樺菜が料理ねぇ。なんでも器用にこなす彼女らしいっちゃ彼女らしい。私も簡単な料理くらいなら作れるが具材を適当に採ってくるせいで何回かに一回食中毒で死んだりする。ちなみに食中毒の原因の大半は毒キノコ。

 

「こんばんは、こんなところに一人でいて宴会は楽しめているのかしら?」

 

 

「急に声をかけてきたと思えば失礼な奴だね。私は一人で楽しめるから良いのよ」

 

「本当はそうでもないでしょう?妹紅。あなたが周りを避けるのは自身が特殊だと思い込んでいるからでしょう?安心なさい、参加者に普通の人間なんていやしないわ」

 

一体誰なんだ?私の事を知っているかのような口調、さっきの美鈴のような雰囲気がある。という事は

 

 

「あなたはまさか…………樺菜?」

 

「あら、よくわかったわね。あの頃と違って今は変装していないのに。では改めて自己紹介をしましょうか。私は大都庶樺菜改めパチュリー・ノーレッジ、種族は魔法使いよ」

 

 

「樺菜こそよく私がわかったね。あの頃の面影なんて欠片もないと思うんだけど」

 

「そう思っているのはあなただけよ。髪色や長さは変わっても顔は整形でもしないと変わらない。少し大人びた顔つきになったくらいでは私の眼はごまかせないわね」

 

 

「輝夜なんて初め全然わかっていなかったのに流石は樺菜だね。到底敵いそうにない。輝夜たちはあっちにいるよ。美鈴もいるみたいだし樺菜も挨拶しに行ったら?」

 

「あら、美鈴とはもう会っていたのね。そうね、それでは挨拶しに行きましょうか。あなたも勿論来るわよね?」

 

一人で飲むのもなぁ、と思っていたところだし丁度良い。

 

 

「そうだね、私も行くよ。あの連中には何かと世話になっているしね」

 

輝夜に礼も言わなければならないし。輝夜や永琳にとっても久しい再会なのだろうけど。

 

 

 

   パチュリーside

 

 

 もう春の足音が聞こえる季節になってきた。ここからは少し異変の頻度が落ちるようになるだろう。と言うか去年が異常過ぎただけだが。春から秋にかけて三つの異変が起きるとは私以外誰も思っていなかっただろう。

 

霊夢には本当にお疲れ様と言いたい。まあ言う機会はないのだけれど。

 

今年の冬は正常に終わるはずであるし次回の騒動も実際は異変ではない。まあそれは日本に百二十年以上住んでいなければわからないかもしれないが。

 

冬場は外が大分寒いようなので美鈴の仕事はもっぱら館内部の仕事になっている。今の時期は庭の植物も特にない。あるのは屋上の温室内のものくらいだから美鈴も楽そうだ。

 

いちいち一回外に出なければならないのも鍛錬不足を補えるなんて言っているし。暇な時間は今のように図書館に来ている。

 

冬の図書館は訪れる人が少ない。アリスは自分の家で研究をしているようだし、魔理沙は寒がりだからほとんど来ない。知識としてはあったが本当に寒がりだとは。あんなに寒さに強そうな雰囲気なのに。

 

 

「そういえば今年って何季でしたっけ」「今年は第百二十季よ。つまりあの年ね」

 

 

「あー、もうそんな年なんですね。綺麗ではあるんですがねぇ、無秩序に咲かれると庭仕事も大変になりそうです」

 

「確かにそうね。まあ今年そんなに採れなくても去年までの備蓄分は結構あるから大丈夫ではあるのだけれど」

 

 

「去年も春が遅れましたがなんだかんだで豊作でしたからね。流石は神様ですね」

 

「そうね、本当に彼女には感謝してもしきれないわね。レミィも上機嫌だったし」

 

 

「紅葉も綺麗でしたもんね。しかしもう春ですか、私の仕事も外に戻してもらって構わない時期ですね」

 

「何老人めいたことを言っているのよ」

 

 

「これでも数千歳なので十分老人なのですよ…………おぉ、辛い辛い」

 

 

「輝夜や永琳、てゐに比べたらあなたなんて生まれて間もない赤子同然でしょうが」

 

 

「確かにそうでしたね。まあ時間の進みが速く感じるというのは妖怪なら誰でもですね」

 

確かに私も人間だった頃の時間感覚など忘れてしまって久しい。思えばもう前世の七十倍程度の時間をこの世界で過ごしているのだから忘れていて当然だろう。

 

旅を始めた当初は五十年の時間すら想像もできなかったのだからものすごい変化だ。千五百歳超となると幻想郷でも高齢の部類に入るがさらに上位の存在になると桁が五つほども違ってくる。

 

彼女らから見れば私などまだまだ若造だ。私たちの行使する魔法だって永琳から見ればただの古代の力のコピーでしかない。

 

魔法と言う概念を生み出したのも恐らく永琳本人。超常の頭脳を持ちながら永き時を生きてきた彼女は一体何を考えていたのだろうか。億を超える年月を想像することすらできない私に答えなど永久に出せまい。

 

「それを踏まえても永い時間を過ごすというのは辛そうね。それだけの年月を生きてなお今を楽しめるというのは本当に凄いことだと思うわ」

 

 

「だんだん話がずれていましたが本当に一年などあっという間ですからね。ここ二年ほどはいつもより少しだけ長く感じましたが」

 

「そうね。異変が立て続けに起こったものね。今年の春も知らない者は異変扱いするでしょうから巫女は本当に忙しいわね」

 

 

「まあ彼女自身が異変扱いするでしょうからね。度が過ぎると閻魔が出てくるかもしれませんが」

 

幻想郷の閻魔(ヤマザナドゥ)は誰なのかしらね。案外知っている人かもしれないわね」

 

 

「閻魔に知り合いはいませんよ。でも確か昔閻魔の募集がありましたね。知っているお地蔵様から閻魔になった人がいるかもしれませんよ」

 

「私たちの知っているお地蔵様と言えば月面戦争の少し後に会った映姫くらいよ」

 

 

「むぅ、流石にそれほどの低確率は引けそうにないですね。彼女は少し説教臭かったので閻魔にはぴったりだったかもしれませんが」

 

まあ実際はその映姫なのだけれど楽しみは後まで取っておくほうがいいだろう。私たちは特に死神と関わることをせずに生きてきたので小町には会ったことがない。

 

三途の川に行けばいつでも会えそうな気がするが、好んで行きたい場所ではないため行ったことは無い。

 

今年は渡しの仕事が大変になるだろうが頑張ってもらいたいものだ。




映姫に会った描写はなかったですが実は会ったことがありました

実際に億年以上を生きている永琳とか輝夜って何を思っているのでしょうか。永遠の方が勿論長いのですが

次回は花映塚ですね


では次回も読んでいただければ幸いです
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