定期更新が止まってしまったと言ってもここから不定期になるわけではございません
パチュリーside
「お帰り。今朝帰ってくると思っていたわよ」
「ただいま。思っていたのではなく能力で見て確信していたのでしょう?」
帰ったら一番にレミィに迎えられるとは思ってもみなかった。確かに彼女は早起きだが初めに会うのは美鈴だと思っていたからかなり驚いている。
「やっぱりパチェにはすぐにばれるか。まあいいわ、帰ってきて早々で悪いんだけど皆を起こしてきてくれるかしら。私は朝食の準備をしているから」
「構わないわよ。それにしてもこの時間に美鈴が起きていないなんて珍しいこともあったものね」
「あぁ、美鈴なら寝ているんじゃなくて図書館にいるはずよ。貴女が出した課題に関して咲夜に手伝わされているみたいね」
「あらあら、それはお気の毒ね。三段の筒を見つけるのにかなり苦労しているようね。あの子は良くも悪くも頑固だから柔軟に考えられていないのね」
「なんだ、パチェはもう答えがわかっていて咲夜に課題を出していたの?」
「えぇ、でもそろそろ彼女自身が見つけてきてくれると信じているから何も口出しはしないけれど。咲夜が美鈴以外を頼り始めれば解決はすぐでしょうね」
「すべては貴女の手の上ってこと?」
「違うわ。私は単に彼女の成長が見たいだけよ。あの子にも気軽に相談できる人間の友人を作ってほしい、レミィもそう思うでしょう?」
「まあ確かにね。咲夜の交友関係は人間にしては狭すぎる気がするもの。ま、私は無事に月に行ければ何も言う事はないわよ。じゃあ皆を起こしてきてね」
「心配無用よ。久しぶりのあなたの料理楽しみにしているわよ?」「任せておきなさい」
朝のおにぎりは持って行った数の関係上私は食べていない。惜しいことをしたとは思うが、食事の必要ない私と必要である早苗ちゃんなら優先順位というものがある。
とりあえず皆を起こしに行くか。図書館は最後でいいだろうからまずは上階のフランドールからだ。昔と違って最近は地下に行こうという気も無くなっているようだ。良いことである。
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あれからは特に何もなく数日が過ぎている。唯一変わったことといえば異変といえるかわからない神社同士の戯れが終わったことくらいか。
結果は勿論霊夢が勝って終わったらしい。文の新聞に守矢神社の事が事細かに書いてあった。あの二柱相手によくこれだけの取材を行えたものである。恐らく私の名前が出たのであろうところは”Oさん”となっていた。
これならば今回の事を詳しく知っている紅魔館組と守矢組、八雲の二人くらいしか特定できないだろう。
何はともあれ守矢の方も天狗とよく話し合いをしているようで、今のところ妖怪の山に
ロケットの方はというとようやく咲夜が館の外を頼り始めたところだ。香霖堂に行って本を探しているようだが、あそこに置いてある本はほぼ全てが外来本、つまり外の技術の本なのだ。
外の技術は幻想郷ではほとんど活用できない。しかし外の世界では活用できない神の力が幻想郷では活用できるのだ。ヒント無しでこれに気づけたら凄いが流石に無理だろうからヒントはいくつか与えたつもりだ。あとは神を正しく理解している者の下へたどり着くかどうか。
咲夜なら私の期待通りの働きをしてくれるだろう。レミィたちの月旅行はそこからが本番だ。
レミリアside
パチェが帰ってきて数週間、ようやく咲夜はパチェが出していた課題の答えを得られたらしい。霊夢を頼って博麗神社に行った時にあるヒントから霊夢が思いついたらしい。
咲夜たちを凡人と言いたいわけではないが三人寄れば文殊の知恵とも言うし、やはり誰かを頼るという事は大切なのだ。これを機に咲夜には幻想郷の人間たちにも交友関係を広げてほしい。
そんなことより霊夢が思いついた三段の筒というのは三柱の神の事らしい。底筒男命、中筒男命、上筒男命という航海の安全を守ったりする神で、住吉三神と呼ばれるらしい。
上、中、底のまさに三段の筒でさらに航海に関する神なのだ。パチェは初めからこの神の力を頼るつもりで咲夜に課題を出したに違いない。下手をすればそこらの巫女よりも詳しいかもしれない彼女のその知識は一体どこから来ているものなのだろうか。
昔神が大きな力を持っていた時代に日本で暮らしていたからなのだろうか。謎は深まるばかりだが考えてもキリがないから割り切るよりほかないのだろう。
そのパチェは今ロケットの制作に着手している。ロケット本体を神社に見立てて作るらしい。この手の事は形式が重要と聞いたことがあるしそれに基づいているのだろう。そのせいで不格好になっているのだろうか。
「ねぇ、パチェ。どうしてこのロケットはこんなに不格好なのかしら?貴方ならもう少し格好よく作れたんじゃないの?」
「ああ、この形の事ね。これはうん、まあ私なりのこだわりなのよ。それにあとで下段から切り離していくときにもやりやすいし」
パチェのこだわりポイントがよくわからない。でも普通は二番目の理由を一番に持ってくるものなのに、そうではなかったという事はよほど彼女にとっては強いこだわりなのだろう。
「そう、なら何も言わないけど…」「お姉様たち最近何か面白そうなことをやってるよね」
「あら、フランドールじゃないの。図書館に来るなんて珍しいわね」
「うん。だって最近お姉様とパチュリーたちで何やら面白そうなことをやっているもの。何をしてるの?」
「レミィたちが月に行きたいそうよ。だから私は行くためのロケットを作っているというわけ」
「月に…?月って行けるところにあるんだ。楽しそう。ねぇ、私もついて行ってもいい?お姉様」
「えぇ、勿論構わないわよ。むしろ大歓迎ね」
これはパチェも同じことを考えているに違いない。ようやくフランが誰かに聞かれて、ではなく完全に自発的に館から離れて行動する気になってくれた。いつも遊びに行ったとしても湖周辺ばかりのようだから心配していたのだ。
私は姉として、パチェや美鈴らは家族としてこのフランの決意を応援してくれるだろう。それほどまでにとても嬉しいことだ。
「やったー!ありがとう、お姉様!早速皆に知らせて来ようっと」
「それはちょっと待ちなさい、フランドール。あなたが伝えに行くと皆も一緒について行きたくなってしまうかもしれないわ。
でもそれだけは駄目よ。あなたたちの考えている以上に月の民は強く、そして賢い。力の強くないあなたの友人たちは死んでしまう事になるかもしれないわよ」
「うーん…そうだね。妖精たちは生き返るけど妖怪は生き返らないもんね。自慢するのは館の皆だけにするわ。ありがとうパチュリー」
「私としてもあなたの友人たちが死んでしまうのは本意ではないのよ。悪いわね、フランドール」
「ううん、気にしないで。それでいつ出発する予定なの?」
「出発予定は二月後の三日月ごろかしらね。それまではゆっくり準備しておきなさい」
「はーい、わかったよ。じゃあね!」
図書館の中は走らないように言っているし、いつもは静かに歩いているはずなのに。フランもよほど嬉しかったのだろう。
美鈴は嬉々としてフランの話を聞くに違いない。彼女は聞き上手だから話していて気分が良い。
長く生きていると様々な技術が身につくという。私の場合は料理なのだろう。外の世界は知らないが、幻想郷内では一番であると思いたい。パチェや美鈴は基本的に何でも一人でできてしまうし、他人に気を使って行動することもできる。
私ももう少し生きれば心にそんなゆとりができてくるのだろうか。吸血鬼としてはわがままな方が良いのかもしれないけど。
「それにしてもフランドールが自ら行きたいというとは思わなかったわ。危なくなったらきちんと守ってあげなさいよ」
「えぇ、当たり前じゃない。フランの肌には傷一つ付けさせやしないわ」
「過保護ね。でもそれはきっと難しいわよ。言っていなかったけれど月には恐ろしいほどの実力者がいるわ。数ではなく質の話よ。
その子がきっとあなたたちを出迎えるでしょう。気をつけなさい、死にはしないでしょうがあなたのプライドは傷つくかもしれないわよ」
「こと私の戦闘に関するプライドならはるか前からボロボロよ。主に貴方たちのせいでね。だから安心していいわよ」
「それは安心していい要素なのかしら…。まああなたが言うのなら安心しておくことにするわ」
私としても悲しくなるようなことだが事実なのだから仕方ないのだ。
「ええ。そういえば月に行く前に披露宴でも催そうと思っているのよ。それまでには間に合いそうかしら?」
「全く問題ないわ。でもこのロケットを移動させるのは面倒だからレプリカでもいい?」
「そうね、いいと思うわよ。雰囲気が伝わればいいのだし」
「ま、披露宴を開くのならばどうせフランドールの友人たちには計画が伝わってしまう事になるわね。行きたいと言われないことを祈るばかりだわ」
確かにそうだった。まったく考えに入れていなかったがさっき断った意味がなくなってしまった。聞かれたら適当にごまかしておくか。
「そうね。その時にこのロケットの愛称でも付けようと思っているのよ。パチェには何かいい案は無いの?」
「私一人の意見で決めてしまうより皆集まった時に募集した方が良いと思うわよ。そっちの方がきっと良い意見が出てくるわ。あなたに限ってあり得ないと思うけれど、間違えても三神を怒らせるような名前は付けては駄目よ。
三柱が怒ってしまえばこの『
「当たり前じゃないの。それくらいの配慮はするつもりでいるわ。
しかし不思議なものなのね、日本の神というのは。こんなちゃちな神棚で本当に大丈夫なの?」
まあパチェの事だから全く問題ないんだろうけど。
「勿論よ。それどころかこの神棚さえ必要なく、ただ神の宿る器さえあれば十分なの。日本の神様は少し特殊でね、神霊はいくら分裂しても同じだけの力を持つの。だから神をこのロケットに乗せるよりは巫女を乗せる方が簡単で融通も利くのよ」
改めて聞いてもやはり不思議だ。でも確かパチェの友神は肉体を持っていたはず。
「この間来た神たちはどうなの?彼女たちも分霊させることができるの?」
「肉体を持つ神は自身の神霊を分霊させることができるのよ。まあ神奈子は神霊だから神としての肉体はもともとは持っていなかったと思うのだけれど」
日本の神の事情はかなり複雑らしい。神霊と呼ばれるもので肉体を持つのはかなり有名な者だけらしい。更に神霊は基となる魂が存在する、つまり神になる前の状態があるが八百万の神は純粋な信仰のみによって成り立っているらしい。
見た目も人間がとっつきやすいようにあのような姿をしているだけのようで、分霊として祀られる時には違う姿にもなるらしい。私にはいまいちわからない。
「とりあえず目に見えなくても分霊として宿ってもらうのだから細心の注意は払っておきなさいよ。私は一緒にはいかないんだから」
「あぁ、そういえばそんな話からずれていたんだっけ。パチェがいなくても何とかなるでしょう」
「いざとなれば霊夢もいるし安心ね。フランドールの事は全てあなた任せになると思うけれど今のあの子なら大丈夫でしょう。内部も見た目以上に広く作ってあるから出発の時まで楽しみにしていなさい。咲夜以外の誰にも言っては駄目よ」
咲夜の能力で中身を広くしているというわけか。長旅なら確かに広い方が快適に過ごせるだろう。
「なるほど、これが女子どもの秘密といわれるやつなの?」
「きっともう少しお上品な言い方だと思うわよ……でもまあそんなところよ。狭そうだと思って入ったら思いのほか広かった、となったらなんだか嬉しく感じるでしょう?」
「私はその感情が湧かないってことよね……。まあいいけどね」
「言わない方が良かったかしら。でもレミィはそのあたりの感情を大きく出してくれないからどちらでも同じではないかしらね」
「それ、本当?自覚はなかったけどそれは悲しいわね。
はぁ。あ、そうだ。パチェもずっとロケットの事をしていて疲れているでしょう?お茶でも用意してあげるわ」
「あら、相変わらず気が利くのね。当主らしくはないけれどね。でもありがたく頂戴するわ」
「へぇ、これは美味しいわね。まさか本当に数か月でここまで味が変わるとは思っていなかったわ。あなたへの評価をさらに二段階ほど上げないといけないかもしれないわね」
「今までの私への評価どうなっていたの?」
「今までは日本一の料理人だったけれどアジア一の料理人に評価を上げたわ。もしかすると宇宙一なのかもしれないけれどね。少なくとも私は今まであなた以上の料理人は見たことが無いわ」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないの。でもこの数か月は本当に頑張ったわよ。昔の言語の勉強の時くらい。おかげで妖夢も幽々子もかなり褒めてくれたわよ」
「どちらも私の不在時じゃないの。そんな例えをされてもわからないわよ」
「まあ大変だったという事よ。さて、披露宴をするのはまだもう少し先だからそれまではゆっくり作って頂戴ね。身体を壊さないように小悪魔にも見張らせておこうかしらね」
「そこまでしなくても大丈夫よ。自分の身体のことくらいわかっていないと今まで生きてこれていないわ」
「パチェの心配をするのは貴女ではなく紅魔館の皆なのよ。そのあたりの事はわかっているの?」
「わかっているわ。私なんかを心配してくれるなんてありがたいことだと思っているわよ」
本当にわかっているのだろうか。まあいざとなれば使う機会の少ない私の当主権限が発動されるだけだけど。
儚月抄はかなり改変すると思います。ゲームとかなら調べればエンディング以外の内容はほとんど出てきますが、書籍は買って読まないと詳しい内容がわからないからです。特に儚月抄はいくつかの小話ではなく一つの物語として進みますし
コミック、四コマ、小説のどれも外れなく面白いのでネタバレは最小限に抑えたいところです
最近フランの出番が極端に少なかったので月面旅行に突っ込ませることにしました。紅魔館組の中でもずば抜けて登場が少ないですから地下で暮らしていない設定を忘れていた人もいるかもしれませんね
というわけで次回が一応儚月抄本編になります
では次回も読んでいただければ幸いです