行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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今回は初めての試みとして三人称を書いてみました


超美的第五話

天の声side

 

 

 長かった旅路もようやく終わりを迎えるようだ。パチュリーも美鈴も数々の下級妖怪どもと戯れるのには少々飽きているのかもしれない。

かなりの数の妖怪を相手の実力問わずに退治してきたおかげで彼女らの評判は都にも届いているとか。

その一方で悪いことをしていない妖怪には手を出さないあり方は妖怪の撲滅が目的の人間たちには受け入れられにくいようでもある。

 

それ故妖怪の中には彼女らに恐れて悪事を最低限にしか働かなくなったもの、安心している者、興味を示すものも勿論いるわけである。

 

 

「(美鈴と樺菜、か。美鈴の方は大陸出身かしら、樺菜の方も何やら違和感があるのよね。何が変なのかしら。いえ、確かに両者ともにかなりの力を持った陰陽師なのに誰彼構わず妖怪を滅することをしないのは少し変なのだけれど。

でももしかしたら私の夢に協力してくれる心強い味方になってくれるかもしれないわ。もう少し観察してみましょうか)」

 

彼女らにとってこの者の存在が吉なのか凶なのかは今は誰にもわからない。

 

 

  パチュリーside

 

 

 なーんか最近妙にみられているのよね。私たちがどこにいても視線が外れない。でも周りを見渡しても誰もいないのよね。

 

コレはおそらく千里眼かスキマのどちらかだろう。で、夜なんかはたまに視線が外れることがあるから多分スキマ。寝ているのでしょうね。

 

ゆかりんだろうな~。超期待しているんだけど早く出てこないかな~。

 

あと2刻ほどで平城京に着いちゃうけど。

 

 

「ねぇ樺菜、なんだか最近ずっと見られてますよね」

 

まあ美鈴は流石に気づいていたね

 

「えぇそうね。でもそんなに気にすることでもないと思うわよ?

 私たちを害する気はないみたいだしね。

  それに……」

 

 

「それに?」

 

「私たちのことをバレバレで観察しているくらいならいつまでも自分が姿を現さないのはあり得ない、と思わないかしら?」

 

 

「確かにそうですね。でも私たちをずっと観察して何か面白いことでもあるのでしょうかね」

 

「さてね、私たちが陰陽師としてはかなり異端な行動をしているからその理由や目的を知って、その妖怪さん自身の目的に巻き込もうとしているのかもしれないわね」

 

人間と妖怪の楽園をつくるとかね。

 

 

 

  ???side

 

 あら、私が観察していたことはわかっていたのね。普通の人間には感知できないはずなのだけれど。

 

 やはり彼女らは相当な強者。ぜひともこちら側に引き込みたいところだけど、妖怪の言うことなぞ真面目に聞いてくれるはずがない。

さらに私は彼女らを観察していたのがばれてしまった身。1対1ならば勝てると思う、だが2対1であれば勝つ見込みは非常に薄くなってしまうでしょう。何せ今まで彼女らの妖怪退治を間近で見てきた私だ。

彼女らの連携は大妖怪をも圧倒する。

 

 そんな彼女らの前に姿を現すのはいくら私でも危険だと思う。でも樺菜という方がこのままスキマに籠りにくい雰囲気を作り出してしまった。

 

さらに私の目的のために観察しているのも筒抜けの様子。ここは一か八か外に出てみましょう。

 

 

「こんにちは。お初にお目にかかります。私は八雲紫と申します。

 此度は一方的に観察するようなことを致しまして申し訳ございません」

 

「別に気にしていないからいいわよ。わたしは大都庶樺菜。

 訳もなく陰陽師をしているわ。」

 

 

「私は紅美鈴と申します。

私が陰陽師をやっているのは樺菜について行っているからですが」

 

近づいて話してみてようやく彼女にあった違和感の正体がわかったわね。

 

とりあえず確認してみましょう。

 

 

「貴方たちはまさか妖怪(こちら側の存在)だったのかしら?」

 

「あら?どうしてそう思ったのか説明してもらっても?」

 

これは黒ね

 

 

「貴方の話す言語自体に違和感はない、しかしこの国のものとは明らかに異なる顔。これから察するに貴方はおそらく大陸の西の端が出身でしょう。

 しかしながらあそこの人間ではまだこの島にはやってくることができない。さらに人間にはありえないような髪色、なれば貴方は妖怪の類でしょう?」

 

「ご名答。確かに私は大陸の西の端出身で妖怪でもあるわ。

 でもこの髪色や顔は私よりもかなり強い力を持った妖怪でないと看破できないわ。看破されたのは実は初めてだからあなたがかなり強いのはわかる。

 

 あ、因みに私の名前はパチュリー・ノーレッジ。これが本名よ、呼びにくければお好きなように。 それでそんなに強い妖怪が私に何か用かい?」

 

唐突にそういうのはやめてよね…。

 

 

「そうそう、貴方たちに協力してもらいたいことがあってね。私には夢があるの。妖怪と人間が共存する世界、今のような殺伐とした関係ではなくて理性のある妖怪ならば人間社会に潜んでいても黙認されるような世界を創りたいの。

 今はまだいいわ。でもこれから先私たちのような存在はどんどん消滅していってしまう。殺されるのではなく畏れられないほどに人間の価値観で説明され、忘れ去られることによって。

 だからそうなる前に私は妖怪と人間の両方の未来を考えて提案しているの。どうか協力してくれないかしら?」

 

 

「彼女の言っていることは本当なのでしょうか。こんなにも猛威を振るう妖怪が忘れ去られるなんてにわかには信じがたいのですが」

 

「えぇ、彼女の言っていることは本当よ。妖怪とは人間の畏れによって具現する存在。そして人間たちはこれからあり得ない速度で進歩していくでしょう。

 そうなったときに妖怪が生きていけないのは当然のことなのよ。

 

 妖怪は確かに強い、人間の何倍も。でもいつか人間が進歩した先で、起こった自然現象が完全に彼らの言葉で理屈立てて説明されたときには、今の人間たちが恐れている妖怪や、崇め奉っているような力の強い神でさえ信仰を失い消滅してしまう。それほどに私たちのような存在は人間に依存していることを忘れてはいけないのよ」

 

彼女はまるで確信しているように話す。私でさえそうなった時のためにこの計画は立てておいたくらいなのに。

 

「それで協力だったわね、もちろん私は良いわよ。

 でも陰陽師として働きながらになると思うけれど」

 

それはありがたい。

 

 

「それで十分よ。ではこれからよろしくお願いしますわ」

 

「えぇよろしく」     「私もよろしくお願いしますね」

 

 

「また伝えたいことがあったら出てきますわ」

 

それにしても面白い、まさか妖怪が陰陽師をやっていたとは思わなかったわ。

 

 でもだからこそ無用な殺生をしないのでしょうね。

 

 

 

  パチュリーside

 

いやー、やっぱり紫さん美しかったね。

 観察されていると分かった時は実力がおおまかにわかっているせいで、あちらに悪意がなくてもかなり怖かったけど。

強さは正直会うまでなめていた、と認めざるを得ない。あれは桁が違ったね。この変装(?)は私を2人倒すくらいの実力がないと見破れないはず。つまり並みの大妖怪でも看破はできない。私も実力にはそこそこ自信あったのにね。井の中の蛙だったってことなのね。

 

さてさて旅もここまで、私の予想では717年前後でかぐや姫が流刑にされるからそれまでに都で仕事に従事しましょうか。

 

ていうか紫も西洋顔に近いと思うんだけどねぇ。どうして自分のことを棚に上げていたのかな。よくわからないね。

 

流石に都まで来ると活気が桁違いだね。私は無いからいいとしても美鈴は妖力が都を覆う結界に反応してしまうだろうね。

 どうやら都の外で暮らさないといけないらしい。まあどうせ戸籍がないから中には住めないのだけれど。

 

人々からの信用を築き上げるのはそこまで難しくはないだろうが、如何せんここは都。妖怪を撲滅したい人間たちの巣窟だ。

 これからは気を付けて行動しないといけないね。下手をすれば築き上げた信用が一晩で地に落ちるなんて普通にあることだから。

 




前回の終わり方と今回のタイトルから輝夜さん登場回だと思ってしまった方、申し訳ございませんでした

紫を思慮深く書けないことが残念でなりません。まあここの紫はこんな感じだと割り切って読んでいただければ

紫は単純になんでもありな戦闘をするなら妖怪の中では圧倒的な強さを誇ります

たまに出てくる年代は車持皇子を藤原不比等としたときに不比等が亡くなった720年からかぐや姫が成長して月からの使者が来る3年余りを逆算したものです
 なおかぐや姫が月に帰るのは8月の15夜、不比等が亡くなったのは9月の13日でありほぼ1か月のずれがありますが、なんとか都合をつけます


では次回も読んでいただければ幸いです
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