行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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本編まで行けませんでした。先に謝っておきます。申し訳ありません


披露的第四十八話

   パチュリーside

 

 

 ロケットの方はもう既に完成した。今はそれをもとにして今日開かれる披露宴用のレプリカを作っているわけだ。

 

私は別に不器用ではないがかなり細々した仕事なので、その手の仕事が得意なアリスにも手伝ってもらっている。というよりはアリスの手際が良すぎるせいで八割ほどは彼女が作ってしまっている状況だ。

 

快く手伝ってくれているアリスには感謝しているが、手伝いを頼んでいるだけだという立場上少し申し訳なくも感じている。

 

「アリスは本当に手先が器用なのね。本来なら一人で一日かけてするつもりだったのだけれどもうすぐ終わりそうね」

 

二人で分担しているというのもあるが九時に開始して現在の時刻はまだ十一時前くらい。もともとの完成予定時刻が午後四時くらいだったのを考えるとアリスの働きがよくわかるというものだ。

 

 

「私はこういう細々した作業は慣れているからよ。パチュリーも慣れていないとは思えないくらいに手際は良いと思うわよ」

 

「そうかしら。あなたと並んで作業をしていると全くそうは思えないような気がするのだけれど…。でもあなたのおかげでかなり早く終わりそうで本当に助かったわ。

 

午後からの予定が特になかったのならパーティーの時間まで紅魔館にいたらどうかしら。昼食の件はレミィにも伝えておいてあげるけれど」

 

 

「良いの?それならお言葉に甘えて午後はここにいることにするわ。今日は一段と寒いしね」

 

そういえば今日はかなり雪が降っている。夜になれば月明かりが反射してとてもきれいに見えそうだ。雪が止んだら、だけれど。

 

「わかったわ……こあ~、来なさい」「はいはいなんでしょうか」

 

「今日はアリスの分も昼食が必要だとレミィに伝えてきてくれるかしら」「かしこまりました」

 

こあ程この図書館を熟知している者はいない。役に立たない妖精メイド達は図書館にいれていないため、彼女しかここの本の整理をする者がいないのは確かだ。しかしいつ呼んでもすぐ来てくれるし、本を持ってくるように頼んでも瞬時に取りに向かうほど本の場所まで正確に記憶しているようだ。

 

魔理沙が盗っていった本が何だったのかすぐにわかるのも彼女のおかげである。もともと力のない悪魔だったせいで彼女も頭脳の方面に努力をしていたのだろう。彼女はきっと「弾幕はブレイン」派であるだろう。

 

 

「いつも悪いわね。レミリアの料理も紅魔館住人以外には滅多に出さないと聞いているのに」

 

「構わないわよ。この館に訪れている回数は他の人間や妖怪と比べても断トツで一番だし、紅魔館が幻想郷に来た時からの付き合いだからレミィの中では身内扱いにもなっているかもしれないわね。いっそのこと本当に紅魔館に住んでみるかしら?」

 

 

「凄く魅力的な提案だけどそれは流石に遠慮しておくわ。レミリアの料理以外食べられなくなるかもしれないじゃない」

 

「案外そんなことは無いわよ。味にも個性があるから宴会も楽しめるのよ。ま、私の提案自体は冗談だけれど。でも実際レミィはあなたの事を迷惑だなんて露程も思っていないと思うわよ。だから安心してご飯も食べていきなさい。

 

夜のパーティー用の料理は流石にレミィは作らずに私、咲夜、美鈴の三人で作るけれど」

 

 

「どうせだから私も手伝うわ。かなりの数の料理が必要になるんでしょう?私と私の人形たちで手伝えばあなたたちもかなり楽ができるんじゃない?」

 

「何から何まで手伝ってもらって悪いわね。ではそうさせてもらうわ」

 

そんなことを話している途中でもアリスは手を止めていないのでレプリカの方も完成してしまった。どうすればあそこまで器用になれるのだろうか。私には到達できそうもない。

 

 

 

   レミリアside

 

 

 ロケットの完成が近くなってきた最近、パチェにある本を渡された。どうやら日本の神様の事を詳しく書いた本らしい。かなり古い本なのか、パチェが保護魔法をかけた時点では既に劣化していた箇所があるようだ。

 

何故今この本を渡されたのかはよくわからないがとにかく読んで頭に入れておけ、という事なのだろう。

 

パチェは私が生まれるよりもはるか昔に月に行ったことがあったらしい。恐らくその時の経験からこの本を私に薦めてきているのだろう。ならば読んで損はないはずだ。そもそもパチェが無駄なものを渡してくるとは思えないし。

 

この本、読んでみるとなかなか面白い。日本の神々が如何に多く存在するのか、それぞれどのような事ができるのかなどが分かる。もともと私は勉強が好きだ。そうでなければ料理などしていなかっただろう。

 

しかしいくら神の性質や力などを知ってもそれに対応できるかは別問題である。神というだけあって力の強さは並大抵のものではない。更に吸血鬼にとっての弱点を突かれれば私には対処しにくい。太陽神としての天照や太陽の化身とされる八咫烏などだ。

 

日傘以外にも何か持って行った方が良いのかもしれない。そういえば外の世界には日焼け止めなるものがあるんだったか。パチェに頼めば似たような物を作ってくれるかもしれない。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

あれから少し経ってもう今日は披露宴当日だ。アリスの分の昼食を作らなければならないのも想定外でも何でもない。パチェがアリスに手伝いを頼んだことを知っていればアリスが一日中館にいるであろうことは大体想像がつく。

 

最近は神に関する知識を失わないように、本の内容を思い出しながら料理をしている。そのおかげで内容はほぼ完ぺきに頭に入っている。日焼け止めの件もパチェが作ってくれるらしい。流水はパチェでもどうしようもないらしい。薬で対処できるようなものでもないし。

 

昼食も終わって今日はもう披露宴を楽しむだけだ。ディナーはパチェ達に加えてアリスも手伝ってくれることになったらしい。ただパチェの手伝いとして呼ばれただけなのに館の手伝いもしてくれるとはなんとよくできた子ではないだろうか。

 

パチェに聞いたところロケットのレプリカはアリスがほとんど作ったらしい。パチェの想定していた時刻よりもかなり早く終わってしまったようなのでディナーを作り始める前までは二人で何やら魔法の特訓をしていたみたいだ。

 

しかし毎度のことながらアリスの器用さには感心させられる。たまにお茶をしに行った時にも人形にすべてをやらせているように見せて実はアリス自身が全て操作しているそうだ。パチェ曰くアリスの常人離れした器用さがあるからこそできる芸当で、いくら魔法が上手く使えてもパチェではアリスのようには扱えないらしい。

 

確かに私ならあの数の人形に別の動きをさせようと思ったら頭がパンクしてしまうだろう。どうやらそれはパチェも同じらしい。

 

―――――――――――――――――――――――――

今はもうパチェ達が料理を始めていて私のすることといえば本を読むくらいだ。だから図書館で神についての本を新しく読み始めている。もうパチェに渡された本は読み終わったので小悪魔に頼んで持ってきてもらった。

 

パチェの予想では霊夢の他に魔理沙も恐らく着いてくるという事なので、ロケットの中ではゆっくり本は読めないだろう。だから今のうちにできる限り読んでおきたいところだ。

 

 

 

招待状はかなりたくさん出しておいた。来るかどうかは自由だが宴好きの多い幻想郷だ、大広間はいっぱいになるだろう。客が来始めるまで恐らくあと一刻ほど。そろそろ私も出迎えと私自身の準備を始めなければならない。

 

フラン用のドレスも咲夜に作ってもらっているのだが着てくれるだろうか。お揃い、というわけではないから恥ずかしくはないと思うけど。

 

 

 

   永琳side

 

 

 地上に降りてきた玉兎を月に送り返してからもうかなりの時間が経った。手紙を持たせているから彼女自身は大丈夫だろうが手紙は誰の手に渡るかわからない。そのための保険として量子印までつけておいた。これで私が彼女たちにできることはもうないだろう。

 

あれからすっかり季節も移ろい今はもう冬だ。今日も雪がよく降っている。今夜は吸血鬼の館でロケットのお披露目会をするらしく、輝夜も楽しみにしているようだ。

 

因みに私含め永遠亭の面々はロケットの外観だけは知っている。パチュリーが外の世界に出ていたらしい時期に一度こっそり見に行ったことがあった。

 

構造自体はほぼ完ぺきだったが私の目的のためにも月にたどり着いてもらわなければならなかったため小細工を施しておいた。きっとパチュリーなら既に気づいているだろう。

 

月の頭脳といわれる私でもパチュリーの考えはいまいち読めない時がある。最近も永遠亭に来て輝夜と何か話をしていたようだ。

 

彼女は一度月に行ったことがある。聞いた話によると私の弟子二人はきちんとこなすべき仕事をしているようだ。勝手に屋敷でパチュリー(地上の者)を匿っていたと聞いたときは”またか”と思ったが、話を聞く限り私のいた頃よりは成長していると思う。

 

月と地上を結ぶ者としてもう少し慎重であってほしいものだがこれも彼女たちの性格なのだろう。変えられないものは仕方がないと割り切るしかない。

 

 

「お師匠様?そろそろ出かける時間ですが」

 

 

「あら、もうそんな時間だったのね。分かったわ、今から準備(といっても片付けるだけ)するから少し待っていてもらえるかしら」

 

 

「はい、大丈夫ですよ。では姫様たちと玄関先で待っていますね」

 

ウドンゲなんかは大丈夫だろうが輝夜はあまり待ちたくないだろう。急いで準備をしなければならない。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「お、ずいぶんと早かったね」

 

やはり妹紅と慧音も一緒だったか。何故かてゐ以外の妖怪兎たちまで勢ぞろいしているのはよくわからないが。

 

 

「えぇ、あまり待たせるのも悪いでしょう?それに準備といっても特にすることは無かったもの」

 

 

「そんじゃ、出発するとしますかね。お師匠様が予定より早く来たせいでまだ門は開いていないかもしれないけどね」  「うふふ、門が開いていなければ永琳のせいね」

 

 

「こらこら二人とも、あまり永琳を弄りすぎない方が身のためだぞ」

 

 

「相変わらず慧音は真面目だなぁ。こんなことで怒る様じゃ永遠亭ではやっていけないと思うよ?まあ鈴仙ちゃんでストレスを発散しているのかもしれないけどね」

 

 

「ちょ、ちょっとやめてよ。また思い出しちゃうじゃないの。うっ、頭が痛くなってきた……」

 

…………………………………………………………………………………ウドンゲには定期的に頭痛薬を渡しておこう。

 

 

「あらあら、鈴仙はいつもそうだね~。もう少し強くなりなよ、精神的にさ」

 

 

「それとこれとは話が別よ。まああんたたちみたく永いこと生きてれば少しは変わるのかもしれないけど」

 

そんな話をしながら移動していたらようやく紅魔館が見えてきた。どうやら既に何人かは来ているようで門はしっかり開いていた。

 

 

「皆招待状を出しておきなさいよ。彼女のいる門を無断で突破するのは骨が折れるでしょうから」

 

 

「へぇ~、お師匠様がそこまで言うほどの妖怪なの?そうは見えないけどねぇ。ま、怒ったら怖そうではあるね」

 

確かに彼女はいつもニコニコしているから強そうには見えないのはわかる。

 

 

「いつも宴会では一緒に料理を作ってくれたりお師匠様たちと話したりしている方ですよね。美鈴さんの戦っている姿は見たことがありませんが」

 

 

「そういえば私も見たことが無いな、昔はよく一緒にいたものだが。慧音は?歴史に詳しいんなら何か知っているんじゃないの?」

 

 

「いえ、彼女はかなり旧い妖怪ですので私が見てきた歴史では全然足りません」

 

 

「ふーん、じゃあ美鈴が戦っているのを見たことがあるのはこの中では私と永琳だけなのね」

 

 

「あの時はほとんどパチュリーだけで完結していたじゃない。美鈴は撃ち漏らしにとどめを刺していただけで」

 

あれはほとんど戦いとは呼べないだろう。だから私も美鈴の本来の実力はわからない。しかしパチュリーやあの八雲紫でさえ認めているほどの実力者である。戦って負ける気はないがこちらも本気にならなければならないだろう。

 

幸い彼女の性格上戦闘になることはほとんどないしそもそも戦闘する理由もない。

 

 

「おや、永遠亭の皆さんに慧音さんと妹紅も一緒だったのですね。素性の分かっている人への招待状なんてただの飾りですからどうぞお入りください。どうせそこの兎さんたちの招待状も偽物でしょうし」

 

結局妹紅は呼び捨てすることにしたのか。まあ妹紅としても子供だった頃の知り合いからいきなりさん付けされるのは気持ち悪かったのだろう。

 

「な~んだ、ばれてたのか。結構自信作だったのになー」

 

 

「一応出した相手と枚数くらいは記憶していますからね。まあどうぞお入りください。広間には既にパチュリーやお嬢様たちもいますから」

 

           ・

           ・

           ・

 

大広間が埋まった辺りで披露宴が始まった。レミリアによる月侵略計画の説明やロケットの愛称募集などがあった。私の案を魔理沙に提案させたらそのまま通った。

 

レミリアの話を真面目に聞いている者は少ないようだ。彼女の妹でさえ食事に夢中で聞いていなさそうだし。パチュリーの話では他人との付き合いが苦手だったと聞いているが既に克服できたのだろう、レミリアとは少し意匠の異なったドレスを着ているが楽しそうに友人たちと話をしている。

 

参加者はかなり多い。閻魔まで参加しているとは思わなかった。しかし式神二人は参加しているのに八雲紫は不参加のようだし冥界の二人もかなり早く帰ったようだ。

 

「やっと見つけたわ。あなたの服は目立つけれど、この中ではそれすら助けにならないわね」

 

 

「あら、パチュリーじゃない。また月に行くとは八雲紫は何を考えているのかしらね」

 

「さあね。でも今回の目的は前回と同じではないと思うわよ。事実は本人しか知り得ないけれど。そうそう、ロケットの名前、あれには何か意味があったのかしら?」

 

私が考えたとばれていたか。本当にパチュリーの事はよくわからない。

 

 

「いいえ、特にはないわよ。ただあのロケットの動力には住吉三神の力を使うのでしょう?」

 

「だから三つで一セットな名前にしたというわけ?」 「まあそんなところよ」

 

「それにあなたが住吉三神の事を知っているのは最近また忍び込んだからかしら?」

 

 

「あらあら、それもばれていたのね。まあ悪気はなかったのよ。ただ進捗を見に来ただけ」

 

「それは別に構わないのだけれど。私に言えばいつでも入れてあげるのに。あぁ、そう。あなたの小細工は助かるわ。確実に月にたどり着くことができるようになるから」

 

 

「それは良かったわ。それで出発はいつなの?」

 

「三日月の日よ。月の都に侵入できる日から逆算すればその日が最も良いもの」

 

この辺りは昔月に行った経験からだろう。

 

 

「レミリアたちには何かお土産でも頼んでいるの?」

 

「まだだけれど…………そうね、イルメナイトでも頼もうかしらね。前に輝夜に見せてもらった優曇華も悪くはないけれど私には育てられそうにないからね」

 

前に輝夜と話していたのはこのことだったのだろうか。

 

「まあ永琳も楽しんで頂戴ね。まだまだ夜は永いのだから」「えぇ、そうね」

 

かつて月に迷い込んだ人間を保護してしまった姉妹は有無を言わさず追い返すことができるようになったのだろうか。かつての私は殺すのが最善だと言ったがあの二人ならそうすることは無いだろう。

 

冷淡に見えて実は優しい。その優しさが自身を滅ぼさなければいいけれど。




次回こそ本編です。まあ主人公が地上に残るので内容は薄いですが


では次回も読んでいただければ幸いです
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