行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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タイトルの方はもう無双を使ってしまっていますから、という事で適当です

そして儚月抄が終わらない


圧倒的第四十九話

   レミリアside

 

 

 いよいよロケットが発射される段階になった。結局ロケットに搭乗しているのは私と咲夜、フラン、霊夢、魔理沙。あとは役に立つかはわからないが妖精メイドを三人ほど呼び戻して連れてきた。

 

中は咲夜の能力で広げられていてとても広い。私と咲夜以外は皆大層驚いているようだ。切り離した後の最上段でも十分な広さがある。半月ほどこの船の中で過ごすことになるが特に困ることは無いだろう。

 

 

「おい、あいつら外で何やってるんだ?」

 

 

「この船は空飛ぶ神社だから何か祈願でもしているんじゃないの?明らかに作法に則っていない感じはするけど」

 

発射する場所は図書館。なんと天井部分が開く仕組みになっていたらしい。図書館に元々付いていた機能なのかパチェが付けた機能なのかは知らないが、私が知っているうちでは改造していないようなので元から備わっていたのだと思う。

 

皆が乗り込んだところでいよいよ発射だ。月とはどのような所なのだろうか。パチェに聞いても『幻想郷には無いものがある』としか教えてくれなかったからきっと楽しみは後に取っておけ、という事なのだろう。

 

霊夢は神棚の前で何やらブツブツ言い始めたし、咲夜ものんびり紅茶を淹れようとしている。案外船の中でも落ち着いて本が読めるかもしれない。

 

 

「ちょっと魔理沙!それ私のクッキーよ!」「へっへん、早く食べない奴が悪いのさ」

 

…………………フランと魔理沙が眠れば落ち着いて本が読めるかもしれない。仕方が無いから外の景色でも眺めて暇を潰すことにしよう。

 

 

「しかしこんなに高いところから地上を見ることは無いから新鮮でいいわね」

 

 

「えぇ、そうですね。それに私は普段は地上を見ながら飛ぶことは滅多にありませんし」

 

 

「もう少し心に余裕を持ちなさい。そうすれば四季折々に変化する幻想郷の景色をゆっくり眺めながら飛行できるわよ。外にいた頃と違って自然がとても多いからおすすめよ」

 

 

「そうですね、努力いたします」

 

心に余裕を持たせるために努力をするのは少しおかしい気もするが何も言わないでおこう。

 

 

「フランも魔理沙も騒ぐのはほどほどにしておきなさいよ。霊夢の集中が切れたら一大事なんだから………」  「はーい」

 

 

「はいはいっと。しっかし半月もここにいるとなると大丈夫なのか?食事とか」

 

 

「一応食料は多めに持ってきているつもりよ。お嬢様と妹様は最悪何も食べなくても半月程度なら問題ないでしょうし」

 

 

「ほぉ~、妖怪ってのは便利なもんだな」

 

 

「まあ食料が足りなくなったときに優先的に量を減らすのは貴女からでしょうけどね」

 

 

「そりゃ酷いぜ。流石は悪魔のメイドだな、いつも姉妹を最優先か?!」

 

 

「当たり前でしょう?私は紅魔館のメイド。主人を優先しない従者などいませんわ」

 

こうして見ると咲夜も随分と気を許せる友人ができたようだ。一先ずは安心、といったところだろうか。

 

因みに船内の食事は咲夜の提供となる。魔理沙や霊夢は私が料理をすることすら知らないから丁度良かった。咲夜の料理でも十分すぎるほど美味しいから何も問題はないけど。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

この船旅もいよいよ終盤に差し掛かった。上筒男命に代わってからかなりの時間が経った。予定通りならもう着いてもおかしくないはずだ。

 

 

「おぉ!あれが海か?!初めて見るけど大きいもんだな~」

 

このままだと海に墜落しそうな勢いだ。吸血鬼は流水が苦手だというのに。

 

 

「フラン、落下後には十分に気を付けておきなさい。咲夜もいざとなったらフランについていてあげなさい。私は自分で何とかできると思うから」 「しかしお嬢様……」

 

 

「大丈夫だと言っているでしょう?安心しなさい、誇り高きスカーレット家当主であるこの私がこの程度でくたばるわけが無いでしょう」

 

 

「…………お嬢様がご自分でそうおっしゃるのは珍しいですね。わかりました、従者として主人を信じないわけにはいきませんものね」

 

そう、それで良い。恐らく海に落ちた後すぐ飛んで海から離れれば問題ないだろう。私たち二人以外は海に落ちても溺れることもなさそうな面子だし安心して良いだろう。

 

 

 

   パチュリーside

 

 

 今夜は綺麗な満月が昇っている。紫たちは先ほど出発しただろうし、レミィたちももう着いた頃であろう。

 

「…図書館に入るときは忍び込むのではなくきちんと許可を取ってからにしてもらいたいものね」

 

侵入するならもう少し気配をどうにかした方が良いと思うし。まぁばれる前提で入ってきているだろうから尚更質が悪いのだけれど。

 

 

「ま、気づかれるわよね。それで?あの吸血鬼たちの月旅行は順調に行っているの?」

 

「えぇ、勿論よ。少なくとも到着までは全く心配はいらないでしょう?あなたのおかげで。そこから先は私は知らないわ。月の二人がレミィたちをどうするのかなんてのはね」

 

 

「どうかしらね。あの二人は迷い込んだ人間をわざわざ生かして地上に送り返すほどのお人好しだから案外何事もなく帰ってくるかもしれないわね」

 

「筒川大明神、か。私が見に行こうと思って都まで行った時には既に亡くなってしまっていたのよね。一度は会ってみたかったのだけれど」

 

 

「別にそこまでするほどの人間ではなかったわよ。地上に返すにあたって色々な物を準備しなければならなかったし、ただ面倒な人間だったわ」

 

「そうなのかしら…まあいいわ。それで、あなた自身はどう思っているのかしら。本当にあの二人が何もしないと思っているの?」

 

 

「それは思っていないわ。でもあの二人ならきっとうまくやってくれるでしょう。私にできるのはその助言くらいだけどね」

 

「そう。……ところで輝夜はあそこで何をしているのかしら」  「さあ」

 

ふむ、どうやらこあに興味を持っているらしい。永遠亭は兎ばかりで退屈なのだろう。妹紅は…何故来たのかさっぱりわからない。相当に暇だったのだろうか。本当に自由なものだ。

 

あの二人がどのような選択をするかはわからない。しかし月では無駄な殺生を嫌う。紫以外は大したお咎めも無く帰ってくるだろう。

 

 

 

   依姫side

 

 

「依姫様!地上から侵入者です。地上人が乗ってきたロケットは豊の海で大破したようですが」

 

やはり来たか、流石は八意様だ。どうやら今来た地上の者たちは囮であるようだがそんなことは関係ない。次に地上の者が来たらすぐさま送り返すと決めているのだ。私の潔白を証明できる一人を除いては。

 

 

「丁度いい機会です。来た者たちを迎え撃ってみなさいと伝えなさい。私も今から向かいますが」

 

昔と違い今は兎で軍を作っている。昔地上から攻めてきた者のうちの一人、パチュリーさんからの指摘通り月人たちは自分の手を汚すのが嫌だったみたいだ。

 

兎たちの中には最近入ったばかりのレイセン(二代目)のようなどんくさいのもいるが総じて扱いやすいのがありがたい。勿論優秀な兎もいることにはいる。四十年以上前までここにいたレイセン(一代目)がいい例だ。性格の方は軍に向いていなかったが。

 

とりあえず豊の海に向かってみよう。地上から自力で来られるような人間たちだ。きっと力もそこそこあるに違いない。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

着いた先には何故か粉々になった銃の残骸と思われるものと震えている兎たちがいた。

 

 

「あー、一体何があったのか教えてもらっても?レイセン」

 

 

「それには及ばない。私から説明してやろう。そこにいる兎たちは皆話ができる精神状態ではないだろうからね」

 

ほう、地上の妖怪か。随分と若く見えるがこの状況を生み出したのは彼女だというのだろうか。

 

 

「この状態にしたのは私ではなく私の妹だよ、一応言っておくがね。ただ兎たちが銃を構えてきたからそれを破壊しただけの話よ。それに臆したのがそこの兎たちというわけ。簡単な話でしょう?」

 

ここまで粉々に銃を破壊しようと思ったら能力に頼るしかないだろう。月の銃は妖怪がただ力を加えるだけで破壊されるほど脆く作られていない。

 

 

「ふむ、それが貴女の妹の能力というわけですか。かなり厄介ですね」

 

 

「いや、そんなことは無いさ。自身よりはるかに大きな力を持つものは破壊できない。そうね……例えば神器全般は破壊できないでしょうね」

 

まさか気づかれているのか。どうしてこんな小娘が?

 

 

「貴方は一体何者なのです?私はまだ何も言っていませんが」

 

 

「ふふ、貴方はわかりやすいのよ。それとも貴方の剣かしら。その剣は妖怪が鍛えたわけでも人間が鍛えたわけでもない雰囲気をまとっているわ」

 

 

「なんです?貴方は私と戦いたいのですか?」

 

 

「そんなわけないじゃない。私の親友に聞いているわ。月の民には絶対に勝つことなどできない、とね。そんな無駄な戦闘は避けさせてもらうわ」

 

 

「なんだぁ?!レミリアはやる気がないんだな。そんなんじゃあ月に来た意味がないじゃないか」

 

 

「うーん、ならこうしましょう。私たちと月の兵士たちでスペルカードで戦う。これなら余計な血も流れないしある程度は平等に戦えるわ。それなら良いかしら?魔理沙」

 

あの妖怪の親友という人物は月に来たことがあるらしい。そしてかつてを思い出させるこの発言……まさか彼女は…。

 

 

「私は構わないけどよ、あちらさんは大丈夫なのか?」

 

 

「勿論大丈夫なはずよ。私の予想が正しければこいつは一度そのルールに則って戦ったことがある。スペルカードルール…貴方たち風に言うと命名決闘法、知っているのではないの?」

 

 

「えぇ知っていますよ。一つ尋ねてもよろしいでしょうか。貴女の言う親友とはもしや……」

 

 

「おっとそれは私に勝ってから聞きなさい。さて、始めるわよ」

 

          ・

          ・

          ・

 

「っはぁー。こんなに強いだなんて聞いてないぜ。こりゃ参った」

 

 

「だから言ったでしょう?決闘でなければ戦いにすらならないわ」

 

結局全員を負かすことができた。レイセンにはお姉様への伝言を頼んでおいた。

 

ああは言っているが倒すのに苦労した順で言えばあの妖怪が一番だった。その次が巫女だろう。あの妖怪は私の降ろした神の力を知っているかのように立ち回ってきたし、何より身体能力が厄介だった。

 

 

「さて、私が勝ちましたから質問させてもらいますよ。そういう約束でしたから」

 

 

「えぇ、構わないわよ。私にとっての約束は何より強い意味を持つんだ。破ることなんてしないさ。でも少し場所は変えましょう。聞かれたくないこともあるかもしれないしね」

 

悪魔にとっての約束は契約と同義、すなわち破れないという事なのだろう。しかし思いのほか警戒心が強いようだ。強い存在は少しの事では負けないと思っているからか辺りの警戒を怠ることも多い。なかなか珍しい妖怪だ。

 

 

「確かにその通りですね。では早速一つ目ですが、貴女の言う親友とはパチュリー・ノーレッジさんの事で間違いないでしょうか?」

 

 

「えぇ、そうよ。でも貴方本当に強いのね。パチュリーがあれだけ言うのも納得だわ。でも残念なことに軍の中で強いのは貴女くらい。兎たちは圧倒的に実践経験不足のようね」

 

 

「やはり貴方もそう思いますか。ですが月で実践経験を積むことは非常に難しい。外部から攻められることなどほとんどありませんからね。しかも私が目を離すとすぐに怠けだしますし…。はぁ、どうすれば良いのでしょうかね」

 

 

「それを普通妖怪の私に聞くかしら。でも上がしっかりしているつもりでも下が怠けるようになるのは仕方のないこと。今回連れてきているあの妖精たちも普段は館で働いてくれないもの。

 

無理に働かされている者なんてのはそんなものなのよ。矯正するのはかなり難しいことだと思うわ。精々頑張りなさいな、私はとうに諦めたけど」

 

上に立つ者は皆何かしら苦労しているものだ。それは月でも地上でも変わりないらしい。

 

後はレイセンが帰ってくるのを待ってあの巫女以外を地上に送り返せば私の任務は完了だ。

 

 

「おや、あれはさっき遣いに出していた兎じゃないの?」「よっ依姫様ー!大変です!」

 

 

「落ち着きなさい、レイセン。一体何があったというのです。あちらにはお姉様がいたはずでしょう?」

 

 

「そっそれが、あの八雲紫とその式にまんまと一杯食わされてしまって…その……行方が分からなくなりました」

 

 

「はぁ?!八雲紫を逃がしてしまったですって?!きちんと縛っておかなかったの?」

 

 

「いえ、そういうわけではないのですが……」

 

何故だ。あの紐から抜け出すのは不可能なはず。神をも封じる物を一介の妖怪ごときが破ったとでも言うのだろうか。

 

 

 

   豊姫side ~ちょっと前~

 

 

 月にこっそり忍び込もうとしてきた愚かな妖怪をトラップにかけて捕らえることに成功した。やはり八意様の智慧は偉大なものだ。

 

レイセンによると依姫は順調に事を終わらせたらしい。この妖怪の処遇が決まったら私の力で攻めてきた妖怪たちを地上に送り返さなければならない。

 

 

「さあ、貴方たちにできることはもうない。その紐はフェムトファイバーの組紐だからね」

 

 

「フェムト?」「フェムト。わかりやすく言うと………よ」

 

この紐で縛られれば神ですら脱出は不可能だ。ましてやただの妖怪に切れる道理はない。

 

 

「ふふっ、うふふふふ。なるほどなるほど、よくわかりましたわ。つまり私たちはもう何もできないというわけね。面白いわね」

 

 

「紫様?!一体何が面白いというのです?私たちは身動きもろくに出来なくなっているのですよ?」

 

あまりのショックで遂に頭が壊れてしまったのだろうか。それも仕方あるまい。昔のリベンジのつもりで入念に囮まで使って侵入しようとしたのに見事に私たちの罠にかかってしまったのだから。

 

 

「あぁ、滑稽。私も貴方たちも滑稽でしかありませんわ。まさかこんなところであの子のくれた物が役に立つなんてね。まああの姫君の力を借りるのは癪ではあるけれど。これであの子への今までの貸しの分は全てチャラかしらね」

 

 

「一体何を……なっ?!」

 

フェムトファイバーが切れた?何故だ、どうなっているのかわからない。あの紐は劣化するようなものではないし妖怪の力で切れるようなものでもない。

 

 

「さて、大変お騒がせいたしました。此度の侵略も私たちの負けですわ。また当分は月に侵略に来るようなことは無いから安心してくださいな。

 

さあ藍、何ぼさっとしているの?私たちの用事は済んだからさっさと退散するわよ。ではまたの機会にお会いしましょう。次回はもう少し作戦を考えてきますわ」

 

          ・

          ・

          ・

 

あまりの事態に数十秒も固まってしまった。トラップにはめていたからといって、今八雲紫が月に行っていないという保証はない。

 

 

「レイセン!すぐに月に戻って依姫に伝えて来なさい。私は都の中を見回ってみるわ」

 

たかが地上の妖怪と侮っていたが今回の事でよくわからなくなってしまった。八雲紫が紐の切断に使ったのは一見するとただの銀製のナイフ。神器の類でもなさそうだったのに何故易々と切られてしまったのだろうか。




分からない方はいないと思いますが途中からレイセンと呼ばれているのは勿論レイセン(二代目)です

レミリアは原作からかけ離れすぎているようにも思いますが、タグにもキャラ崩壊入れてあるので大丈夫なはず


では次回も読んでいただければ幸いです
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