行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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サブタイトルがひどいことになっていました。申し訳ないです


強制的第五十話

   パチュリーside

 

 

 というか永琳たちはいつまでここにいる気なのだろうか。もう月は沈む段階に入っているというのに。

 

「あなたたち今夜は満月よ?例月祭はしなくてもいいの?」

 

 

「えぇ、例月祭はもう済ませてきたから。しかし丸い物といっても家の倉庫の中の物だけじゃネタ切れになってきているのよね。どうすればいいのかしら」

 

 

「変わり種の団子とか作ってみればいいんじゃないの?……鈴仙が。それに数か月前は面白い物が出てきたじゃん」

 

 

「ちょ、てゐ?!作るならあんたも手伝いなさいよ。それに面白い物って…あんた正気?あんた自身が死にかけたのに」

 

何故そんなに危ない物が倉庫に入っているのか見当もつかない。輝夜が月から持って来た物の中に紛れていたのだろうか。輝夜なら面白がって持ってきていてもおかしくはない気がする。

 

 

「大丈夫だって。鈴仙なら何とかなると思ってたから」「はぁ」

 

「随分とお疲れのようね。休みはやっているのかしら?永琳」

 

 

「たまにはあげているつもりなのだけれど。でもここまで疲れている様子なのはきっと輝夜かてゐのせいね。あの子たちは加減を知らないから」

 

間違いなく永琳のせいだろうなぁ。鈴仙もまたため息ついているし。

 

「まあ今日はとりあえず帰ってゆっくり休ませてあげなさい。例月祭でも疲れているでしょうし」

 

 

「そうね。そろそろお暇させてもらうわ。輝夜も妹紅も戻ってきなさい、もう帰るわよ。ほら、二人も早くついてきなさい」

 

 

「パチュリーさん、お気遣いありがとうございます。師匠は鈍いところがありますから困ったものですよね。それではさようなら」「えぇ、さようなら」

 

永琳の場合は鈴仙を弄って楽しんでいる節もあると思うが鈴仙が気づいていないのならば言わない方が良いだろう。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

永琳たちが帰って図書館に静寂が戻ってきた。また本でも読んでおこう。寝る必要のない体質は本当にありがたい。

 

 

「ごきげんよう、パチュリー。時間良いかしら?」

 

昔はもっと見られているような気配があったのに、いつの間にか美鈴ですら気づけない程に気配を殺すことができるようになっている。そのせいでいつ紫が出てくるかさっぱりわからなくなった。だからいつも内心は驚いている。顔と態度には出さないが。

 

「えぇ、構わないわ。あなたたちがここにいるという事はもう月面旅行も終盤といったところなのかしらね」

 

「その通りよ。それにしても貴方はどこまで先を見ているのかしらね。こうなることは私でも見抜けなかったのに」

 

「昔月に滞在していた時期があったでしょう?その時のおかげで知っていたのよ」

 

本当は原作で知っていたから、なのだけれど馬鹿正直にそれを言うはずもない。こういう時は適当にごまかすに限るのだ。

 

 

「…………そう。まさかあの姉妹がそんなに簡単にバラすとは思えないけれど…まあいいわ、助かったのは事実だものね。ありがとう」

 

やはり紫をだますのは少々無理があったのかもしれない。今回に関してはスルーしてくれるようなので良かったが、次回以降は気を付けなければならない。

 

「レミィたちはどうしたの?まだ帰ってきていないようだけれど」

 

 

「あちら側の勝負は既に終わっていたみたいだから恐らくそろそろ帰ってくる頃だと思うわよ。私の捜索の方が優先されそうな雰囲気だったし」

 

「そう、ならいいわ。月は余計な殺生を嫌うから命の心配はしていなかったけれど」

 

 

 

   レミリアside

 

 

 面倒なことになった。八雲紫の行方が分からなくなったせいで月の兵たちが都の中を走り回っているらしい。

 

でもどうせ八雲紫の事だ、周りを混乱させるだけさせて実際に行動するのは他の者の仕事なのだろう。今頃は地上に戻って私たちの事を笑っているのかもしれない。まったく厄介な奴だ。

 

 

「貴方たちのリーダーはレミリアさん、貴方でよろしかったですか?」

 

 

「どちらかというと霊夢な気もするけど…で、どうしたの?私たちも八雲紫の行方なんて知りようもないんだけど」

 

 

「そうではありません。月が混乱している今貴方たちをここにずっと残しておくのも得策ではありません。余計混乱を招くことになってしまいますし、それに乗じて攻め入られれば都に住む月の民にも危険が及びますから」

 

別にこれに乗じて攻め入ろうなんてこれっぽちも考えていないのに。そもそも私は昔パチェも来たという月に一度来てみたかっただけ。侵略する気すらなかったというのに。

 

 

「そこで貴方たちにはもう早く地上に帰っていただこうかと思っているのです。勿論そこにいる巫女以外ですが」

 

 

「ちょっと、どうして私だけ残らないといけないのよ。面倒くさいんだけど」

 

 

「私の潔白を証明してもらうためです。神降ろしとは本来正式な手順を踏んで行うべきこと……」

 

長くなりそう。でも依姫がこういうのも頷ける。霊夢も何も言い返せないだろう。

 

 

「…という事です。わかりましたか?月に残るといって十日程度の短い期間ですし、その間は私たちの屋敷で面倒を見ましょう」

 

 

「…………不自由なく過ごせるんでしょうね?」

 

 

「勿論です。貴女にしてもらいたいのは神を降ろせることの証明だけですから」「ならいいわ」

 

霊夢……今度神社にお賽銭でも入れておいてあげよう。

 

 

「ではそういう事で決まりですね。お姉様がここに来るまではもう少しありますから暴れないのであれば自由に行動していただいて結構ですよ」

 

確かパチェには月のイルメナイトを頼まれていたはず。でもイルメナイトってなんだろうか。

 

 

「ちょっと聞きたいんだけど良いかしら?」「なんでしょうか」

 

 

「イルメナイトって何かしら?お土産に頼まれているんだけど」

 

 

「イルメナイトとは鉱物の一種でチタン鉄鉱とも呼ばれるものです。表の月には特にたくさんあるようです。裏の月にも一応ありますよ。その地面なんかがそうだと思います」

 

 

「へぇ?これが。こんな石ころを欲しがるなんて魔法使いはよくわからないものなのね」

 

とりあえずパチェへのお土産はこれで確保できた。アリスも同じ物でいいだろう。パチェと同じ魔法使いなのだし。美鈴と小悪魔の分はどうしようか。あの二人は特にほしい物がなさそうだから困る。何を持ち帰っても地上では珍しい物だろうから尚更だ。

 

とりあえず桃でいいか。種を植えれば美鈴も喜んで世話をしてくれるに違いない。時間はかかるができた時の楽しみもある。幽々子も桃で十分だろう。あちらは食べるだけで終わりそうだが。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「おや、全員揃っているみたいね。それでは地上に送り返すわ。二度と来ない事を祈っているわ。ではさようなら」

 

            ・

            ・

            ・

 

「お?おぉ!一瞬で帰ってきたぜ。行きはあんなにかかったのになぁ」

 

移動に関しては八雲紫のスキマをはるかに上回る速さだ。どういう能力かは知らないが、他人の能力の理屈を考えることほど無駄なことは無い。まあそれは自分の能力でも同じだが。

 

 

「ここは……霧の湖ですか。丁度館に近くて助かりましたね。パチュリー様や美鈴も待っているでしょうから早く帰りましょう」

 

 

「そうだね!たった半月しか経っていないのに会うのがすごく久しぶりな感じがする」

 

フランもなんだかんだ言って寂しかったのかもしれない。普段一緒に過ごしている人が三人もいないのだから仕方がないか。

 

 

「私は一人寂しく帰らせてもらうぜ~。霊夢の奴はいつ帰ってくるんだったっけ」

 

 

「それくらい覚えておきなさいよ。約十日後よ。それまでは神社に行っても誰もいないわよ」

 

 

「いつも以上に寂しい神社になるってわけか。それまでは紅魔館に遊びに来ることにしようかな」

 

 

「パチュリー様の本を盗まないでよ。どうせ取り返されるだろうけれど」

 

 

「借りてるだけさ、パチュリーが取り返しに来るまでな。しっかしなんであいつは私の読み終わった本だけを持っていくんだろうな。私の読んだ後ってそんなにわかりやすいのか?」

 

 

「そんなこと知るはずが無いでしょう?気になるならパチェか小悪魔にでも聞いてみなさい。教えてくれるかもしれないわよ」

 

 

「やめとくぜ。別に私は困っていないからな。そんじゃとりあえず今日はゆっくり休んでまた明日にでも顔出すからお茶よろしくな、咲夜」

 

 

「なんで本泥棒にお茶を出さないといけないのよ。そんなことごめんよ」

 

 

「おっと、断ってもいいのか?油の件は…」「あぁもう!分かったわよ。明日だけ出してあげる」

 

 

「いやぁ~流石は咲夜だぜ。やっぱり瀟洒な従者は違うなぁ」

 

 

「どういう事?油って」「妹様は知る必要のないことでございますよ」

 

私も気になるが何か嫌な思い出でもあるのだろう。深く聞いたら咲夜を傷つけてしまう事になるかもしれない。聞かない方が良いだろう。

 

 

「まあいいわ。早く帰りましょう。そろそろ日が昇り始めてしまうわ。日焼け止めの効果も切れているみたいだし日光に当たってしまうのはまずいわ」

 

 

「お姉様の言う通りだね。じゃあまた明日来てね、魔理沙!」

 

 

「あぁ、分かってるぜ。いやぁ~咲夜のお菓子は美味いから楽しみだな!」

 

 

「全く貴方って人は。まあ精々楽しみにしていなさい。はぁ」

 

咲夜も大変なようだ。今日一日は仕事を休ませてやりたいがうまくいくだろうか。

 

 

 

   パチュリーside

 

 

 ようやくレミィたちが館に帰ってきたらしい。美鈴と話している声が大きいのか館が静かすぎるのかはわからないが声がかなり響いている。

 

「お帰り、三人とも。月旅行はどうだったかしら?」

 

 

「ただいま。なかなか刺激的で楽しめたわ。ただもう一度行くか、と聞かれると行かないと答えるだろうけど」

 

 

「月の人はとっても強かったよ。私の能力も全然効かなかったし。月に住んでいる人は皆あんな感じなのかな」

 

「それは誤解よ、フランドール。あそこまでの力を持っている月の民はほとんどいないわ」

 

依姫みたいな強さの者がたくさんいたらむしろ平和から遠ざかりそうだ。依姫は性格が悪くないから大丈夫なだけで。

 

 

「ふーん、そっかぁ。まあそうだよね。ふわぁ…眠いから寝るね。おやすみ」

 

「えぇ、おやすみ。レミィも咲夜も無理せずに今日は寝ていなさい。館の事は心配いらないから。ちなみに寝ないと言うならば魔法で強制的に眠らせるけれど」

 

 

「選択権は無し、と。まあかなり疲れたし私も寝るわよ。咲夜も今日は休み。当主命令よ」

 

 

「わかりました。今日はゆっくりさせていただきます。ありがとうございます、パチュリー様」

 

「私だけでなく美鈴やこあもね。でも明日からは頑張ってもらうからそのつもりでね」「はい」

 

大人しく聞いてくれて良かった。でもこうなるほど疲れていたのだろう。やはり月には手を出すべきではない。行かなくて良かった。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

あれから少し経って霊夢もとっくに帰ってきた。彼女にはロケットのエンジンの代わりになってもらったお礼もあるのでお賽銭を入れておいた。勿論霊夢が帰ってくるより前の事だけれど。

 

今日は久しぶりに人里に来ている。特に何をするでもないが、気分転換には丁度いい。

 

 

「あれ?樺菜じゃないの。里に来るのも久しぶりじゃない?」

 

「あら、妹紅。久しぶり、というわけではないわね。あの日も来ていたし」

 

 

「まあまあ。ところで樺菜は暇なの?今から永遠亭に行くところだったんだけど」

 

「ならご一緒させてもらおうかしらね。特に予定はなかったし」

 

 

「そんじゃ行こうか。それにしても月ねぇ。興味はあっても行きたいとは思わないなぁ、私は」

 

「私だって行きたくはなかったわよ。紫が心配だったからついて行っただけで。でも月での生活は悪くなかったわね。不便はないし住んでいる人たちも皆明るかったし」

 

 

「へぇ、それだけ聞いたら随分と良いところのように聞こえるけど」

 

「実際良いところではあるわ。あなたも聞いたことくらいあるでしょう?蓬莱国…竜宮城の事は」

 

 

「え?でもあれって海底の都の事なんでしょ?月と何の関係があるの?」

 

「あの話の内容は本当の事。でもあなたは不思議に思ったことは無いかしら?何故海底の都にたくさんの兎がいるのか、と。餅を搗く兎はどこにいると思う?」

 

 

「つまり竜宮城こそが月の都だったの?なるほどなるほど、月の民は見下せないけど海底に住んでいる竜宮城の民なら地上の方が高いから見下せるね」

 

「……永琳の怒るような事はやらないで頂戴よ。止められる人がいないから」

 

輝夜と妹紅の仲が良いのは良いことだけれど互いに弄りすぎて永琳が説教をするまでがセットだからなぁ。永琳もそんなに暇ではないでしょうに。

 

 

「わかってるって。おっと、そんなことを言ってるうちに永遠亭だ。樺菜もそろそろ迷わずに抜けられるようになったんじゃないの?」

 

「無理よ。ここの竹、そこの竹、と記憶できたとしても次に来た時には変わってしまっているもの。妖精も厄介だしここを迷わずに抜けられるのはここを住処にしている者たちだけだと思うわ」

 

 

「そんなもんなのかなぁ。慣れれば簡単だと思うんだけど。まあいいや、それよりあれは誰なのかな」

 

妹紅の知らない人が永遠亭にいるなんて珍しい……あぁいや違うな、彼女たちがここに来るのが珍しいのか。

 

 

「あれ、貴方はもしかしてパチュリーさんですか?随分と久しいですね。それで、一緒にいる貴方は一体どなたでしょうか?」

 

 

「私の名前は藤原妹紅。まあ輝夜の友人みたいなものさ。貴方たちは?」

 

 

「私は綿月依姫。そしてあそこで八意様と話をしているのが私の姉の豊姫。そしてあちらで鈴仙と話しているのがレイセンです。姉が八意様に会いたいというので仕方なく私もついてきたのです……何ですかパチュリーさん、その眼は」「いえ、別に何でもないから気にしないでいいわよ」

 

 

「鈴仙とレイセンって…面倒な事この上ないね。永琳が名字を与えて輝夜が適当にイナバと付けたのは知ってるけど」

 

 

「レイセンの方は今の私たちのペットです。そして鈴仙は昔私たちのペット、レイセンとして月の軍に入っていたのですが地上に逃げてしまったのですよ。八意様と輝夜姫に名前をいただけるなんて少し羨ましいですね」

 

依姫は相当永琳を慕っているようだ。私たちにさえ本音を漏らしてしまうほど。

 

 

「へぇ~、なるほどね。それで今日は永琳に会いに来ただけなの?月の民って地上に降りるのを嫌がるものだと聞いてたんだけど」

 

 

「折角八意様の居場所がわかりましたからね、ただ会いに来ただけですよ。あとはレイセンと鈴仙の稽古もしましたね。やはりレイセンよりは鈴仙の方がかなり筋が良いみたいで……」

 

 

「ちょっと待って、最早どっちのレイセンの事を言ってるのかわからなくなってきたんだけど」

 

 

「……まあ確かに言っている方もわからなくなりそうですね。では一代目、二代目という事にでもしましょうか」

 

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意外に妹紅と依姫は気があったみたいだ。結局依姫たちが帰るまで話していた。今はもう永遠亭の住人と私、妹紅しかいない。

 

 

「そういえば紅魔館で海を作って遊んでいたらしいわね。こんな寒い時期にどうして海なんて作ったのよ」

 

「月の海は流れていて入れなかったから流れない水で遊びたかったらしいわ。まあ実際はただの大きめのプールなのだけれど」

 

 

「いいわねぇ。私たちも近くの川から水でも引いてきて遊ぶ?」

 

「妹紅に頼んで温泉にしてもらえば丁度いいんじゃないの?外は寒いんだし」「なんで私が…」

 

 

「いいわねそれ。じゃあ早速頼むわよ、妹紅!水を引いてくるのはイナバ達でよろしく」

 

 

「私が掘ったら直接温泉が湧くかもね」「いくらあんたでもそれはないでしょう」

 

 

「ま、精々金銀財宝かな。出ても幻想郷内じゃ使い道なんてほとんどないけどね」

 

確かに金目の物を持っていても大して意味はない。紫に頼んで外の世界で換金してもらうくらいしか使い道がないし、そんなに多くのお金が必要になることも無い。

 

 

「あ、そうそう。月都万象展、今年もやるからパチュリーも館の皆と是非来てね」「え"っ」

 

鈴仙がすごく嫌そうな顔をしている。うん、まあわからないことも無い。大変そうな会場準備も鈴仙が主にすることになるんだろう。可哀そうに。

 

「え、えぇ楽しみにしているわ。鈴仙も頑張ってね」「はい……」

 

まだ始まったばかりだが今年も忙しい年になりそうだ。主に霊夢と紫が。




万象展も書きたかったですが(儚月抄が)長くなりすぎるのでカットします


では次回も読んでいただければ幸いです
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